2024年03月18日号
先週の為替相場
ドル高円安進む
先週(3月11日-15日)のドル円相場はドル高円安となった。米消費者物価指数や生産者物価指数の強い伸びから米国の早期利下げ開始期待が後退。一方日本銀行の早期マイナス金利解除見通しについては、すでに解除を織り込んでいるとの認識が広がったことでドル高円安につながった。
週明け11日はそれまでの日銀によるマイナス金利早期解除期待での円買いの流れもあり1ドル=146円49銭と8日の安値に並ぶ展開となった。
12日に鈴木財務相(用語説明1)がデフレ脱却に向けた千載一遇のチャンス、デフレから脱却したとまでは認識していないと発言したことでドル円は安値圏から上昇。さらに参議院財政金融委員会に出席した植田日銀総裁が食品など非耐久財に弱めの動きと発言したことで147円40銭前後を付けた。
同日の米消費者物価指数は前年比+3.2%と市場予想を超える伸びとなった。一時148円台まで急騰したが。FRBが重視しているとされる住居費を除いたサービス指数、いわゆるスーパーコアの伸びが鈍化したこともあり、上昇分をいったん解消した。
その後147円台を中心とした推移となったが、14日の米生産者物価指数(PPI)が予想を上回る伸びとなったことでドル高が強まり、148円台に上昇。一時はほぼ織り込まれていた6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率が、金利先物市場で70%を割り込み、更なる利下げ先送り期待が広がったことでドル買いとなった。
15日の連合による春闘第一回集計結果は、平均賃上げ率が5.28%と前年の3.80%を大きく上回った。この結果を受けて日銀が19日、20日の会合でマイナス金利を解除するとの見通しが強まったが、織り込み済みということで発表直後に148円04銭前後まで下落した後は反発。149円15銭前後を付けた。
ユーロドルは1ユーロ=1.0950ドルを挟んでの推移から、14日の米PPIを受けたドル高に1.0900ドルを割り込む動きとなった。15日に1.0870ドル前後を付けた後は1.0900ドルが上値抵抗水準となっている。
ユーロ円は対ドルでのユーロ売りよりも、ドル円での円売りの勢いが強く、11日の1ユーロ=160円22銭から15日に162円40銭を付けた。
今週の見通し
日米の金融政策会合をにらむ展開。日銀の金融政策決定会合では2016年に導入したマイナス金利政策の解除が決まると見られている。-0.1%からゼロ金利への0.1%ポイントであるが、利上げであることに違いはなく、本来は円買い材料となる。ただ、5日の150円50銭前後から8日の146円49銭までのドル安円高は、マイナス金利解除期待による円買いが入った部分が大きいと見られる。すでに市場はマイナス金利解除を織り込み済みということで、実際に解除が決定しても更なる円買いにはなりにくい。
イールドカーブコントロール(YCC)の撤廃やETF買い入れの停止などの従来緩和政策の修正も円買い材料であるが、報じられている国債買い入れ額の告知などによって緩和姿勢の維持が示された場合は、円売りが続く可能性が高い。
米国の早期利下げ開始期待が後退しており、19日、20日の米FOMCの結果、6月のFOMCでの据え置き期待が過半数を超えるような状況になると、大きなドル高円安につながる可能性もある。
ドル円は今年に入って上値を抑える150円台後半の売りを崩し、151円台トライとなる可能性が十分にある。
ユーロドルは方向性を探る展開が続きそう。米国の早期利下げ開始期待が後退したことで、ECBによる利下げが先んじる可能性が出てきた。ユーロ売りドル買いの材料となるだけに、ユーロドルを買いにくい展開となっている。もっとも積極的に下値をトライするだけの勢いもなく、1.08ドル台前半から1.09ドル台後半にかけてのレンジ取引が続く可能性が高い。
ユーロ円などクロス円は基本的にしっかりと見られる。株高の動きなどが支えとなり、ユーロ円は2月26日に付けた163円72銭をターゲットした展開が期待される。
用語の解説
鈴木財務相 | 鈴木俊一財務大臣。自由民主党所属の衆議院議員(岩手県2区当選10回)。環境大臣、東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣などを経て、2021年10月の岸田内閣発足に伴って財務大臣に就任。第2次岸田内閣、第2次岸田改造内閣でも続投。 |
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ETF | ETFとはExchange Traded Fundの略で上場投資信託のこと。東京証券取引所など全国の金融商品取引所に上場している投資信託。日経平均やTOPIXなどの指数に連動するように運営されている指数連動型投資信託の一種で、個別株などと同様に証券会社を通じて取引所で売買が可能。日銀によるETF買い入れにおいては、設備人材投資ETF枠を除いて投資対象はTOPIX連動型ETFとなる。 |
