2024年01月29日号

(2024年01月22日~2024年01月26日)

先週の為替相場

ドル高円安となり、昨年11月28日以来の1ドル=148円80銭を付ける

 先週(1月22日-26日)のドル円相場は、日銀金融政策決定会合などの重要イベントが並ぶ中で上下に動きを見せたが、一方向の動きにはならなかった。

 ドル円は19日に日経平均の大幅高などを好感したリスク選好のドル買い円売りが強まり、昨年11月28日以来のドル高となる1ドル=148円80銭前後を付けた。高値を付けた後に利益確定のドル売りが強まって19日までの週の取引を終えると、週明け22日もやや上値の重い展開で始まった。

 もっとも22日、23日開催の日銀金融政策決定会合を前に様子見ムードが広がったことや、22日の東京株式市場で日経平均が一時600円を超える上昇を見せ、リスク選好の円売りが入ったことなどから、147円台ではドル買い円売りが出る流れとなった。

 日銀金融政策決定会合は市場予想通り金融政策の現状維持を決定。声明にも目立った変化が見られなかった。経済・物価情勢の展望(日銀展望レポート)では、2024年度の物価見通しが前年比+2.4%と示され、市場が予想していた+2.5%をわずかながら下回った。この結果を受けて発表直後は円売りが入り、148円55銭前後を付けたが、円売りは続かず、すぐに発表前の水準に戻すと、その後は上値の重さが意識されて147円台を付けた。

 その後の植田日銀総裁の会見では、物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっているとの発言があり、前向きな姿勢が示された。この会見を受けて円買いが強まり、146円99銭を付けた。

 この円買いも続かず、その後は米債利回り上昇などを支えにドル高となった。ユーロドルが昨年12月13日以来のユーロ安ドル高となる1ユーロ=1.0822ドルを付けるなど、ドル全般に買いが優勢となった。

 23日の植田日銀総裁発言を受けて翌24日の日本国債市場で長期債利回りが上昇。10年物国債利回りが0.738%を付ける中で円買いが進んだ。米債利回りの低下や、同日発表された1月の英製造業購買担当者景気指数(PMI)の好結果を受けたポンド買いドル売りなどを材料に、ドル安となり、146円66銭を付けた。

 24日の米製造業PMIが予想を上回り、好悪判断の境となる50も超える力強い結果となり、ドル買いに復すと、週末までドル高が継続し、148円10銭台で週の取引を終えた。

 ユーロドルは23日に安値を付けた後、25日のECB理事会を前にいったん反発。ユーロ圏及び独・仏のPMIはサービス業が予想を下回ったものの、製造業が予想よりも強くユーロ買いを支えた。また、英PMIの強さを受けたポンド高ドル安もユーロ高につながった。ユーロドルは1.0930ドル台まで上昇も、米PMIの強さを受けたドル売りに反落。

 25日のECB理事会は市場予想通り政策金利の据え置きを決定した。理事会後のラガルド総裁会見では、利下げの議論は時期尚早など、市場の早期利下げ期待をけん制する動きを見せたが、12月のインフレの反発は予想よりも弱かったなどの発言から、市場はECBの早期利下げ期待を強めた。理事会前からのユーロ売りが強まり、翌26日には23日の安値を割り込んで1.0813ドルを付けた。その後週末前の調整もあって1.0880ドル台までユーロ高となった。

 ポンドドルも23日のドル高局面で1ポンド=1.2649ドルまでポンド安となった。24日の英PMIは製造業、サービス業ともに予想を上回った。直前に発表されたユーロ圏及び独・仏PMIは、サービス業が予想を下回ったのに対して、英サービス業PMIは12月から悪化予想に反して12月から改善する強い数字となっており、1.2775ドルを付けるポンド高となった。その後は利益確定のポンド売りなどが入り、1.2700を挟んでの推移となった。

 ユーロ円はやや上値の重い展開となった。今年に入って1ユーロ=155円00銭台から161円80銭台までの上昇を見せたことで、高値警戒感が出ていた。

 日銀会合直後の円売りに161円72銭を付けた後、利益確定売りなどに押され160円40銭台を付けると、その後は161円台が重くなった。160円00銭から161円00銭のレンジ取引となった後、ECB理事会後のユーロ売りに159円70銭前後まで下落。もっともドル円の上昇もあって、下値では買いが出ると、26日に160円80銭台を付けている。

