2023年11月20日号

(2023年11月13日~2023年11月17日)

先週の為替相場

ドル円は年初来高値更新後、ドル売りが優勢

 先週(11月13日-17日)のドル円相場は、13日に年初来高値を更新する1ドル=151円91銭を付けドル高が優勢となった。それまでの高値は10月31日に付けた151円72銭。高値を付けた後、大口のドル売りが入り、151円20銭前後まで急落。ドル売りの勢いから、直後は介入ではとの警戒も見られたが、おそらく介入ではないとの見方が広がったことで、その後再びドル高となり151円80銭前後までドル買いが入った。

 151円台後半での推移の中、注目された14日の米消費者物価指数(CPI)を迎え、市場予想を下回る弱めの伸びに150円80銭前後へ急落。その後もドル売りが続き同日NY市場午後に150円10銭台までドル安となった。

 その後150円台で推移を経て、150円40銭前後で15日の米小売売上高、生産者物価指数(PPI)の発表を迎えた。米PPIはCPI同様に予想を下回る弱めの伸びとなり、いったんはドル売りが優勢となって150円06銭を付けた。しかし、同時に発表された米小売売上高の堅調な結果にすぐにドル買いが入ると、米CPI後の戻り高値を超えてドル高が進み、151円40銭台まで上昇した。

 151円台での推移の後、16日発表の米新規失業保険申請件数が予想を超える件数(失業保険のため、多い方が悪い結果)となったことを受けてドル売りとなり、150円20銭台までドル安となった。

 17日の市場では、英小売売上高の弱さを受けたポンド売りドル買いや、ビルロワドガロー・フランス銀行(中央銀行)総裁による利上げ打ち止めに前向きな発言を受けたユーロ売りドル買いが入ったが、限定的なものに留まり、その後ドル売りが強まったことで、ドル安トレンドの勢いが印象付けられ、ドルはほぼ全面安となった。ドル円も149円20銭前後まで下げている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.0700ドルを挟んでの推移から米CPI後のドル売りに1.0880ドル台まで一気に上昇した。その後の調整は1.0820ドル台までにとどまり、17日のドル売りに1.09台に乗せた。

 ユーロ円はドル円の上昇もあり1ユーロ=161円台から162円30銭前後へ上昇。米CPI後の動きはユーロ高ドル安の勢いがドル安円高より強かったこともあり、ユーロ高円安が強まり163円70銭台まで上昇。その後いったん163円00銭台まで下げたが、対ドルでのユーロ買いの勢いが強く164円20銭台まで上昇。金曜日ロンドン市場でドル円の下げが目立ったことで162円10銭台まで大きく下げたが、その後の対ドルを中心としたユーロ買いを受けて163円台を回復して週の取引を終えた。

今週の見通し

 23日は日本が勤労感謝の日、米国が感謝祭となり、日米の市場が休場となる。米国では感謝祭翌日のブラックフライデーは休暇を取る人が多いこともあり、大型連休を前にポジション調整などが入りやすい地合いとなっている。

 先週発表された米消費者物価指数及び生産者物価指数の伸びが鈍かったこともあり、米国の追加利上げ期待が後退。日米金利差縮小に向けた期待からドル売り円買いが強まる展開となっている。米長期債利回りの上昇が落ち着いた後も、ドル円ではドル高円安が優勢となっていたが、こうした流れが一服する展開となっている。

 ただ、感謝祭ウィークで取引参加者自体が少なく、取引を手控える動きが見込まれる。週の後半は主要通貨ペアは膠着する展開が見込まれるだけに、1週間のレンジは抑えられたものとなりそう。

 ドル円は148円00銭前後が下値の目途となりそう。上値は150円超えでどこまで買い意欲が出るか。150円前後が重い展開が見込まれる。

 ユーロドルは1.10ドル手前でユーロ売り注文が入ると見込まれるが、下がると買いが出る流れか。1.0850ドル前後がしっかりしてくると。1.10超えトライの意識が強まると見ている。

