2023年07月31日号

(2023年07月24日~2023年07月28日)

先週の為替相場

一時ドル売り優勢もドル円は不安定な動き

 先週(7月24-28日)のドル円相場は後半にかけてドル売り円買いが優勢となったが、日銀金融政策決定会合後の乱高下を経て、ドル買い円売りが入った。

 先週は25、26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、27日の欧州中央銀行(ECB)理事会、27、28日の日銀金融政策決定会合と、主要三通貨の中銀会合が続いた。

 21日の海外市場で日銀関係者筋情報として「YCC(長短金利操作)の副作用に緊急的に対応する必要性は乏しい」と報じられ、1ドル=142円近くまでドル高となった流れを受け、週明け24日の市場は141円台後半でスタートした。同日のユーロ圏やドイツ、フランス、英国の7月購買担当者景気指数(PMI)が製造業、非製造業ともに市場予想を下回り、1ユーロ=157円60銭台から156円20銭台まで、1ポンド=182円20銭台から180円70銭台まで円高となった。ドル円も円買いに押されて140円台までドル安円高となったが、その後141円台を回復している。

 米FOMCの結果発表前からドル売りが優勢となり、結果発表後はドル売りがさらに強まった。FOMCは市場予想通り0.25%の利上げを決定した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC後の記者会見で、今後の利上げはデータに依存するアプローチを取るとの姿勢を示した。次回9月のFOMCで利上げする可能性を残したものの、市場は今回で利上げが打ち止めとなるとの見方を強めた。

 ドル円は140円を割り込み、翌27日に139円30銭台を付けた。27日発表の米第2四半期GDP速報値が予想を上回る強い結果となったことを受けたドル買いや、ECB理事会でラガルド総裁が今後についてデータ次第との姿勢を強調。追加利上げ姿勢を後退させたことを受けたユーロ売りドル買いに、ドル円は141円台を付けた。

 しかし、同日NY市場午後の時間帯に、日本経済新聞が「日銀がイールドカーブコントロール(YCC)の修正案を議論し、上限0.5%超え容認案」と報じたことで円が買われ、ドル円は138円台へ急落した。

 少し調整が入って139円台前半で日銀会合の結果発表を迎えた。日銀は長期金利の変動幅について、上下0.5%をめどとして柔軟に対応すると発表。従来は指値オペで上限を厳格に抑制していた0.5%を1.0%とし、0.5-1.0%の間を機動的なオペで対応するとした。この運用の柔軟化によって金融緩和の持続性を高めるとしている。

 やや分かりにくい決定ということもあり、ドル円は発表後に乱高下した。発表直前の139円20銭前後から140円70銭台を付けた後、138円60銭台へ急落。すぐに反発して141円00銭台まで上昇したものの、すぐに軟化して138円00銭台を付けた。

 YCC修正を緩和後退と受け止めた円買いと、この柔軟化によりYCCが長期化し、日銀の利上げが遠のいたという見方が交錯した。138円00銭台を付けた後は、海外市場にかけて円売りが強まり、141円10銭台まで上昇。ほぼ高値圏で先週の取引を終えた。

 ユーロドルはECB理事会を受けてユーロ安となった。理事会結果発表直前に1ユーロ=1.1150ドル前後と7月20日以来の高値を付け、ほぼ高値圏で結果発表を迎えた後、1.10割れまで急速にユーロ安が進んだ。その後もユーロ売りが続き1.0940台を付けたが、28日に発表された米PCEデフレータが市場予想を下回る伸びにとどまったことによるドル売りに1.1040ドル前後までユーロ高となった。

 ECB理事会直前に1ユーロ=156円20銭台を付けたユーロ円は、理事会後のユーロ安に152円20銭前後を付けた。少し調整が入って152円台後半で日銀会合を迎えると、ドル円同様に乱高下を見せ、154円90銭台までユーロ高となった後、151円40銭台を付けた。その後は円売りが強まり155円60銭前後まで上昇して週の取引を終えた。

