2023年09月11日号

(2023年09月04日~2023年09月08日)

先週の為替相場

ドル円は147円87銭までドル高円安

 先週(9月4日-9月8日)のドル円相場は、年初来高値を更新し1ドル=147円87銭を付けるなど、ドル高円安となった。日米の金利差を狙ったドル買い円売りが続いたほか、14日のECB理事会での政策金利据え置きを見込んだユーロ売りドル買いや、中国の景気不透明感からのドル買い人民元売りなどを受けたドル全面高もドル円を支えた。

 4日は米国がレイバーデー(用語説明1)の祝日で、取引参加者が少なくなっていたことから、比較的落ち着いた週の始まりとなった。1日の米雇用統計で失業率の予想外の悪化や非農業部門雇用者数の前回値、前々回値の大幅な下方修正などを嫌気して144円40銭台を付けた後、146円台まで急騰して週の取引を終えた。4日は146円台前半での取引となった。

 5日に発表された中国財新サービス業PMIがかなり弱かったことでドル高人民元安が進むと、ドル円でもドル買いとなった。海外市場に入るとユーロ圏や英国の非製造業PMIの弱さからユーロやポンドが対ドルで売られ、ドル全面高の流れが強まる形でドル円も上昇。米債利回りの上昇もあり、年初来高値を更新して147円80銭前後を付けた。

 タカ派で知られるウォラーFRB理事が、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「差し迫って何かをする必要があると示すものはない」と、金利据え置きを示唆したが、市場はすでに据え置きを織り込んでいることもあり、市場の反応は限定的となった。

 6日朝には神田財務官が「こういった動きが続くならあらゆる選択肢を排除せず対応」と円安のけん制発言を行い、ドル円は147円37銭まで一時下落した。しかし、市場は「こういった動きが続くなら」という表現に、すぐの介入はないと判断したと見られ、すぐにドル高基調に復し、5日の高値を超えて147円82銭を付けた。

 5日の高値をわずかに更新したものの、148円手前の売りに上値を抑えられると、ドル高の調整が強まり147円02銭を付けた。

 6日発表の8月米ISM非製造業景気指数は市場予想を上回る強い結果となった。ここにきて世界的に景況感が悪化傾向にある中で、米サービス業のセンチメントの強さが好印象となりドル高が強まった。ドル円は7日東京市場朝に付けた直近高値を更新する147円87銭を付けた。

 その後は利益確定のドル売りや、中国政府によるiPhone使用制限の報道を受けた米中関係悪化懸念などからドル売り円買いとなり146円59銭を付けた。147円を割り込んだところにドル売りのストップロス注文が並んでいたことで動きが大きくなったと見られた。

 すぐに147円台を回復すると、週末にかけてドル高が強まり8日海外市場で7日の高値に並ぶ147円87銭を付け、ほぼ高値圏で週の取引を終えた。

 ユーロドルは4日に1ユーロ=1.0800ドル台を付けた後、ユーロ圏サービス業PMIの弱さに1.0700ドル台へ下落した。

 6日にクノット・オランダ銀行(中央銀行)総裁が市場は9月の利上げ確率を過小評価している可能性と発言。同日カジミール・スロバキア国立銀行(中央銀行)総裁(用語説明2)がECBはあと一回の利上げが必要、14日が望ましいと発言。相次ぐタカ派発言に1.0750ドル前後を付けたが、上値トライはそこまで。ドル高基調が続く中で7日に1.0680ドル台を付けている。

今週の見通し

 先週のドル円がほぼ高値引けとなり、ドル高円安の流れが強く意識されていたところに、植田日銀総裁が週末の新聞インタビューでマイナス金利解除の可能性に言及したことで、流れが一気に変化している。先週のドル高局面でドル円は147円80銭台で4度上値を抑えられており、148円手前のドル売り注文が意識されていることも上値を抑える材料となっている。

 市場は13日発表の8月米消費者物価指数(CPI)をかなり警戒している。総合の数字はガソリン価格の上昇などもあって強めの伸びが見込まれているが、食品とエネルギーを除くコア部分での物価鈍化傾向が継続しているようだとドル売りが強まる可能性がある。

 市場は今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置きをほぼ完全に織り込んでいるが、11月もしくは12月に追加利上げを行うかどうかについては意見が拮抗している。米CPI次第でどちらかの見通しがもう一方を圧倒する水準まで強まると、動きが大きくなる可能性がある。

 米CPIまでは植田発言をきっかけとした円買いがどこまで続くのかがポイントとなる、これまでのドル高円安の勢いが強かった分、145円00銭近くまでの調整も十分にあり得そう。

