2024年02月19日号
先週の為替相場
高値警戒感も、ドル高円安継続か
先週(2月12日-2月16日)のドル円相場は、ドル高円安が優勢となり、一時1ドル=150円89銭を付けた。その後は調整の動きも、149円台半ばではドル買いが出るなど、しっかりの展開。
12日は建国記念日の振替休日で日本市場が休場。取引参加者が少ない中、13日に発表される米消費者物価指数(CPI)待ちの展開となり、利益確定のドル売りに一時148円台を付けた。売り一巡後は149円台に戻すなどドルの堅調さが意識される中、149円台前半で米CPIを迎えると、CPI前年比、食品とエネルギーを除くコア前年比がともに市場予想を上回る強い伸びとなり、ドル高が強まった。ドル円は150円台後半へ急騰。昨年11月16日以来のドル高となる150円89銭を付けた。
151円手前の売りが上値を抑えると、150円50銭前後を中心としたもみ合いを経て、15日海外市場で米債利回りの低下を受けたドル売りに149円台を付けた。同日の米小売売上高が予想以上の減少となったことでドル売りが強まり149円57銭を付けている。
その後150円00銭前後を付けるなど、ドル円は下がるとドル買いが出る流れ。ボスティック・アトランタ連銀総裁の利下げを急ぐ必要ないといった発言もドル円を支えた。
16日の1月米生産者物価指数(PPI)が予想を上回る伸びとなり、ドル円が150円60銭台まで上昇。特に食品・エネルギを除いたコア指数は前年比+2.0%と予想及び前回値を上回る伸びを見せ、ドル高となった。もっともドル買い一巡後はすぐに発表前の水準に戻した。
ユーロドルは米CPI発表前にポジション調整の動きなどから1ユーロ=1.0790ドル台まで上昇。米CPI後のドル買いに一気に1.0700ドル台を付けた。その後もユーロ安圏での推移となり、CPI発表翌日に1.0690ドル台を付けた。
安値を付けた後は一転してユーロ高となった。米小売売上高を受けたユーロ買いドル売りや、シュナーベルECB理事(用語説明1)による政策スタンスを時期尚早に調整しないように慎重であるべきといった発言がユーロ買いにつながった。
ユーロ円はドル円が148円台を付けた局面で1ユーロ=160円38銭を付けた。その後は総じてユーロ高円安となった。ドル主導の展開の中、不安定な動きを見せる場面があったが、株高を受けたリスク選好の円売りが優勢で、16日に161円95銭を付けている。
豪ドルドルは米CPI後のドル高に1豪ドル=0.6530ドル前後から0.6440ドル台を付けた。その後は一転して豪ドル買いとなった。0.6500ドル台まで上昇したタイミングで、15日の1月豪雇用統計がかなり弱く出たことで0.6470ドル台まで豪ドル売りが入ったが、すぐに豪ドル高基調に復した。失業率が約2年ぶりの高水準になるなど、弱い豪雇用情勢も、すぐに豪ドル買いが入ると、その後は地合いの強さが意識され、上昇の勢いが強まり、16日に0.6540ドル台を付けている。
今週の見通し
米消費者物価指数(CPI)の伸びを受けて、3月のFOMCでの利下げ見送りだけでなく、5月も見送られるとの見方が大勢となっている。6月の利下げについても懐疑的な見方が一部で出ており、ドル買いが入りやすい地合いとなっている。
内田副総裁、植田日銀総裁が相次いでマイナス金利解除でも緩和姿勢維持との姿勢を示したことで、日米金利差を狙った取引が当面続くとの見方が広がっており、ドル円は特にドル高になりやすい。
今週はそれほど目立った米経済指標の発表が予定されておらず、一気のドル買いには慎重姿勢も、下値を確認しつつじりじりとした上昇が見込まれる。
2022年10月、2023年11月と二度上値を抑えた151円90銭台が強く意識されているが、151円手前からドル売りが出ており、高値トライまでには少し時間がかかりそう。149円台でのドル買い意欲を確認しながらの展開が見込まれる。
ユーロドルは先週いったん1.06台をトライもすぐに反発。その後ユーロ買いが少し入った。米国の早期利下げ期待が後退する一方で、ユーロ圏の景気動向への警戒感から、ECBの早期利下げ期待が継続しており、戻りでは売りが出やすい流れ。1.08台の重さを確認してからのユーロ売りが見込まれる。
ユーロ円は堅調地合いを維持しそう。株高の流れがユーロ円を始めとするクロス円の支えとなっている。21日(日本時間22日早朝)に米半導体大手エヌビディアの決算が控えており、その結果次第で米株式市場が大きく動く可能性がある。決算が弱く出た場合、世界的にリスク警戒の動きが広がる可能性がある点に注意したい。