 ポンド円は日銀会合後の円売りに1ポンド=188円92銭を付けた。利益確定の売りなどに187円40銭台を付けると、その後は188円50銭前後が重くなり、187円00銭から188円50銭にかけてのレンジ取引となった。

今週の見通し

 今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)とイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)といった中銀会合、米ISM製造業景気指数、米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、米雇用統計など相場への影響力が大きい主要な米経済指標の発表が予定されており、その結果次第という面が大きい。

 米FOMCと英MPCはともに現状維持見込み。 

 米FOMCは市場の早期利下げ期待などを踏まえ、声明などが注目される。市場は3月の利下げ開始を期待していたが、直近の米指標の強さもあり、利下げ開始時期予想を先送りする動きが広がっている。短期金利先物市場動向からみた政策金利見通しを示すCMEのFedWatchToolでは、3月の見通しが利下げと据え置きでほぼ拮抗しており、声明や議長会見内容次第で大きな動きにつながる可能性がある。

 英MPCは前回6対3での据え置きとなった。外部委員(用語説明1)3名が利上げを主張している状況。市場は比較的早い段階での利下げを期待しているが、3名の利上げ主張が見られる状況での利下げ実施はハードルが高い。状況の変化を確認したいところで発表までは動きにくい。今回はスーパーサーズデー(用語説明2)で注目度が高いこともあり、発表までポンドの動きは限定的なものに留まりそう。

 米経済指標は総じて直近の数字からはやや悪化もまずまずという予想。米景気の底堅さを示す展開が見込まれ、ドル円はしっかりとした動きが見込まれる。ただ、米国の利下げ時期に関する見通しが3月と5月で拮抗するなど、先行き見通しがぶれている状況だけに、指標結果をしっかり確認したいという意識もあり、週の前半は動きにくさがありそう。

 ドル円は米指標、特に米雇用統計の結果次第で150円超えも十分にあり得るが、2日の発表まではやや神経質も値幅が抑えられる展開が見込まれる。

用語の解説

MPC外部委員 英中銀の金融政策会合(MPC)は、総裁、副総裁、チーフエコノミストなど5名の英中銀内部委員と、4名の外部委員で構成されている。米FOMCや日銀金融政策決定会合は議長提案が否決されたケースが現行制度の中で一度もないが、英MPCの場合、議長が少数派に回るケースがこれまでに何度か見られており、投票結果の注目度が高い。
スーパーサーズデー 英中銀は年8回の金融政策会合(MPC)の内、2月、5月、8月、11月の4会合において、四半期金融報告を発表する。この4回の会合日をスーパーサーズデーと呼ぶ。米国のFOMCにおけるSEP、日銀会合における展望レポートなども8回の会合の内、4会合となっているが、英中銀の場合、スーパーサーズデーにあたる回以外では基本的に議長会見が実施されないため、スーパーサーズデーの回の注目度が特に高い。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
2月1日04:00
☆☆☆
 1月30日、31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利は現状維持で市場の見通しはほぼ一致している。昨年末時点では3月の利下げ開始をほぼ織り込む動きを見せていた。1月に入っても3月の利下げ見通しが継続し、5日の12月米雇用統計、11日の12月米消費者物価指数などの主要指標が強めの結果となっても、3月利下げ見通しが大勢という状況が続いた。
 しかし、これまでの米国の利上げを受けて警戒感のあった個人消費や住宅関連指標などが堅調さを示したことなどを材料に、じりじりと3月の利下げ開始期待が後退。25日に発表された米第4四半期GDP速報値が予想を大きく上回ったことも材料となり、3月は据え置き見通しと利下げ見通しがほぼ拮抗する状況となっている。
 3月に利下げ開始となる場合、今回のFOMC声明や議長会見で何らかのヒントが出てくる可能性が高い。議長はこれまで市場の早期利下げ開始期待をけん制する姿勢を示しており、今回も従来の姿勢を踏襲し、利下げに向けた示唆は見られない可能性が高い。この場合利下げ期待が5月もしくは6月以降に先送りされる可能性があり、ドル買いにつながる。ドル円は149円台に向けたドル高が見込まれる。
英中銀金融政策会合
2月1日21:00
☆☆☆
 英中銀金融政策会合(MPC)の結果が1日21時に発表される。結果、議事要旨に加え、金融政策報告書(MPR)が公表され、ベイリー総裁の会見が実施されるスーパーサーズデーにあたっている。政策金利は現状の5.25%での据え置きが見込まれている。17日に発表された12月の英消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%と、11月の+3.9%から伸びが鈍化するとの市場予想に反して伸びが強まった。インフレターゲットの2%がまだ遠い状況となっている。
 物価高が継続する中、前回利上げ主張に回った3名は、利上げ主張を継続すると見られる。
 