用語の解説

レイバーデー レイバーデー(LaborDay)は労働者の日を米国連邦政府及び米国各州の祝日。9月の第1月曜日と定められている。1882年9月5日に米ニューヨーク市で初めて祝われ、1894年に連邦政府が祝日として制定した。
カジミール総裁 ピーター・カジミール(Peter Kažimir)はスロバキア国立銀行(ナショナル・バンク・オブ・スロバキア/中央銀行)総裁。スロバキアの首都ブラチスラバの経済大学を卒業後、税務アドバイザーとして民間企業に勤め、複数社の役員などを経て、2012年4月からフィコ同国首相の下で副首相兼財務大臣に就任。2016年3月からのペレグリーニ政権でも財務大臣として留任した。2019年6月よりスロバキア中銀総裁に就任。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI/8月)
9月13日21:30
☆☆☆
 前回7月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.2%と6月の+3.0%を上回ったものの、市場予想の+3.3%を下回る伸びに留まった。変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比+4.7%と6月の+4.8%から小幅な鈍化。市場予想とは一致した。内訳をみると、エネルギー価格が-12.5%と5カ月連続のマイナス、中でもガソリン価格が-19.9%と6カ月連続でのマイナスとなった。ただ、それぞれ6月の-16.7%、-26.5%に比べるとマイナス幅が縮小しており、全体が6月から若干伸びた要因となっている。食品とエネルギーを除く財は+0.8%の小幅なマイナスとなった。財の物価指数の伸びが1%を割り込むのは2020年8月以来、約3年ぶりとなる。価格低下の目立つ中古車が9カ月連続のマイナスとなる-5.6%となり全体を押し下げた形。一方、サービス部門は+6.1%と6月の+6.2%から小幅鈍化に留まった。全体を100としたとき34.7%、サービス部門だけに限ると59.5%とかなりのウェイトを占める住居費が前年比+7.7%と6月の+7.8%からは小幅な鈍化も高い伸びを維持していることがサービス部門全体の伸びを支えた。
 今回の市場予想は前年比+3.6%、コアが+4.3%となっている。総合の伸びがしっかり強まる一方、コアは伸びが比較的大きな鈍化見込みとなっている。
 総合の伸びはガソリン価格の影響が大きいと見られている。米国のガソリン小売価格は急速に進む原油高の影響を受けて、EIA(米エネルギー庁エネルギー情報局)調査による全米全種平均で7月の1ガロン=3.597ドルから8月は3.840ドルと、前月比で6.76%の上昇となった。さらに、昨年の7月から8月の状況を確認すると昨年7月の1ガロン=4.559ドルから8月は3.975ドルへ12.8%の大きな低下となっている。EIAベースで前年比を比べると-21.1%から-3.4%への大きな減少幅縮小となる。前年比での比較対象となる前年同月の価格変化で、実際の価格変化以上の変化となるベース効果が生じている。米CPIの計算は都市部のみのデータとなるため、そのままの数字ではないが、CPIベースでも相当に大きな減少幅縮小になっていると見込まれている。
 一方、コア部分に関しては、住居費、衣料品、中古車、医療サービス、輸送サービスなどで昨年7月から8月にかけて価格上昇や、価格低下傾向の鈍化などが見られたことで、ベース効果による伸び鈍化が見込まれている。特に全体に占める割合の大きい住居費に関して、ここにきて月次の伸び鈍化が見られる一方で、昨年度は伸びている最中ということで両面からの伸び鈍化が見込まれている。
 こうした状況から総合が伸び、コアの伸びが鈍化という現状の市場予想は妥当と見られる。予想前後の数字が出た場合、一般的にはコアの伸び鈍化を重視し、年内利上げ期待の後退が期待されるところとなる。ただ。ここにきて原油価格の上昇が目立っており、米国の製造コストや流通コストの上昇からの物価の高止まり懸念が出ている。総合が予想を超えての上昇を見せた場合は、追加利上げ期待を支え、ドル高となる可能性がある。ドル円は1ドル=148円台に向けた動きが見込まれる。
ECB理事会
9月14日21:15
☆☆☆
 欧州中央銀行(ECB)は前回7月の理事会で9会合連続の利上げを決定した。その結果、主要リファイナンス・オペ金利は4.25%、中銀預金金利は3.75%となった。ラガルド総裁は前回理事会後の会見で今後についてはデータ次第という姿勢を強調した。
 今回の理事会については利上げと据え置きで市場の見通しが分かれている。短期金利市場の水準を確認すると、35%程度が利上げ、65%程度が据え置きとなっている。ECBメンバーの姿勢も分かれており、タカ派で知られるクノット・オランダ中銀総裁は「市場は9月の利上げ確率を過小評価」と発言。カジミール・スロバキア中銀総裁は9月の利上げは(物価を目標に戻すため)「より簡単で効率的な解決策」と発言しており、9月の利上げにかなり前向きな姿勢を示した。一方、ビスコ・イタリア中銀総裁は「過度な(利上げ)実施のリスクは明確」「ECBは利上げ停止必要な水準にほぼ到達」と、据え置きを支持する姿勢を示している。
 市場の見方が分かれている為、利上げ、据え置きどちらになった場合でもユーロ相場への影響が見込まれる。据え置きが決定され、声明などで今後にも慎重姿勢が印象付けられると、ユーロドルは1ユーロ=1.05ドル台に向けた動きが見込まれる。
米小売売上高(8月)
9月14日21:30
☆☆☆
 前回7月の米小売売上高は前月比+0.7%と市場予想の+0.4%を超える力強い伸びを示した。6月の数字も速報時の+0.2%から+0.3%に上方修正された。無店舗小売りが前月比+1.9%と大きく伸びた。スポーツ用品・趣味・娯楽部門が+1.5%、飲食店が+1.4%、衣料が+1.0%と伸びている。無店舗小売りはアマゾン・ドット・コムが7月に2日間にわたって行ったプライムデーのイベントが押し上げた。同社によると同イベント初日の売り上げは同社として一日当たり売上の過去最高を更新した。不要不急の品であるスポーツ用品・趣味・娯楽部門の売り上げ増と合わせ、米国の消費者の旺盛な購買意欲が印象付けられる結果となった。
 今回は前月比+0.1%と伸びが鈍化する見込み。変動の激しい自動車を除いた数字でも前月比+0.4%と7月の+1.0%を下回る見込み。先月28日に発表された米雇用動態調査(JOLTS)、今月1日に発表された米雇用統計と、個人消費に関連する雇用の厳しい状況が示された後だけに、小売売上高の弱い結果はドル売りにつながる可能性がある。市場予想をさらに下回り前月比マイナスになると、ドル円は144円台へ向けた動きが警戒される。

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