用語の解説
シュナーベルECB理事 | イザベル・シュナーベルECB理事。独ドルトムント生まれ、マンハイム大学で博士号取得、マインツ大学教授、ボン大学教授を経て、2019年より現職。ECB理事の中では物価対応に積極的なタカ派的な姿勢で知られている。 |
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エヌビディア | カリフォルニア州に本社のある世界的な半導体メーカー。画像処理の演算装置GPUの開発・製造を行う。AI向けの販売が好調で先週時価総額でマイクロソフト、アップルに次ぐ全米第3位となった。 |
今週の注目指標
米FOMC議事要旨 2月22日 04:00 ☆☆☆ | 1月30日、31日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。市場予想通り4会合連続での政策金利据え置きを決めた1月のFOMCでは、声明でそれまでのFOMCで見られた追加的な金融引き締めについての言及がなくなり、次の方向性が利下げであることを示した。一方で「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切でないと考えている」と市場で広がっていた早期の利下げ開始期待をけん制。パウエル議長もその後の会見で3月の利下げについて「おそらくないだろう」と発言し、早期の利下げ期待をけん制した。 12月FOMCの議事要旨では、全参加者が2024年中の利下げという基本シナリオを示す経済見通しについて極めて不確実としたうえで、経済状況次第で追加利上げとの指摘があるなど、タカ派姿勢が目立っていた。こうした姿勢がどのように変化し、各メンバーが今後の利下げ開始についてどのような姿勢を示しているのかが注目される。 早期利下げ期待に対するけん制が目立つようだと、5月の利下げ期待が後退する形でドル買いが強まる可能性がある。ドル円は151円台に乗せる動きが見込まれる。 |
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ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値(2月) 2月22日18:00 ☆☆☆ | ユーロ圏及び加盟主要国の2月購買担当者景気指数(PMI)速報値は総じて1月から改善。フランス、ドイツ、ユーロ圏はいずれも製造業、サービス業ともに1月よりも強めの予想となっている。もっともいずれも好悪判断の境となる50を下回る水準にとどまる見込み。ユーロ圏製造業PMIの予想は47.0と、4カ月連続で改善が見込まれているが、改善ペースがゆっくりで50がまだ遠い印象。サービス業PMIは48.8と1月の48.4から改善も、12月と同水準が見込まれている。ユーロ圏景気の冴えない状況がECBの早期利下げ期待につながり、ユーロドルの重石となっている。予想を下回って前回並みもしくはより弱い結果になるとユーロドルは1.06ドル台トライが意識される。 |
米購買担当者景気指数(PMI)速報値(2月) 2月22日23:45 ☆☆☆ | 2月に入って発表された米経済指標は雇用統計や消費者物価指数が強く出るなど全般に好調も、小売売上高に弱さが見られるなど厳しい部分もあった。景況感については前回1月のPMIやPMIと同系統の指標であるISM製造業・非製造業景気指数が強めに出るなど、これまでの金利上昇を受けても強さが継続している。こうした強さが今回も続くようだと、インフレ期待の高止まりへの警戒感もありドル高が見込まれる。 もっとも16日に発表された2月のミシガン大学消費者信頼感指数は、1月よりも強く出たものの、市場予想に届かないものとなった。米PMIの市場予想は製造業が50.1と前回の50.7から小幅悪化、非製造業も52.0と前回の52.6から小幅悪化見込みとなっている。特に製造業は好悪判断の境となる50.0が迫っており、ミシガン同様に市場予想を下回り、50を割り込むと、米景気への警戒感につながる可能性がある。米国の早期利下げ期待の回復につながりドル売りとなる可能性がある。ドル円は150円割れが見込まれる。 |
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