2024年01月22日号
先週の為替相場
ドル高円安となり、昨年11月28日以来の1ドル=148円80銭を付ける
先週(1月15日-19日)のドル円相場は、ドル高円安となった。米生産者物価指数(PPI)が予想を下回ったことを受けたドル売りに12日に1ドル=144円36銭を付けた流れから、15日は144円80銭台でスタート。同水準を先週の安値圏として、その後ドル高円安となった。
15日はキング牧師の日で米国市場が休場。取引参加者が少ない中で、ドルは堅調な動きとなった。同日発表されたドイツの2023年通年のGDPが前年比-0.3%とマイナス成長となったことを嫌気したユーロ売りドル買いなどがきっかけとなった。
16日もドル高が優勢となった。12日に3.91%台を付けていた米10年債利回りが4%台を回復する中で、ドル円は146円台へ上昇。新NISA関連の外貨買い需要期待などもあり、昨年12月7日以来の146円75銭前後を付けた。さらに同日ウォラー米FRB理事が2024年中に利下げを開始することが可能としながらも、過去のように急速に動いたり、急激な利下げを実施したりする理由は見当たらないとの姿勢を示したことで、ドル高が強まり147円台を付けた。
17日もドル高が継続。短期金利先物市場動向からの政策金利数巡見通しを示すCMEFedWatchToolにおいて、米PPI後に約80%程度となっていた3月の利下げ見通しが50%台に低下しておりドル買いとなった。17日の12月英消費者物価指数(CPI)前年比が+4.0%と11月の+3.9%、市場予想の+3.8%を上回る伸びとなったことを受けたポンド円の上昇もドル円を支えた。さらに17日の12月米小売売上高が予想を上回る伸びとなり、ドル円は148円50銭前後を付けた。
18日は目立った材料がない中で、いったんドル高の調整が入り147円60銭台を付けたが、同日中に148円台を回復。19日に入ってもドル高円安の流れが続き、日経平均の大幅高を受けた円売りにも支えられ、昨年11月28日以来となる148円80銭前後を付けた。鈴木財務相が「為替相場を注視している」と発言したが、相場への影響は限定的となった。
高値警戒感もあり、19日海外市場で一時147円80銭台までと1円弱のドル売りとなったが、その後148円50銭を付けるなど、ドル高の流れは変わらず、148円10銭台を週の取引を終えた。
ユーロドルは上値の重い展開。15日のドイツ2023年GDPのマイナス成長で1ユーロ=1.0960ドル台から1.0930ドル台へ下落。その後1.0950ドルを挟んでの推移となったが、16日の11月ECB消費者期待調査において、1年先及び3年先のインフレ見通しが低下したことなどをきっかけにユーロ売りが強まり、1月5日以来の1.0900割れを付けた。ドル高もあって17日に1.0845ドルまで下げたが、日本株の上昇を受けたユーロ円でのユーロ買いなどもあり、1.0890ドル台へ上昇して週の取引を終えた。
ユーロ円はドル円の上昇を支えに上昇。日経平均の力強い動きを受けたリスク選好の円売りが対ユーロでも見られ、15日の1ユーロ=158円50銭台から19日に昨年11月30日以来の高値161円86銭を付けた。
今週の見通し
米国の早期利下げ期待の後退がドル売りにつながっている。22日、23日の日銀金融政策決定会合では緩和姿勢の継続が示されると見られ、日米金利差を狙った取引が継続するとの思惑がドル買い円売りにつながっている。
150円を超えて大きく上昇するという見方はそれほど強くないが、150円をトライするような動きは十分にあるとの見方が広がっている。
来週30日、31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるため、20日からブラックアウト期間(用語説明1)に入っており、米FRB関係者発言が基本的に出てこない。ブラックアウト直前の目立った発言を見ると、昨年11月にあと数か月ディスインフレが続けば利下げ開始が可能と発言してドル売りを誘ったウォラー理事(用語説明2)が、2024年中に利下げ開始が可能だが、利下げを急ぐ必要がない旨を示しており、早期利下げ開始期待の後退につながった。市場が期待する3月のFOMCでの利下げ開始となる場合、来週のFOMCでも何らかの示唆があると期待されるが、従来姿勢を踏襲し、今後への言質を与えない姿勢が示される可能性があり、ドル買いが入りやすい地合いとなっている。ドル円は下がると買いが出る流れと見られ、ある程度の調整を交えながら150円をトライする展開を見込んでいる。
用語の解説
ブラックアウト期間 | 中央銀行の金融政策会合前後で、会合関係者が金融政策に関する発言を制限される期間。米国は連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される前々週土曜日(今回の場合1月20日)から会合翌日まで会合参加者は基本的に発言を禁止される。日本銀行は決定会合開始日の2営業日前から会合後の総裁記者会見終了時刻まで国会で発言する場合などを除き、金融政策及び金融経済情勢に関して外部に発言しないと申し合わせが発表されている。 |
---|---|
