2023年07月03日号

(2023年06月26日~2023年06月30日)

先週の為替相場

一時約7カ月半ぶりの1ドル=145円台

 先週(6月26-30日)のドル円相場は、30日に心理的節目となっていた1ドル=145円台を一時付けた。2022年11月10日以来のドル高円安となる。

 日米の金利差などを背景に今年に入ってドル高円安が進む中、5月下旬に140円を付けたドル円は、それから約1カ月でさらに5円の円安が進んだ。鈴木財務相や松野官房長官らの政府閣僚や財務省の神田財務官などから円安をけん制するいわゆる「口先介入」(用語説明1)が繰り返されているが、円安進行が継続している。

 先々週金曜日23日に143円80銭台まで上昇した後、持ち高調整のドル売りや口先介入の効果で週明け26日に142円94銭を付けたが、その後はドル高円安基調に戻った。先々週のドル高局面で上値を抑えた144円手前のドル売り注文が残っており、上値を抑える場面が見られたが、27日に発表された米耐久財受注、米コンファレンスボード消費者信頼感指数(用語説明2)、米新築住宅販売件数などの指標が軒並み好結果となり、ドル高が強まる形で144円台を付けた。

 26日から3日間にわたって開催されたECBフォーラムにおいて、最終日28日に行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ベイリー・イングランド銀行(中央銀行)総裁、植田日本銀行総裁によるパネルディスカッションでは、市場が期待していた目新しい発言が見られず、新味に欠けるものとなった。一部で植田総裁によるYCC修正などを含めた緩和姿勢の後退が見られるのではとの期待があったため、無難に通過した同イベント後に円売りが強まり、144円台後半を付けた。

 その後はドル高円安が継続。29日に発表された米第1四半期GDP確報値の上方修正や、同時に発表された米新規失業保険申請件数の好結果などを受けたドル買いや、30日の東京朝方に発表された6月の東京都消費者物価指数の伸びが市場予想に届かなかったことを受けて、ドル高円安が強まり、30日の東京午前に節目の145円を付けている。

 大台をいったん付けたことで上値一服感が出たことや、30日に発表された米個人消費支出(PCE)コアデフレータが予想を下回ったことで、ドル円は少しドル売り円買いが入って144円台前半で週の取引を終えた。

 ユーロ円やポンド円などクロス円も基本的には円安が優勢となった。ラガルドECB総裁はECBフォーラムでインフレの高止まりを警戒する姿勢を示した。また7月の追加利上げ方針を示し、その後の利上げ継続姿勢も示した。

 こうしたECBの積極的な引き締め姿勢を受けて、1ユーロ=1.0970ドル台までユーロ高が進む中で、ユーロ円も1ユーロ=157円台後半まで上昇。ユーロドルはその後米指標の好結果などを受けたドル買いに上値から調整が入ったが、ユーロ円はドル円などでの円売りもあり、158円00円を付けるなど堅調地合いを維持した。

 ユーロドルが先週後半にかけて1.0830ドル台を付ける下落を見せる中で、ユーロ円も156円70銭前後までユーロ安円高となったが、その後157円台後半までユーロ買いが入るなど、堅調地合いが継続した。

今週の見通し

 米国の年内2回利上げの見通しが強まっており、ドル高となっている。昨年9月に約24年ぶりの円買い介入が実施された145円90銭前後の水準が近づいてきていることで、上値追いに慎重姿勢が見られるものの、下がるとドル買いが出る流れとなっており、ドル高方向の期待が強い。

 7日の米雇用統計で市場予想を超える強い雇用の伸びが見られた場合、ドル高が加速する可能性もあり、昨年9月の介入水準を超えてのドル高円安が期待される。146円80銭から147円にかけての水準をターゲットとしてみている。

 3日の米ISM製造業景気指数、6日の同非製造業景気指数と米雇用動態調査(JOLTS)求人件数などの指標にも要注意。米景気の底堅さが年内複数回利上げ期待を支える形となっている。それだけに米主要指標で弱い結果が出てくるようだと流れが大きく変わる可能性がある。

 ユーロやポンドも追加利上げ期待が強く、対円ではしっかりの展開が期待される。ただ、米国に比べて景気への警戒感が見られ、複数回利上げのハードルが高いという印象。対ドルでの売りが強まると、ドル円に比べて不安定な動きとなりそう。

