2024年03月25日号

(2024年03月18日~2024年03月22日)

先週の為替相場

ドル円、年初来高値を更新

 先週(3月18日-22日)のドル円相場はドル高円安となった。12日の米消費者物価指数(CPI)や14日の米生産者物価指数(PPI)といった米物価統計の強さを受けたドル買いに、ドル円は先々週からドル高円安となった。11日の1ドル=146円49銭を底値に反発を見せたドル円は149円前後で先週の取引をスタート。18日、19日の日銀金融政策決定会合をにらんで149円00銭を挟んでの推移が続いた後、149円30銭台で日銀会合を迎えた。

 日銀会合では市場予想通りマイナス金利を解除し、政策金利(用語説明1)を0.0%~+0.1%とした。イールドカーブコントロール(YCC)を廃止し、上場投資信託(ETF)やJ-REITの新規買い入れを停止し、CP等及び社債等については買い入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買い入れを終了するとしている。すでに報道されていた通りの内容であり、サプライズ感はなかったが、内容的には従来までの異例の金融緩和の大きな修正ということで、発表直後は売り買いが交錯。149円70銭台への瞬間の円売りの後、いったん149円03銭までドル安円高となり、その後149円90銭台を経て149円30銭台に戻すという乱高下を見せた後、150円を超える動きとなった。

 そのままドル高円安が続き、それまでの年初来高値150円89銭を更新。20日は春分の日で日本からの参加者が少ない中でドル高円安が強まり、151円82銭と昨年11月以来のドル高圏を付けた。やや調整が入って151円60銭台で米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を迎えた。

 FOMCでは市場予想通り政策金利の現状維持を決定。四半期に一度公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、2024年の経済成長見通しが12月公表分の1.4%から2.1%になるなど、大幅な上方修正が見られた。物価見通しについてはPCE総合は前回と同水準も、コアが上方修正された。これらはドル買い材料となったが、最も注目度の高い年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)において、2024年中年3回の利下げが中心的シナリオとして維持された。2回に修正との見通しが強かった分だけドル売り材料となりドル円は150円70銭台まで急落した。その後いったん151円40銭台に戻したが、FOMC後のパウエル議長会見において、保有資産の縮小ペースをかなり早期に緩めることが適切などの発言が見られ、ドル安が強まった。

 150円27銭前後まで下げていたが、その後再びドル高円安となった。21日の市場で日経平均が800円超の上昇となり、史上最高値を更新したことなどが、リスク選好の円売りにつながった。また21日にスイス国立銀行(中央銀行)が約9年ぶりの利下げを実施する中で、ECBなどに対する早期利下げ期待が強まり、ユーロ売りドル買いの動きなどがドル全般の上昇につながった。

 また、22日にはアジア市場でドル中国人民元が今年に入って堅く上値を抑えていた1ドル=7.2000元を超えて7.2299までドル高元安が進むと、ドル全面高の流れにつながり、ドル円も年初来高値を更新する151円86銭を付けた。

 152円手前の売りが上値を抑えたことで、その後はいったん調整が入り151円01銭を付けたが、ドル高円安の流れが継続するとの思惑から151円40銭台まで上昇して週の取引を終えた。

 ユーロドルはドル高の流れを受けて19日に1ユーロ=1.0835ドル前後まで下げた。その後少し戻すも、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁がこのままディスインフレが続けば利下げを開始することを示唆したことで、20日のFOMC前に安値圏に下げた。

 FOMC後はドル売りに押されて1.0940ドル台まで上昇。しかし21日のスイス中銀による利下げ決定後、ECBなど他の欧州通貨の利下げも近いとの思惑が広がったことで、欧州通貨売りドル買いが優勢となった。

 また同日の英中銀金融政策会合(MPC)において、これまで利上げを主張してきた委員が据え置きに投票したことで、今後の利下げ開始期待が強まったことも、欧州通貨全般の売りにつながった。1.0830台を割り込んで損切り注文を巻き込んでユーロ売りが強まり、22日に1.0801ドルまで下落。大台を何とか維持したが、戻りの鈍くほぼ安値圏推移。

 ユーロ円はドル円の上昇もあって19日の1ユーロ=162円03銭から20日に165円35銭まで上昇。その後も高値圏推移となっていたが、対ドルでのユーロ売りを受けて163円49銭を付けている。

 ポンドドルはユーロドルとほぼ同様の動きで、米FOMC後のドル安に1ポンド=1.2800ドル台まで上昇。その後の欧州通貨安局面で1.2650ドル前後を付けた後、英中銀金融政策会合を受けてポンド売りが強まり、1.2570ドル台を付けた。英中銀金融政策会合は市場予想通り5会合連続での政策金利の据え置きを決定。前回の会合では6名が据え置き、2名が利上げ、1名が利下げという結果となったが、前回利上げに投票したマン(用語説明2)、ハスケル両委員が据え置きに転じたことで、8名が据え置き、1名が利下げという投票結果になり、利下げに向かう姿勢が強まったとしてポンド売りになった。

