2023年05月29日号

(2023年05月22日~2023年05月26日)

先週の為替相場

米追加利上げ期待がドル高につながる

 先週(5月22-26日)はドル高が強まる展開となった。ドル円は心理的な節目であった1ドル=140円を超え、2022年11月23日以来のドル高となる140円70銭台を付けた。

 債務上限問題についてのバイデン大統領と共和党との主張の溝が深いとの懸念が広がり、先週初め22日の東京市場午前に137円50銭前後までドル安となった。しかし、アジア株の堅調な動きなどを受けたリスク選好の円売りにドル円は反発。ブラード・セントルイス連銀総裁による「年内あと2回の利上げを余儀なくされる」との発言を受けたドル高もあって138円台までドルが上昇した。

 24日の市場でNZドル安ドル高が強まったことをきっかけにドル全面高となり、ドル円は139円台を付けた。

 同日NY市場午後に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月2、3日開催分)において、追加利上げの支持についてFOMCメンバー内で意見が分かれていることが示され、若干ドル売りとなったが値下がり幅は限定的なものに留まった。

 ウォラーFRB理事による「インフレが収まることが明らかになるまで利上げを止めない」との発言などがドルを支えた。

 25日東京市場朝方に格付け会社フィッチ・レーティングス(用語説明1)が米国の格付け見通しをネガティブウォッチに引き下げたことから、139円40銭台から138円87銭までドルが急落したが、すぐにドル買いが入った。

 25日の米第1四半期GDP改定値の上方改定や、米新規失業保険申請件数の市場予想を下回る結果などがもう一段のドル買いにつながり、心理的な節目である140円台を付けた。

 その後利益確定のドル売りなどに139円70銭台を付ける動きなどが見られたが、ドル高基調が継続。米債務上限問題について、バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長との間での合意が近いとの報道などを受けて、140円台後半までドル高円安となって週の取引を終えた。

 ドル全面高となる中、ユーロドルは1ユーロ=1.0830ドル前後から1.0700ドル台を付けた。24日のドイツIfo景況感指数の弱い結果や、25日のドイツ第1四半期GDP確報値の下方改定などもユーロの重石となった。ただ、ビルロワドガロー・フランス銀行(中央銀行)総裁(用語説明2)や、クノット・オランダ銀行(中央銀行)総裁などが、今後の複数回利上げ見通しについて言及したことなどから、市場の追加利上げ期待が根強く、下がるとユーロ買いが出る形となって、ドル円などに比べて値幅が抑えられた。

 ユーロ円は、ドル主導の動きとなっており、方向性がはっきりしない展開が続いた。1ユーロ=150円前後のユーロ売りに上値を抑えられる展開が続いたが、ドル円の上昇を支えに先週後半に150円台にしっかり乗せると、26日の海外市場で150円92銭を付けている。

 その他通貨で目立ったのはNZドルの売り。ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は24日の金融政策会合で大方の市場予想通り0.25%利上げを決定した。ごく一部で0.5%利上げ期待が見られたことから、発表後はNZドル売りとなった。声明では今回の利上げで金利がピークに達したことが示唆された。また、同中銀のオア総裁は据え置きか0.25%利上げかで難しい選択であったことを示した。市場の0.25%か0.5%かとの見通しに比べて中銀の認識が慎重との見方が広がったことで、NZドル売りが強まった。

 会合結果発表前の1NZドル=0.6245ドル前後から0.6100ドル台に急落。その後もNZドル売りが続き、0.6050ドル割れを付けている。

今週の見通し

 米債務上限問題に関して、市場では政府と議会共和党との間での合意に楽観的な見方が広がっていた。ただ、万が一合意がまとまらなかった場合、デフォルトによって米経済がかなりの混乱に陥る可能性があっただけに、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長との合意はドル円を支える材料となる。

 ただ、これまでのドル円上昇の勢いがかなり強く、相場にやや過熱感が出ていることや、月曜日は米国市場がメモリアルデー、英国市場がスプリングバンクホリデーで休場となっており、取引参加者が少ないことから、比較的落ち着いた動きで始まる可能性が高い。

 今週は米雇用動態調査(JOLTS)、米ISM製造業景気指数、米雇用統計と、市場で注目度の高い経済指標の発表が週半ばから後半にかけて予定されており、週前半は動きにくい地合いとなっている。

