2023年09月25日号

(2023年09月18日~2023年09月22日)

先週の為替相場

ドル円は週後半に上下動経てドル高円安

 先週(9月18日-9月22日)のドル円相場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合をにらんだ週前半の様子見ムードで始まり、大きな上下動を交えながらドル高円安となった。FOMCと日銀会合以外にも、英国、スイス、南アフリカ、スウェーデン、ノルウェーなど多くの国の中銀金融政策会合が週の半ばから後半にかけて並んでおり、週前半は動きにくい状況となっていた。

 日本時間21日午前3時の米FOMC結果発表を前に、先週前半は1ドル=147円台後半を中心とした推移が続いた。20日午後3時に発表された8月の英消費者物価指数(CPI)前年比が+6.7%と、市場予想の+7.0%を下回り、7月の+6.8%から鈍化したことを受けてポンド売りドル買いが強まると、ドル全面高の動きとなり、ドル円も148円17銭まで一時上昇した。147円台にすぐに戻すと、FOMC結果発表直前のポジション調整もあって147円50銭を割り込む動きを見せた。

 米FOMCは市場予想通り2会合振りの政策金利据え置きを決定した。注目されたFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、メンバーによる年末時点での政策金利見通しをドットで示したドットプロットで、2023年末の政策金利見通しの大勢が6月発表と同じ5.50-5.75%となった。市場では現行の5.25-5.50%が利上げのピークになるという見通しが大勢となっていたため、ドットプロットでも5.25-5.05%が大勢となるか、少なくとも拮抗すると見ていたが、結果は19名中12名が5.50-5.75%台を見込んでおり、FOMC内での追加利上げ見通しが強いことを印象付けた。

 また、2024年末時点での政策金利見通しは、6月の中央値4.50-4.75%に対して、5.00-5.25%となった。市場は早ければ来年上半期での利下げ開始を期待していたが、開始時期見通しを後ろずれさせる結果となった。

 会合後のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長会見では、今後について慎重に進めることが出来るなどの発言があったものの、適切ならばさらに金利を引き合上げる用意があると、追加利上げの可能性に言及した。これらの結果を受けてドル高が強まり、ドル円は148円40銭台を付けた。

 高値を付けた後は一転してドル安円高となった。利益確定のドル売りや、日銀金融政策決定会合を前にしたポジション調整などの動きが広がり、FOMC後の上昇分を解消して、一時147円30銭台を付けた。

 日銀金融政策決定会合では従来からの政策の継続が決まった。大方の予想通りであったが、植田日銀総裁が9日報道の新聞インタビューでマイナス金利解除の可能性に言及していたこともあり、海外勢の一部で今回の会合での政策修正を期待する動きがあり、現状維持の決定に円売りとなった。

 植田日銀総裁会見でも従来の緩和姿勢維持が見られ、ドル円は148円40銭台まで上昇した後。148円30銭台のほぼ高値圏で週の取引を終えている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.0650ドル-1.0720ドルでのレンジ取引から、FOMC前のドル売りに1.0737ドルまで上昇。FOMC後のドル高に1.0610ドル台を付けた。その後は1.0670ドル台が上値抵抗水準となっており1.06ドル台での推移が続いている。

 ユーロ円はFOMC前のユーロ買いに1ユーロ=158円40銭台を付けた。FOMC後は対ドルでのユーロ売りに押され157円00銭台まで下落。その後ドル円での円売りなどに158円20銭台まで上昇するなど、一方向の動きにならず。

 21日のイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)(用語説明1)は政策金利を従来の5.25で据え置いた。市場は据え置きと0.25%利上げで見通しが分かれていた。もともと0.25%利上げ見通しがかなり優勢であったが、20日発表の8月英CPIが弱い伸びとなったことで、直前になって据え置き期待が拡大。発表前からポンド売りが優勢となり、発表後も打ち団のポンド売りとなった。今回の決定は据え置き5名対0.25%利上げ4名と、僅差での据え置き決定となった。ただ、据え置きを主張した5名の中にベイリー総裁、ブロードベント副総裁、ラムズデン副総裁、ピル・チーフエコノミストと重要メンバーが含まれていたこともあり、市場は今後も慎重姿勢が続くとの期待を強めた。

今週の見通し

 先週の米FOMCでの引き締め姿勢維持と、日銀会合での緩和姿勢維持を受けて、日米の金利差を狙った取引が当面続くとの見通しが広がっており、ドル高円安が続くと期待される。心理的な大きな節目となる150円にかけてはドル売り注文が並んでいると見られること、昨年秋に3度にわたって実施されたドル売り円買い介入の再開警戒が見られることなどから、一気のドル高進行ではなく、ゆっくりとした動きが見込まれる。

