2023年05月01日号

(2023年04月24日~2023年04月28日)

先週の為替相場

日銀会合後に円売り強まる

 先週(4月24-28日)は24日に1ドル=134円70銭台までドルが上昇した後、ドル売り円買いが優勢となり、26日に133円02銭を付けた。その後は133円台後半を中心に推移したが、28日午後に日銀が金融政策決定会合の結果を発表すると円売りが強まり、ドルは136円後半へ大幅に上昇した。

 経営が不安視される米中堅銀行ファーストリパブリックバンクは24日に1-3月期決算を発表し、3月末の預金残高が昨年末から約4割減少したことが判明した。市場予想を超える預金の流出がドル売り円買いにつながった。

 25日米国市場引け後に発表されたマイクロソフトとアルファベット(グーグル)(用語説明1)の決算が好調だったため、リスク警戒感はやや後退したが、ファーストリパブリックバンクへの連邦準備制度理事会(FRB)貸出(用語説明2)へのアクセスが制限される可能性があると報じられたことが重石となり、26日にドルは先週の最安値133円02銭を付けた。

 日銀が金融政策決定会合の結果を発表した28日は値動きが不安定だった。

日銀会合の結果発表前、金融政策の指針である「フォワードガイダンス」修正について議論するとの日本経済新聞による報道を受けて、1ドル=134円台から133円60銭付近までドル安円高が進んだ。しかし、今回の会合で長短金利操作(YCC)は修正されない見通しだと報じられると、134円30銭近くまでドルが買い戻された。日銀は金融政策決定会合の結果発表時刻を事前に確定していないが、これまで正午前後の発表が多かった。しかし、28日は12時半を過ぎても結果が発表されず、政策変更の思惑から133円38銭前後までドル安円高となった。

 日銀会合の結果発表は13時ごろ、134円前後にドルが値を戻すタイミングだった。金利に関するフォワードガイダンスが削除されたことを受けて初動はドル売り円買いとなったが、すぐにドル買い円売りに転じた。金融緩和政策を継続する方針が確認されたことや、これまでの金融政策を1年から1年半かけて多角的に点検・検証する方針が表明され、金融緩和が長期化するとの見方が強まった。

 日銀の植田和男総裁は記者会見で、過去の政策の点検・検証中でも金融政策を変更する可能性があると述べた。しかし、金融緩和維持の姿勢は強く、現行政策からの「出口」に具体的な言及がなかったことから、金融緩和の長期化見通しが一段と強まった。このため、136円台50銭超えまでドル買い円売りが続き、136円30銭台で先週の取引を終えた。

 一方、24日発表された独Ifo景況感指数は市場予想を上回り、1ユーロ=1.09ドル台後半から1.1060ドル台までユーロが上昇した。対円でも1ユーロ=147円台前半から148円50銭超えのユーロ高。しかし、米ファーストリパブリックバンクの預金流出を受けたリスク警戒感が円高や対円を除くドル高につながり、1ユーロ=1.09ドル台後半、146円台前半までユーロが下落した。

 その後ユーロの対ドルレートはやや不安定だった。26日発表されたドイツとフランスの消費者信頼感指数がともに市場予想を上回ったことからユーロは買い戻され、1ユーロ=1.11に迫った。しかし、その後はドル高に押されて28日に1.0960ドル台へユーロが軟化した。

 一方、1ユーロ=147円台後半で推移した後、日銀会合後は円売りが強まり、2008年10月以来約14年半ぶりに1ユーロ=150円を超えた。

今週の見通し

 円安の勢いが強い。5月2、3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、4日の欧州中央銀行(ECB)理事会、11日の英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会でいずれも追加利上げが見込まれる。一方、日銀金融政策決定会合の結果発表後は金融緩和の長期化見通しが強まり、外貨買い円売りの流れにある。

 もう一段のドル高円安が予想される。5月FOMCでは0.25%利上げ予想が市場の大勢。米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchツールによると、金利先物が織り込む6月FOMC(13、14日)の追加利上げの確率は約20%。FOMC声明文やFOMC後のパウエルFRB議長による記者会見、米雇用統計などの経済指標を受けて6月の利上げ見通しが強まると1ドル=138円超えに向けてドル高が加速する可能性がある。

 次回ECB理事会では、利上げ自体は織り込み済み。市場が予想する利上げ幅は0.25%がやや優勢だが、0.5%の大幅利上げの可能性も十分にある。0.5%利上げに踏み切った場合、節目の1ユーロ=1.11ドル超えと152円台後半へのユーロ高が予想される。

用語の解説

アルファベット グーグルとそのグループ会社の公開持ち株会社として2015年に設立。グーグルが主要子会社であり。YouTubeなどはグーグルの傘下。生物工学開発のCalico、自動運転技術開発のWaymoなどアルファベットの直接的な傘下となる子会社もある。2023年3月末の時価総額は世界4位。
FRB貸出 FRBによる米金融機関に対する貸出。シリコンバレーバンクの破綻やファーストリパブリックバンクの経営危機などを受けてFRBは3月12日、新たな流動性対策として「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を発表した。償還前の米国債や米住宅ローン担保債券が利上げによって値下がりしていても額面で評価し、これらを担保に最長1年の融資を行う。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月4日
03:00
☆☆☆
 2、3日開催の米FOMCでは、政策金利であるFF金利の誘導目標レンジの0.25%引き上げが市場予想の大勢。大方の予想通り0.25%利上げなら政策金利は5.00-5.25%と、3月にFOMC委員が経済見通しで示した目標レートに到達する。1日時点のCME FedWatchツールによると、利上げの確率は約83%、据え置きは17%ほど。
 大方の予想通り0.25%利上げの場合、FOMC声明文やパウエルFRB議長の記者会見で金融引き締めを継続する姿勢が示されると、市場が想定する6月の追加利上げの確率は現在の約20%から高まり、1ドル=138円に向けたドル高となりそうだ。一方、金利据え置きなら1ドル=135円割れに向けてドル安円高が急速に進みそうだ。
ECB理事会
5月4日21:15
☆☆☆
 0.25%と0.5%で利上げ幅の市場予想は割れているが、0.25%が優勢。ただ2日に4月のユーロ圏消費者物価指数の発表やECBによる銀行融資に関する四半期調査の結果公表を控えおり、これらの結果次第で市場の見方が変わる可能性がある。大方の予想通り0.25%利上げなら、ECB声明文やラガルドECB総裁の記者会見で引き締め継続姿勢がどこまで示されるかがポイントとなる。市場は6月追加利上げをほぼ織り込み、さらに年内もう1回の利上げを予想しており、市場見通しに沿った引き締め継続姿勢が確認されると、1ユーロ=1.11ドルを超えるユーロ高が予想される。
米雇用統計(4月)
5月4日21:30
☆☆☆
 4月7日発表された3月の雇用統計は非農業部門雇用者数が+23.6万人と市場予想(前月比+23.8万人)とほぼ同水準だった。今回は前月比+17.7万人と増加幅の縮小を市場は予想しているが、市場予想前後であれば相場への影響は限定的だろう。予想を超え、前回並みの雇用者の増加が確認されると、6月の追加利上げ観測の強まりから1ドル=138円台へのドル買い円売りが予想される。一方、雇用者の増加が市場予想を下回った場合や物価に影響する平均時給が低めに出た場合は135円台へのドル安に動きそうだ。

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