用語の解説

口先介入 各国の中央銀行や政府の関係者が、外国為替市場の相場動向に影響を与えることを目的とした発言を行うこと。実際の為替取引を伴う為替介入に対して、取引を伴わず発言のみで相場に対して影響を及ぼそうとして実施される。
コンファレンスボード消費者信頼感指数 米国の経済団体や労働組合などで構成される民間の非営利調査機関であるコンファレンスボード(全米産業審議会)が、消費者に対するアンケートを基に調査した消費者のマインドを指数化したもの。ミシガン大学消費者信頼感指数と同系統の指標であるが、ミシガン大学サーベイリサーチセンターによる同指標のアンケート対象が、速報値で420件、確報値で600件を目標としているのに対し、コンファレンスボード消費者信頼感指数は約5000件からのアンケート調査となっており、信頼感が高いとされている。

今週の注目指標

ISM製造業景気指数(6月)
7月3日23:00
☆☆☆
 米供給管理協会(ISM)による製造業景気指数は、前回まで7カ月連続で拡大・縮小の分岐点となる50を下回った。7カ月連続での50割れは、リーマンショックのあった2008年のいわゆるグレートリセッション以来で最長となる。前回は、内訳の中で全体の先行指標として注目される新規受注が42.6と4月の45.7から大きく鈍化しており、全体を押し下げた。今回の市場予想は47.2と5月の46.9から小幅改善も、8カ月連続での50割れが見込まれている。6月23日に発表されたS&Pグローバル社による6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が5月から小幅改善の見通しに反して悪化したこともあり、ISM製造業も弱めに出る可能性がある。前回並みもしくはそれ以下の弱い結果が出ると、年内複数回利上げの期待が後退し、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は143円台前半に向けた動きが見込まれる。
豪中銀政策金利
7月4日13:30
☆☆☆
 4月の会合で金利を据え置き、2022年5月から続いた利上げサイクルを一旦停止したオーストラリア準備銀行(中央銀行)。5月の会合で利上げを再開すると、6月も連続利上げを実施した。今月の会合でも追加利上げが見込まれていたが、6月28日に発表された5月の豪消費者物価指数が市場予想を下回る低い伸びに留まったこともあり、利上げ期待が後退した。エコノミスト予想では利上げと据え置きで見通しがほぼ拮抗しているが、短期金利市場での利上げの織り込みは20%以下に留まっており、据え置き見通しが大勢となっている。ただ、6月の会合では今回同様に約80%が据え置きを見込んでいる状況で、利上げを実施した。今回も利上げを実施した場合、豪ドル買いが見込まれる。1豪ドル=0.68ドル台を目指す展開が期待される。
米雇用時計(6月)
7月7日21:30
☆☆☆
 米連邦準備制度理事会(FRB)による年内2回の追加利上げ期待が広がっている。政策金利動向に影響を受けやすい米2年債利回りは先週の市場で3月以来の高水準を付けた。もっともシカゴ地区連銀のグールズビー総裁が、30日に報じられた米メディアとのインタビューで、7月のFOMCまでに多くのデータを分析し、さらなる利上げを実施するべきか見極めるという認識を示すなど、追加利上げに関しては今後のデータ次第という面が大きい。それだけに金融政策に大きな影響を与える物価と雇用に関連する指標に対する注目度が高まっている。
 前回の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+33.9万人と、市場予想の+19.0万人を大きく上回る伸びとなった。一方で失業率は予想外に0.2%悪化し、3.7%となっている。
 NFPの内訳をみると、対事業所サービス業が+6.4万人、教育・医療サービス業が+9.7万人、娯楽・接客業が+4.8万人と、直近の雇用増を支える3業種がいずれも堅調な雇用の伸びを示し、全体を支えた。その他部門で目立ったのは、商業・運輸・公益事業部門の中の運輸・倉庫業の+2.4万人。一時人手不足が目立っていた流通部門の雇用回復は米景気に対する好印象を与えている。
 今回6月分の市場予想はNFPが前月比+22.5万人、失業率が3.6%となっている。NFPの伸びは前回から鈍化する見込みとなっているが、5月の+33.9万人が強すぎるだけで、+22.5万人という水準は、コロナ前10年間の月平均+18.3万人を大きく上回っており、低いものではない。失業率の改善見込みと合わせ、予想前後の数字が出てくると、年内2回利上げの期待を支える形でドル買いとなりそう。前回並みの伸びが見込まれている平均時給の伸びが予想を超え、インフレ懸念が強まる中で、雇用者数が予想前後の結果を示すようだと、ドル高が加速する可能性もある。ドル円は昨年9月に約24年ぶりの円買い介入が実施された145円90銭前後の水準を超えて、146円台トライが期待される。

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