2023年12月18日号

(2023年12月11日~2023年12月15日)

先週の為替相場

ドル円は米FOMC後にドル安進む

 先週(12月11日-18日)のドル円相場は、注目された米連邦公開市場委員会(FOMC)までドル高円安傾向が見られたが、その後一気にドル安が進み、約4か月半ぶりのドル安円高となる1ドル=140円97銭を付けた。

 週の始まりはドル高が優勢となった。8日に発表された米雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比+19.9万人と市場予想の+18.5万人を超える伸びとなり、失業率が予想外に3.7%まで低下したことによるドル買いが、11日の市場でも続いた。7日の植田日銀総裁による「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」発言によって強まった今月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除について、日銀関係者筋情報として今月マイナス金利解除を急ぐ必要はほとんどないと報じられたことも円売りを誘い、ドル円は146円59銭まで上昇した。

 12日発表の11月米消費者物価指数(CPI)を前にポジション調整のドル売りが強まり12日の日本時間朝に146円を割り込むと、145円台前半まで下げて米CPIを迎えた。米CPIはほぼ市場予想通りとなった。イベントクリアの安心感もあっていったん144円70銭前後まで売りが出たが、すぐに反発。145円60銭台を付けた。その後はFOMCを前に145円台での推移となった。

 FOMC結果を受けてドル売りが強まった。政策金利は予想通り据え置き。声明は追加利上げの必要性の表現に若干の変更。もっとも大きな動きを誘ったのが、FOMCメンバーによる経済・物価見通しを示すSEPの中で示された2024年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)。9月時点では5.00-5.25%が中央値となっていたが、4.50-4.75%まで低下。現行水準から来年中3回の利下げを見込む形となった。ここまでの利下げは市場も織り込んでおらず、サプライズなドル売りとなった。その後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長会見では勝利宣言は時期尚早との発言も、利下げのタイミングを協議したとの発言があり、ドル売りが加速。米債利回りの低下も見られ、14日東京市場で140円97銭と7月31日以来のドル安円高を付けた。

 その後は141円台をすぐに回復。値ごろ感からのドル買いなども入り14日海外市場で142円台を付けた。その後は週末まで142円を挟んでのレンジ取引となった。

 12日のドイツZEW景況感指数(用語説明1)の好結果もあり、ユーロドルは1ユーロ=1.08ドル台を回復。同日の米CPI直後のドル売りもあり、1.0827ドルを付けた。その後は1.0800ドル前後での推移が続いて米FOMCを迎えた。FOMC後のドル売りに1.09台に上昇。14日欧州中央銀行(ECB)理事会は市場予想通り政策金利が据え置かれた。ラガルドECB総裁は理事会後の会見で利下げは議論しなかったと発言。米FOMCに比べてタカ派姿勢の維持が目立ったことでユーロ買いが強まり、1.1009ドルを付けている。

 1.10超えでのユーロ買いに慎重姿勢が見られたことや、15日のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)及びドイツPMI、フランスPMIが総じて弱かったこともあり、1.08台を付けて週の取引を終えた。

 ユーロ円はドル円の上昇や、8日米雇用統計の好結果を受けたリスク選好の円売りに11日に1ユーロ=157円60銭台を付けた。その後156円50銭から157円50銭のレンジ内での推移が続いた後、米FOMC後のドル円の下げに153円80銭台まで下落。ドル円の安値からの買い戻しやECB理事会後のユーロ買いに156円50銭前後まで上昇。その後は対ドルでのユーロ売りに押されて154円50銭を一時割り込むなど、不安定な動きとなった。

 ポンドドルは12日の英ILO雇用統計(用語説明2)で賃金の伸びが鈍かったことを嫌気したポンド売りが入り、米FOMC前に1ポンド1.2500ドルを付けた。FOMC後のドル売りに1.2600ドルを超える動きとなり、さらに14日のイングランド銀行金融政策会合(MPC)後にポンド高が強まった。英MPCは市場予想通り政策金利の据え置きとなったが、投票結果は前回と同じ6対3で、3名の委員が利上げを主張していた。この結果を受けて英国の早期利下げ期待が後退し、ポンド高となり、1.2790ドル台まで上値を伸ばしている。

 ポンド円はドル円の上昇などを受けて11日に1ポンド=184円30銭台まで上昇。その後のドル円の下げに178円30銭台まで下げた。英MPC後のポンド高もあり181円70銭台を付けたが、その後180円割れを付けるなど一方向の動きにならなかった。

 

今週の見通し

 18日、19日開催の日銀金融政策決定会合に市場の注目が集まっている。植田日銀総裁発言を受けた円買いは一服したが、日本の全国消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI前年比)が、2022年4月以降1年半以上にわたってインフレターゲットの2%を超えていることもあり、海外勢を中心に現行のマイナス金利の解除に向けた動きを期待する動きが広がっている。

 今回の会合での声明や会見でこれまでの緩和継続姿勢からの後退が見られるようだと、来年1月もしくは3月でのマイナス金利解除の期待につながり、円買いが入る可能性がある。米国の早期利下げ開始期待が広がっている中だけに、日米金利差の縮小を期待したドル売り円買いが広がりそう。ドル円は14日に付けた140円97銭を下回る動きが期待される。

