2024年04月01日号

(2024年03月25日~2024年03月29日)

先週の為替相場

ドル円、約34年ぶりの円安を記録

 先週(3月25日-29日)のドル円相場はドル高円安となり、一時1ドル=151円97銭と2022年10月の151円95銭、2023年11月の151円91銭を超え、約34年ぶりのドル高円安となった。節目の152円00銭には届かず、介入警戒感もあって少し落とすと、その後は151円台での推移が続いた。

 3月の日銀金融政策決定会合でマイナス金利の解除、YCC廃止など、従来の大規模緩和の修正を決定。市場予想通り政策金利の据え置きを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2024年中3回の利下げ見通しが維持された。しかし、日銀の当面の緩和姿勢継続が見込まれること、米国の6月利下げ開始見通しがやや後退していることなどを背景に、日米金利差を狙ったドル円の買いが続いた。

 22日の終値に近い151円40銭前後で25日からの週の取引がスタート。神田財務官の為替介入の準備はすでに出来ているとの発言もあり、少し円買いの場面も151円00銭台までのドル安に留まり、大台を維持した。

 151円台前半を中心とした推移が続いた後、27日に青森県経済懇談会に出席した田村日銀審議委員が、「当面緩和的な金融環境が継続」「ゆっくり着実に金融政策の正常化を進める」などと発言し、円安となった。金融緩和の修正に比較的前向きなタカ派と見られていた田村委員による緩和継続姿勢が市場のサプライズにつながり、約34年ぶりのドル高円安となる151円97銭までドル高円安となった。委員のゆっくりとの表現が、Slowlyと訳されて世界に報じられたことで、海外勢が年内の追加利上げ期待を後退させたことも、円売りにつながった。

 ドル高円安の進行を受けて、財務省、金融庁、日銀の三者会合が開催されると報じられたことで、ドル円は調整が入り151円00銭台を付けた。もっとも151円台を維持したことで、少しドル買いが入った。

 週の後半は復活祭(イースター)に絡んで取引参加者が減り、様子見ムードが広がった。金曜日はグッドフライデー(用語説明1)で米国、英国、ユーロ圏などほとんどの市場が休場。アジア・オセアニア市場でも豪州、ニュージーランド、香港、シンガポールなどが休場となり、通常営業となる日本でも取引を手控える動きが目立った。ドル円は151円台前半の狭いレンジでの推移が続いた。

 ユーロドルは21日から22日にかけてのドル高局面で1ユーロ=1.0940ドル台から1.0800ドル台まで下げて22日までの週の取引を終え、25日も1.0803を付けるなど、ユーロ安圏でスタートした。もっとも1.08の大台を維持したことでその後はユーロ買いが入り、26日に1.0864ドルを付けた。ECB理事会メンバーのミューラー・エストニア銀行(中央銀行)総裁が利下げの準備ができていると発言するなど、早期利下げに向けた動きが広がる中、上昇一服後はユーロ売りが優勢となり、上昇分を解消。

 ウォラーFRB理事の利下げを急ぐ必要はないなどの発言もあり、28日にドル全般に買いが強まると、ユーロドルは節目の1.0800ドルを割り込み、1.0770ドル台を付けた。29日もユーロドルの上値が重く1.0768ドルを付けている。

 ユーロ円はドル円の堅調地合いを受けて26日に1ユーロ=164円40銭台を付けた。その後いったん164円00銭を割り込んだが、すぐに買いが入り27日にも164円40銭台を付けたが、その後は対ドルでのユーロ売りに押され、29日に162円90銭台を付けている。

今週の見通し

 イースターマンデーで1日は豪州、ニュージーランド、香港、ユーロ圏、英国などの市場が休場。米国市場は再開となるが、例年取引参加者はかなり少ない。

 本格的な取引再開は火曜日となりそう。ドル円は151円97銭を付けた後、いったん調整が入ったものの151円台を維持しての推移となっており、下値しっかり感が強い。

 為替介入の決定権者(用語説明2)である鈴木財務相からの相次ぐ円安けん制発言などが上値を抑えているが、ドル全般に上昇が目立つ中でのドル売り円買い介入の効果がどこまで大きくなるか。

 152円手前でのドル売り介入は、今後の上値抵抗水準の確定という意味でも効果があるが、水準を意識した介入という印象が強まり、急激な動きに対応するという介入の原則からやや外れた印象を与えるだけに、実施が難しいとの見方もある。

 節目の152円超えがかなり現実味を帯びてきているという印象。

 152円を超えると、目立ったポイントがないだけに、どこまでドル高が進むのかの判断が難しい。ただ155円に近づくと介入警戒感が一気に強まり、上値を抑えてくると見られる。

 ユーロドルでもドル高が優勢となりそう。1.0850ドル前後が重くなると、1.0700ドルに向けた動きが期待される。今週のドイツおよびユーロ圏消費者物価指数次第では大台割れが十分にありそう。