今週の見通し

 日銀金融政策決定会合でのYCC柔軟化をどのようにとらえるかがポイントとなる。YCCの長期維持につながるとの見方が広がっており、円売りがやや入りやすい地合いとなっている。

 1日のISM製造業景気指数(用語説明2)と雇用動態調査(JOLTS)求人件数、3日のISM非製造業景気指数、4日の雇用統計などの米重要指標結果を受けて、米国の追加利上げ観測が再燃し、ドル高円安が急速に進む可能性もある。

 経済指標が市場予想前後にとどまった場合でも、円売りの流れは継続しそうだ。日銀がYCC修正を無難にこなし、緩和維持姿勢を示したことが円売りの材料となっている。

 ドル円は6月30日に付けた年初来高値145円07銭を意識する展開が予想される。

 ただ、先週末はドル円を除くとドル売りが優勢だった。米国の物価上昇ペースの鈍化傾向が進んでおり、ドルの重石となっている。ユーロドルなどでドル売りが進めば、ドル円も上値が抑えられる可能性がある。

 クロス円はドル円以上に円売りの圧力が強まっている。ただ、行き過ぎた動きへの警戒感もあり、上値追いには慎重な姿勢がうかがえる。ユーロ円は節目である158円手前では売りが出る展開とみている。

用語の解説

指値オペ 日本銀行が利回りを指定して(指値)、金融機関から国債を無制限に買い入れるオペレーション(公開市場操作)のこと。2016年9月の日銀金融政策決定会合で金融政策の新しい手段として導入された。今回の会合を受けて日本銀行は明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日に1%を指値として買入れを行う。
ISM製造業景気指数 ISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)が全米の300社を超える製造業の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に作成する景況感を表す指数。景気の先行指標として注目される。新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫の5項目について、「良くなっている(1)、同じ(0.5)、悪くなっている(0)」の三者択一の回答結果を点数化し指数化している。50が好況と不況の分岐点を意味する。項目ごとの数字も公表され、新規受注、生産の項目は、景気とのかかわりから注目度が高い。また総合指数の算出には入らない顧客在庫、支払価格、受注残、新規輸出受注、輸入の5項目についても公表される。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
8月1日13:30
☆☆☆
 オーストラリア準備銀行(中央銀行)金融政策会合は前回7月4日の会合で政策金利を4.1%で据え置いた。昨年5月の利上げ開始以降、据え置きは2回目。市場では据え置きと0.25%の利上げ見通しが拮抗していた。ロウ豪中銀総裁は同会合での声明において、「インフレ率は依然として高すぎる」「幾分のさらなる引き締めが必要になる可能性がある」と示した。もっともさらなる必要については今後のデータ次第としている。市場ではこの声明を受けて利上げ見通しと据え置き見通しが拮抗。7月後半まで若干利上げ見通しが強いという状況が見られたが、26日に発表された豪第2四半期消費者物価指数が予想を超える鈍化となり、28日に発表された豪生産者物価指数の伸び鈍化も大きなものとなったことで、急速に金利据え置き期待が広がっている。専門家予想では依然としてそれなりに利上げ期待が見られるが、短期金利市場は据え置きを強く織り込んでいる。利上げとなった場合はサプライズで豪ドル買いが出る可能性がある。1豪ドル=0.68ドルを試す可能性がある。
英中銀政策金利
8月3日20:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)の結果が3日に発表される。前回6月のMPCでは市場予想を上回る0.5%の大幅利上げとなった。2021年12月以来13会合での利上げとなり、利上げ幅は3会合ぶりの0.5%となった。直近の会合で金利据え置きを主張している2名の委員を除く7名の委員が0.5%の利上げを主張し、7対2で0.5%利上げが決まった。
