2023年10月23日号
先週の為替相場
ドル円は節目の150円を巡り神経質な動き
先週(10月16日-20日)のドル円相場は日米金利差を狙った取引などがドルを支え、底堅い動きとなった。
1ドル=149円50銭を挟んでの推移で始まり、上下ともに動きにくい展開が続いた。イスラエルとハマスとの衝突を警戒する動きが見られたが、一方向の動きにつながらなかった。
17日には149円70銭前後から148円84銭まで急落する場面が見られた。日銀が次回の日銀金融政策決定会合で公表する経済・物価情勢の展望(展望レポート)(用語説明1)において、2024年度の物価見通しを2%以上に上方修正、2023年度については3%に近い水準に上方修正する見込みと、複数関係者筋情報として報じられたことが円買いを誘った。
3日に米JOLTS求人件数を受けたドル買いに150円10銭台を付けた後、147円40銭台まで急落した印象が強く、一気の下げに短期的なポジション調整が誘発されて、ドル売りの勢いがついた面があると見られている。
すぐにドルの買い戻しが入り、値を落とす前の水準を付けた。
その後はじりじりとドル高円安が進行。何度か149円90銭台を付けたが、3日の150円台からの急落の意識もあり、150円前後のドル買いには慎重姿勢が続いた。20日の海外市場では銀行間取引の一部で150円00銭を付けたとの報道が見られたが、大台を超えてのドル買いにはつながらず、149円80銭台で週の取引を終えた。
ユーロドルは1ユーロ=1.05ドル台を中心とした推移となった。17日発表の10月ドイツZEW(欧州経済研究センター)景況感指数が市場予想の-9.0、9月の-11.4を大きく上回る-1.1となり、1.0590ドル台までユーロ高となったが、1.06超えには慎重な姿勢が見られた。
ガザ地区の病院爆発を受けて中東情勢緊迫化懸念が広がり、18日の市場で1.0520ドル台まで下落。米債利回りの上昇を受けたドル買いもあって、上値が重くなる場面が見られた。しかし、対ポンドでのユーロ買いや、米債利回りの上昇一服を受けたドル売りなどに19日には1.0610ドル台を付けるなど、その後も一方向の動きにはならなかった。
ユーロ円は17日にドル円が148円80銭台へ急落した局面で157円20銭台を付けた。直ぐに急落前の水準に戻すと、ドイツZEW景況感指数の好結果を受けたユーロ買いもあり、158円60銭台まで急騰する荒っぽい展開となった。
中東情勢を受けたリスク警戒の動きに、19日に157円60銭台まで下落したが、対ドルでのユーロ買いなどに押されて158円90銭台まで上昇するなど、上下に不安定な展開が続いた。
今週の見通し
ドル円は節目の1ドル=150円を巡り、神経質な動きが続いている。10月3日の150円10銭台からの急落が意識されており、上値追いに慎重になっている。政府・日銀の介入が入るのかどうかは難しい判断となる。ただ、150円を超えて当局からの動きがなければ、昨年秋に付けた約32年ぶりの高値151円95銭をトライに行く流れが見込まれるだけに、口先介入やレートチェック(用語説明2)などの動きが出る可能性が十分にある。
米債利回りの上昇傾向が続き、ベンチマークとなる米10年債利回りは5.00%の大台をトライする流れとなっている。日銀が緩和姿勢の維持を示す中で、米長期債利回りの上昇が、日米金利差を狙った取引を誘っており、流れはドル高円安方向。
当局対応に警戒しながら、ドル高円安が進む展開が見込まれる。3日に付けた150円16銭を超える動きを見込んでいる。
ユーロドルは今週、ECB理事会が予定されている。前回まで10会合連続で利上げを行ってきたが、前回の会合での利上げ打ち止めが示唆されており、市場予想は据え置きで一致している。波乱要素は少なく、米債利回りの上昇を受けたユーロ安ドル高が続くと見られる。1ユーロ=1.05ドル割れでのユーロ売りにはやや慎重姿勢が見られるが、ドル高が続く中、上値が重くなると1.04ドル台に向けた動きが期待される。
ドル主導の展開となっており、ユーロ円は不安定な動きが続きそう。中東情勢をにらんだ動きもあり、先が読みにくい展開。ドル円の堅調地合いもあり、流れは上方向と見ているが、一方向の動きではなく、上下動を交えながらの動きとなりそう。
用語の解説
経済・物価情勢の展望(展望レポート) | 日本銀行が、年8回開催される金融政策決定会合の内、1月、4月、7月、10月の会合において公表する、先行きの経済・物価の見通しやその変動要因についてまとめたレポートのこと。会合終了時に会合結果の発表とともに基本的見解が公表され、その後背景説明を含む全文が公表される。 |
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レートチェック | 日本銀行が銀行など金融機関に為替相場の水準を確認すること。ただ、日本銀行が相場状況などを金融機関に確認することは日常業務として行われており、レートチェックという場合は、実際に取引が可能なプライスを確認することを指す場合が多い。 |
今週の注目指標
