2023年09月19日号

(2023年09月11日~2023年09月15日)

先週の為替相場

ドル円は円高が一時強まるも、その後ドル高円安

 先週(9月11日-9月15日)のドル円相場は、9日に読売新聞が報じた日本銀行の植田総裁インタビュー(6日日銀本店にて実施)の中で、マイナス金利の解除について「物価上昇に確信持てれば選択肢」と発言したことを受けて、週明け11日の市場で円高が強まって始まった。また、著名なFedウォッチャー(用語説明1)として知られる米WSJ紙記者が、自身のX(旧ツイッター)で今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置きと追加利上げが必要かどうか厳しい議論と発言したこともドル売りとなった。8日金曜日海外市場をほぼ高値圏となる1ドル=147円80銭台で引けたドル円は、11日朝も147円80銭前後でスタート。その後145円91銭までドル安円高となった。

 11日海外市場で安値を付けた後147円近くまでドル買いが入るなど、日米金利差を意識したドル買いは継続。147円台を回復できなかったことで、146円20銭前後までドル売りが出る場面が見られたが、その後はドル高基調に復した。

 注目された米消費者物価指数(CPI)はほぼ想定通り。食品とエネルギーを除くコア指数の前月比が予想を上回ったことで、若干ドル買いが入り、147円75銭を付けたが、すぐに発表前の水準に戻した。その後は利益確定の売りや、米債利回りの低下を受けたドル売りに147円00銭台を付けた。

 147円台前半での推移が続いた後、15日に「日銀内で植田総裁発言と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている」との関係者筋情報が報じられ円売りとなった。総裁発言は従来姿勢から踏み込んではいないという日銀内の姿勢を示したもので、ドル円は年初来高値を更新して147円95銭まで上昇。高値圏で先週の取引を終えた。

 米紙記者発言などを受けた先週初めのドル売りに、ユーロドルは1ユーロ=1.0760ドル台まで上昇。その後はドル高基調もあり1.0700ドル台まで一時ユーロ安となったが、ECB理事会で四半期に一度示されるスタッフ予想において、2024年のCPI見通しが前回の3.0%を超える水準になるとの報道があり、1.0765ドルまで急騰。その後は1.0750ドル前後での推移となって、ECB理事会の結果発表を迎えた。

 ECB理事会は据え置きか利上げかで事前の見通しが分かれていたが、スタッフ予想での物価見通し引き上げ報道を受けて、利上げ見通しが大勢となって発表を迎え、実際に0.25%の利上げとなった。事前予想通りということで利上げに対する反応は鈍く、スタッフ予想において、物価見通しが事前報道通り3%を超えたことに加え、経済成長予想が2023年、2024年、2025年いずれも下方修正されたことを警戒して、ユーロ売りとなった。1.0630ドル台までの下げとなった後は、ユーロの買い戻しが入ったが、1.06台後半までの上昇にとどまっている。

今週の見通し

 今週は米FOMCを始め、日本、英国、スイス、トルコ、中国の政策金利発表が予定されている。

 米FOMCは政策金利の据え置き見通しでほぼ一致している。もし、利上げを継続した場合は相当なサプライズとなるが、これまでの米FRB関係者の発言から可能性が相当に低いと見られる。声明なども前回踏襲と見られており、波乱要素が少ない中、四半期に一度示されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)(用語説明2)に注目が集まっている。前回6月公表のSEPでは、2023年末時点での政策金利見通しは5.625%が中央値となっていた。市場は7月のFOMCでの利上げ打ち止めを見込んでおり、現行の5.25-5.50%をターミナルレートと見ている。今回のSEPでも依然として5.625%が中央値となるようだと、11月、12月のFOMCでの追加利上げ期待が強まり、ドル高となる可能性がある。

 FOMCを無難にこなした場合、ドル高円安の流れがゆっくりと続くと見込まれる。日米の金利差を意識した取引がドル円を支える。介入警戒感などもあり、148円から150円にかけてのドル買いには慎重姿勢が見られるが、下がるとドル買いが出る流れが続いており、流れは上方向。

 ユーロドルは先週のECB理事会での利上げで、利上げ打ち止めの期待が強まっており、上値の重い展開。ただ、物価の高止まり傾向が見られるようだと、再び追加利上げ期待が強まる可能性があるだけに、下値売りにも慎重。対円でのユーロ高期待もあり、流れは下方向と見ているが、ゆっくりとした動きになりそう。

