2023年10月16日号

(2023年10月09日~2023年10月13日)

先週の為替相場

ドル円はやや不安定な動き

 先週(10月9日-13日)のドル円相場は、中東情勢などをにらんでやや不安定な動きとなった。

 7日にパレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模な奇襲攻撃を行ったことで、9日からの週はリスク警戒が強まる形でスタートした。リスク警戒のドル買い円買いとなり、ドル円は1ドル=149円台前半で売り買いが交錯となった。9日の海外市場でジェファーソンFRB副議長(用語説明1)やローガン・ダラス連銀総裁が今後の利上げに慎重な姿勢を見せたことでドル売りが強まり148円台へ下落。コロンブスデーの休場明けとなった10日の時間外市場でリスク回避の動きから米国債が買われる(利回りは低下)と、ドル売りが強まり148円10銭台を付けた。

 その後米国債の利回り低下が一服するとドル円でもドル買いが入ったが、149円台ではドル売りが出るなど、やや頭の重い展開が続いた。

 11日発表の米生産者物価指数(PPI)(用語説明2)が市場予想を超える伸びとなり、ドル買いが強まったものの、同日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月19日、20日開催分)で今後についてやや慎重な見方が示されたことで、149円割れを付けるなど、一方向の動きにならなかった。

 12日発表の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を超える伸びを示したことで、ドル買いがもう一段強まり、149円80銭台まで上値を伸ばした。150円手前の売りに上値を抑えられたが、149円台後半で週の取引を終えた。

 ユーロドルは9日の市場でリスク警戒によるドル買いから1ユーロ=1.0510ドル台を付けた後、リスク警戒の動きが安全資産とされる米国債への資金流入につながり、米国債価格の上昇(利回り低下)となったことによるドル売りに12日に1.0640ドル前後までユーロ高となった。

 米CPIを受けたドル買いに1.05台前半まで急落。その後も上値が重く13日海外市場で1.0496ドルと一時1.05の大台割れを付けている。

 ユーロ円は中東情勢をにらんだリスク警戒の円買いから、先週は上値が重く始まり、9日に1ユーロ=156円52銭を付けた。その後は対ドルでのユーロ買いと、ドル円の安値からのドル買い円売りに支えられて、12日に158円60銭前後まで上昇。米CPI後は対ドルでのユーロ売りの勢いが強く、中東情勢をにらんだリスク警戒の円買いもあって、157円台前半で週の取引を終えた。

今週の見通し

 今週は先週の米消費者物価指数や先々週の米雇用統計といったレベルでの注目材料がなく、中東情勢や第3四半期決算の発表が本格化する米株式市場動向などをにらみつつの展開が見込まれる。米企業決算では新興ハイテク関連の決算が最も注目を集めそうで、18日のテスラ、ネットフリックスの発表に注意したい。

 ドル円は中東情勢のリスクを警戒したドル買い円買いの中、やや神経質な動きとなりそう。日米金利差を狙った取引の継続から、ドル高方向が意識されるが、今月3日に150円を超えたところから147円40銭台まで急落したこともあり、150円前後でのドル買いにはかなり慎重な姿勢が見られる。

 149円台での推移を中心に次の方向性を探る展開と見ている。ドル円以外の通貨ペアでのドル買い意欲もあり、150円を超えての上昇をやや意識している。

 ユーロドルもややドル買い方向。1.05割れでの売りには慎重姿勢が見られるものの、戻りは鈍く、リスクはユーロ安ドル高方向が高そう。1.0400割れトライの可能性も十分にあると見ている。

用語の解説

ジェファーソンFRB副議長 フィリップ・N・ジェファーソン(Philip.N.Jefferson)FRB副議長。バージニア大学で経済学の修士号及び博士号を取得。FRBのエコノミストとして務めた後、スワースモア大学教授および経済学部学部長、デイビッドソン大学教授および学部長、副学長を経て、2022年5月23日にFRB理事に就任。先月13日にFRB副議長に就任した。FRB理事就任以降、全てのFOMCで議長提案に賛成票を投じている。
米生産者物価指数 米消費者物価指数(CPI)と同様に米労働統計局が発表する米国の物価統計。CPIが購入者の観点から価格変化を測定しているのに対して、販売者の観点から価格変化を測定している。13日を含む週の火曜日(祝日などによっては変動)に発表される。CPIとは発表日が前後するが、CPIの前に発表された場合は、CPIの先行指標としても注目される。