今週の見通し

 ドル円は2022年10月、2023年11月と二度上値を抑えた152円手前の売りを崩せるかどうかが注目されている。FOMC後も6月の利下げ開始期待が大勢となっているが、年内の利下げは2回に留まるとの見方が強まってきており、ドル売りの材料となっている。ただ、世界的な株高が進む中、リスク選好での円売り意欲が継続。日銀のマイナス金利解除など、異例の緩和政策の修正が見られたが、緩和姿勢は継続し、日米の金利差を狙った取引が続くとの思惑から、流れはまだドル高円安という意識が強い。

 ただ152円に迫ると介入警戒感も強まることから、上値トライにも慎重な姿勢が見られる。151円台での推移を中心に次の方向性を見極める展開となりそう。期待は上方向も150円80銭前後を割り込むといったん調整売りが強まる可能性がある。

 ユーロドルは上値の重さが意識されている。ユーロ安の動き自体はゆっくりとなっているが、ユーロ圏の景気鈍化懸念がECBによる早期利下げ期待につながっており、戻りではユーロ売りが出る流れが続くと見られる。

 ユーロ円はドル主導の中でやや不安定な動き。ドル円が152円をトライする流れになると、ユーロ円などクロス円でももう一段の円安がありそう。

用語の解説

政策金利 日本銀行の政策金利は、マイナス金利が解除された2024年3月の会合を持って、それまでの日銀当座預金残高のうち政策金利残高に対する付利の-0.1%から、無担保コールレート翌日物誘導目標に変更され、0.0%~+0.1%が目標範囲となった。
マン委員 キャサリン・マン氏は英中銀金融政策会合の外部委員。米ブランディーズ大学教授。OECDのチーフエコノミスト、米シティバンク銀行のグローバルチーフエコノミストなどを務めた後、2021年9月より現職。今年3月18日に二期目(2024年9月1日から2027年8月31日)の再任が発表された。

今週の注目指標

ウォラーFRB理事講演
3月28日07:00
☆☆
 FRB理事の中でも物価に対する警戒感が強く、金融引き締め姿勢が見られるタカ派の筆頭格として知られるウォラーFRB理事が、NYのエコノミッククラブで経済見通しに対する講演を行う。質疑応答も予定されている。講演の中で今後の利下げ開始に向けた姿勢が見られるようだと、タカ派の同理事が利下げに言及というギャップもあり、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は150円台半ばに向けた動きが見込まれる。
日銀主な意見(3月18日・19日会合分)
3月28日08:50
☆☆
 マイナス金利解除、YCC廃止、ETFやJ-RETIの買い入れ終了などを決定した今月の日銀金融政策決定会合。同会合における参加者の意見を整理して公表する日銀主な意見が28日に公表される。日銀金融政策決定会合は議事要旨の公表が当該会合の次の会合終了後と、他の主要中銀よりも遅いタイミングとなるため、会合終了後原則6営業日後の公表となり、匿名であるが会合で出てきた各委員の意見が示される主な意見が注目される。
米PCEデフレータ(2月)
3月28日21:30
☆☆☆
 米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータ(2月)が28日に発表される。同系統の指標である2月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.2%と、1月の+3.1%から伸びが強まった。市場予想は前回から横ばいの+3.1%となっていた。食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比+3.8%と1月の+3.9%から伸びが鈍化も、市場予想の+3.7%を上回った。
 2月のガソリン小売価格が1月から上昇した影響で、ガソリンの前年比が-3.9%と1月の-6.4%から下落幅が縮小。その影響でエネルギー価格全体も前年比-1.9%と1月の-4.6%から下落幅が縮小しており、全体の伸びにつながった。コア部分では2022年11月から前年比マイナスが続く中古車が今回もマイナスとなるなど、自動車価格に弱さが見られ、財部門が2カ月連続でマイナス圏となった。一方サービス部門は伸びの鈍化傾向がみられるものの、前年比+5.2%と高水準の伸びとなっている。
 こうしたCPIの結果を受けた今回のPCEデフレータの市場予想は前年比+2.5%とCPI同様に1月の+2.4%から伸びが強まる見込みとなった。コアPCEは+2.8%と1月と同水準が見込まれている。全体にCPIよりも低い伸びとなっているのは、PCEは計測において代替品(同系統の品目で値段の安い方に需要が移ること)を考慮していることに加え、直近かなり高い水準にある住居費が指標全体に占める割合がCPIよりもかなり低いことが影響している。
 今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示された物価見通しでは、2024年末時点でのPCEデフレータの水準は前年比+2.4%となり、前回12月のSEPで示した見通しと一致する一方、コアPCEは2.6%と前回の+2.4%から上方修正された。今回の発表でコアの伸びが予想に反して前回を上回るなど、物価の底堅さが示されると、今後の物価高への警戒感が広がり、市場の年内利下げ回数見通しが修正される形でドル買いが進むと見られる。ドル円は152円台を付ける動きとなる可能性がある。

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