用語の解説

Fedウォッチャー 米連邦準備制度理事会(FRB/Fed)を担当するジャーナリスト。米国の主要経済紙であるウォールストリートジャーナル(WSJ)でFRBを担当する記者がFedウォッチャーとして名前が挙がることが多く、アラン・マレー、ジョン・ヒルゼンラースなどが有名。現在のWSJ紙のFRB担当はニック・ティミラオス。米FOMCの前々週土曜日からFRB関係者による金融政策に関する発言が制限されており、情報が不足していることもあり、同氏がFOMCの情勢を自身のX(旧ツイッター)などで公表した情報で相場が動くことがある。
SEP SEP(Summary of Economic Projections)は、FOMCメンバーによる経済、物価情勢の見通しを示したもの。年8回開催される米FOMCの内、3月、6月、9月、12月のFOMCの結果と同時に公表される。数年後までの年末(今回でいうと2023年末、2024年末、2025年末)と長期の経済成長、失業率、物価(PCEデフレータ及びコアデフレータ)、政策金利水準の見通しが示される。中でも各メンバーの政策金利の予想水準をドットで示したドットプロットが公表されるため、今後の政策金利水準を予想する上での重要な材料となっている。予想するメンバーは議長副議長を含む常任理事と、投票権のあるなしに関わらず地区連銀総裁全員。地区連銀総裁が不在の場合暫定総裁が予想する。今回でいうと7月にセントルイス連銀のブラード総裁が退任し、新総裁が決まっていないため、パエーゼ第一副総裁が予想に加わる。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月21日03:00
☆☆☆
 政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は専門家予想、短期金利市場の織り込みともに現状維持でほぼ一致しており、波乱要素は少ない。注目は今後に向けての姿勢。10月31日/11月1日もしくは12月12/13日に追加利上げを行うかどうかは意見が分かれており、据え置き見通しが6割強、どちらかで利上げをするという見通しが4割弱となっている。声明やパウエル議長会見でこの見通しが大きく変化するようだと、相場への影響が大きくなるが、前回同様に今後の政策判断についてはデータ次第という姿勢を維持すると見られる。
 注目は四半期に一度示されるFOMCメンバーによる経済見通し(Summary of Economic Projections)。特に年末時点での各メンバーの政策金利見通しをドットで示したドットプロットが市場の注目を集めている。前回6月のドットプロットでの2023年末時点での政策金利水準の中央値は5.50-5.75%であった。今回のFOMCが市場見通し通り据え置きとなった場合、あと一回の利上げとなる。2024年末時点での見通しは4.50-4.75%が中央値となっており、年4回の利下げが見込まれている。
 2023年末に関しては、市場の6割以上が見込んでいる現状の5.25-5.50%が見通しの中央値となるかどうかが注目される。6月は5.50-5.75%が9名、より高い水準が3名、より低い水準が6名となっていた。その後のメンバー変更や追加がある為、そのままではないが、今回参加する19名の内10名以上が5.25-5.50%を示しているようだと、追加利上げ期待が後退する。
 2024年末に関して中央値は4.50-4.75%だったが、同水準を見込んだメンバーは2名だけで、より高い水準が8名、より低い水準が8名となっていた。現行の5.25-5.50%より低い水準という意味では15名が見込んでいた。パウエル議長は当面金利を高く維持する姿勢を示しているが、メンバーからの複数回利下げ見通しが強まっているようだと、市場の早期利下げ期待が高まり、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は結果次第で上下ともに動くリスク。150円を付ける可能性も、145円を付ける可能性もありそう。
英中銀金融政策会合(MPC)
9月21日20:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)は、英国の物価高止まり傾向もあり、利上げが見込まれている。14日のECB理事会で0.25%の利上げが実施されたことも、市場の利上げ期待につながる。短期金利市場では7割が利上げを織り込んでいる。ただ、3割と決して少なくない割合で据え置き期待がある。9月13日に発表された7月の英月次GDPが前月比-0.5%と予想を超える鈍化となるなど、ここにきて英景気の先行き不透明感が強まっていることが背景にある。
 ただ、7月の英消費者物価指数(CPI)前年比は+6.8%とインフレターゲットの2%をはるかに超えた水準。英MPC前日に発表される8月のCPIは+7.0%とエネルギー価格の上昇もあってさらに上昇する見込みとなっており、追加利上げに踏み切る可能性が高いと見られる。基本的に利上げはポンド買い材料となる。声明で今後について追加利上げの可能性を示唆した場合や、参加メンバーの中でより積極的な利上げを主張する動きが出た場合はより強いポンド買いとなりそう。
 もっとも、前日のCPIの結果次第では予想が直前でぶれる可能性がある。特に高めのCPI結果が出た場合は、追加利上げを前日時点で完全に織り込み、利上げ発表で逆に利益確定の売りが強まる可能性があることに注意したい。ポンドドルは1ポンド=1.26ドルへ向けた動きを見込んでいるが、上下ともに大きく動くリスクがある。
日銀金融政策決定会合
9月22日
☆☆☆
 政策金利は現状維持の見通し。今回は日銀展望レポートの発表もないため、市場の注目は15時半からの植田日銀総裁による会見に集まっている。9日に読売新聞が報じた植田日銀総裁によるインタビュー記事(インタビューは6日実施)で、マイナス金利解除の可能性に言及したことで、市場はマイナス金利解除の予想時期を前倒ししてきている。直近で来年4月の会合での解除を見込む動きが約4割、来年6月までで約5割が解除を見込んでいる。会見で今後のマイナス金利解除に向けた姿勢が印象付けられると、こうした市場の期待がもう一段強まり、円買いとなる可能性がある。ドル円は145円台に向けた動きが期待される。

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