2023年12月25日号

(2023年12月18日~2023年12月22日)

先週の為替相場

ドル円は米FOMC後にドル安進む

 先週(12月18日-22日)のドル円相場は、日本銀行金融政策決定会合を巡ってドル円相場が激しく動いた。7日の参議院財政金融委員会に出席した植田日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことで、海外勢を中心にマイナス金利解除が早まるとの期待を強め、円買いが広がった。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル売りに14日に一時1ドル=142円割れを付けた後、戻りが鈍くなり142円台前半で18日からの週の取引がスタートした。本邦勢を中心に日銀がマイナス金利の解除を実施するとしても、春闘の動向が確認できる来年春以降で、今回は慎重姿勢を維持する可能性が高いという見方も強く、調整もあって18日海外市場で143円台を付ける場面が見られたが、戻りは鈍く142円60銭台で19日昼の日銀会合結果発表を迎えた。

 会合では現行の金融政策を継続し、必要であれば躊躇なく追加緩和との従来姿勢を維持した。大方の見方通りではあったが、海外勢を中心に躊躇なくの文言削除など、マイナス金利の解除に向けた地ならしが行われるとの期待が強かったため、発表後は円売りとなった。143円70銭台まで急騰した後、少し調整が入ったが、15時半の植田総裁会見を受けて円売りが強まった。会見ではチャレンジング発言について、仕事に取り組む姿勢についての質問を受けての発言で、金融政策に関するものではないと示された。ドル円は144円96銭まで上値を伸ばした。

 ドル円は145円を付けきれず、その後ドル売りが強まった。カザークス・ラトビア中銀(用語説明1)総裁のインフレ警戒発言などを受けてユーロドルでのユーロ高ドル安が進み、ドル全般の売りにつながった。米長期債利回りの低下なども重石となった、

 21日に発表された米第3四半期GDP確報値(用語説明2)が改定値から下方修正されたことでドル売りが強まり、一時141円台を付けたが、クリスマスを前に積極的なドル売りを手控える動きもあり、142円台で週の取引を終えた。

 ユーロドルは米FOMC後のドル売りや、ECB理事会後のユーロ買いに1ユーロ=1.1000ドル台を付けた後、週末にかけてのポジション調整で1.0900ドル割れまで落として15日の取引を終え、その流れで18日朝に1.0892ドルを付けた。19日に上述のラトビア中銀総裁発言を受けたユーロ買いに1.0980ドル台まで上昇。その後少し売りが出て1.0950ドルを挟んでの推移が続いた後、米第3四半期GDP確報値を受けたドル売りに1.1000ドル台を付けた。その後も堅調な動きが続き、22日に1.1040ドル前後まで上値を伸ばした。

 ユーロ円は日銀会合を受けた円売りと、対ドルでのユーロ買いに上昇。19日に7日以来のユーロ高となる1ユーロ=158円57銭を付けた。その後はドル円の上昇一服などに押され、156円10銭台を付けている。

 ポンドドルは20日の英物価統計で消費者物価指数前年比が市場予想を下回る3.9%の伸びに留まった。約2年ぶりの低水準の伸びに、前日に1ポンド=1.2760ドル台を付けたあと、1.2720ドル前後でもみ合っていたところから、1.2650ドル割れまで急落。その後も売りが強まり1.2612ドルを付けている。

 ポンド円は日銀会合後1ポンド=184円20銭前後まで上昇したあと、20日の英物価統計を受けたポンド売りに181円台半ばまで下落。その後も売りが続き21日に一時180円割れを付けた。

今週の見通し

 クリスマス明けは年末まで大きな材料がなく、動きにくい展開が予想される。本邦勢の参加者が少なくなることも、ドル円の動きを抑える展開につながる。

 年明けは3日の米ISM製造業景気指数と米JOLTS求人件数、5日の米雇用統計など重要指標をにらんでの展開。米国の早期利下げ開始期待が強く、そのカギを握る景況感や雇用市場の動向に神経質な反応を見せやすい。2024年は利下げ開始の時期、その後のペースなどに注目が集まりそう。利上げ局面では物価関連統計が最重要視されていたが、利下げ局面では景気動向、特に雇用の状況に神経質な反応を見せやすい点に注意が必要。