 米債利回りの上昇などもあり、ドルは全面高基調。ドル円での介入警戒感や昨年10月21日に付けた約32年ぶりのドル高円安水準151円95銭に近づいたことによる上値警戒感だけではドル高の勢いを止めることは難しいと見ている。

 昨年10月以来となるドル売り円買い介入が実施された場合は、それなりの影響があると見込まれる。ただ、イエレン米財務長官(用語説明2)が、為替水準に影響を及ぼすのではなく、過度な変動を均す必要性と発言しているように、あくまで行き過ぎた激しい動きに対する対応が介入の原則となる以上、昨年の高値に近づいたという水準感だけでは介入実施に対する米国などの理解は得難いと考えられる。

 当局者からの円安警戒発言などの口先介入などを交えながらも、ドル高円安基調が続き150円を目指す流れを予想している。

用語の解説

イングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC) 英国の金融政策を決定する会合。米、ユーロ圏、日本などと同様に年8回実施される。MPCのメンバーは総裁、副総裁を含む内部委員5名と、外部委員4名の9名からなる。米FOMC、ECB理事会、日銀会合で議長/総裁提案が否決されたことはこれまで一度もないが、MPCでは総裁が少数派に回るケースがこれまで複数回見られている。なお、年8回の会合の内、四半期金融報告が同時に発表される2月、5月、8月、11月の会合では、会合後の総裁会見が実施されるが、それ以外の回は会見が実施されないことがほとんどとなっている。
イエレン米財務長官 ジャネット・イエレン米財務長官。イエール大学で経済学博士号を取得。ハーバード大学で助教授を務めた後、FRBのエコノミスト、LSE講師などを経てカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)に移り、1985年から同大学教授。FRBの理事や大統領経済諮問委員会委員長などを経て2004年から2010年10月までサンフランシスコ地区連銀総裁、その後FRB副議長を経て2014年2月から2018年2月までFRB議長を務めた。2020年11月の大統領選に勝利したバイデン氏から次期財務長官に指名され、2021年1月から現職。夫はノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフUCバークレー名誉教授。

今週の注目指標

パウエル議長講演
9月29日05:00
☆☆
 パウエル議長がタウンホールミーティングを開催。FRBのWEBページやYouTubeチャンネルで中継が予定されている。先週の米FOMCを受けて年内追加利上げの可能性が意識されており、議長が今後についてどのような発言をしてくるのかが注目される。追加利上げ期待が高まるような発言が見られるとドル高材料となる。ドル円は149円台をトライする展開が見込まれる。
ユーロ圏消費者物価指数(速報値)(9月)
9月29日18:00
☆☆
 前回8月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は7月の前年比+5.3%から+5.1 %への鈍化が見込まれていたが、+5.3%と7月と同水準の伸びに留まった。この結果が14 日のECB理事会での0.25%利上げにつながったと見られる。ユーロ圏CPIはその後+5.2%へ下方修正された。今回は+4.5%への大きな鈍化が見込まれている。コアCPI前年比は8月の+5.3%から4.8%への鈍化が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の鈍化が見られるようだと、ECBは今月14日の利上げで政策金利のピークを迎えたとの思惑が広がり、ユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.0550前後に向けた動きが期待される。
米PCEデフレータ(8月)
9月22日
☆☆☆
 先週の米FOMCで年内追加利上げ実施の可能性が示され、市場の見通しが利上げと据え置きで拮抗している。利上げ実施のカギを握る物価関連統計への注目度は高い。8月の物価に関しては消費者物価指数(CPI)が9月13日に発表され、前年比3.7%と7月の3.2%から伸びが加速した。市場予想の3.6%も超える伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比4.3%と総合とは逆に7月の4.7%から伸びが鈍化した。市場予想とは一致している。
 ただ、米国のインフレターゲットの対象はCPIではなく、米個人消費支出(PCE)デフレータ。市場予想は前年比+3.5%と7月の+3.3%から伸びが加速する見込みだがCPIに比べると小さい変化となっている。コア指数は前年比3.9%と7月の4.2%から伸びが鈍化する見込み
 CPI同様にコア指数の伸び鈍化が見られると、年内追加利上げ期待が後退し、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は146円台に向けた動きが期待される。

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