2023年07月10日号

(2023年07月03日~2023年07月07日)

先週の為替相場

週末にかけてドル安円高

 先週(7月3-7日)のドル円相場は、1ドル=144円台での推移が続いた後、週末にかけてドル安円高となった。

 6月30日に心理的な節目となる145円台を付けたドル円。利益確定のドル売りなどに上値を抑えられ、145円手前が重くなったものの、144円ちょうど前後ではドル買いが入る展開となり、週後半まで144円台での推移が続いた。

 3日発表の米ISM製造業景気指数(6月)は5月の46.9から47.1に改善するとの見通しに反して、46.0に悪化した。2020年5月以来の低水準となり、8カ月連続で経済活動の拡大縮小の境となる50を下回った。この結果を受けて143.99銭と144円割れまでドル安となったが、すぐに発表前の水準に戻し、その後144円台後半を付けるなど、下がるとドル買いが出る流れが続いた。

 6日の海外市場でドル売りが強まった。145円手前の売りが意識される中で、米ADP雇用者数(6月)、ISM非製造業景気指数(6月)、JOLTS求人件数(5月)などの米重要指標発表を前にしたポジション調整でのドル売りが入った。143円50銭台を付けた後、ADP雇用者数やISM非製造業景気指数が予想よりも強く出たことで144円台後半までドル高となるなど、一方向の動きにはならなかった。

 7日の市場で東京市場からドル売り円買いが入ると,米雇用統計発表前のドル買いポジションの調整売りなども入り、142円台まで一時ドル売りとなった。143円台前半を回復して迎えた米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回り、発表直後に142円50銭台までドル安となった。もっとも非農業部門雇用者数は前月比+20.9万人と、節目とされる20万人を超えており、水準的には弱くはないということもあり、その後いったん発表前の水準までドル買いが入る場面が見られた。もっとも、その後再びドル売りが優勢となった。米雇用統計をこなしたことでこれまでのドル高局面で積み上がったドル買いポジションの解消が進んだ。ドル円は142円07銭を付け、ほぼ安値圏で週の取引を終えた。

 ユーロドルは1ユーロ=1.09ドル前後で方向感のはっきりしない展開が続いた後、5日のユーロ圏非製造業PMI確報値の下方修正、イタリアやスペインの非製造業PMIが弱く出たことを受けてユーロ売りが強まり、6月15日以来約3週間ぶりのユーロ安となる1.0834ドルを付けた。

 その後は少しユーロの買い戻しが入ったが1.0900ドル前後の売りが上値を抑えたまま米雇用統計を迎えた。米雇用統計後のドル売りに1.09台にしっかり乗せると、1.0970台までユーロ買いが入って週の取引を終えた。

 ユーロ円はドル円が144円台でしっかりとした動きを見せる中、1ユーロ=157円台を中心とした推移となった。その後ドル円での円高が強まり157円を割り込むと、ユーロドル同様にユーロ圏非製造業PMI確報値の下方修正などを受けてユーロ売りに押され155円台までユーロ安となった。

 その後、対ドルでのユーロ売りの一服と、米ADP雇用者数やISM非製造業景況感指数の好結果を受けたリスク選好の円売りに押され157円台を一時回復したが、7日のドル円の下げに押され155円39銭までユーロ安円高が進み、155円台で週の取引を終えた。

今週の見通し

 ドル高円安に一服感が出ている。6月30日に心理的節目であった145円台を一時付けたことで、いったん達成感が出ていることや、米ダウ平均が先週半ばから3日続落となるなど、米景気の先行き不透明感が強まっていることなどが、ドル売り円買いにつながっている。

 12日に予定されている米消費者物価指数(CPI/6月)(用語説明1)は、前回に続いて伸びが大きく鈍化する見込みとなっている。今月のFOMCでの利上げ見通しは継続しているが、その後の追加利上げについては懐疑的な見通しが広がっていることも、ドル売りにつながっている。

 今週は米FRB関係者による発言が多く予定されている。年内複数回の利上げに慎重な姿勢を示す発言が出てくるようだと、ドル売りが強まる可能性があるため要注意。元々ハト派として知られていたが、昨年後半からタカ派的な発言が目立つカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁(用語説明2)や、FRB理事の中でタカ派の代表格と言われるウォラー理事の発言などが特に注目される。

 ただ、中期的な流れはまだドル高方向か。確実視されている今月のFOMCでの利上げにより日米の金利差はさらに拡大する。景気の底堅さが見られる中で、金利の高い米国に、資金が集まる流れはまだ続きそう。ドル円は141円台への調整が入る可能性があるものの、12日の米CPIの結果次第では145円を超えていく可能性も十分にある。

