2023年12月04日号
先週の為替相場
ドル円は不安定な動きもドル安円高優勢
先週(11月27日-12月1日)のドル円相場は、ドル安が優勢な展開となった。週明け27日東京市場朝に1ドル=149円67銭を付けた後、29日東京午前には146円67銭まで3円のドル安円高となった。その後はいったんドルの反発が見られ、30日に148円51銭まで上昇したが、週末にかけてドル売り円買いが再び強まり、146円66銭までと、29日の安値をわずかながら下回っている。
23日の米感謝祭を前に進んだドル売りに、21日に147円10銭台を付けた後、感謝祭直前で見られたポジション調整もあって149円70銭台までドル買いが入った先々週の流れを受け、27日朝の市場は若干ドル高でスタート。しかし同日発表された中国工業利益が予想を大きく下回ったことや、中国シャドーバンキング(用語説明1)大手中殖企業集団が投資家に対して約5.4兆円の資金不足を発表したことなどを受けて、リスク警戒の円買いが優勢となった。
28日早朝に報じられた「マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る」との記事を受けて円買いが強まり147円台を付けた後、米債利回りの上昇などを受けていったん148円80銭台まで上昇した。
その後米連邦公開市場委員会(FOMC)関係者発言でドル売りが広がった。FOMCメンバーの中でも利上げに積極的なタカ派の代表格と見られているウォラーFRB理事が、利上げ終了の公算を示し、利下げの可能性に言及したことがドル売りにつながった。29日東京市場午前に米10年債利回りが4.276%まで低下する中で、ドル円は146円67銭を付けている。
米債利回りの上昇や、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁の利下げに慎重な発言などを受けて148円50銭前後までドル買いが入ったが、やや上値が重い展開。1日海外市場でパウエル米FRB議長が追加利上げの可能性に言及するなど従来姿勢を示しつつ、現状の政策金利水準について「抑制的な領域に深く入った」と発言したことで、市場の早期利下げ期待が一気に強まり、146円66銭までと週の安値を更新している。
ユーロドルはドル安の流れを受けて29日に1ユーロ=1.1018ドルまで上昇。8月11日以来の1.1000超えとなった。しかし同日発表された11月のドイツ消費者物価指数が市場予想を下回る伸びに留まったことや、30日のフランス消費者物価指数、ユーロ圏消費者物価指数もドイツ同様に弱い伸びに留まったことを受けて、来年1-3月に実施が期待されていた追加利上げ期待が後退。逆に早期の利下げ期待が広がる形でユーロ売りとなった。対円でのユーロ売りもあり、1日に1.0829を付けている。
ユーロ円はドル円の上昇もあって27日に1ユーロ=163円72銭を付けた後、ユーロ安円高が優勢となった。ドル円の下げに加え、ユーロ圏及びドイツ・フランスの物価の伸び低迷が重石となった。1日には米大手金融機関ゴールドマン・サックスのアナリストがECBの利下げ開始時期を前倒ししたことを発表したこともユーロ売りにつながり、159円65銭を付けた。
その他目立ったところとしては29日のニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合を受けて、追加利上げ期待が強まったNZドルの対ドルでの上昇。市場予想通り政策金利を5.50%で据え置いたNZ中銀。声明では追加利上げの可能性に言及。声明の中での政策金利見通しにおいて、来年第1四半期の利上げと2025年まで利下げを実施しないことを示唆したことで、NZドル高となった。
世界的に早期の利下げ開始期待が広がる中で、追加利上げの期待が広がったことで、NZドル高が広がり、23日に付けた1NZドル=0.5990ドル台から中銀の声明発表後に0.6150ドル台まで上昇。その後少し調整が入ったが、1日に29日の高値に迫る動きを見せるなど、堅調な動きとなった。
今週の見通し
タカ派で知られるウォラー米FRB理事が利上げ打ち止め見通しを示し、パウエル米FRB議長が慎重な姿勢を示すなど、ここにきて米FRBの姿勢に変化がみられているという印象。米国は2日からブラックアウト期間(用語説明2)に入っているが、その直前に慎重な姿勢が複数示されたことが、市場の早期利下げ期待につながっている。
ドルは当面上値の重い展開となりそう。147円台が重くなるようだと145円割れに向けた動きが強まる可能性がある。
ドルは全般に軟調となっているが、ユーロドルに関しては動きが限定的。先週発表されたユーロ圏及びドイツ・フランスの消費者物価指数が弱い伸びに留まったことで、米国同様に早期の利下げ開始期待が広がっており、ユーロの重石となっている。先週いったん1.10超えを示現したことで、上値一服感も出ており、ユーロ安の流れが続く可能性がある。1.0750に向けた動きが期待される。
ユーロ円はクロス円全般の下げに加え、ユーロ自体の軟調地合いもあり、下方向の動きが強まっている。先週の高値から4円超の下げとなっており、行き過ぎ感もあるが、ユーロの上値はかなり重くなると見ている。158円00銭に向けた動きを見込んでいる。
用語の解説
シャドーバンキング | 中国におけるシャドーバンキングは、銀行ではない証券会社、ヘッジファンド、その他金融機関による金融仲介業務のことを指す。中国国内で販売されている高利回りの資産運用商品である理財商品や信託商品がコアとなっている。 |