今週の注目指標

米小売売上高(9月)
10月17日21:30
☆☆☆
 米GDPの約7割を占める個人消費動向を表す指標として注目度が高い。前回8月分の小売売上高は前月比+0.6%と市場予想の+0.2%を超える伸びとなった。前々回7月分も市場予想の前月比+0.4%を超える+0.7%となっており、2カ月続けて力強い伸びとなった。ただ、直近2回の大きな伸びはガソリン価格上昇の影響が大きい。前回の部門別の売上高動向を見ると、ガソリンスタンド売上が前月比+5.2%とかなり大きな伸びとなっている。OPECの減産合意などによる原油価格の上昇からガソリンの小売価格が上昇したことが背景にある。車社会である米国では、ガソリン価格が上昇したとしても、消費を大きく抑えることは難しく、売上額は増加する。ただ、こうした生活に必須な消費額の拡大は他に影響を与える。前回の部門別売上高ではスポーツ・娯楽・書籍の項目が前月比-1.6%となっており、全体では売り上げが伸びているものの、消費者の余裕はあまりないという印象を与えた。
 そうした中、今回の市場予想は前月比+0.3%と前回からは伸びが鈍化も、まずまずな数字が見込まれている。部門別で見て最も売上額が大きい自動車及び同部品の好調な伸びが全体を支えると見られる。米国の自動車販売は大規模ストライキの関係で10月以降の不透明感が強いが、自動車メーカー各社が発表した7-9月期販売台数を確認すると、最大手であるGMの7-9月期販売台数が前年同期比約21%の増加となるなど、好調な結果が目立っており、9月時点での販売は好調を維持していると見られている。
 前回強く出たガソリンスタンド売上については、米エネルギー情報局(EIA)調査による8月と9月の平均小売価格が全米全種平均で1ガロン=3.840ドルと3.836ドルとほぼ同水準になっており、今回は大きな動きにならないと見込まれる。
 6日に発表された雇用統計の好調な数字もあって、小幅増という見通しは妥当な水準と見られており、相場への影響は限定的となりそう。ただ、堅調な米景気への信頼感につながるものであり、ドルを支える材料となりそう。市場予想からのブレが比較的大きい指標でもあり、予想から大きく上振れした場合は、ドル買いが強まる可能性。介入警戒感などから上値を抑える150円前後の水準を超えてドル高円安が進むきっかけになる可能性がある。
英消費者物価指数(CPI)(9月)
10月18日15:00
☆☆☆
 9月の英物価統計が18日に発表される。消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、生産者物価指数(PPI)が同時に発表される。注目度が最も高いのが、インフレターゲットの対象であるCPI前年比。前回8月分のCPIは前年比6.7%と、7月分の6.8%から伸びが鈍化し、2022年2月以来の低水準となった。市場予想は+7.0%となっており、予想外の伸び鈍化であった。
 この結果を受けて9月の英中銀金融政策会合(MPC)では大方の予想に反して政策金利の据え置きを決定した。ただ、この据え置きは5対4と僅差での決定であり、総裁は会合後に利上げがまだ終了していないとの姿勢を強調している。利上げ再開に向けた動きが広がるかどうかは、物価動向がカギを握ると見られており、今回のCPIに対する注目につながっている。
 市場予想は前年比6.6%とわずかながら伸びが鈍化する見込みとなっている。英国では労働市場のひっ迫から賃金上昇が進んでおり、サービス価格の上昇などが顕著となっている。市場予想に反してCPIの伸びが前回並みもしくは前回よりも強まるような状況が見られると、次回11月会合での利上げ再開見通しが広がり、ポンド高が見込まれる。1ポンド=183円台に向けた動きが予想される。
パウエル議長講演
10月20日01:00
☆☆☆
 10月31日、11月1日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、21日からブラックアウト期間(中銀金融政策会合前後で参加者が金融政策に関する発言を制限される期間)に入り、FRB関係者発言が基本的に報じられなくなる。直前ということもあり、16日から20日にかけてFRB関係者の講演予定などが目白押しとなっている。中でも注目を集めているのが、19日(日本時間20日1時)にニューヨークのエコノミッククラブで行われるパウエルFRB議長の講演。質疑応答も予定されている。今後の金融政策についての発言が期待されている。追加利上げの可能性を強調してくるようだとドル買いが進むと見られ、ドル円は150円超えに向けたきっかけになると見込まれる。

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