 今回の会合でも0.5%の大幅利上げ継続を見込む動きが広がっていたが、19日に発表された6月の英消費者物価指数が予想を超える鈍化を見せたことや、24日に発表された7月の英製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回る冴えない結果となったから、専門家予想・短期金利市場の織り込み共に約7割が0.25%利上げを見込む状況となっている。
 大方の予想に反して0.5%利上げを実施した場合はポンド高となりそう。1ポンド=1.30ドル超えが意識される。
米雇用統計(7月)
8月4日21:30
☆☆☆ 
 前回6月分の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の23万人増を下回る20.9万人増にとどまり、5月の数字も速報時点での33.9万人増から30.9万人増に下方修正される結果となった。6月の20.9万人増は2020年12月以来約2年半ぶりの小幅な増加となっている。一方失業率は5月の3.7%から3.6%に低下。平均時給は前月比、前年比ともに市場予想を上回り、+0.4%、+4.4%と堅調な数字を示すなど、ややまちまちな結果となった。
 前回の非農業部門雇用者数の内訳は、政府部門が6万人の大幅増となっている。民間部門は14.9万人増にとどまっており、全体の数字以上に弱さが見られた。14.9万人増は全体と同じく2020年12月以来の低水準となっている。
 民間部門の内訳を見ると、製造業が0.7万人増と5月の0.3万人減からやや回復しプラス圏となった、低調な状況が継続している。サービス部門では比較的景気に敏感な小売業と運輸・倉庫業が5月の堅調な伸びから一転して、ともにマイナス圏に落ち込んだ。これまでの雇用統計で雇用増を支えていた対事業所サービス、教育・医療サービス、娯楽・接客業の3分野がいずれも増加幅を縮小した。特に対事業所サービスは5月の6.1万人増から2.1万人増まで伸びが鈍化している。より細分化した分野を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年3月、4月で600万人を超える雇用を失った飲食業が、2020年12月以来の雇用減となった。同部門は減少が大きかった分、回復も大きく、アフターコロナでの雇用増を支えてきた。2021年は月平均13.7万人、2022年は同5.9万人、2023年に入っても1-3月は平均5.3万人の雇用増となっていた。しかし4月の雇用者が0.4万人増に留まると、5月は2.4万人増と少し持ち直したものの、6月で雇用減に転じている。同部門はほかのほとんどの部門が新型コロナウイルスの感染拡大前2020年2月時点の水準を超える雇用の回復を見せる中で、コロナ前よりも少ない雇用者数に留まっており、もう少しの雇用増が期待されていた。しかし、コロナ過で多くの飲食店が閉店したこと、WFH(在宅勤務)の一般化による米国全体での外食機会の減少などを受けて、同部門で必要とされる雇用者数が減っているとの分析があり、すでに既存店の必要十分な水準まで雇用が回復したことで、増加傾向が収まった可能性がある。
 これらの状況から前回の雇用の弱い伸びは、どこかの部門での一時的な事情で減ったという動きではなく、全般的に米国の雇用市場の鈍化が進んでいる可能性がある。
 こうした状況を受けて今回の雇用統計の市場予想は、非農業部門雇用者数が前月比20万人増と前回を下回る伸びとなる見込み。2020年12月以来の低水準となる。失業率は3.6%で維持される見込み。平均時給は前月比0.3%、前年比4.2%と前回から若干鈍化見込みとなっている。
 20万人増という水準は、コロナ前10年間の月次平均を上回っており、決して弱い水準ではない。ただ、前回に続いての雇用減という状況への警戒感があること、20万人が新型コロナ前から雇用市場の強弱の心理的な節目として意識されており、予想を下回り20万人を割り込むと弱い結果という印象が強まることなどから、市場予想を下回った場合、警戒感が強まる可能性がある。米FRBによる利上げ打ち止め観測にもつながり、ドル売りが広がる可能性がある。YCC修正を受けてドル円は不安定な動きとなっているが、ユーロドルなどでは素直な動きとなり、1ユーロ=1.11ドルを超える可能性がある。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。