 非農業部門雇用者数(NFP)は前回から伸びが鈍化する見込み。失業率も0.1%ポイントの悪化が見込まれている。米国の早期利下げ開始期待が強まると、ドル全面安につながり、ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。日銀のマイナス金利早期解除期待が継続する中で、ドル円はかなり不安定な動きになる可能性がある。

 ユーロドルは、1.10ドル台での買いに慎重姿勢が見られ、ゆっくりした動きとなっているが、ドル全面安基調の中でじりじりと上をトライしている。1.1000前後がしっかりしてくると、7月に付けた1.1270台をターゲットにゆっくりと上昇を続けると期待される。

 いったんドル主導の展開が見込まれ、ユーロ円は難しい展開。ドル円の下げが厳しくなると、ユーロ円も上値の重い展開が見込まれる。

用語の解説

ラトビア中銀 ラトビア中銀(LATVIJAS BANKA)はラトビアの中央銀行。ラトビアは2014年に自国通貨ラットに代わりユーロを導入した。バルト三国としては2004年にユーロを導入したエストニアに次いで二カ国目(その後残るリトアニアもユーロを導入)。カザークス総裁は2019年12月から総裁を務めている。
米第3四半期GDP確報値 米国のGDPは対象期間が終了した翌月末に速報値、その約1カ月後に改定値、さらにその約1カ月後に確報値を発表する。第3四半期(7-9月期)であれば、10月末に速報値、11月末に改定値、12月半ば(クリスマスの関係で12月だけ早めの発表)に確報値が発表される。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(12月)
1月4日0:00
☆☆☆
 前回11月のISM製造業景気指数は10月の46.7から47.8に改善するとの予想に反し10月と同水準の46.7となった。先行指標として注目される新規受注が45.5から48.3に改善したものの、生産、雇用などの悪化が響いた。前回の新規受注の好結果もあり、今回は47.2と小幅な改善が見込まれている。前回同様に予想よりも弱めの結果が出てくると、ドル売りが強まる可能性がある。ユーロドルは1.1100ドルに向けた動きが強まると見込まれる。
米JOLTS求人件数(11月)
1月4日0:00
☆☆☆
 前回10月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は市場予想の930万件を大きく下回る873.3万件に留まった。9月の数字も955.3万件から935万件まで下方修正された。米雇用市場の悪化が印象付けられる形で、ドル売りにつながった。
 今回は886万件と前回から小幅な改善が見込まれている。コロナ前は600万から700万件台がほとんどであり、決して弱い水準ではないが、前回一気に悪化した印象があり、予想前後の改善に留まると、やや厳しいという印象を与えそう。ドル円は5日発表の米雇用統計を前に上値を抑える材料となりそう。
米雇用統計(12月)
1月5日22:30
☆☆☆
 前回11月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の前月比19.9万人増と、市場予想の18.5万人増を上回った。もっとも9月分の結果が29.7万人増から26.2万人増に下方修正されている。失業率は10月と同水準の3.9%という予想に対して3.7%に低下した。
 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、全米自動車労組(UAW)のストライキから復帰した自動車産業の雇用増もあって、製造業が2.8万人増と堅調な伸びを見せた。サービス部門は情報業が7カ月ぶりに雇用増に転じたものの、小売業の3.8万人減、運輸・倉庫の0.5万人減が重石となった。小売りや運輸倉庫など景気に敏感な業種の雇用減は、米景気の鈍化懸念につながった。
 今回は非農業部門雇用者数が17万人増と前回から小幅鈍化見込み。失業率は3.8%と0.1%ポイント悪化見込みとなっている。米雇用市場の厳しい状況が示される形となりそう。市場予想前後もしくはそれ以下の雇用の伸びに留まると、ドル売りにつながりそう。ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。

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