 ユーロ円はドル主導の展開の中、やや不安定な動きとなりそう。

用語の解説

米新規失業保険申請件数 米新規失業保険申請件数(Initial Claims/イニシャルクレーム)は米労働省雇用訓練局(ETA)が週ごとに失業者の失業保険給付の申請件数を集計し、発表する指標。集計期間の翌木曜日に発表されることから、速報性の高い指標として注目される。
ブラックフライデー 感謝祭翌日の金曜日のこと。米国の小売店の多くがこの日から年末セールを開始し、一年で売り上げが最も大きい日と言われている。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(10月31日/11月1日開催分)
22日04:00
☆☆
 10月31日-11月1日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が22日午前4時に公表される。この会合では市場予想通り政策金利を5.25-5.50%で据え置いた。据え置きは2会合連続となる。
 結果と同時に発表された声明もほぼ想定通りであった。9月の会合からの主に3つ変更点があった。
 一点目は、景気判断の箇所で、米国の経済活動について、9月は堅調(solid)なペースでの拡大としていたところを、前回は力強い(strong)ペースでの拡大と、判断が上方修正された。
 二点目は、雇用の増加については、9月はこのところ鈍化(slowed)しているものの依然強いとしていたところを、前回はこのところ緩やか(moderated)なものの依然強いと、こちらも上方修正された。
 三点目は、信用状況の逼迫について、9月時点で指摘されていた家計や企業の資金関連に加え、前回は金融(financial)が加わった。
 今後については金融政策のこれまでの累積や、金融政策が経済活動や物価に与える時間差、経済・金融情勢などを考慮して、追加的な金融引き締めの程度を見極めるという9月の表現が踏襲され、追加利上げの可能性を残した。 
 パウエル米FRB議長の会見では、足元のインフレ状況についてかなり良好な数値が示されたとしつつ、インフレが持続的にターゲットである2%まで低下するプロセスにはまだ長い道のりがあると指摘。最近の長期金利の上昇が引き締めと同様の効果をもたらすことや、長期のインフレ期待が安定していることなどを示したものの、長期にわたって持続的に2%へインフレを低下させるのに十分制限的な状況を達成できたかどうかはいまだ確信が持てないと、追加利上げの可能性を残す発言が見られた。
 景気判断が上方修正されるなかで引き締め継続に向けた慎重な姿勢を維持されたかたちとなったことについて、委員たちがどのような議論を行い、意見が出てきたのかなどが注目されるところとなっている。追加利上げ期待が後退するような姿勢が強調されると、ドル売りが強まり、ドル円は148円00銭に向けた動きが広がると見られる。
ユーロ圏及び独・仏PMI速報値(11月)
11月23日
☆☆
 23日17時15分にフランス、同17時半にドイツ、同18時にユーロ圏の11月購買担当者景気指数(PMI)が発表される。10月のユーロ圏消費者物価指数は前年比+2.9%と9月の同+4.3%から大きく鈍化した。もっとも10月のドイツ消費者物価指数は前年比+3.8%、同フランス消費者物価指数は前年比+4.0%と依然としてかなり高い。また、ユーロ圏全体の物価が鈍化したとはいえ、インフレターゲットには届いていない状況で、ECBによる利上げは9月で打ち止めになったという見方が広がっている。ユーロ圏の景気鈍化懸念が利上げのハードルとなっている中で、先行性の高いPMIに対する注目が集まっている。フランス、ドイツ、ユーロ圏いずれも製造業・サービス業ともに小幅な改善が見込まれている。もっとも好悪判断の境とされる50には程遠い状況。予想ほどの改善が見られなかった場合、市場の警戒感を誘いユーロ売りが広がる可能性がある。ユーロドルは1.0800ドルに向けた動きが見込まれる。
米PMI速報値(11月)
11月24日23:45
☆☆☆
 24日に米国のPMIが発表される。市場予想は製造業PMIが49.8、サービス業PMIが50.5と、10月の50.0、50.6からともに小幅な鈍化見込みとなっている。
 製造業PMIは前回6か月ぶりに好悪判断の境とされる50を回復する結果となったが、今回再び50割れが見込まれている。
 15日に発表された10月の米小売売上高は7カ月ぶりのマイナスとなる前月比-0.1%となった。マイナスとなった要因としては自動車・同部品(前月比-1.0%)、家具(同-2.0%)、スポーツ・娯楽品・書籍(同-0.8%)の売り上げ減がある。値段の高い耐久消費財、娯楽関連用品などの買い控えは、家計の消費意欲の減退を意識させるものとなっている。それだけに、小幅ながら製造業PMIの鈍化と50割れは警戒感につながるところとなっている。
 サービス業は前回から鈍化するものの2月以来の50超えを維持する見込みとなっている。ただ、こちらも4月の54.9をピークに、ここ3カ月は50.5、50.1、50.6とぎりぎり50.0を超える水準での推移。今回も小幅ながら鈍化見込みで、厳しい状況となっている。
 製造業・サービス業PMIが予想を下回る弱めの結果が出ると、ドル円は147円台に向けた動きが見込まれる。

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