2023年10月10日号

(2023年10月02日~2023年10月06日)

先週の為替相場

ドル円は大きな上下動

 先週(10月2日-6日)のドル円相場は、心理的な大きな節目とされてきた1ドル-150円00銭を超える場面が見られたが、その後一気に147円台までドル売りが進むなど、上下動の激しい展開となった。

 ドル円は週明け2日から年初来高値を更新するなど、ドル高円安でスタートした。日銀によるドル売り介入を警戒して、150円00銭手前でのドル買いにはやや慎重姿勢が見られたが、149円台後半中心の高値圏推移となった。米議会での10月からの予算合意が遅れ、懸念されていた政府機関の一部閉鎖について、45日分のつなぎ予算が承引され、政府機関閉鎖が回避されたこともドル買いにつながった。

 3日発表の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を大きく超える増加となったことでドル買いが強まり、心理的節目であった150円00銭を超えて、150円16銭まで上値を伸ばした。

 しかしそこから一気にドル売り円買いが強まり、147円43銭を付けた。ドル売り介入ではとの噂が流れたが、鈴木財務相や神田財務官は介入についてはノーコメントとしている。5日に公表された4日、5日分の日銀当座預金残高(用語説明1)はほぼ想定通りとなっており、介入は行われていないという見方がその後広がった。

 147円43銭まで下げた後、ドル円は149円台まで急騰。いったん149円00銭を挟んでの推移となった後、5日の東京市場で米債利回りの低下などをきっかけにドル売りとなり、148円26銭を付けた。その後は6日の米雇用統計を前に、やや神経質な値動きとなり、5日海外市場で149円台を回復した後、148円30銭前後を付ける動きを見せた。

 米雇用統計発表前に149円00銭台まで上昇。注目の結果は非農業部門雇用者数が市場予想の前月比+17万人をはるかに超える+33.6万人となった。前回値も大きく上方修正されており、かなり強い数字という印象を与えた。

 この結果を受けてドル円は149円50銭台まで上昇。少し戻して149円30銭台で週の取引を終えた。

 ユーロドルは先週前半のドル高に2日の1ユーロ=1.0590ドル台から1.04台を付けた。米JOLTSの好結果を受けたドル買い局面で1.0450ドル前後まで下落。その後は1.0560ドル台まで上昇して米雇用統計を迎え、雇用統計の好結果に1.0480ドル台を付けたが、一転して1.0600近くまで上昇して週の取引を終えた。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ売りに1ユーロ=158円40銭台から156円70銭台まで下落。157円前後まで戻したところで、ドル円の150円台からの急落となり、154円46銭まで急落。その後156円台まで反発した。その後は156円台を中心とした推移が続いた後、週末の対ドルでのユーロ買いに158円台まで上昇して週の取引を終えた。

今週の見通し

 週明けはパレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマス(用語説明2)がイスラエルに大規模な攻撃を行い、イスラエル側が空爆を含めた報復措置を強めたことによって地政学リスクが一気に強まる展開となっている。

 リスク警戒のドル買い円買いと、安全資産とされる米債価格の上昇による長期債利回りの低下を受けたドル売りが交錯している。

 中東情勢の先行き不透明感から、当面は神経質な展開が見込まれる。

 中東情勢を除くと、12日の米消費者物価指数(CPI)をにらむ展開。6日の米雇用統計が強かったにもかかわらず、追加利上げ期待はそれほど高まっておらず、CPIの伸びが予想よりも鈍化した場合、年内据え置きを織り込む動きが広がる可能性がある。ドル円は147円台に向けた動きが見込まれる。

 ユーロドルは1.05ドル台を中心とした推移となりそう。米債利回りの低下はユーロ高ドル安要因であるが、リスク警戒のドル買いで相殺されると、動きが出にくくなる。

用語の解説

日銀当座預金残高 金融機関が日本銀行に開いている当座預金口座の残高合計額。他の金融機関との決済や、日銀との取引の決済を目的として預け入れられており、法定準備預金率を超える残高については出し入れが自由になる。日本銀行が残高を公表している。
ハマス ハマス(HAMAS:Harakat al-Muqawama al-Islamiya、ハマースとの表記もある)は、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織。ガザ地区のムスリム同胞団最高指導者であったシャイグ・アフマド・ヤシン師(2004年死亡)が1987年に設立した。2006年1月のパレスチナ自治評議会選挙で過半数を獲得。パレスチナ解放機構主流派のファタハと連立政権を発足。2007年にファタハと対立しガザ地区を武力制圧。現在まで同地区を実効支配している。