今週の注目指標
日本銀行金融政策決定会合 3月18日/19日 ☆☆☆ | 今回の日銀金融政策決定会合では、2016年から続いたマイナス金利政策を解除する見込みとなっている。日本銀行は2016年1月の会合で当座預金の一部にマイナス金利の適用を決定(適用は同年2月から)した。日銀よりも前にマイナス金利を導入していたECBやスイス中銀はすでにマイナス金利を解除しており、現在日銀のみがマイナス金利政策を維持している。日銀は現在の緩和的な政策を修正するにあたって、賃金上昇を伴う物価上昇により、インフレが目標を安定的に実現する目途が高まることを条件としている。3月13日に集中回答日を迎え、15日に連合が第一回の集計結果を発表した2024年の春季労使交渉(春闘)では、平均賃金上昇率が5%を超え、33年ぶりの高水準となった。これを受けてマイナス金利解除の環境が整ったとの見方が広がった。 マイナス金利の解除に加え、YCC(イールドカーブコントロール)も同時に解除されるかどうかなども注目されている。ETF買い入れの停止なども含め、従来政策の修正を一気に行う一方、国債買い入れ額を予め提示するなどの方法で緩和姿勢を維持を示すことで、長期金利の急騰などを抑えてくるとの見方が出ている。マイナス金利解除が実施された場合でも、緩和姿勢の継続が強調されると円売りが強まる可能性がある。 |
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米連邦公開市場委員会(FOMC) 3月21日03:00 ☆☆☆ | 19日、20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。昨年末ぐらいまで、今回のFOMCでの利下げ開始を予想する動きが広がっていた。しかし、米主要経済指標の力強さなどもあって、開始時期に見通しが先送りされており、今回の会合での金利据え置きが完全に織り込まれている。現状では6月会合での開始見通しが大勢となっている。 そのため、今回の会合での注目は声明と議長の会見、四半期に一度公表されるメンバーの経済見通し(SEP)なかでもメンバーの年末時点での政策金利見通し水準を示したドットプロットになる。 前回の声明では景気判断のところで、経済が「堅調なペースで拡大」と12月会合での表現から上方修正された。今回も同様に強めの姿勢を維持するのかが注目される。また前回の声明では2%に向かっているという確信が深まるまで目標レンジの引き下げが適切になるとは予想していないとして、市場の早期の利下げ開始期待を牽制した。今回も同様の牽制が見られるのかが注目される。 前回の議長会見では今月の議会証言でも見られた今年のある時点で金融緩和の開始が適切との姿勢を示しつつ、早期の利下げ開始期待には牽制姿勢を示した。今回も基本的には同様の姿勢が示されると予想される。 12月に公表されたドットプロットでは2024年末時点での政策金利水準見通しの中央値は4.50-4.75%となった。前々回昨年9月時点での5.00-5.25%から低下したものの、当時の市場の期待と比べるとかなり高い水準となっていた。その後市場の利下げ開始期待が後退。2024年末時点での金利水準も、短期金利市場で4.50-4.75%が中心的な見通しとなるなど、大きく上方修正されている。こうした市場の見通しの変化もあり、ドットプロットでの金利見通しがどのように変化しているのかが注目される。年内1-2回の利下げ実施まで見通しが変化していると、6月の利下げ開始期待が後退する形でドル高になる可能性が高い。ドル円は151円台に向けた動きが見込まれる。 |
英中銀金融政策会合(MPC) 3月21日21:00 ☆☆☆ | 今週は日本、米国だけでなく、英国や豪州でも金融政策会合が予定されている。イングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)は政策金利の据え置きが見込まれている。市場予想通り4会合連続での政策金利据え置きとなった前回2月の会合では、9名のメンバー中6名が据え置きに投票する一方、2名が0.25%の利上げ、1名が0.25%の利下げを主張した。サービス価格の上昇や賃金上昇が予想を下回っているものの、インフレの粘着性が指摘されており、利上げ、据え置き、利下げという三様の主張につながった。 前回公表された四半期に一度の金融政策報告では、2024年第2四半期にインフレが目標(消費者物価指数前年比2%)に一時的に到達するものの、その後上昇に転じ2024年末時点では2.75%になるとの見方を示した。こうした状況から米国やユーロ圏に比べて利下げ開始が遅くなるとの見方が広がっている。利上げに投票するメンバーが残るなど、物価上昇への警戒感が継続するようだと、ポンド高につながると見込まれる。ポンドドルは1.29台に向けた動きが見込まれる。 |
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