2024年04月15日号

(2024年04月08日~2024年04月12日)

先週の為替相場

ドル高円安止まらず

 先週(4月8日-12日)はドル高が優勢となった。ドル円は10日発表の3月米消費者物価指数(CPI)(用語説明1)までは1ドル=152円手前のドル売りが上値を抑え、151円台後半での推移が続いた。それまでの高値をわずかに更新し、約34年ぶりのドル高となっていたが、152円を付けきれずに米CPIを迎えた。

 注目された米CPIは前年同月比+3.5%と、2月の+3.2%から伸びが強まった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は2月と同水準の+3.8%となった。市場予想の3.4%と3.7%を共に上回る伸びとなった。

 3月は2月に比べてガソリン価格の上昇が目立っており、ある程度の伸びが見込まれていた。ただ、住居費を除くサービス価格が+4.8%と2月の+3.9%から大きく上昇するなど、その他の項目でも上昇が目立ち、市場予想を超える伸びとなった。

 この結果を受けて2022年、2023年とその年の上値を抑え、今年に入っても上値を抑え続けてきた152円手前のドル売りを崩し、152円台に上昇。勢いが止まらず153円台前半を付ける動きとなった。12日に153円39銭を付けた後、いったん152円59銭までドル売り円買いが入った。1日に起きた在シリアのイラン大使館空爆を受けて、イランがイスラエルを48時間以内に攻撃と米メディアが報じたことがリスク警戒の動きを誘った。しかし下げ一巡後はドル買いとなり、153円30銭前後まで買い戻しが入って週の取引を終えている。

 ユーロドルは米CPI前のドルの持ち高調整などもあり、9日に1ユーロ=1.0880ドル台を付けた。1.08ドル台後半の高値圏で米CPIを迎えると、その後のドル高に1.07ドル台前半に急落した。

 11日のECB理事会では市場見通し通り政策金利が据え置かれた。声明では「基調的インフレの大半の指標は緩和しつつある」と表現。その後のラガルド総裁会見では、6月の最新データ次第では利下げ開始の姿勢が示された。米国の利下げ開始先送り期待が広がるなかで、ユーロの早期利下げ開始期待が重石となり、1.0620ドル台を付けている。

 ドル主導の展開の中、ユーロ円などクロス円はやや不安定な展開。9日の1ユーロ=165円10銭台から164円00銭近くまでユーロ売りとなった。12日に中東情勢警戒が広がった局面では対ドルでのユーロ売りと、ドル円での円買いの両面から下げ、162円20銭台を付けた。

今週の見通し

 介入警戒感が見られるものの、流れはドル高円安。日米金利差を狙った取引が当面続くと見られる。米国の利下げ開始が秋以降になるという見通しもドル高につながっている。

 ドル円が155円に近づくと、さすがに介入警戒感が見られ、上値を抑えてくると予想される。ただ、介入が入るとすると今週の予定されているG20の後になる可能性が高い。それまではドル高円安基調の継続か。

 警戒された中東情勢については現地時間13日夜から14日にかけてイランがイスラエルに多数のミサイルと無人機を使った攻撃を実施。そのほとんどが迎撃されたが、イラン当局はこの攻撃で報復が完了と発表したことで、戦火が広がる可能性が後退したとして、警戒感が後退している。ただ、イスラエルは対抗措置を検討しており、情勢を注意深く見守る必要がある。

 下げた場合のドル円のサポート目途は152円00銭前後。中長期的にかなり大きなポイントとなりそう。中東情勢が落ち着けば、そこまで下がらない可能性が高く、その場合152円台後半でのドル買いがどれぐらい出るのかがポイントとなる。

 ユーロドルは1.0600割れをトライするタイミングをうかがう展開となりそう。米国の利下げ開始期待が後ずれする中で、6月の利下げ開始が濃厚なECBの姿勢がユーロ売りを誘っている。

