2023年07月24日号

(2023年07月17日~2023年07月21日)

先週の為替相場

ドル円は一時10日以来の141円90銭台を付ける

 先週(7月17-21日)のドル円相場は、ドル買い円売りが優勢となった。7月6日の1ドル=144円60銭台から14日に137円20銭台まで進んだドル安に対する調整が入り、先週前半からややドル高円安となった。先週半ばからはYCC修正期待の後退を受けた円売りが入り、積極的にドル高円安を試す展開となった。

 日本市場が海の日の祝日で休場となった17日は、中国第2四半期GDPが前期比+0.8%の低い伸びに留まったことを受けたリスク警戒の円買いに押され、138円00銭台を付けた。その後、先々週までのドル安に対する調整の動きなどから139円台を回復する場面が見られたが、やや上値が重い印象の展開となった。

 18日にはイエレン米財務長官が米雇用需要の鈍化に言及したことで137円70銭を付けたが、植田日銀総裁が20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後に行われた記者会見において、持続的・安定的な2%目標達成には「まだ距離がある」、「イールドカーブコントロール(YCC)のもとで粘り強く金融緩和を続けていく」と発言したことで円売りが強まった。

 海外勢を中心に今月の日銀金融政策決定会合でYCCの修正が行われるとの期待が広がっていたが、こうした期待が後退する形で翌19日以降も円売りが入った。

 19日海外市場でのドル高局面で140円を付けきれなかったことで、いったん139円10銭台までドル売りが入る場面が見られたが、その後もドル高の流れが継続。20日海外市場でのドル買いに140円台に乗せると、ストップロス注文を巻き込んでドル買いが強まった。

 21日には日銀関係者筋情報として「YCCの副作用に緊急的に対応する必要性は乏しい」と、YCC修正に消極的な姿勢を示したことで円売りが加速。一時141円90銭台までドル高円安となり、141円台後半で週の取引を終えた。

 6日からのドル安局面で1ユーロ=1.0830ドル台から1.12ドルを超えてきたユーロドル。18日に1.1270ドル台まで上昇したが、同日クノット・オランダ銀行(中央銀行)総裁(用語説明1)が、7月後の利上げはありうるものの確実ではないと、9月以降の追加利上げに慎重な姿勢を示したことをきっかけにユーロ売りとなった。19日にはナーゲル・ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁も同様の発言を行った。18日発表の6月英物価統計において、消費者物価指数(CPI)前年比(用語説明2)が予想を超える鈍化を見せたことによるポンド安も、ユーロの対ドル、対円での重石となった。

 週後半にかけてドル高円安が強まったことをきっかけにしたドル全面高基調もあり、1.1100ドル台を付けている。

 ユーロ円はドル円の上昇に支えられてしっかり。ドル円が142円に迫る動きを見せた21日に1ユーロ=158円台に乗せている。

 19日発表の6月英消費者物価指数は前年比+7.9%と、5月の同+8.7%から一気に鈍化し2022年3月以来の低い伸びとなった。市場予想の同+8.2%も下回った。この結果を受けて発表前まで有力と見られていた8月会合での0.5%利上げ期待が後退。利上げ幅が0.25%に縮まるとの見方が広がり、ポンド売りとなった。

 ポンドドルは6日の1ポンド=1.2670ドル台から、ドル全面安基調を受けて14日に1.3150ドル近くまで上昇。英物価統計発表までは1.3050-1.3150ドルレンジでの推移が続いたが、ポンド売りが一気に強まり、21日に1.2810ドル台を付けている。

今週の見通し

 今週は25-26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、27日のECB理事会、27-28日の日銀金融政策決定会合と、三大通貨の中銀金融政策会合予定が並んでいる。また、米第2四半期GDP速報値などの重要指標の発表も予定されている。このため、相場はやや不安定な動きとなる可能性がある。

 ドル円に関しては、FOMCでの0.25%利上げが確実視される一方で、日銀のYCC修正期待が後退していることで、金利差拡大によるドル高円安基調が継続すると見られる。FOMCの声明やパウエル議長会見で今回の利上げでの打ち止めの可能性が示唆された場合は、一気のドル売りとなる可能性があるが、これまでの議長の発言などから、可能性は低いと見られている。

 基本的にはこれまで同様引き締め姿勢の継続が示されると見られる。引き締めへの言及が力強く、現状で約30%となっている年内追加利上げ期待が高まるようだと、ドル高が広がる可能性がある。

 27日に発表される米第2四半期GDPは前期比+1.8%が見込まれている。個人消費の伸びが前期比+1.2%と前期の+4.2%から大きく鈍化する見込みとなっている為、前期の+2.0%から伸びが鈍化する見込み。市場予想通りとなった場合、3期連続での伸び率鈍化となる。もっともプラス圏をしっかり維持しての推移だけに、予想前後であれば追加利上げ期待を大きく後退させるようなことにはならないと見られる。ただ、設備投資の指標とされる航空機を除く非国防資本財の6月の受注が前月比マイナスになると見込まれるなど、ここにきて米指標がやや冴えない結果を見せており、予想以上にGDPの伸びが鈍化している可能性がある。この場合ドル売りが強まる可能性があり、ドル円は140円割れをトライする可能性がある。

