2024年01月09日号

(2024年01月01日~2024年01月05日)

先週の為替相場

2024年に入ってドル高やや優勢

 年末年始(12月25日-29日、1月1日-5日)のドル円相場は、年末までドル安が優勢となり、2024年に入って一転してドル高円安が進む展開となった。

 12月25日のクリスマスは日本や中国など一部を除いて世界的に休場。26日も欧州などが休場で取引参加者が少なかった。27日から通常取引となったが、年末年始を前に取引参加者が少なく、やや閑散とした取引となった。27日の東京市場朝に公表された12月18日・19日開催日銀金融政策決定会合主な意見(用語説明1)において、「現在、慌てて利上げしないとビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」などの意見が見られ、海外勢を中心に根強く残っていた1月のマイナス金利解除期待が後退。ドル円は1ドル=142円30銭台から142円85銭を付けるなど、ドル高円安となった。

 同日実施された米5年債入札が好調で、米長期債利回りが低下(債券価格が上昇)したことなどをきっかけに、海外市場で一転してドル安が進んだ。ドル円は141円50銭台を付けた。ユーロドルが1ユーロ=1.1123ドルを付けるなど、ドルは全面安となった。その後もドル売りが続き、28日にドル円は140円20銭台、ユーロドルは1.1139ドルと、ともに2023年7月以来のドル安となった。

 2024年に入ると今度はドル高円安が優勢となった。1日に発生した令和6年能登半島地震を受けて、海外勢が根強く期待していた1月の日銀会合でのマイナス金利解除期待が後退。3日に公表された12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨において、金利が予想よりも長くピークに留まる可能性が指摘されたことも、ドル高を誘った。

 3日の米ISM製造業景気指数、4日の米ADP雇用者数、5日の米雇用統計などの指標が軒並み好結果となったこともドル高を支えた。ドル円は5日の米雇用統計後に145円97銭まで上昇。12月13日以来のドル高円安となった。

 146円の大台を付けきれずに少し調整が入り、さらに同日の米ISM非製造業景気指数が予想を下回ったことで143円80銭台までドルが急落。少し戻して144円60銭台で先週の取引を終えた。

 ユーロドルは12月28日の高値からドル全面高の流れを受けてユーロ安ドル高となり、3日の米FOMC議事要旨公表後に1.0890ドル台を付けた。その後は1.09ドル台を中心とした推移。5日の米雇用統計後のドル高に1.0877ドルを付けたがすぐに1.09ドル台を回復。その後のドル安局面でも1.0998ドルまでと1.10ドル台を付けきれずの推移となっている。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ買いなどに27日に1ユーロ=158円39銭まで上昇。その後はユーロ安円高が進み、2日に155円00銭台を付けた。2024年に入ってドル円の上昇が進むと、ユーロ円も159円00銭前後まで上値を伸ばした。

今週の見通し

 5日の米雇用統計が強めに出たこともあり、米国の早期利下げ期待がやや後退している。ただ、米短期金利先物市場動向から見た政策金利見通しを示すCMEのFedWatchツールでは米雇用統計後に約5割に低下した3月の利下げ割合が、同日の米ISM非製造業景気指数の弱い結果もあり7割程度まで上昇。週明け少し低下傾向も6割程度が利下げを織り込んでおり、依然多数派となっている。

 米国の早期利下げ期待が根強い一方、4月までの利下げが織り込まれている欧州中央銀行(ECB)に関しては、理事会メンバーのブイチッチ・クロアチア国立銀行(中央銀行)総裁(用語説明2)が今夏より前に利下げを行う可能性はおそらくないと早期の利下げに否定的な発言を行うなど、関係者からの利下げに慎重な発言が見られている。米国やユーロ圏に比べて物価鈍化が遅れている英国でも早期利下げに慎重な姿勢が見られ、欧州通貨高ドル安が進む可能性がある。

