2023年05月15日号

(2023年05月08日~2023年05月12日)

先週の為替相場

米物価統計など受けて一時ドル売りも、週末にかけて大きく反発

 先週(5月8-12日)のドル円は、米物価統計などを受けて一時大きくドル安円高となったが、週末にかけてドル買いが強まり、5月3日以来のドル高円安となった。

 10日発表の4月米消費者物価指数(CPI)は前年比+4.9%と、市場予想及び前回値を下回る伸びとなった。なかでもFRBが注目しているとされる家賃を除いたサービス価格指数が前月比+0.1%と、3月の+0.4%から低下したこともあり、発表後はドル売りとなった。11日発表の米生産者物価指数(PPI)も予想を下回る伸びとなり、ドル売りとなった。また11日には米地銀パックウエスト・バンコープが大量の預金流出があったことを公表。米地銀の経営危機に関する警戒感が強まり、ドル売りとなった。ドル円は米CPI発表前の1ドル=135円40銭台から133円70銭台までドル安円高となった。米国の債務上限問題に対する警戒感もドル売り材料として意識された。

 ただ、週の後半になると日経平均が2011年11月以来の高値を付けるなど、12日のアジア・欧州株式市場の堅調な動きもあり、市場全体のリスク警戒感が後退。134円台後半までドル高円安となった。さらに12日発表のミシガン大学消費者調査(用語説明1)において、1年先及び5-10年先のインフレ見通しが予想外に高くなったことを受けてドル買いが強まり一時135円70銭台を付けている。

 ユーロドルでもドル高が進み、8日の1ユーロ=1.1050ドル台から1.0840ドル台を付けた。

 11日のイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)は市場予想通り政策金利を0.25%引き上げて4.50%とした。金融政策報告書(MPR)(用語説明2)では2023-24年の経済成長見通しやインフレ見通しが引き上げられた。今後の追加利上げも示唆されており、いったん小幅なポンド買いとなったが、動きは限定的なものにとどまった。ポンドドルは11日の1ポンド=1.2680ドル前後から1.2440ドル台までポンド安ドル高となった。ポンド円は10日の1ポンド=171円10銭台から167円80銭台までポンド安円高となった。

今週の見通し

 米国のインフレ期待の高まりから、FOMC後にほとんど見られなくなった6月の追加利上げ期待が少数派ながら再燃している。また、パウエルFRB議長がたびたび否定的見解を示しているにもかかわらず、市場でくすぶっている早期利下げ開始期待が後退していることなどから、ドル高トレンドが少し続くと見られる。

 ドル円は2日に付けた137円70銭台が意識されている。今週は米雇用統計や消費者物価指数など市場が注目している指標の発表予定がなく、トレンドに沿った動きが継続しそう。

 ユーロドルが1.10ドルを挟んでの推移から、ユーロ安ドル高方向にレンジが切り下がった印象がある。1.09ドル台前半が重くなるようだと、4月3日に付けた1.0780台へのトライが意識される。

 ただ、米債務上限問題と、米地銀の預金流出などの問題がくすぶっており、これらがドル高を阻む材料となりそう。一気にドル高が進むのではなく、ある程度の上下動を交えながらのドル高トライが見込まれる。

用語の解説

ミシガン大学消費者調査 ミシガン大学のサーベイ・リサーチ・センターが実施する消費者マインドに関する調査。景況感や雇用などの項目に関する回答結果を基に1966年を100として指数化した消費者信頼感指数と、その内訳として現状への評価を示す現況指数、先行きに対する期待指数、1年先のインフレ見通し及び5-10年先の長期インフレ見通しが示される。毎月第2もしくは第3金曜日に発表される速報値は420件を目標として指数化されるが、回答状況によって数値は変化する。最終金曜日に発表される確報値は600件を目標として指数化される。
金融政策報告書(MPR) 年8回開催されるイングランド銀行金融政策会合(MPC)のうち、2月、5月、8月、11月の結果発表と同時に公表される金融政策報告書。2019年8月までは四半期インフレ報告(IR)と呼ばれていた。英中銀による経済分析、物価見通しなどが示される。

今週の注目指標

豪中銀金融政策会合議事要旨
5月16日
10:30
☆☆
 大方の市場予想に反して0.25%の利上げを決定した今月2日のオーストラリア準備銀行(中央銀行)金融政策会合の議事要旨が16日に発表される。4月の会合で政策金利を据え置いた後、豪第1四半期消費者物価指数(CPI)のトリム平均前年比の伸びが市場予想を超える鈍化を見せたことなどから、市場は据え置き見通しが大勢となっていた。声明では追加利上げが示唆されるなど、積極的な引き締め姿勢が見られた。議事要旨でこのような姿勢を示すに至った会合での議論内容に注目が集まる。議事要旨を受けて追加利上げ期待がさらに強まるようだと豪ドル高となり、1豪ドル=0.68ドル台への上昇となる可能性がある。
米小売売上高(4月)
5月16日21:30
☆☆☆
 米小売売上高は、前回3月分、前々回2月分と2カ月続けて前月比マイナスとなっている。前回の小売売上高は全13業種中8業種がマイナスと、幅広く低下が見られた。特に厳しい減少となったのがガソリンスタンド売上の前月比-5.5%。小売売上高全体に与えた影響(寄与度)は-0.46ポイントと、同項目だけで0.5%近く押し下げた形となった。総合小売、自動車及び同部品などの下げも目立った。ただ、前回の売り上げ減少は消費の減退とは言い切れないところがある。ガソリンスタンド売上に関しては、2月から3月にかけてのガソリン価格下落の影響が大きい。米国ではNY市内などごく一部を除いて車が生活必需品であり、ガソリンは価格の変化に対する消費動向の変動が起きにくい商品だけに、価格の低下が売上高の低下につながった。自動車及び同部品に関しても、サプライチェーン問題が一服する中で半導体価格の下落と新車生産の増加による中古自動車価格の下落が影響している。両項目は3月から4月にかけて価格の上昇が見られており、今回の小売売上高を押し上げてくると期待される。市場予想は前月比+0.8%、変動の激しい自動車を除いた指数が前月比+0.4%となっている。先週末のミシガン大学消費者調査でインフレ見通しの強まりが示された中、堅調な個人消費動向が示されると、市場の利上げ継続期待につながりドル高となる可能性がある。ドル円は137円台に向けた動きが期待される。
パウエルFRB議長パネルディスカッション参加
5月20日0:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長、ウィリアムズNY連銀総裁、バーナンキ元FRB議長の参加するパネルディスカッションが行われる。2020年に死去したFRBのエコノミスト、トーマス・ラウバッハ氏のこれまでの業績を記念したFRB主催のイベントで、金融政策がテーマとなる。今月のFOMCで利上げ打ち止めが示唆されたことなどを受け、今後の金融政策についてどのような姿勢を示すのかが注目される。利上げ打ち止めの可能性が強く示されると、ドル売りが見込まれる。ドル円は135円割れとなる可能性がある。

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