2023年11月13日号

(2023年11月06日~2023年11月10日)

先週の為替相場

ドル円は151円60銭前後まで上昇

 先週(11月6日-10日)のドル円相場は、ドル高が優勢となった。先々週は米連邦公開市場委員会(FOMC)で慎重姿勢が見られたことや、米雇用統計が弱めに出たことでドル売りが進み、3日に1ドル=149円21銭を付けた。その流れを受けて6日は149円20銭台で週の取引をスタート。149円25銭を付けたところが先週の安値となり、その後はドル高円安が強まった。

 3日までの週で米ダウ平均株価指数が5日続伸となったことを好感し、6日の日経平均が一時800円を超える大幅高となった。リスク選好の円売りからドル円は149円60銭台へ上昇。海外市場でも米債利回りの上昇に支えられてドル高円安が続き、6日のうちに150円台を付けた。3日の米雇用統計後に4.48%近くまで低下していた米10年国債利回りは、6日に4.67%台まで上昇。米雇用統計前の水準に戻した。

 その後もドル高円安の流れとなった。米10年国債利回りが低下し、9日に4.475%と米雇用統計後の水準を割り込む中、ユーロドルが1ユーロ=1.0660ドル前後から1.0720ドル台を付けるユーロ高ドル安となるなど、ドル高基調が一服。しかしドル円は株高などを受けたリスク選好の円売りが主導する形で上昇を続けた。

 9日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が必要なら追加利上げを行う考えを示したことで、米長期債利回りが反発。ドル高を誘う形でドル円も上昇した。10日に入ってもドル高円安が継続する形で151円60銭まで上昇。ほぼ高値圏で週の取引を終えた。

 ユーロドルは米債利回り低下を受けた1.0720ドル台への上昇後、パウエル議長発言で1.0660ドル前後まで下落。10日の市場で1.0656と先週の安値を更新した。

 ユーロ円はドル円でのドル高円安を支えにしっかり。今月1日の159円00銭台からの上昇が続いた。上値抵抗水準となった1ユーロ=161.00円手前の売りが上値をいったん抑えたものの、8日の市場で161円台にしっかり乗せると動きが強まり、10日には161円90銭台を付けている。

今週の見通し

 14日の米消費者物価指数(CPI)が注目されている。ただ、よほどの数字が出ない限り、米国の利上げ打ち止め感が継続すると見られている。一方、ここにきて雇用の弱さなどが示されているとはいえ、利下げに向かうにはかなりの時間がかかると見られており、予想を下回る伸びとなった場合でもドル安は限定的となりそう。

 介入警戒感が上値をどこまで抑えるかが注目される。昨年付けた1ドル=151円95銭が目先のポイントとなる。ユーロドルが1ユーロ=1.0700ドルを挟んでのレンジ取引となっていることや、米10年債利回りが5%を付けた後、上昇に慎重な動きとなっていることなどから、ドル高ではなく円安主導でのドル円の上昇が目立っている。ドル全面高の流れの中ではドル円でのドル売り円買い介入の効果は限定的なものになりがちであるが、円安主導であれば効果は高くなるとみられることから、介入が入りやすい地合いとなっている。円独歩安に近い動きとなれば、行き過ぎた円の動きに対する調整という名目もつきやすい。ただ、10月31日に151円72銭を付けた後、いったん149円20銭台まで約2円半の調整を経て戻してきており、急激な円安とは言い難いという見方もあり、難しい局面となっている。

 先週のほとんど調整の無いドル高円安の流れから、上方向の地合いが相当強いと見られ、介入警戒感を持ちながらもじりじりとした上値トライが見込まれる。152円台にしっかり乗せて上昇が続くと、介入期待などでドル売りに回った投機筋のポジション調整を巻き込んで上昇に勢いがつく可能性がある。

 ユーロは対円での上昇が支えも、ドル高局面で上値が抑えられており、方向性がつかみにくい。1.06ドルから1.08ドルにかけてのレンジを中心とした推移が見込まれる。

 ユーロ円はドル円の上昇に加え、米株の堅調さなどを受けたリスク選好の円売りもあり、しっかりとした動きが続いている。直近高値を超えて2008年のリーマンショック前以来の水準での推移。2008年に付けた1ユーロ=169円96銭の史上最高値はまだ遠いものの、現実的な水準として見えてきた。もう少し上方向の流れが続くと見られる。

用語の解説

米消費者物価指数(CPI) 米労働省労働統計局(BLS)が、都市部の消費者が購入する商品やサービスの価格の変化を調査して指数化した指標。米国のインフレ目標の対象は米商務省が発表する個人消費支出(PCE)デフレータであり、日本を含め多くの国でインフレ目標の対象とされているCPIではない。しかし、発表時期がPCEデフレータに比べて2-3週間早く、変化の傾向が似ているため、速報性を重視する市場の注目度はCPIの方が高くなることが多い。
リーマンショック 米大手投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦破産法第11条の適用を申請し、2008年9月15日に倒産したことをきっかけとして、世界的に起きた金融危機と不況のこと。同行は低所得者対象の住宅ローン「サブプライムローン」を組み込んだCDSの組成を巨額に行っており、2007年ごろから同ローンの返済率が低下したことによる損失が大きくなっていた。