ECB理事会 10月26日21:15 ☆☆☆ | 前回9月14日の会合で10会合連続となる利上げを決定したECB理事会。前回の理事会時の声明で、3つの主要な政策金利は、十分に長い期間続くことにより、インフレ率が目標水準に速やかに回帰するために重要な役割を果たす水準に到達したと考えているとの表現があり、今後の政策金利据え置きが示唆された。また、理事会後に行われたラガルド総裁の会見では、金利の水準と期間の内、焦点は金利水準ではなく、金利を維持する期間に移っているとの発言があり、政策金利が9月の利上げでピークに達したことが示唆された。 ユーロ圏の物価は最新9月の消費者物価指数(HICP)前年比が+4.3%、コアHICP前年比が+4.5%と、インフレターゲットである2%に対して依然としてかなりの乖離がある。ただ、これまでの金融引き締めによりユーロ圏の景気鈍化懸念が広がっており、これ以上の利上げが難しいと考えられている。利上げを決めた前回の会合でも複数のメンバーはユーロ圏景気の明らかな減速やこれまでの金融引締め効果の波及を確認することを理由として据え置きを主張していた。 前回の理事会で示されたECBスタッフによるマクロ経済予想(年8回のECB理事会の内、3月、6月、9月、12月の理事会で公表)をみると、実質経済成長率見通しは2023年+0.7%、24年+1.0%、25年+1.5%といずれも6月時点での予想から下方修正された。一方インフレ率見通しは2023年+5.6%、24年+3.2%、25年+2.1%と23年、24年が6月時点と比べて上方修正されている。経済成長見通しが後退する中で、物価見通しが強まるという厳しい状況となっている。 こうした状況を受けて、今回のECB理事会では主要3金利の現状維持が見込まれている(中銀預金金利4.0%、主要リファイナンスオペ金利4.50%、限界貸出ファシリティ金利4.75%)。声明も目立った変化がなく、スタッフ予想が示される12月の理事会待ちとなりそう。米国の追加利上げ期待が再燃するようだと、金利差拡大懸念からユーロ売りの動きが強まる可能性がある。発表直後の動きは限定的と見ているが、中期的に1.04台を試す材料となる可能性がある。 |
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米第3四半期GDP速報値 10月26日21:30 ☆☆☆ | 米四半期GDPは昨年第1四半期、第2四半期とマイナス成長となった後、4四半期連続で前期比年率2%を超える伸びとなっている。前期は速報時の+2.4%から確報時に+2.1%まで下方修正されているものの、2%超えを維持した。 前期は個人消費の伸びが鈍く、全体を押し下げた。個人消費は第1四半期の+3.8%に対し、+0.8%に留まっている。一方設備投資が+7.4%と第1四半期の+5.7%に続いて好調となり、全体を支えた。その他で目立ったのが輸出の落ち込み。第1四半期の+6.8%から-9.3%に大きく低下した。輸入も第1四半期の+1.3%から第2四半期は-7.6%と落ち込んだため、純輸出(輸出-輸入)でのGDPへの影響は抑えられた。 今回第3四半期の市場予想は前期比年率+4.3%と、2021年第4四半期に付けた+7.0%以来の高い伸びが期待されている。小売売上高など関連指標の動向から個人消費が+3.7%まで伸び、全体を支えると期待されている。設備投資も好調さを維持する見込み。前回弱く出た輸出入については、8月分まで出ている貿易収支での赤字額が、4-6月に比べて小さくなっているため、改善が期待される。 こうした状況から予想前後の好結果が十分期待される。米景気の底堅さが印象付けられ、ドル買いの材料となりそう。11月の米連邦公開市場(FOMC)での金利据え置き期待は変わらないと見られるが、12月の追加利上げ見通しが残る形となり、ドルが支えられると見ている。ドル円は151円台に向けた動きが期待される。 |
米PCEデフレータ(9月) 10月27日21:30 ☆☆☆ | 12日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.7%と市場予想の+3.6%を上回り、8月の同水準の伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は市場予想と同じ前年比+4.1%となり、8月の+4.3%から伸びが鈍化した。2021年9月以来の低い伸びとなる。 ガソリン価格が8カ月ぶりに前年比でプラス圏を回復。全体を支える結果となった。全体に占める割合が大きい住居費が+7.2%と8月の+7.3%からわずかな伸び鈍化に留まったことも全体を支えた。 PCEデフレータの市場予想は前年比+3.4%(8月+3.5%)、コアデフレータは前年比+3.7%(同+3.5%)と小幅な伸び鈍化が見込まれている。CPI同様に全体の伸びが予想を上回った場合は、ドル買いの材料となる。もっともPCEデフレータは、CPIの内訳で強く出ていた住居費が全体に占める割合がCPIに比べて小さい。一方CPIの内訳で前年比-2.6%と弱く出ていた医療サービスが占める割合が大きい。このため、CPIに比べて全般に伸びが弱く出る可能性がある。米国のインフレターゲットの対象である同指標が弱く出ることで、年内追加利上げの期待が後退すると、ドル売りが強まる可能性がある。ドル円は148円台に向けた動きが期待される。 |
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