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ブラックアウト期間 | 中央銀行の政策決定会合メンバーが会合前後の時期に金融政策に関する発言を制限される期間のこと。米FOMCの場合、FOMCが行われる前々週土曜日からFOMC終了までがブラックアウト期間として定められている。 |
今週の注目指標
米ISM非製造業景気指数(11月) 12月6日00:00 ☆☆☆ | 10月の米供給管理協会(ISM)非製造業景気指数は市場予想の53.0を下回る51.6となった。2カ月連続の悪化で、5カ月ぶりの低水準となっている。ただ、全体の先行指標とされる新規受注が9月の51.8から55.5まで大きく上昇していたこともあり、今回の市場予想は52.3と改善が見込まれている。 ただ、1日に発表された11月のISM製造業景気指数が、改善予想に反して10月から横ばいの46.7に留まっている。非製造業景気指数も同様に弱めに出た場合、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は145円台に向けた動きが期待される。 |
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米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(10月) 12月6日00:00 ☆☆☆ | 米ISM非製造業景気指数と同時刻に10月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表される。注目度の最も高い求人件数は930万件と、9月の955.3万件からやや減少する見込み。前回は市場予想を上回る件数となり、雇用市場の堅調さが意識された。もっとも、その後米雇用統計の弱さなどから、米国の雇用市場の鈍化が懸念されている。予想を下回る件数に留まると、求人側からも厳しい状況が示されることで、米雇用市場への懸念が広がり、ドル売りにつながる可能性がある。同時に発表されるISM非製造業景気指数次第ではあるが、両指標がともに弱く出た場合は146円台前半に向けた動きとなる可能性がある。 |
米雇用統計景気指数(11月) 12月2日0:00 ☆☆☆ | 11月3日に発表された前回10月分の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回る伸びに留まった。また、前回値、前々回値が大きく下方修正されており、かなり弱い結果となっている。10月まで市場では米経済はこれまでの利上げを受けても底堅さを見せているという評価が強かったが、11月1日発表の米ISM製造魚景気指数の弱さと、3日の米雇用統計の弱さを受けて、米経済の鈍化懸念が広がった。その後米消費者物価指数などの物価統計の弱い伸びや、11月29日に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)でのここ数週間で米経済活動は減速との評価などもあって、米国の早期利下げ開始期待が広がる展開となっている。 前回のNFPの内訳を確認すると、財部門は前月比1.1万人減と10月の2.8万人増から一気に悪化し、3月以来のマイナス圏となった。ただ、これは全米自動車労組(UAW)のストライキの影響が大きいと考えられている。自動車及び同部品は3.3万人減、その影響もあって製造業全体で3.5万人減となって、財部門の雇用減につながった。サービス部門は前月比11万人増となり、9月の21.8万人増から10万人超の伸び鈍化となっている。特に弱かったのが運輸倉庫業で、9月の1.3万人増から1.2万人減となった。同部門は前回が4カ月ぶりのプラス圏となっており、従来の弱さに戻ったという面がある。その他は幅広く雇用の鈍化が見られた。少し気になるのが、小売業が9月の1.3万人増から10月は0.1万人増、娯楽・接客業が9月の7.4万人増から1.9万人増に鈍化したこと。景気に比較的敏感な部門での雇用の減少は米期の鈍化懸念を意識させるものとなった。 これまでに発表済みの関連指標を確認すると、週間ベースの米新規失業保険申請件数(イニシャルクレームス)は、米雇用統計の基準日である12日を含む週のデータで10月は20.0万件、11月は20.9万件となっている。若干11月が弱いものの、ほぼ誤差の範囲となった。 1日に発表された11月の米ISM製造業景気指数は10月の46.7から横ばいの46.7となった。市場予想は47.8への改善となっていた。内訳の内、雇用部門は10月の46.8から45.8と悪化した。改善が期待されていただけに厳しい数字となっている。 今週発表される米ISM非製造業景気指数、米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、米ADP雇用者数の結果にもよるが、4日時点での市場予想は非農業部門雇用者数が前月比20万人増前後と前回の15万人増から改善見込み、失業率は前回と同じ3.9%となっている。 予想前後の雇用者数の改善が見られた場合は、米景気鈍化懸念の一服につながりそう。予想を下回り、前回並みの伸びに留まった場合は、早期利下げ期待がさらに強まり、ドル売りが加速する可能性がある。 |
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