今週の注目指標

米消費者物価指数(10月)
14日22:30
☆☆☆
 前回9月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.7%と8月と同水準の伸びとなった。米CPIは2022年6月の前年比+9.1%をピークとして伸びが鈍化し、今年6月に+3.0%を付けた。今年の6月はエネルギー価格が前年比-16.7%、中でもガソリン価格が-26.5%と大きく低下したことが鈍化の主要因であった。2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年半ばにかけてエネルギー価格が急騰。今年6月の前年比は大きく上昇した2022年の価格との比較となったことで、見かけ上大きな鈍化となった。ガソリン価格は2022年6月の1ガロン=4.929ドル(EIA/米エネルギー情報局調査、全米全種平均)をピークに、同年12月に3.210ドルまで下がっており、ガソリン価格およびエネルギー価格の見かけ上の鈍化も落ち着いたことで、全体の伸びが強まる形となっている。
 エネルギーと食品を除いたコア指数は順調な鈍化となっている。消費者物価指数全体を100としたとき、その34.8%とかなりの部分を占める住居費のゆっくりとした鈍化継続が全体を押し下げている。
 前回の消費者物価指数の内訳をみると、エネルギー価格は前年比-0.5%とマイナス圏も小幅なものとなった。ガソリン価格が+3.0%と今年1月以来のプラス圏となっている。順調な鈍化を見せたのが、今年に入って鈍化を続ける食料品で、前年比+3.7%と8月の+4.3%から大きな鈍化を見せた。
 コア部分では住居費が前年比+7.2%と8月の+7.3%から鈍化継続も、鈍化幅は小幅にとどまった。大きな鈍化を示したのが、医療費と中古車価格。医療費が前年比-2.6%と5カ月連続でのマイナス圏となった。中古車価格は前年比-8.0%となり、11カ月連続でのマイナス圏となった。
 こうした状況を受けた今回10月のCPIは前年比+3.3%と大きく伸びが鈍化する見込みとなっている。9月から10月にかけてガソリン価格が低下しており、全体を押し下げると見られる。EIAによる全米全種平均のガソリン価格はNY原油先物価格の低下もあって、9月の1ガロン当たり3.958ドルから3.742ドルへ、5.46%の低下となった。CPIは都市部のみの調査で、EIA調査と同一ではないが、同程度の鈍化が見込まれる。
 一方、これまで順調に低下してきたコア指数は前年比+4.1%と9月と同水準の伸びが見込まれる。前回鈍化が目立った医療費と中古車価格の持ち直しが見込まれている。
 次回12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は据え置き見通しが広がっており、CPIがよほど大きくぶれない限り、据え置き見通しが継続すると見られている。ただ、パウエル議長が9日に必要とあれば追加利上げを行うと発言しているように、米FRBは追加利上げの可能性を捨てておらず、予想に反して前回同様の伸びを示すような強い結果が出てくると、ドル高が一気に強まる可能性がある。予想前後の結果が出てきた場合は現状のドル高が継続すると見られ、イベントクリアの安心感もあり152円台に向けた動きが強まると予想される。
英消費者物価指数(10月)
11月15日16:00
☆☆
 10月の英国の物価統計、消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、生産者物価指数(PPI)が発表される。インフレターゲットの対象であるCPI前年比が最も注目される。前回は8月と同水準の前年比+6.7%となったが、今回は+4.7%と5%を割り込む大きな鈍化が見込まれている。エネルギー価格の低下が主要因。賃金圧力低下なども指摘されている。ピル・チーフエコノミストが物価の大幅な鈍化見通しに言及しており、予想前後であればサプライズ感はない。ただ、これ以上の利上げの必要性を否定したピル氏の発言もあって、ポンドは売りが出やすい地合いとなっており、CPIの結果次第で売りが強まる可能性が合う。1ポンド=1.20ドル台に向けた動きが見込まれる。
米小売売上高(10月)
11月15日22:30
☆☆☆
 米個人消費動向を示すことで注目度の高い小売売上高(10月)が15日に発表される。10月26日に発表された米7-9月期GDPにおいて、個人消費は前期比年率+4.0%と力強い伸びを示した。GDPの約7割を占める個人消費が好調さを維持すると、米景気の底堅さが意識され、ドルを支える材料となる。
 今回の予想は前月比-0.3%と9月の+0.7%からの大幅鈍化が見込まれている。米自動車大手の労使交渉が過熱したことで供給に不安が出たことや、金利の上昇を受けた消費の鈍化懸念、個人消費に大きな影響を与える雇用市場の鈍化懸念などが厳しい見通しにつながっている。自動車を除いたコアでも前月比横ばいと9月の+0.6%から伸びの鈍化が見込まれており厳しい状況。
 予想以上に落ち込みが目立つようだと、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は150円台に向けた動きが見込まれる。

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