2024年03月04日号

(2024年02月26日~2024年03月01日)

先週の為替相場

ドル円は売り買い交錯

 先週(2月26日-3月1日)のドル円相場は、売り買いが交錯し、方向性のはっきりしない展開となった。26日、27日に1ドル=150円80銭台を付けたが、13日に付けた今月の高値150円89銭に届かなかった。その後149円21銭までドル売りが出たが、すぐに反発し150円72銭まで上昇した後、150円00銭台を付けるなど、上下に動きが見られたが、一方向の動きが続かなかった。

 23日に150円77銭を付けた流れが継続し、週明け26日もドル高が優勢となった。東京市場では米債利回りの低下もあり150円29銭を付けたが、その後米債利回りが反転上昇しドル高が強まり、150円84銭を付けた。

 27日は日本の全国消費者物価指数が予想を超える伸びとなったことを材料に円高となった。前日上昇した米債利回りの低下もあり、150円08銭まで下げたが、150円台を維持したことで反発。米債利回りが再び上昇に転じたこともあり、翌28日にかけてドル高となった。28日のニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合で政策金利が据え置かれた後にNZドル売りドル買いが強まると、ドル全般の買いを誘ってもう一段のドル高となった。

 28日の米2023年第4四半期GDP改定値は速報値から小幅下方修正されていったんドル売りも、GDP全体の約7割を占める個人消費が上方修正されたことや、GDPデフレータの上方修正などが好感されてドル高に転じ、先週の高値となる150円85銭を付けた。

 29日東京市場午前に高田日銀審議委員(用語説明1)が「2%の物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた」と発言し、日銀のマイナス金利早期解除期待が強まる形で円買いとなった。ドル円は発言を受けて150円70銭前後から149円70銭台まで急落。東京市場午後の同委員の会見で出口戦略について聞かれ「どんどん利上げをするということではない」と発言したこともあり、円買いが落ち着き150円台を付けた。もっとも上値が重くなると、月末要因での円買い需要の噂や、米PCEデフレータの伸びが鈍化したことなどを材料に149円21銭までドル安円高となった。

 ドル売り一巡後は反発し150円台を回復。G20でブラジル訪問中の植田日銀総裁が東京市場1日朝の時間帯に記者団に答え「物価目標実現見通せる状況に至っていない」と発言したことも円売りとなり、150円72銭まで上昇。しかし1日の米ISM製造業景気指数が予想外に前回から悪化したことでドル売りとなり150円00銭台まで下落した。

 ユーロドルはドル高局面で1ユーロ=1.0800ドル割れを試したが、1.07ドル台でのユーロ売りに慎重。その後反発した。27日から28日にかけてのドル全般の上昇で1.0860ドル台から1.0797ドルを付けた。29日の米PCEデフレータの伸び鈍化などを受けたドル安もあり、1.0850ドル台まで反発したが、ドル売り一巡後のドル買いに前日の安値をわずかに割り込む1.0796ドルを付けた。1日にも1.0798ドルを付けるなどユーロ安が続いたが、米ISM製造業景気指数の弱さを受けたドル売りに1.0840ドル台を付けている。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ高や、堅調なドル円を支えに26日に1ユーロ=163円72銭を付けた。その後はやや上値が重くなり163円00銭を挟んでの推移となった後、高田日銀審議委員発言を受けた円買いに161円69銭までユーロ安円高となった。ドル円の反発や日経平均の大幅高などを支えに1日に163円台を一時回復している。

 NZ中銀は5会合連続の据え置きを決定。もともと据え置きが織り込まれていたが、オア中銀総裁が今月出席したNZ議会財政委員会で「インフレはまだ高すぎる」「インフレへの取り組みはまだ終わっていない」などと発言したことで、一部で利上げ期待が広がった。結果は大方の予想通り据え置きとなったが、利上げを期待した参加者からのNZドル売りが入り、NZドルは発表直後に急落を見せた。

今週の見通し

 今週は8日の米雇用統計を始め、市場が注目する指標発表やイベントが目白押し。米国の材料としては経済指標として雇用統計の他に、5日に米ISM非製造業景気指数、6日に米ADP雇用者数、米雇用動態調査(JOLTS)求人件数などが予定されている。イベントとしては5日に米大統領選候補者決定のための予備選挙が集中するスーパーチューズデー、6日と7日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言、7日にバイデン米大統領の一般教書演説(用語説明2)がある。日本では5日に植田日銀総裁が発言予定。ユーロ圏では7日にECB理事会が予定されている。

 こうしたイベントを受けて、やや不安定な動きが見込まれる。ただ、流れとしては依然としてドル高円安と見られる。日米の金利差を狙った取引の継続が見込まれること、株高の動きからリスク選好の円売り継続が期待されることなどがドル円を支えると見られる。

 先週一時149円21銭までドル安円高となったことで、ドル円上昇の過熱感が弱まり、ドル買いポジションの整理も進んだことで、ドル買いが新規に入りやすくなった面も、ドル円を支えると見られる。

 151円手前のドル売り注文が残っていると見られるが、151円台に乗せて2022年10月、2023年11月に二度上値を抑えた151円90銭台が意識する展開が見込まれる。