ウォラー理事 | クリストファー・J・ウォラー(Christopher J. Waller)FRB理事。ミネソタ州ベミジ州立大学を卒業後、ワシントン州立大学で経済学の修士号及び博士号を取得。インディアナ大学での助手及び准教授を経て、ケンタッキー大学やノートルダム大学で教授職を務めた。2009年からセントルイス連銀の調査部門トップを務め、2020年12月より現職。FOMCメンバーの中ではインフレへの警戒感が強く、利上げに積極的なタカ派の代表格と捉えられている。 |
今週の注目指標
日銀金融政策決定会合 1月22日/23日 ☆☆ | 日銀金融政策決定会合では従来の緩和姿勢が維持される見込み。海外勢を中心に根強く見られたマイナス金利解除など金融政策正常化期待は、1月1日の能登半島地震などの影響で後退しており、緩和姿勢維持で見通しがほぼ一致している。今回公表される経済・物価統計の展望(日銀展望レポート)では2024年度の物価(消費者物価指数生鮮除く前年比)見通しと2023年度の経済成長見通しの下方修正が見込まれている。 物価見通しは従来の前年比+2.8%から原油価格の低下などを反映して+2.5%前後へ修正される見込み。2023年度の経済成長見通しは7-9月期GDPのマイナス成長から従来の前年度比+2.0%の達成は難しいと見られている。 こうした下方修正はすでに織り込み済みとなっているが、予想以上の修正が入るようだと、市場の期待する4月会合でのマイナス金利解除などの期待が後退し、円売りがもう一段進む可能性がある。ドル円は149円台に向けた動きが見込まれる。 |
---|---|
米第3四半期GDP速報値 1月25日22:30 ☆☆☆ | 25日に米第4四半期GDP速報値が発表される。第3四半期は前期比年率+4.9%(確報値)と2021年第4四半期以来の高い伸びとなり、米景気の底堅さを印象付けた。内訳をみると、第2四半期に+0.8%となった個人消費が+3.1%まで強まったことに加え、住宅投資が+6.7%と第2四半期の-2.2%から一気に伸び、全体を支えた。金利上昇の影響を受けても、消費の底堅さや住宅需要の高さなどが感じらした。一方設備投資は+1.4%と低調なものとなった。 第4四半期の予想は前期比年率+2.0%と第3四半期から伸び鈍化の見込み。予想通りの結果が示されると2023年第1四半期以来の低い伸びとなる。強めに出た前期の反動に加え、雇用市場に一時ほどの勢いがないことや、金利上昇の影響などから個人消費が鈍化するとの見通しが背景にある。 もっとも個人消費に関しては、全米小売連盟(NRF)が1月17日に公表した2023年年末商戦期間(11-12月)の小売売上高が前年比+3.8%。金額では9644億ドル(実店舗、オンライン合計)と、事前予想の範囲内も予想レンジの上限(9666億ドル)に近い好結果となっており、比較的好調さを示したことから、警戒感が少し後退している。 その他、厳しい材料としては在庫投資の弱め予想がある。在庫投資は前回778億ドルと第2四半期の149億ドルから大きく増加し、GBP全体を1.27%押し上げた。10月、11月の米在庫関連指標はかなり弱く出ており、GDP算出に使われる自動車を除いた小売在庫は10月が前月比-1.0%、11月が-0.9%と2カ月連続でマイナス圏となっている。ブレの大きな項目だけに、意外と強く出る可能性が否定出来ないが、見通し通り低めに出ると、全体を押し下げてくると見られる。 第4四半期GDPが市場予想前後の伸び鈍化を見せた場合や予想よりも弱かった場合は、3月の利下げ開始期待につながり、ドル売りとなる可能性がある。ユーロドルは1.1000ドルに向けた動きが強まる可能性がある。 |
米PCEデフレータ(12月) 1月26日22:30 ☆☆ | 26日に12月の米個人消費支出(PCE)デフレータが発表される。米国のインフレターゲットの対象指標である指標であるが、同系統の指標である12月の米消費者物価指数(CPI)が既に11日に発表済であり、市場の注目度はCPIに比べると少し低い。 12月の米CPI前年比は+3.4%と11月の3.1%、市場予想の+3.2%を上回る伸びとなった。食品とエネルギーを除いたコア指数前年比は+3.9%と11月の+4.0%からは鈍化も市場予想の+3.8%を上回った。もっとも12日に発表された米生産者物価指数(PPI)は前年比+1.0%と11月の+0.8%よりは強い伸びとなったものの、市場予想の+1.3%を大きく下回った。コア指数前年比は+1.8%と、11月及び市場予想の+2.0%を下回っている。物価統計が好悪まちまちとなり、PCEデフレータの結果が注目されている。市場予想は前年比+2.6%と11月と同水準。コア前年比は+3.0%と11月の+3.2%から鈍化見込みとなっている。 米CPIが強めの伸びとなった背景には全体を100としたとき34.8%を占めるかなり大きな項目である住居費が前年比+6.2%と高い水準を維持したことと、ガソリンが11月の-8.9%から-1.9%まで低下幅が縮んだことが大きい。PCEデフレータでも同様の傾向が見込まれるが、住居費が指標全体に占める割合がPCEデフレータの方がかなり小さいため、全体の伸びが抑えられると見られる。 CPIの強さに比べると落ち着いた伸びが示されることで、今後のインフレターゲット2%の到達に向けた期待が残り、早期の利下げ開始期待につながる可能性がある。ドル高が一服し、ドル円は146円台に向けた動きが期待される。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。