2023年10月30日号

(2023年10月23日~2023年10月27日)

先週の為替相場

ドル円は一時150円78銭を付ける

 先週(10月23日-27日)のドル円相場は上下に動きを見せた。週明け23日オセアニア市場朝の取引参加者がまだかなり少ない時間帯に1ドル=150円11銭を付けて週の取引が始まった。直ぐに149円台へ下げると、150円ちょうど前後を意識した展開に復した。米10年債利回りが節目の5%を超える推移となったこともあって、その後もしっかりした動きとなったが、同日米国市場で債券利回りが急落したことでドル売りとなった。

 30日、31日に開催される日銀金融政策決定会合で公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)での物価見通しの上方修正が確実視される中、海外勢を中心にYCC再柔軟化の期待が広がっていることも円買いにつながり、ドル円は24日に149円32銭を付けた。

 もっとも下がるとすぐにドル買いが出る流れとなっており、24日中に149円90銭台まで上昇。150円ちょうど前後を意識した展開に復した。

 25日に発表された米新築住宅販売件数(用語説明1)が予想を大きく上回る前月比+12.3%の力強い伸びを示したことをきっかけに150円超えを付ける展開となった。同日行われた米5年債入札が不調で利回りが上昇したこともドルを支えた。ドル円は10月3日に付けた直近高値150円16銭を超えて150円31銭前後まで上昇した。

 高値を付けた後の利益確定売りに150円00銭前後までドル安円高となったが、大台をぎりぎり維持したことで再びドル高が強まり150円78銭まで上値を伸ばした。

 その後は利益確定の売りもあってドル高が一服。米第3四半期GDPが個人消費の力強い伸びに支えられて予想を超える好結果となったが、ドル買いの動きは限定的なものとなり、その後逆にドル売りが強まる展開となった。

 27日には週末を前にしたポジション調整ムードなどにドル安円高となり、149円46銭を付けている。

 ユーロドルは23日に米10年債利回りが5%台から急速に低下し、ドル円が149円50銭台を付けるなど、ドル安が進んだ局面で1ユーロ=1.05ドル台後半から1.0670ドル台まで上昇。その後もドル安が続き24日に1.0694ドルと1.07ドルの大台に近づいたが、同日発表されたユーロ圏及びドイツ・フランスのPMI速報値が冴えない結果となったことでユーロ売りが強まり1.0580ドル台を付けた。

 その後米新築住宅販売件数の好結果などを受けたドル高に、1.0520ドル台までユーロ安ドル高となった。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ買いが強まる中、24日に1ユーロ=159円92銭と160円に迫る動きとなった。その後対ドル同様にユーロ圏及びドイツ・フランスのPMI速報値の冴えない結果を受けてユーロ売りとなり158円50銭前後まで低下。その後は158円台での推移が続いた後、週末を前にしたドル円などでの円買いに押され、27日に157円89銭を付けた。

今週の見通し

 30日、31日に日銀金融政策決定会合、31日、11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、2日にイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)と主要通貨の金融政策会合の予定が並んでいる。いずれも現状維持見通しが濃厚となっているが、日銀金融政策決定会合ではYCCの修正期待があること、英中銀MPCは前回5対4での据え置き決定で非常に僅差で会ったことなどから、事前の警戒感があり、やや神経質な展開が見込まれる。

 このところのドル高要因となっていた米長期債利回りは、ベンチマークとなる10年債が節目の5.00%超えをいったん達成したことで一服感が出ている。その為ドル高圧力が少し弱まっている。ただ現状でも日米の金利差が相当ある中で、金利差を狙った取引が継続すると見られており、ドル円は下がると買いが出る流れが続きそう。

 ドル円の介入警戒感に関しては、31日午後7時に財務省国際局が公表する月次ベースの外国為替平衡操作の実施状況(用語説明2)がポイントとなる。10月3日に150円10銭台から147円40銭台まで急速にドル安が進んだ件については、介入が実施されると影響を受ける日銀の当座預金残高状況に大きなブレが見られなかったことで、介入ではないという見方が広がっている。ただ、ごく少額の介入があったのではとの思惑が見られることや、150円前後で上値を抑える展開の中で介入があったのではとの思惑が一部で見られることから、警戒感につながっている。

 もし介入が実施されていた場合は、かなり不安定な動きとなりそう。大方の見通し通り、介入ではないということがはっきりすると、ドル円はしっかりの展開が見込まれる。150円台に再び乗せての展開が見込まれる。

