2023年10月02日号

(2023年09月25日~2023年09月29日)

先週の為替相場

ドル円はドル高調整の場面も続かず

 先週(9月25日-9月29日)のドル円相場は、米国債利回りの上昇などに支えられて、ドル高円安となった。介入警戒感などからドル売り円買いが入る場面も見られたが、ドル高の流れが止まらず149円台で週の取引を終えている。

 米債利回りの上昇や日銀の緩和姿勢継続を受けたドル買い円売りに、先週は序盤からドル高円安が優勢となり、26日の市場で1ドル=149円19銭を付けた。鈴木財務相の円安けん制発言などに148円70銭台まで調整が入る場面が見られたものの、流れは変わらず27日海外市場で149円71銭まで上値を伸ばした。

 27日の市場ではユーロドルが心理的な節目である1ユーロ=1.05ドルを割り込むなど、ドルは全面高となったが、さすがにドル高の過熱感も出ていた。

 利益確定でのドル売りや米債利回り上昇一服を受けたドル売りに、ドル円は29日ロンドン市場午前に148円50銭台まで大きく下げる場面が見られた。欧州株の上昇などを受けたユーロドルでのユーロ買いドル売りなども、ドル全面高の調整につながった。

 しかし同日米国市場でドル円は149円50銭台まで上昇。月末、7-9月期末に絡んだドル買い注文などがドルを支えた。いったん大きな調整を経たことで、ドル買いポジションの過熱感が後退したことも、ドル高基調回復に寄与した。

 27日のドル高局面で1.0480ドル台を付けたユーロドルは、その後1.0610ドル台までユーロ高ドル安となった。1.05割れでのユーロ売りに慎重な動きが見られ、大きな調整を誘った。29日に発表された9月のユーロ圏消費者物価指数(用語説明1)が前年比4.3%と、市場予想の4.5%、8月の5.2%を大きく下回る伸びに留まったことで、追加利上げに慎重な姿勢が見られたことも、一時のユーロ売りにつながった。しかしECBの追加利上げ期待も根強く、下がると買いが出る流れとなっている。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ売りもあり28日に1ユーロ=156円70銭台を付けた。その後はドル円の上昇もあって反発。158円20銭台を付けている。

今週の見通し

 ドル円は心理的な大きな節目となる1ドル=150円、さらには昨年秋に付けた約32年ぶりのドル高円安圏となる151円95銭を意識する展開となっている。

 日本の当局によるドル売り円買い介入への警戒感が広がっているが、じっくりとしたドル高円安の進行となっているため、短期的には過度な変動という介入実施要件にマッチしないこと、米長期債利回りの上昇を受けて、ドル全面高の流れとなっており、介入効果が限定的なものに留まる可能性が高いことなどから、実施のハードルは高いと見ている。

 150円を超えて短期的に一気に上昇する場面が見られた場合は介入実施の可能性が高まるが、じりじりとした展開が続くようだと、昨年秋の高値近辺を試す可能性が十分にあると考えている。

 米債利回り動向が目先のポイントとなる。米10年債利回りは28日に4.68%台と2007年以来の高水準を付けた。5%の大台を目指すという見方もあり、日米金利差を狙ったドル買い円売りが当面続く可能性が高い。中期的には昨年秋の高値超えを意識する展開と見ている。

 ただ今週は米ISM製造業景気指数(用語説明2)、米JOLTS求人件数、米雇用統計など、米国の重要指標の発表予定が並んでいる。米景況感の悪化や、ここにきて厳しい状況となっている米雇用市場の一段の落ち込みなどが見られるようだと、ドル高に対するけん制材料となる。リスク警戒での米長期債買い(利回り低下)が広がるようだと、ドル高進行が一服する可能性がある。中期的な流れはまだまだドル高と見ているが、大きな調整には注意したい。

用語の解説

ユーロ圏消費者物価指数 消費者物価指数の対象となる品目、対象が指数の中で占める割合(ウェイト)などは各国で異なっており、単純な国際比較は難しい。その為、EU統計局(ユーロスタット)がマーストリヒト条約統一基準に基づいて、EU加盟国の統一基準による物価指数を測定。そのうちユーロを採用している国を対象にした指数がユーロ圏消費者物価指数となる。
ISM製造業景気指数 ISM(Institute for Supply Management:米供給管理協会)が米国の製造業300社以上の購買担当役員などを対象に雇用、受注、生産、価格など10項目にわたるアンケート調査を行い、そのうち新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫の5項目(新規受注、生産、雇用、在庫は季節調整値)を基に総合指数を発表する。毎月第1営業日に公表される。