 一方、本邦勢を中心に日銀は粘り強い緩和を続ける姿勢を堅持するとの見方も強い。この場合は海外勢を中心に失望の円売りが出ると見られ、ドル円はいったん上昇を見せる可能性。144円台を付ける動きが見込まれる。

 ユーロドルは米債利回りの低下を受けたドル安の流れが支えとなっているが、上値トライにも慎重姿勢が見られる。先週のECB理事会でのラガルド総裁の姿勢は市場の期待よりもタカ派であったが、市場ではECBの早期利下げ期待が根強い。1.10台でのユーロ買いに慎重な動きが見られると、再びのユーロ安トライがありそう。

 ユーロ円はドル円次第の面が強いが、対ドルでのユーロの重さから、やや下方向にリスクが高いと見ている。

用語の解説

ドイツZEW景況感指数 ドイツの民間調査会社欧州経済研究センター(ZEW:Zentrum fur Europaische Wirtschaftsforschung:Centre for European Economic Research)が、アナリストや機関投資家を対象に行ったアンケート調査を基に算出する景況感指数。Ifo景況感指数の先行指標としても注目される。
ILO雇用統計 イギリス国家統計局(ONS)は、国連の専門機関であるILO(国際労働機関)の基準による失業率や賃金動向などの指標と、ONS独自基準による失業率や失業保険申請件数などの指標を同時に発表している。ほとんどの国での失業率はILO基準に準拠していることもあり、市場の注目はILO基準によるものの方が一般的に高くなっている。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合結果発表
12月19日
☆☆☆
 年内最後となる日銀金融政策決定会合が18日、19日に開催され、19日昼前後に結果が発表される。同日15時半から植田日銀総裁による会見が予定されている。7日に植田日銀総裁が参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジング」と発言したことで、海外勢を中心に一時本会合でのマイナス金利解除などを期待する動きが見られた。同発言の前日6日に氷見野副総裁が、大規模な金融緩和からの出口戦略が家計、企業、金融機関に与える影響に関して「良い結果につなげることは十分可能」と肯定的な発言を行ったこともあり、短期金利市場動向から計算された利上げ確率が40%近くまで高まる場面が見られた。その後日銀関係者筋発言として、「マイナス金利解除、今回の会合で急ぐ必要はほとんどない」と報じられたこともあり、過剰な利上げ期待が後退。直近では短期金利市場で99%が据え置きを見込む動きとなっている。
 こうした中、市場の注目は今後のマイナス金利解除などの出口戦略に向けて、会合声明や植田総裁会見での姿勢に変化が見られるかに移っている。日本の全国消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI前年比)は、2022年4月以降1年半以上にわたってインフレターゲットの2%を超えており、海外勢を中心に早期のマイナス金利解除を予想する動きが広がっている。基本的には前回声明を踏襲したものになると見られるが、姿勢変更を意識させる踏み込んだ内容が見られると円買いが強まる可能性がある。ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。
英消費者物価指数(CPI)
12月20日16:00
☆☆☆
 20日に11月の英国物価統計、消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、生産者物価指数(PPI)が発表される。インフレターゲットの対象指数として注目度の高いCPI前年比は前回の+4.6%から0.3%伸びが鈍化して+4.3%と見込まれている。9月は+6.7%となっており、前回は2021年10月以来の低い伸びとなった。今回さらに伸びが鈍化することで、+2%のインフレターゲットに向けた流れの継続が意識される。ただ、前回の伸び鈍化はエネルギー価格の下落を反映して電気・ガスなど公益部門が-3.5%となったことや、上昇が激しい食品部門が+10.1%と依然二けたとはいえ、9月の+12%台から大きく鈍化したことなどが背景にある。食品とエネルギーを除いたコア指数は+5.7%と高い水準を維持しており、今回も+5.6%と小幅な鈍化に留まると見られている。予想前後の伸びを示すと、英国の早期利下げ期待が後退。利下げ期待の強いドルやユーロに対するポンド買いが強まる可能性がある。ポンドドルは1ポンド=1.2800ドル超えに向けた動きが期待される。
米PCEデフレータ(11月)
12月22日22:30
☆☆☆
 米国のインフレターゲットの対象指標である個人消費支出(PCE)デフレータが22日に発表される。すでに発表済の同系統の指標である米消費者物価指数は前年比+3.1%と10月の+3.2%から小幅な鈍化となった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+4.0%と10月と同水準の伸びとなった。エネルギー価格の下落、特にガソリン価格の下落が全体を押し下げたが、住居費を除いたサービス指数が前年比+3.5%と10月の+3.0%から伸びが強まったことが全体を押し上げた。
 PCEデフレータは前年比+2.8%と10月の+3.0%から鈍化見込み。コアデフレータも+3.3%と10月の+3.5%から鈍化見込みとなっている。予想通りの伸び鈍化を示すと、市場の早期利下げ開始期待につながり、ドル売りにつながる。ユーロドルは1ドル=1.10ドル台を付ける動きが期待される。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。