用語の解説

米消費者物価指数 米消費者物価指数(CPI : Consumer Price Index)は米労働省労働統計局(BLS)が、都市部の消費者が購入する商品やサービスの価格の変化を調査して指数化したもの。変動が激しい食品とエネルギー価格を除いたコア部分の指数も同時に発表される。
米国のインフレターゲットの対象は個人消費支出(PCE)デフレータであり、日本を含め多くの国でインフレターゲットの対象とされているCPIではない。しかし、発表時期が対象月10-15日と、対象月の翌月末もしくは翌々月初めとなるPCEデフレータに比べて2週間程度早く、変化の傾向が似ているため、市場の注目度は物価関連指標の中で最も高い。
カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 ニール・カシュカリ(Neel Kashkari)ミネアポリス連邦準備銀行総裁。イリノイ大学で機械工学の学士・修士号を取得後、航空宇宙エンジニアとして勤務。その後ペンシルバニア大学でMBAを取得しゴールドマンサックスで勤務。ゴールドマンサックスCEOであったヘンリー・ポールソンが財務長官に就任したことをうけて、同氏の下で財務次官補となった。その後投資会社ピムコのマネージングダイレクターなどを経て、2016年1月より現職。元々はハト派の代表格と言われており、2021年9月の米FOMCでのドットプロットにおいて、18名中ただ一人2023年末までのゼロ金利を予想したことが明らかになっている。その後姿勢をタカ派に転じ、2022年6月のドットプロットでは2022年末及び2023年末時点での政策金利見通しを最も高く予想していたことが明らかになっている。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利
7月12日11:00
☆☆☆
 ニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が12日11時に発表される。政策金利は現行の5.5%で維持される見通し。NZ中銀は12会合連続となる利上げを実施した前回5月24日の会合で政策金利の最終到達水準予想を5.5%で維持し、今後の金利据え置きを示唆した。NZの第1四半期消費者物価指数は前年比6.7%と依然としてかなりの高水準となっているが、5月に発表された中銀調査による2年後のインフレ見通しが2.79%と同国のインフレターゲットである1-3%の枠内に収まるなど、インフレ期待が抑制されてきていることも、据え置き見通しに寄与している。専門家予想は据え置きでほぼ一致しているが、短期金利市場の織り込みをみると、ごく少数の利上げ継続期待が残っており、サプライズに注意。声明で今後の姿勢をどのように示すかも注目されている。今後の利上げ再開の可能性を示すようだと、NZドル高となる可能性がある。この場合1NZドル=89円台に向けた動きが見込まれる。
米消費者物価指数(CPI/6月)
7月12日21:30
☆☆☆
 前回5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%と、市場予想通りながら4月の同+4.9%から伸びが大きく鈍化した。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は同+5.3%と市場予想と一致し、4月の+5.5%から小幅な鈍化となった。前回伸びが大幅に鈍化した主な要因はエネルギー価格で、特にガソリン価格の低下が響いた。ガソリン価格は前年比-19.7%となっており、全体の伸びを抑えた。食品価格は前年比+6.7%と、全体を上回る伸びとなったものの、伸び率自体は9か月連続で鈍化している。
 食品とエネルギーを除いたコア指数で目立ったのが、7カ月連続でマイナス圏となった中古車の前年比-4.2%。その他、アフターコロナでの人の流れの回復もあって昨年夏から秋にかけて前年比+42.9%まで大きく上昇した航空運賃が2カ月連続でのマイナスとなり、下落率も前年比-13.4%と前回の同-0.9%から大きく広がった。
 今回発表される6月のCPIの市場予想は前年比+3.1%と、前回と同じ0.9ポイントの大きな鈍化が見込まれている。前回伸びが鈍化する要因となったガソリン価格が今回も伸びを抑えると見込まれている。米エネルギー情報局(EIA)の調査による全米全種平均でのガソリンの小売価格は5月から6月にかけて+0.45%の小幅上昇となっており、CPIでも前月比は小幅プラスが見込まれている。ただ、前年比の比較対象元である2022年の5月から6月にかけての大幅なガソリン価格上昇が前年比のマイナスにつながると見られる。昨年6月のガソリン価格は前年比+59.9%の大幅上昇となった。前月比でも+10.3%(季節調整済値、季節調整前で+9.9%)の大幅高となっている。それだけ伸びた数字から比較するということで、結果的に大きなマイナスとなる。なお、EIA同様に前月比で0.45%の伸びだったと仮定した場合、前年比で-26.6%の大幅な低下となる。
 食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+5.0%と前回から0.3%ポイントの低下見込み。コアの伸び鈍化が抑えられていることから、市場予想通りの結果が示された場合、7月の利上げ期待は継続すると見られる。ただ、9月以降の追加利上げ期待が抑えられる可能性がある。市場予想に届かない伸びとなった場合は、9月以降の据え置き期待を織り込む形となり、ドル売りが加速する可能性がある。ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。
カナダ中銀政策金利
7月12日23:00
☆☆☆
 カナダ銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が12日23時に発表される。3月と4月の会合で金利を据え置いたカナダ中銀は、前回6月7日の会合で大方の市場予想に反して0.25%の利上げを実施した。背景には消費者物価指数の高止まり懸念がある。5月31日に発表されたカナダ1-3月期GDPが前期比年率+3.1%と市場予想の+1.7%を大きく上回り、2022年第4四半期のマイナス成長から一気の回復を見せたことや、6月30日に発表された4月の月次GDPが前年比+1.7%と堅調な成長を維持したことなどから、利上げ余地があるとの期待が広がっている。ただ、6月27日に発表された5月のカナダ消費者物価指数が前年比+3.4%まで鈍化してきていることから、今回は利上げを見送るとの予想も見られ、見通しが分かれている。短期金利市場での織り込みは利上げ継続が若干多いものの、60%には届いていない。利上げ、据え置きどちらに決まった場合でも相場へ影響が出ると見られる。据え置きとなった場合は、米国との金利差拡大懸念からドル高カナダ安が進み、1ドル=1.34カナダに向けた動きが期待される。

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