 ただ米雇用統計などの結果次第で状況が一気に変化する可能性がある点には注意したい。

 ユーロ円などクロス円も同様に、基本的には円安の継続も、流れの変化に注意。

用語の解説

高田審議委員 日本銀行金融政策委員会審議委員。東京大学卒業後日本興業銀行に入行。みずほ証券執行役員・グローバルリサーチ本部副本部長、みずほ総合研究所副理事長、岡三証券グローバルリサーチセンター理事長などを経て、令和4年7月より現職。
一般教書演説 米大統領が連邦議会両院議員を対象に米国の状況や主要な政治課題について演説するもの。大統領は議会に出席する権利を持っておらず、教書という形で議会に文書を提出し、議会の許可のもと教書を説明するという形で議会で演説を行うもの。

今週の注目指標

半期議会証言
3月6日-7日
☆☆☆
 パウエル米FRB議長が6日に下院金融サービス委員会、7日に上院銀行・住宅・都市問題委員会で半期に一度の議会証言を行う。これは完全雇用均等法(ハンフリーホーキンス法)に基づいて、半期に一度FRBが議会に報告書を提出し、議長が議会で証言を行うもの(法律自体は失効済)。金融政策の状況と今後について議会という公式の場で議長が証言を行い、質疑応答もあるということで、今後の金融政策動向を占う上で重要なイベントとなっている。議長から今後の利下げ開始に向けて何らかのヒントが出てくるとドル安となる。ドル円は149円台前半に向けた動きが見込まれる。
ECB理事会
3月7日22:15
☆☆☆
 欧州中央銀行(ECB)理事会の結果が7日に発表される。政策金利は現状の中銀預金金利4%、リバースレポ金利4.5%、限界ファシリティー金利4.75%維持で市場の見方が一致している。
 前回1月の理事会後に公表された声明では、従来の「政策金利をこの水準で十分に長く維持することが、インフレの抑制に大きく貢献する」との表現を維持し、市場の早期利下げ期待をけん制した。一方で「引き締まった資金調達環境が需要を減退させており、これがインフレ率の押し下げに寄与している」と、現行の抑制的な金融政策がインフレを抑えていることを示した。
 もっとも、これにより懸念が広がる景気動向に現状の金利水準が影響していることが示された形となり、それほど遠くない時点での利下げ開始を意識させるものとなった。ECBによる利下げ開始時期について、市場の見方が分かれる中で、前回声明での表現がどう変化するのか、理事会後のラガルド総裁会見内容と合わせて注目が集まっている。早期利下げ開始に消極的な姿勢が示されるとユーロ高となる。ユーロドルは1.09台に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(2月)
3月8日22:30
☆☆☆
 前回1月の雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の前月比+18.7万人に対して+35.3万人と予想を大きく上回る伸びとなった。1月分は季節調整のベンチマーク変更などがある為、過去値を含めブレが生じやすいが、10月分が+10.5万人から+16.5万人、11月分が+17.3万人から+18.2万人、12月分が+21.6万人から+33.3万人に上方修正されており、ブレを考慮してもかなり強いという印象を与えた。失業率は12 月と同じ3.7%、市場予想は3.8%への悪化となっており、こちらも強い数字であった。平均時給は前月比+0.6%、前年比+4.5%と、12月の+0.4%、+4.3%を上回っている。市場予想は+0.3%、+4.1%と伸び鈍化見込みとなっており、こちらも強めの数字。
 前回の非農業部門雇用者数の内訳をみると、幅広い業種で雇用が増加。すそ野が広く注目度の高い製造業が+2.8万人と堅調な伸びを示したほか、景気に敏感で雇用の流動性も高い小売業と運輸・倉庫業が+4.5万人と+1.6万人とともに堅調な伸びを示していた。
 今回の雇用統計の関連指標を見ると、週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査対象期間の重なる12日を含む週の数字が1月の18.9万件に対して、2月は20.2万件と少し悪化した。1日に発表された2月の米ISM製造業景気指数は47.8となり、16カ月連続で好悪判断の境となる50を割り込んだ、市場予想は49.3と1月の49.1から小幅改善となっていたが予想外の悪化となった。内訳をみると、前回はかなり強くでた新規受注、生産がともに大きく低下。前回弱めに出た雇用はさらに低下し45.9となった。2月27日に発表された2月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は、106.7と市場予想の115.0を大きく下回る弱い結果となった。1月の数字も114.8から110.9に大きく下方修正されている。内訳のうち雇用部門を見ると、雇用が十分にあるという回答が42.7%から41.3%に低下、職を得るのが困難であるとの回答が11.0%から13.5%に悪化と厳しい数字となっている。
 その他今後発表される関連指標は、5日(日本時間6日午前0時)の2月ISM非製造業景気指数の市場予想は52.9と1月の53.4から小幅悪化見込み、6日の2月米ADP雇用者数は前月比+15万人と1月の+10.7万人から小幅上昇見込みとなっている。
 今回の市場予想は、非農業部門雇用者数が前月比+20.0万人と前回の35.3万人から伸びが大きく鈍化する見込み。失業率は3.7%で1月と同水準見込みとなっている。平均時給は前月比+0.2%、前年比+4.3%とともに前回から伸びが鈍化見込み。総じて前回に比べて弱い数字が見込まれている。非農業部門雇用者数の前月比+20万人は、節目にも到達しており、水準としては決して低い伸びではない。ただ、これまでが強かった分、印象としては弱いものとなる。予想を下回り、節目の20万人を割り込む伸びに留まった場合、ドル売りが強まる可能性がある。ドル円は149円台前半への下げが予想される。

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