 ユーロ円は難しい判断。対ドルではユーロ売り継続も、ドル円はしっかり。やや上方向の動きが期待される。

用語の解説

米消費者物価指数(CPI) 米国を代表する物価統計の一つ。労働省労働統計局(BLS)が米国都市部の消費者が購入する財やサービスの価格変化を指数化して発表する。米国のインフレターゲットは多くの国で採用されている消費者物価指数ではなく、個人消費支出(PCE)デフレータであるが、CPIの方がPCEよりも発表が早く、同系統の指標ということで両指標の動向が似通っている為、市場は消費者物価指数の結果に大きく反応する傾向がある。
米小売売上高 米商務省センサス局が米国内で販売された財・サービスの売上高を集計し、発表するもの。米国の個人消費の動向を示す指標となっている。米国のGDPは個人消費が約7割を占めている。日本の約55%などと比べて個人消費が占める割合が大きく、それだけに動向を示す指標に対する注目度が高くなっている。

今週の注目指標

米小売売上高(3月)
4月15日21:30
☆☆☆
 15日21時半に3月の米国の小売売上高(用語説明2)が発表される。
 前回2月の米小売売上高は前月比+0.6%と市場予想の+0.8%を下回った。また、1月の結果が-0.8%から-1.1%に下方修正されている。伸びの水準自体は大きかったものの、比較対象が下方修正された上に、予想値に達しなかったことから、米国の個人消費に対する警戒感につながった。変動の激しい自動車を除いた結果は前月比+0.3%と、こちらも市場予想の+0.5%を下回った。1月の結果も-0.6%から-0.8%に引き下げられている。前回2月分の内訳を確認すると、自動車販売は+1.6%と、1月の-2.1%から急速に改善し、全体的な売上高を押し上げた。建設資材や電気製品なども好調で、ガソリン価格の上昇に伴い、ガソリンスタンドの売上高もプラス圏に浮上している。GDP算出に利用される飲食店、自動車ディーラー、建設資材、ガソリンスタンドの売上を除いたコア売上高は、2月は前月比横ばいとなった。1月は-0.3%となっており、年初からの米国の個人消費の厳しい状況を示している。
 今回3月分の予想は前月比+0.4%とやや伸びが鈍化する見込み。ただ、こちらは前回強く出た自動車販売の反動という面が大きく、自動車を除いた結果は+0.5%と、前回から伸びが強まる見込みとなっている。もっともこの伸びはガソリンスタンド売上の伸び期待によるもの。3月は2月に比べて米国内でのガソリン価格上昇が目立った。米国では自動車が生活必需品となっており、ガソリン価格が上昇しても消費量が大きく減少することはないため、結果として売上高は伸びると見込まれる。自動車とガソリンを除いた売上高は前月比+0.3%程度と見込まれている。
 今月に入って雇用統計、消費者物価指数、生産者物価指数と強めの結果が並んだ。小売売上高も強く出た場合、米国の利下げ開始時期見通しの先送りによるドル高が強まると見込まれる。ドル円は154円台トライが期待される。
英消費者物価指数(CPI)(3月)
4月17日15:00
☆☆☆
 17日15時に3月の英国物価統計、消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、生産者物価指数(PPI)が発表される。注目度が高いのがインフレターゲットの対象となるCPI前年比。前回2月のCPIは前年比+3.4%と1月の+4.0%から大きく鈍化し、2021年9月以来の低水準となった。市場予想の+3.5%も下回った。変動の激しい食品、エネルギー、飲料、たばこを除いたコアCPIも前年比+4.5%と1月の+5.1%、市場予想の+4.6%を下回る伸びとなった。
 今回の市場予想は+3.1%とさらに鈍化見込み。英国のインフレターゲット(2%)の許容枠である1%から3%に迫る数字が見込まれている。米国の利下げ開始先送り期待が広がっていることとは対照的な結果に、ポンド売りドル買いが強まると見られる。ポンドドルは予想通りもしくはそれ以下の伸びで、昨年11月以来のポンド安圏となる1ポンド=1.22ドル台をつける可能性がある。
G20
4月17日・18日
☆☆☆
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17日、18日に米ワシントンDCで開催される。中東情勢やウクライナ情勢など、地政学リスクが大きな議題になると見られている。出席する鈴木財務相はドル高が議題になるかとの記者団からの質問を受けて、「可能性はあると思う」と発言している。ドル高への警戒が示されるようだと、日本の為替介入についても他国の理解を得られやすくなると見られるだけに、ドル安円高材料となる。ドル円は152円台半ばに向けた動きが見込まれる。

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