 ユーロ円はドル円の動きもあり、堅調地合いが期待されるが、対ドルでのユーロ売りが重石。ドル主導でやや不安定な展開が見込まれる。

用語の解説

グッドフライデー グッドフライデー(GoodFriday:聖金曜日)は、復活祭(イースター)前の金曜日。キリスト教においてイエス・キリストの受難から復活を記念する復活祭の中で、磔にかけられたとされる金曜日。復活祭が太陰暦に基づいて定められているため、年によってグッドフライデーとなる日が変わる。米国では多くの州で祝日となり、主な証券取引所や銀行などが休業となるが、連邦の祝日ではないため、連邦政府による経済指標などは発表される。
為替介入の決定権者 日本の為替介入は財務大臣が決定権限を有している。日本銀行は財務大臣の指示に基づき、その代理人として財務省所管の「外国為替資金特別会計」の資金により、外国為替の売買を行う。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(3月)
4月1日23:00
☆☆☆
 前回2月の米ISM製造業景気指数は市場予想の49.5を大きく下回る47.8となった。2022年11月から好悪判断の境となる50を下回る状況が続く中、1月の49.1からの改善で、50超えに向けた流れが期待されていたが、製造業の厳しい状況が示される結果となった。内訳をみると、1月分では強めに出た新規受注と生産が悪化し、50を割り込んだ。特に今後の先行指標としても注目される新規受注が52.5から49.2に3.3ポイントの悪化となった。1月時点で弱かった雇用は45.9と1月の47.1からさらに悪化した。
 今回の予想は+48.3と前回から小幅改善も、17カ月連続での50割れが見込まれている。リーマンショック時を超え、2000年8月からの18カ月連続に次ぐ長期となる。予想を下回った場合、50回復がまだ遠いとの印象が強まり、ドル売りにつながると見込まれる。ドル円は150円台に向けた動きが予想される。
ユーロ圏消費者物価指数(3月)
4月3日18:00
☆☆☆
 3日に3月ユーロ圏消費者物価指数が発表される。市場予想は前年比+2.5%と2月の+2.6%から小幅鈍化見込みとなっている。ユーロ圏の消費者物価指数は11月分が+2.4%まで伸びが鈍化した後、エネルギー価格の上昇などもあり、12月分が+2.9%まで反発。その後2カ月連続で鈍化しており、市場予想通りの結果が示されると3カ月連続の鈍化で、インフレターゲットである2.0%達成に向けた流れが強まる。
 前哨戦となる3月ドイツ消費者物価指数が前日2日に発表され、市場予想は前年比+2.2%と2月の+2.5%から鈍化見込みとなっている。ユーロ圏最大の経済大国ドイツでの物価鈍化が顕著となり、ユーロ圏でも物価鈍化が目立つようだと、ECBによる早期利下げ開始期待が強まり、ユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.0700ドルを目指す展開となりそう。
米雇用統計(3月)
4月5日21:30
☆☆☆
 前回2月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+27.5万人と、市場予想の+19.8万人を大きく上回った。もっとも、1月の非農業部門雇用者数が+35.3万人から+22.9万人に大きく下方修正されており、平均するとやや微妙な数字となる。また失業率が1月と同じ3.7%の予想に対して3.9%に悪化し、平均時給が冴えない結果となったこともあり、総じてやや弱めという印象を与えた。
 前回の非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、1月速報時点で+2.3万人と力強さを見せた製造業は、1月の数字が+0.8万人に下方修正された上に-0.4万人と昨年10月以来のマイナス圏となった。景気に敏感で雇用の流動性も高く、前回強く出たことが好感された商業・運輸・倉庫業は、小売業が1月分が+4.5万人から+1.5万人に下方修正、2月は+1.9万人とまずまずの伸び、運輸倉庫業は1月速報時点で+1.6万人となったが、-2.9万人とマイナス圏まで大きく下方修正された。2月は+2.0万人とまずまずの伸びとなった。
 上記ISM製造業以外の関連指標を確認すると、週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査対象期間の重なる基準日12日を含む週の比較で、2月は20.2万件、3月は21.2万件と若干の悪化となっている。
 3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は104.7と2月の104.8から小幅悪化となった。2月は106.7から下方修正されている。3月の予想は107.0となっていたが、結果は大きく下回った。もっとも内訳のうち、雇用部門に関しては比較的堅調で、現状の雇用が十分にあるという回答は43.1と2月の42.8を上回り、現在職を得るのが困難との回答は10.9と2月の12.7から減少している。
 2日発表の2月の米雇用動態調査(求人件数)の市場予想は877.5万件と1月の886.3万件から小幅悪化見込み。アフターコロナで一時1100万件を超えていた米国の求人件数は、昨年10月に879万件まで減少。12月は900万件超えまで回復も、前回再びの悪化となった。今回も悪化が続くようだと、米国の求人状況への警戒感につながる。
 3日発表の3月米ADP雇用者数の市場予想は前月比+15万件と2月の14万件から小幅増加見込み。同じく3日発表の3月米ISM非製造業景気指数の市場予想は52.8と前回の52.6から小幅上昇見込み。前回2月は製造業の生産にあたるビジネスアクティビティや新規受注が好調となった。ただ前回は雇用が50.5から悪化し、節目も割り込んで48.0まで低下した。今回も全体の数字だけでなく、雇用部門の数字にも注意が必要。
 こうした状況を踏まえ、今回の雇用統計、非農業部門雇用者数の予想は前月比+20.0万人と、前回から伸びが鈍化見込み。ただ水準的には節目といわれる+20万人ということで、まずまずという印象。失業率は前回と同じ3.9%見込み。平均時給の市場予想は前月比+0.3%、前年比+4.1%。前月比は前回より強く、前年比は前回から弱い見通しとなった。
 非農業部門雇用者数の伸びが鈍化するものの、その他項目と合わせて総じてまずまずという印象で、市場予想前後の結果が示されると、雇用市場の悪化警戒による早期の利下げ開始期待にはつながりにくい。予想を超えた伸びが示された場合は、6月の利下げ開始期待が後退し、ドル高となる可能性がある。この場合ドル円は152円台に向けた動きが期待される。

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