 11日の米消費者物価指数(CPI)次第で流れが大きく変わる可能性があり、それまではやや動きにくい面があるが、CPIが市場予想前後となった場合、対欧州通貨でのドル売りからドル全面安の流れが強まる可能性がある。

 もっとも米CPIはエネルギー価格の前年比ベースでの伸び拡大見込みもあって、前回からやや強めの伸びが見込まれている。食品とエネルギーを除いたコアベースでは前年比の伸び鈍化が見込まれているが、総合の伸びが予想を超えてきた場合やコアで伸び鈍化が見られない場合などは、一気のドル高となる可能性がある。ある程度予想からのブレがある指標だけに注意が必要となる。

 ドル円は米CPIまで143円ちょうどから144円後半を中心とした推移を見込んでいる。米CPI後は、結果次第であるが、予想通りもしくは弱めの数字が出てくると、140円台に向けた動きが強まる可能性がある。

用語の解説

日銀金融政策決定会合主な意見 日本銀行は、2016年からそれまで年14回開催されていた日銀金融政策決定会合を、米連邦公開市場委員会やECB理事会などと同様に年8回とするなど、運営見直しを実施した。その一環として、速やかな情報発信手段として主な意見の公表をスタートした。会合における政策委員の意見を整理し、会合の原則6営業日後に公表される。
ブイチッチ・クロアチア国立銀行総裁 ボリス・ブイチッチ(Boris Vujčić)はクロアチアの中央銀行であるクロアチア国立銀行(CNB)総裁。1964年に現在のクロアチアの首都ザグレブ(クロアチアは当時ユーゴスラビア連邦の一部)に生まれ、クロアチア大学で経済学博士号を取得。同大学で教鞭をとった後、クロアチア国立銀行に入行。副総裁を経て2023年1月に総裁に就任。クロアチア大学在籍中にミシガン州立大学への留学や欧州委員会での勤務などの経歴がある。

今週の注目指標

豪月次消費者物価指数(11月)
1月10日10:00
☆☆
 昨年11月の会合で利上げを実施するなど、豪州は物価高対応が最近まで続いた。今年に関しては利下げの開始が見込まれているが、市場の見通しは6月からとなっており、春には利下げを開始すると見られている米国や欧州よりも遅くなっている。ただ、物価動向次第では利下げ開始期待が前後する可能性がある。11月の月次消費者物価指数は前年比+4.4%と10月の+4.9%から伸びが大きく鈍化する見込みとなっている。予想を超える鈍化を見せると、早期利下げ期待が強まり豪ドル売りにつながる。5日に付けた1豪ドル=0.6640ドル台を試す可能性がある。
米消費者物価指数(CPI)(12月)
1月11日22:30
☆☆☆
 5日に発表された12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数の伸びが予想を上回った。ただ10月と11月の数字が下方修正されており、米国の早期利下げ期待を大きく後退させるには至らなかった。市場は米CPIの結果に注目している。今回はエネルギー価格の前年比が前回の-5.4%ほど大きなマイナスにはならない見込みで、CPI全体では前年比+3.2%と前回の+3.1%から小幅な上昇見込みとなっている。食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.8%と前回の+4.0%から伸びが鈍化する見込み。総合が予想を超える伸びを示した場合や、コアの伸びが予想に反して鈍化しなかった場合は、市場の早期利下げ期待が一気に後退しドル買いにつながる可能性がある。ドル円は145円台に乗せる大きなドル高円安が見込まれる。
台湾総統選挙
1月13日
☆☆
 13日に台湾総統選が実施される。与党・民進党からは二期8年の任期が満了する蔡英文の後継者として、元医師で民進党主席の頼清徳、最大野党・国民党からは元警察官僚で新北市長の侯友宜、第3政党である民衆党からは元医師の柯文哲が出馬する。民進党候補がややリードも、差は小さく三つ巴の争いとなっている。対中強硬路線の民進党が現在のリードを守って勝利するようだと、台中関係悪化を警戒したリスク回避の円買いが入る可能性がある。ドル円は142円台に向けた動きが見込まれる。

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