今週の注目指標

米下院議長選挙
10月11日
☆☆☆
 米連邦下院議会は3日、共和党保守派のゲーツ議員が提出したマッカーシー下院議長(共和党)に対する解任動議を賛成多数で可決した。下院議長の解任は米国の歴史上初めてとなる。この下院議長解任を受けた新議長選挙が現地時間11日に行われる。下院の共和党No2のポストである院内総務であるスカリス議員と、トランプ大統領に近いジョーダン議員が議長選挙に出馬している。マッカーシー議員よりもやや保守的と言われるものの、党指導部として豊富な経験のあるスカリス議員が勝利した場合、混乱は抑えられると見られるが、保守色の強いジョーダン議員が勝利した場合や、決定までに時間がかかった場合、政局不安からのドル売りとなる可能性がある。ドル円は148円00銭に向けた動きが見込まれる。
米FOMC議事要旨(9月19、20日開催分)
10月12日03:00
☆☆☆
 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。市場予想通り政策金利を据え置いた前回のFOMCでは、メンバーによる政策金利見通しにおいて、年内追加利上げの可能性が示され、来年の利下げ幅見通しが大幅に縮小されるなど、金融引き締めに積極的なタカ派姿勢が見られた。パウエル議長は今後の金融政策についてデータ次第との姿勢を継続している。市場が予想していたよりもタカ派な印象となったFOMCでの議論がどのようなものであったかが注目される。議事要旨により、追加利上げの期待がもう一段強まるなどの影響が見られた場合、ドル高が見込まれる。ドル円は150円に向けた動きが期待される。
米消費者物価指数(CPI)(9月)
10月12日21:30
☆☆☆
 先月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内追加利上げ見通しが示され、来年実施されると見られる利下げについて、下げ幅見通しの大幅縮小が見られた。今後についてパウエル議長はデータ次第という姿勢を改めて示したほか、デュアルマンデート(FRBに課せられた物価の安定と雇用の最大化という二大命題)に焦点を絞ると発言している。
 そうした中、先週6日に発表された9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+33.6万人と、市場予想の+17万人を大きく超え、今年1月以来となる高い伸びを記録した。発表直後は米国の年内追加利上げ期待がやや高まったが、影響は限定的なものに留まり、その後据え置き期待が強まっている。もっとも、物価の高止まりが見られた場合、雇用統計の好結果により利上げのハードルが下がっていると見られる分、追加利上げ期待が高まりやすい状況となっている。
 前回8月のCPIは前年比+3.7%と7月の+3.2%から伸びが加速した。市場予想の+3.6%もわずかながら上回っている。一方、食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+4.3%と、市場予想通りながら7月の+4.7%から伸びが鈍化した。前回のCPIの伸び加速は、エネルギー価格、中でもガソリン価格の上昇が大きな影響を与えた。OPECプラスの減産継続方針などもあってNY原油価格が上昇。堅調さを保つ米経済状況からガソリン需要も伸びた結果、エネルギー価格は前月比+5.6%、ガソリン価格は同+10.6%の伸びとなった。昨年のエネルギー価格の高さから前年比ではともにマイナスとなっているが、それぞれ-3.6%、-3.3%となり、7月の-12.5%、-19.9%から一気にマイナス幅が縮小したことで、全体の伸びにつながった。
 一方コア指数は、指数全体を100としたとき37.8%とかなりの部分を占める住居費の伸びが、7月の前年比+7.7%から+7.3%へ鈍化したことが全体を押し下げた。医療サービスのマイナス幅拡大、新車価格の伸び鈍化、中古車価格のマイナス幅拡大もコア指数の伸び鈍化につながった。
 今回9月のCPIの市場予想は前年比+3.6%と小幅な鈍化が見込まれている。コア指数は+4.1%とこちらも鈍化見込みとなっている。
 前回全体の伸び加速の要因となったガソリン価格は、EIA(米エネルギー情報局)調査での全米全種平均で8月と9月はほぼ同水準(1ガロン=3.840ドルと3.836ドル)となっている。食品価格の伸び鈍化傾向の継続も期待されている。コア指数を押し下げた住居費の伸び鈍化が継続していると見込まれることもあり、市場予想程度の伸び鈍化が十分に見込まれる。ただ、少し気になるのは自動車の価格動向。全米自動車労働組合(UAW)によるストライキの影響は10月になると見られており、9月の販売状況は調査会社推計で前年比約19%の販売台数増が見られた。好調な自動車購買意欲が価格を押し上げている可能性がある。
 市場予想に比べてCPIの伸びが強かった場合、追加利上げの期待につながる。ドル円は再びの150円トライに向けた動きが期待される。

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