今週の注目指標

ISM製造業景気指数(9月)
10月2日23:00
☆☆☆
 2日23時に9月の米ISM製造業景気指数が発表される。前回8月は47.6と7月の46.4から改善。市場予想の47.0を超える伸びとなった。もっとも拡大縮小の分岐点となる50を10カ月連続で下回った。リーマンショック前後の不況期、いわゆるグレートリセッション以来の長期にわたる50割れ。
 前回の内訳を確認すると新規受注が弱かったものの生産がしっかりした伸びとなった。さらには雇用が一気に4.1ポイント改善して48.5となり、全体の改善を支えた。
 今回の市場予想は47.9ともう一段の改善が見込まれている。ただ依然として50を下回っており、やや警戒感が残る。予想を超えて50に近い水準まで改善が見られると、ドル買いが期待される。ドル円は150円トライのきっかけとなる可能性がある。
豪中銀政策金利
10月3日13:30
☆☆☆
 9月18日に就任したミシェル・ブロック豪準備銀行(中央銀行)総裁(前副総裁)の下での最初の金融政策会合が3日に開催される。政策金利は据え置きが見込まれている。ロウ前総裁は2022年半ばから計12回の利上げを実施し、その結果として家計の住宅ローン負担などが強まったことから、批判を浴びていた。こうした批判がロウ前総裁の再任見送りにつながったと見られる。
 ただ、その後任としてロウ総裁の下で副総裁を務めていたブロック氏が総裁に就任することとなり、市場は政策姿勢の継続を見込んでいる。声明などでこれまでの方針を継続する姿勢が示されると豪ドル買いが期待される。豪ドルドルは1豪ドル=0.6450ドル超えが期待される。
米雇用統計(9月)10月6日
☆☆☆
 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における政策金利見通しで、年内追加利上げの可能性が示され、今後の米金融政策動向への注目が集まっている。パウエル議長は会合後の会見で「デュアルマンデートに焦点を絞る」と、物価の安定と雇用の最大化という二大命題(デュアルマンデート)を重視する姿勢を改めて示したこともあり、今後の米金融政策動向をにらむうえで、米雇用統計への注目度が高まっている。
 前回8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+18.7万人と、市場予想の+17万人前後を上回る伸びとなった。もっとも7月が+18.7万人から+15.7万人、6月が+18.5万人から+10.5万人に、計11万人の大幅な下方修正となった。7月から0.3%ポイントの大幅な悪化となった失業率と合わせ、厳しい結果になったという見方が広がった。
 非農業部門雇用者数の内訳をみると、建設業が+2.2万人、製造業が+1.6万人と財部門は堅調な数字となった。サービス部門は教育・医療サービスが7月に続いて+10.2万人と堅調な伸びを示す一方、情報通信業が-1.5万人と4カ月連続での雇用減。運輸倉庫業が-3.4万人と3カ月連続の雇用減となった。前回7月分で前月比マイナスとなった小売業はプラス圏を回復もわずか+0.6万人の伸びに留まっている。また、雇用全体の先行指標と言われる事業所サービス部門の中のテンポラリーヘルプサービス(派遣業)は、-1.89万人と今年に入ってからの前月比マイナスを継続した。
 主な関連指標を見ると、2日発表の米ISM製造業景気指数は、上記通り、前回雇用部門の改善が見られた。今回も全体の数字に加え、雇用部門の改善が見られるようだと、雇用統計にも好影響が期待される。4日発表の同非製造業景気指数も前回雇用部門が強めに出ており、今回も同様の傾向が見られると、雇用統計の好結果期待が強まると見られる。
 3日発表の8月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は、前回7月分の結果が882.7万件と3カ月連続での減少となった。市場予想は946.5万件となっており、かなり弱いという印象を与えた。また6月分が958.2万件から916.5万件に大きく下方修正された。今回の予想は883万件と前回とほぼ同水準が見込まれている。
 今回の雇用統計の市場予想は、非農業部門雇用者数は+16.5万人と前回を下回る弱い数字が見込まれている。失業率は3.7%と前回の3.8%から0.1%ポイント改善する見込みとなっている。予想前後の数字が出てくると、追加利上げ期待はやや後退すると見られ、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は148円台への低下が見込まれる。関連指標の結果次第で、直前に予想が上方修正された上で、弱めの結果となった場合は、相場への影響がより大きくなる可能性があり、147円台トライの可能性が意識される。逆に強く出た場合は、物価動向次第で追加利上げがありうるとの期待が広がる。ドル円は昨年付けた151円95銭の高値トライに向けた動きが見込まれる。

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