用語の解説

米新築住宅販売件数 米商務省センサス局が米国の新築住宅の販売件数、販売価格、在庫状況などを調査・公表した指標。米国の住宅市場は中古住宅の販売が新築住宅に比べてはるかに大きいため、中古住宅販売件数が注目を集めることが多いが、新築住宅販売状況は家具・家電などの耐久財の需要に加え、建設資材需要などにも影響を与え、関連産業への波及効果が大きいことから、重要視されている。
外国為替平衡操作の実施状況 為替介入の実施にあたっては、財務大臣が決定し、財務省国際局が日本銀行に指示し、日本銀行が実施する。財務省国際局は介入した実績額について、その総額を一か月毎に、介入実績の詳細(実施日、介入額、売買通貨)については四半期毎に公表している。10月31日に9月28日から10月27日分について総額が発表される。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合結果発表
10月31日昼前後
☆☆☆
 今回の会合は経済・物価情勢の展望(日銀展望レポート)が公表される回にあたっている(年8回の日銀会合の内、1月、4月、7月、10月の年4回公表)。展望レポートでは物価(生鮮食品除くコアCPI前年比)見通しの上方修正がほぼ確実視されている。複数関係者発言として報じられているところでは、2023年度物価見通しを7月時点の2.5%から3%に近い水準へ、2024年度物価見通しは1.9%から2%台へと上方修正される見込みとなっている。
 こうした状況に加え、日本の長期金利上昇から、YCCの再柔軟化などの期待がくすぶっている。日本の10年国債利回りは30日の市場で0.890%を付けている。指値オペ水準である1.0%に迫る状況となっている。YCCを修正せずに1.0%で抑え込むこと自体は可能であるが、日銀のバランスシート肥大化に対する懸念を拡大させるほか、日米金利差の拡大懸念が広がることで、ドル高円安が進む可能性が意識されるだけに再柔軟化もしくは廃止という見通しが一部で出ている。10月27日に発表された10月の東京区部消費者物価指数は生鮮食品除くコアCPI前年比が+2.7%と4カ月ぶりに上昇に転じるなど、物価の下げ止まりが見られることも、YCC再柔軟化期待につながっている。
 もっとも、今のところ市場は現状維持との見方が大勢となっている。今年度末までの変更・廃止期待がかなり強まっているものの、今回は現状維持に留めるとの見方が強い。
 大方の予想に反してYCC再柔軟化や廃止が見られると、円長期債利回りの上昇を誘い円買いが見込まれる。ドル円は147円台へのドル安円高となる可能性がある。大方の予想通り現状維持となった場合はある程度円売りが期待されるが、想定通りということで会合直後の反応は限定的となりそう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表
11月2日03:00
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)は現状維持見通しとなっている。一時は追加利上げの期待が見られたが、直前になって据え置き見通しでほぼ一致している。
 今月に入って発表された米国の主要指標を確認すると、6日の9月米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+33.6万人と市場予想の+17万人を大きく超える伸びとなった。7月分が+15.7万人から+23.6万人、8月が+18.7万人から+22.7万人に大きく上方修正されるなど力強いものとなったが追加利上げ期待は盛り上がらなかった。12日の米CPIは前年比3.7%と予想の3.6%を超え、前回と同水準の伸びとなった。物価の高止まり警戒が出る流れであるが、動きは落ち着いている。さらに17日の米小売売上高の強さ、19日の中古住宅販売件数、25日の新築住宅販売件数などの強さもあり、追加利上げのハードルは下がっている。
 しかし短期金利市場、金利先物市場動向ともに据え置きを完全に織り込んでいる。前回の会合以降のFRB関係者発言などを見ても大きな変化が出る可能性は高くないと見られ、声明なども大きな変化がないと見込まれている。相場への影響は限定的と見られるが、これまで同様に追加利上げの可能性を残す形での声明になると見られ、ドルを支える材料になると見られる。ドル円は149円台を中心にしっかりした動きが続くと期待される。
英中銀金融政策会合結果発表
11月2日21:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)は前回9月21日の金融政策会合(MPC)で大方の予想に反して政策金利を5.25%に据え置くことを決定した。コロナ禍で0.1%まで下がった英中銀の政策金利は2021年12月の利上げ開始から14会合連続で引き上げられていた。
 前回のMPC決定の前日、9月20日に発表された8月の英物価統計は、インフレターゲットの対象である消費者物価指数前年比が+6.7%と、7月の+6.8%から予想外に鈍化した。市場予想は+7.0%となっていた。物価の鈍化が進む一方、これまでの金融引き締めの影響もあって失業率の悪化などの厳しい状況が見られていることで、いったん利上げをストップした形となった。
 もっとも投票は5対4と僅差であり、利上げ期待も継続した。今月18日に発表された最新9月の英消費者物価指数は前年比+6.7%と予想を上回って8月と同水準の伸びとなった。インフレターゲットの2%がかなり遠いという印象を与えている。
 もっとも、11月2日の英中銀MPCに関しては、追加利上げ期待がそれほど強くなっていない。前回の会合直後、短期金利市場動向から見た11月の会合での利上げ期待は40%程度と、かなりの水準に上っていた。その後48%台まで上昇し、利上げと据え置きで見通しが二分する展開が見られた。しかし、その後はほぼ一本調子に利上げ期待が後退した。10月20日に発表された9月の英小売売上高の弱さに見られる英経済の鈍化懸念が利上げ期待を押し下げている。
 ベイリー総裁は物価動向について、年内にインフレ圧力が急速に弱まるとの見通しを示している。また、物価高のリスクとして指摘されている英国の賃金上昇についても、17日に発表された6-8月の週平均賃金が前年比+7.8%と5-7月の+7.9%から小幅ながら鈍化。5-7月期の賃金上昇が2001年の統計開始以来最高水準ということもあるが、求人件数なども減少しており、相当にタイトと指摘されていた英国の雇用市場に失速の兆しが見えていることも、据え置き期待につながっていると見られる。
 ただ、前回投票結果は5対4と相当に僅差。ベイリー総裁、ピル・チーフエコノミストといった金融政策立案に重要な位置を占めるメンバーが据え置きに投票したとはいえ、英中銀はもともとインフレへの警戒感の強い中銀だけに、利上げ派が増える可能性が無いとは言えない。
 また、米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合は議長・総裁の提案が否決されたことが歴史上ないが、英中銀は総裁が少数派に回るケースがこれまで複数回見られているだけに油断は大敵となっている。
 サプライズで利上げになると一気にポンド高が進むと見られる。ポンドドルは1ポンド=1.23ドル台への大きな上昇を見せる可能性がある。

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