2023年06月05日号
先週の為替相場
米FOMCの見通し変化が相場へ影響
先週(5月29日-6月2日)は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利据え置き見通しが強まり、それまでのドル高が一服する展開となった。もっとも5日に発表された米雇用統計の非農業部門雇用者数が予想を大きく超える伸びとなったことで、週末にかけてドル高が再び強まっている。
米国の債務上限問題について、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長の協議で、上限引き上げについて27日に原則合意、28日に最終合意となった。同問題が解決に向かい、史上初の米政府によるデフォルトという深刻な事態が回避される公算となったことを受け、29日の市場はドル高でスタートした。29日東京午前に2022年11月23日以来のドル高となる1ドル=140円92銭までドルが上昇。同日は英国がスプリングバンクホリデー、米国がメモリアルデーで休場となっており、取引参加者が少なくなっていたこともあり、いったんはドル高の調整が入ったが、翌30日東京市場午後にわずかながら高値を更新する140円93銭までドルが上昇した。
ドル円が高値圏で推移していた30日東京市場午後に、日本の財務省、金融庁、日本銀行が国際金融市場に関する情報交換会合(3者会合)を開催することが報じられ、日本の通貨当局による円安けん制を警戒してドル安円高となった。
この3者会合は昨年6月と9月に開催され、9月の会合の2週間後に、約24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入が実施されたこともあり、市場はやや神経質に反応した。
31日にはジェファーソンFRB理事やハーカー・フィラデルフィア連銀総裁が6月の利上げ停止を示唆したことで、ドル売りが強まった。1日に発表された米ISM製造業景気指数の弱い結果などもあり、138円40銭台までドル安円高となった。
6月のFOMCについて、30日物金利先物価格動向からの政策金利見通しを示すCMEFedwatchツールでは、30日時点で0.25%利上げ見通しが約66%となっていたが、31日には据え置き見通しが約74%と、据え置き見通しが一気に強まる形でドル安が進んだ。
2日の米雇用統計(5月)は非農業部門雇用者数の伸びが前月比+33.9万人と、市場予想の+19.5万人を大きく上回った。4月の数字が速報時点での+25.3万人から+29.4万人に上方改定された上での大きな伸びとなっており、強い結果となった。一方で失業率は3.7%と4月の3.4%から一気に悪化。市場予想の3.5%を超える悪化となった。
市場は非農業部門雇用者数の大きな伸びを受けてドル高となったものの、失業率の悪化を受けて、政策金利の据え置き見通しは継続となった。ドル円は一時140円台を付けた。
6月FOMCでの政策金利据え置き見通しが強まったことで、ユーロドルは31日の1ユーロ=1.0630ドル台から2日に1.0779ドルを付けている。米雇用統計後はドル高となり1.0700ドル台で週の取引を終えた。
ユーロ円はドル円の上昇もあり29日東京市場で1ユーロ=151円台を付けた後、ドル円でのドル安円高などに押され、31日に148円50銭台を付けている。
今週の見通し
6月の米FOMCでの金利据え置き見通しが広がっているものの、ドル円はしっかりの展開が続いている。FOMCを前に参加メンバーの金融政策に関する発言が制限されるブラックアウト期間に入っており、市場の据え置き見通しを大きく変化させるような材料に乏しい。
もっとも米非農業部門雇用者数の力強い伸びを受けて、米景気への期待感が広がっており、ドル高の流れにつながっている。
来週のFOMCまでは動きにくい面があるが、ドル円は下がるとドル買い円売りが出る展開が見込まれる。
先週ドルの上値を抑えた141円手前の水準を超えて上昇する可能性も十分にあると見ている。
ユーロドルはゆっくりとユーロ安ドル高が進む展開が続いている。1.07ドル台後半が重くなっており、上値の重さを確認しながら1.06ドル台前半を目指す展開が期待される。
用語の解説
メモリアルデー | メモリアルデー(Memorial Day)は、5月の最終月曜日にある米国の祝日。米軍の戦没者を追悼するために設けられた。南北戦争が行われていた1868年に同戦争での戦没者を追悼するための「デコレーションデイ(Decoration Day)」としてスタートし、その後米国の全ての戦争で亡くなった戦没者を追悼する日となった。 季節的に夏の始まりとなることから、ドライブ旅行などが盛んになることでも知られている。 |
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ジェファーソンFRB理事 | フィリップ・N・ジェファーソン(Philip N. Jefferson)は、米連邦準備制度理事会(FRB)理事。ヴァッサー大学で経済学学士号、バージニア大学で経済学の修士号と博士号を取得した。その後FRBのエコノミストを経て、スワースモア大学の経済学教授、デビッドソン大学の経済学教授などを務めた後、2022年5月23日に理事に就任した。利上げに消極的なハト派的な姿勢で知られている。 |
今週の注目指標
米ISM非製造業景気指数(5月) 6月5日23:00 ☆☆☆ | 1日に発表された米ISM製造業景気指数は市場予想の47.0、4月の47.1を下回る46.9となった。内訳の中でも、今後に向けた先行性があるとして重視される新規受注が3.1ポイント低下の42.6となり、これまでの利上げの影響が出ているのではと警戒された。 ISM非製造業景気指数の市場予想は52.5と4月の51.9から上昇見通しとなっている。予想前後もしくはそれ以上の強い結果が出ると、米景気への期待感につながりドル高となりそう。ドル円は141円台に向けた動きが見込まれる。 |
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豪中銀政策金利 6月6日13:30 ☆☆☆ | オーストラリア準備銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が6日に発表される。豪中銀は昨年5月の利上げ開始から今年3月まで10会合連続で利上げを実施した後、4月の会合でいったん金利を据え置いた。前回5月の会合では大方の据え置き予想に反して0.25%の利上げを実施した。 6月の会合では前回の利上げの影響を検証するために金利を据え置くという見方が広がっていた。市場の見通しは金利据え置きで一時ほぼ一致していたが、31日に発表された4月の豪消費者物価指数が予想を超える伸びとなったことで、利上げを見込む動きが出てきている。短期金利市場では約30%が利上げを見込んでいる。 据え置き見通しが大勢となっているが、利上げ見通しがそれなりの割合でいることもあり、据え置き、利上げどちらの結果になっても相場への大きな影響がありそう。大方の予想に反して利上げを実施した場合、直近で上値を抑える1豪ドル=0.68ドル前後の水準を試す可能性がある。 |
カナダ中銀政策金利 6月7日23:00 ☆☆☆ | カナダ銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が7日に発表される。今年3月8日に主要中銀の中で初めて現在の局面での利上げサイクル停止を決めたカナダ銀行。4月に続いて、3会合連続となる据え置きが見込まれている。もっとも5月16日に発表された4月のカナダ消費者物価指数が3月からの伸び鈍化見込みに反して、3月を超える強い伸びとなったことや、5月31日に発表されたカナダ第1四半期GDPが予想を超える伸びを示したことなどから、利上げ再開見込みが広がってきている。短期金利市場では約40%が利上げを見込んでいる。 豪中銀同様に市場の見通しが分かれる状況だけに、利上げ、据え置きどちらになった場合でも相場への大きな影響が見込まれる。6月の米FOMCでの金利据え置き見通しが強まる中で、カナダ中銀が利上げに踏み切った場合、ドル売りカナダ買いが一気に進む可能性がある。1ドル=1.33カナダを割り込む動きが期待される。 |
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