用語の解説

クノット総裁 クラ-ス・クノット(Klaas Knot)オランダ銀行(中央銀行)総裁。オランダ・フローニンゲン近郊で生まれる。フローニンゲン大学で経済学博士号を取得後、オランダ銀行でエコノミストとして勤務。一時IMF欧州局で勤務した後、オランダ銀行に復帰。オランダ年金保険庁やオランダ財務省での勤務を経て、2011年7月より現職。現在のユーロ加盟各国総裁の中で総裁就任が最も古い。インフレ警戒感が強く、金融引き締めに積極的なタカ派的な姿勢で知られている。
英消費者物価指数(CPI) イギリス国家統計局(ONS)が発表する物価統計。英国内の消費者が購入する製品やサービスの物価動向を表すEU基準の消費者物価指数。CPI同様に消費者が購入する製品やサービスの物価動向を表す指数で英国基準の小売物価指数(Retail Price Index)、生産者の仕入れ及び出荷段階の物価動向を表す生産者物価指数(Producer Price Index)が同時に発表される。
 RPIはCPIにくらべて住宅関連項目の占める割合が大きい。英国は欧州大陸に比べて支出における住宅に係る費用(住宅ローン、賃貸料、税金、保険など)が大きく、消費者負担の実態を表すにはRPIのほうがふさわしい面があり、英中銀がインフレターゲットを導入する際に、当初はRPIX(RPIから住宅ローンを除いたもの)の前年比が対象となっていた。しかし、他のEU諸国との比較が出来ないという問題もあり、2003年から現行のCPI前年比を対象にすると変更された。なお、RPIのほうが一般的に高く出る。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
7月27日03:00
☆☆☆
 米FOMCでは0.25%の利上げがほぼ確実視されている。注目は声明と会合後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長会見となっている。なお、今回はメンバーによる経済見通し(SEP)の発表は無い。
 前回FOMCのSEP内で示された年末時点での政策金利水準見通し(ドットプロット)や議長会見では、年内複数回利上げ見通しが示されていた。しかし、直近の物価鈍化傾向もあり、市場では今回の利上げで打ち止めになるとの見方が広がっている。短期金利市場では約70%が今回の利上げでの打ち止めを織り込んでいる。30日物FF金利先物市場動向からの利上げ割合を示すCME Fed Watchツールでは約75%が打ち止めを見込んでいる。
 12日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%と5月の+4.0%から大きく鈍化。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も前年比+4.8%と5月の+5.3%から大きく鈍化した。ともに市場予想を超える鈍化となった。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであってCPIではないが、変化動向は似ている為、CPIの大きな鈍化が今後のPCEデフレータの大幅鈍化期待に繋がり、市場の利上げ打ち止め期待となっている。
 ただ、直近の物価鈍化はエネルギー価格の低下によるところが大きい。6月のCPIでは、ガソリンが前年比-26.5%、エネルギー全体でも-16.7%と大きな低下を見せた。もっとも、こうした前年比でのエネルギー価格の低下はウクライナ情勢の影響で昨年の価格が高騰していた反動という面が大きい。6月に関しては食品とエネルギーを除いたコアも大きく鈍化したため、今回の利上げでの打ち止め期待につながっている。ただコアに関しては水準的にはまだかなり高く、今回の利上げの後、年内もう一度の利上げを行う可能性が十分に残っている。
 声明や議長会見で物価高傾向への警戒を強く示し、利上げ継続姿勢を示した場合はドル高になる可能性も。ドル円は143円に向けた動きが期待される。
ECB理事会
7月27日15:00
☆☆☆
 ECB理事会も0.25%の利上げが確実視されている。ユーロ圏は現行の主要金利リバースレポ金利が4.00%、市場金利に近い中銀預金ファシリティ金利が3.5%と、米国や英国と比べて低い水準にあることから、今回に加えて、年内少なくともあと一回の利上げが見込まれている。
 ユーロ圏の6月の消費者物価指数は前年比5.5%、コア前年比も同水準となっている。ピークとなった昨年秋の10%超えからは鈍化しているが、インフレターゲットの2%には遠く、また米CPIと比べても高い水準にある。またコアに関しては5月の+5.3%から上昇しており、物価の高止まり傾向が見られるため、今回の利上げ及び年内の追加利上げ見通しに違和感はない。
 ただ、ドイツやオランダといった比較的経済の強い国はともかく、南欧を中心に景気鈍化懸念が広がっており、連続での利上げには慎重姿勢が見られる。短期金利市場では年内あと1回の利上げを88%程度織り込んでいるが、9月理事会ではいったん利上げを休止し、10月もしくは12月の理事会で利上げを行うという見方が広がっている。こうした状況を声明や会見でどのように示してくるかが注目される。この後の引き締め姿勢が市場の見通しよりも積極的であった場合、ユーロ買いにつながる。ユーロ円は159円に向けた動きが期待される。
日銀金融政策決定会合
7月27日、28日
☆☆☆
 一時は海外勢を中心に今回の日銀金融政策決定会合でYCC修正を行うとの見方が広がり、今月ドル円が137円台を付けた材料の一つとなった。しかし植田日銀総裁が18日にG20後の記者会見で粘り強い緩和を続ける姿勢を改めて表明したことで、市場のYCC修正期待が後退した。さらに21日に日銀関係者筋情報として「YCC修正の必要性乏しいと見ている」と報じられ、今回は現状維持になるとの見通しがほとんどを占める状況となっている。
 注目は声明や会見で、今後のYCC修正に向けた道筋が見られるかどうか。当面の緩和維持姿勢が示され、無風で終わった場合は円売りが優勢となる可能性が高い。ドル円は143円台を目指すと見られる。

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