 今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ期待が広がる中で、流れはまだ上方向と見ており、週後半には1ドル=142円台前半をターゲットとした動きが強まると予想している。

用語の解説

フィッチ・レーティングス ロンドンとニューヨークに本拠を置く格付け会社。1913年設立。ムーディーズ・インベストメント、スタンダード&プアーズ(S&P)と並ぶ三大格付け会社の一つ。米メディア・コングロマリットであるハースト・コーポレーションの傘下。
ビルロアドガロー総裁 フランソワ・ビルロワドガロー(François Villeroy de Galhau)フランス銀行総裁。国立行政学校(ENA)卒業後、フランス財務省に入省。税務局長などを経て2003年に退省。フランス大手金融機関BNPパリバグループを経て、2015年9月にフランス銀行総裁に就任した。金融政策については比較的中立的な姿勢が見られる。

今週の注目指標

米JOLTS求人件数(4月)
5月31日23:00
☆☆☆
 3月末の米JOLTS(雇用動態調査)求人数は959万人と、2月末の997.4万人、市場予想の977万人を下回る冴えない結果となった。小売業、運輸・倉庫、対事業所サービスなどの求人数減少が目立った。もっとも失業者数自体が減少しており、一人当たり求人件数は2月末の1.71件から3月末は1.70件とそれほど落ちていない。今回は943.9万人とさらに減少することが見込まれている。予想程度であれば影響は限定的と見られるが、予想を超える減少が見られると、米雇用市場への警戒感が広がり、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は1ドル=139円割れを意識する展開が見込まれる。
米ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆☆
 4月の米ISM(供給管理協会)製造業景気指数(PMI)は、3月の46.3、市場予想の46.7を上回る47.1となった。内訳の中でも重要視される新規受注、生産、雇用がいずれも3月から上昇。特に雇用は46.9から50.2と3.3ポイントの上昇で好悪判断の境となる50を上回る好結果となった。
 今回は47.0と小幅鈍化見込み。同系列の指標であるS&Pグローバルによる購買担当者景気指数(PMI)の4月速報値は市場予想及び3月の数字を下回り、好悪判断の境となる50も割り込む48.5となった。ISM製造業景気指数も同様に弱めの結果が出ると、ドル売りが強まる可能性がある。ユーロドルは1ユーロ=1.08ドルに向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(5月)
6月2日21:30
☆☆☆
 前回4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+25.3万人と、市場予想の+18万人前後を大きく上回った。失業率は3月の3.5%から3.6%に悪化するとの見通しに反して3.4%に低下した。平均時給は前月比、前年比ともに市場予想及び前回値を上回る伸びとなり、総じて力強さが見られる結果となった。
 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、3月は雇用減となった物品生産部門が+3.3万人と堅調な伸びを示した。サービス部門も+19.7万人と1月以来の伸びになった。このところ堅調な伸びを示す対事業所サービス、教育・医療サービス、娯楽・接客の3部門が今回も堅調な伸びを示し、全体を支えた。3月は雇用減となっていた小売業は+0.8万人と小幅ながらプラス圏を回復した。対事業所サービスの内、雇用全体の先行指標と言われるテンポラリーヘルプサービス(派遣業)は-2.33万人と3カ月連続での減少となったが、これは正規雇用の勢いが強いことによる影響があると見られ、市場の警戒感にはつながらなかった。新興ICT企業からの大きなレイオフが続いたことで、一時雇用減が見られた情報業は+0.1万人と小幅ながら2カ月連続のプラス圏となった。
 今回の市場予想は非農業部門雇用者数が+19.0万人、失業率が3.5%となっている。共に4月よりやや弱い数字が見込まれている。3月から4月にかけて労働力人口は4.3万人の減少と頭打ち傾向が見られる。4月の失業者数は565.7万人と2000年12月以来22年4カ月ぶりの低水準となっている。雇用者数が新規に伸びる余地が少なくなっていると見られ、予想程度の雇用者数の伸び鈍化であれば、市場の警戒感はそれほど大きくならないと見られる。予想に反して前回並みの伸びが見られるようだと、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ期待が押し上げられ、ドル高となりそう。ドル円は142円に向けた動きが期待される。

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