 前回11月に公表された英MPRでは成長率見通しが下方修正され、インフレ見通しが上方修正された。インフレ見通しはさらに上方修正される可能性があり、メンバーの利上げ主張継続と合わせ、市場の利下げ開始見通しが先送りされる可能性がある。
 短期金利市場は5月までの利下げ開始を50%近く織り込んでおり、6月までの利下げ開始を100%織り込んでいるが、こうした期待が先送りされるとポンド高につながる。ポンド円は1ポンド=190円超えを試す可能性がある。
米雇用統計(1月)
2月2日22:30
☆☆☆
 12月の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+21.6万人と、市場予想の+17.0万人を大きく上回る伸びとなった。もっとも、10月分が+15.0万人から+10.5万人、11月分が+19.9万人から+17.3万人に計7.1万人の大きな下方修正となっている。失業率は11月と変わらずの3.7%となった。
 非農業部門雇用者数の内訳をみると、財部門全体(製造業、建設業、鉱業など)では+2.2万人とまずまずの結果となったが、そのうち、製造業が+0.6万人に留まっており、やや冴えない伸びとなった。
 サービス部門は全体で+14.2万人としっかりした伸びとなった。これまでも雇用を支えてきた教育・医療サービスが+7.4万人、娯楽・接客業が+4.0万と12月分でもしっかり伸びていた。11月は-2.4万人と弱かった小売業は+1.7万人と回復を見せた。一方、運輸・倉庫は-2.3万人と3カ月連続でマイナス圏となった。雇用の先行指標と言われるテンポラリーヘルプサービスは-3.3万人となり、11カ月連続でのマイナス圏。
 このところの雇用を支える教育・医療サービスの中の医療・社会福祉と娯楽・接客業の中の飲食産業での雇用の堅調さが続いていると見込まれており、1月分も堅調さが期待される。ただ、景気に敏感な部門である運輸・倉庫の弱さは警戒感につながっている。
 関連指標の内、週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査期間(雇用統計は基準日である12日を含む1週間の数字)の被るデータを見ると、12月の20.6万件から1月は18.9万件と減少を見せた(失業保険のため、少ない方が好結果)。
 その他有力な関連指標は今週これからの発表。
 30日の12月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の予想は870.9万件と11月の879万件とほぼ同水準。ただ、ブレの大きい指標だけに注意が必要。予想を下回って減少を見せると、警戒感が強まる。
 31日の1月ADP雇用者数の予想は14.8万人と12月の16.4万人から鈍化見込み。
 1日の1月米ISM製造業景気指数は47.0と12月の47.4から鈍化見込み。前回48.1と11月の45.8から一気の改善を見せた雇用部門の数字にも注意したい。
 今回の米雇用統計の市場予想は、非農業部門雇用者数が前月比+18.0万人と12月から伸びが鈍化見込み。ただ、10月、11月よりは強い伸びで、水準的にもまずまずという印象。失業率は3.8%と12月の3.7%から0.1%ポイント悪化見込み。
平均時給は前月比+0.3%、前年比+4.1%。前年比は12月と同水準、前月比は12月より小幅鈍化見込み。
 12月に比べると、全般にやや厳しい結果が見込まれているが、水準的には弱いものではなく、予想前後であれば、米雇用市場は底堅いという印象を与えると見られる。予想前後もしくはそれ以上の雇用や平均時給の伸びが見られるようだと、ドル買いが強まると予想される。ドル円は150円に向けた動きが期待される。

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