2024年04月22日号

(2024年04月15日~2024年04月19日)

先週の為替相場

介入警戒もドル高円安の流れ

 先週(4月15日-19日)は、週の前半にかけて1ドル=154円台後半を付けた後、一時調整の場面も、すぐに回復するなどドル高円安となった。

 13日から14日にかけてイランがイスラエルを空爆したことを受けて、リスク警戒の円買いが入り、週明け早朝に152円98銭を付ける動きで始まった。その後は一転してドル高円安となった。イラン当局が今回の攻撃で1日に在シリアのイラン大使館空爆に対する報復が終了としたことで、戦火拡大懸念が後退し、ドル高円安となった。15日東京市場午前に前週の高値を更新して上昇。同日の米小売売上高が予想を上回る伸びとなったことでドル全般の買いも入り154円40銭台まで上値を広げた。その後も調整を交えてドル高円安が進み154円台後半を付けた。パウエル米FRB議長が16日に出席したパネルディスカッションで利下げに必要な確信を得るにはより長い時間がかかる可能性が高いとの認識を示したこともドル高につながった。介入警戒感が強く、大口の売りに154円台後半から154円04銭まで急落する場面が見られたが、すぐに反発するなど、ドル買いの流れが継続した。

 介入警戒感から155円手前でのドル買いにやや慎重になる中、17日に日米韓の財務相会合が行われ、日本と韓国が自国通貨安を巡る懸念を示し、米国も認識したと報じられたことで、一時円買いとなり154円台前半を付けた。さらに18日に神田財務官が為替を含む過去のG7共同声明でのコミットメントを再確認と発言。急激な為替変動は経済に悪影響という過去のコミットメントが意識され、介入警戒感がさらに強まる形で153円台を付けた。

 もっとも153円台ではドル買いが入り、ドルの地合いの強さを確認。ウィリアムズNY連銀総裁(用語説明1)が「利上げは基本シナリオではないが、指標が正当化するならばありうる」「利下げの緊急性は感じていない」などと発言し、ドル買いとなり154円70銭前後を付けた。

 19日にイスラエルがイランの複数地点及びシリア、イラクなども攻撃と報じられ、一気に円買いとなった。ドル円は154円60銭前後から153円59銭まで急落。日経平均が一時1300円超の下げとなるなど、リスク警戒が広がった。

 下げ一服後は反発。イスラエルの攻撃で核施設に被害なしと報じられたことで最悪の事態への懸念が一服した。ドル円は下げ分を解消し154円60銭台を付けて週の取引を終えた。

 ユーロ円もドル円の上昇に合わせ、15日早朝の1ユーロ=162円70銭台から上昇。18日に164円90銭台まで高値を伸ばした。イスラエルによるイランなど複数の攻撃報道を受けた円買い局面で163円02銭まで下げたが、その後の反発で高値を更新し165円02銭を付けている。

 ユーロドルはドル高が優勢となる中で、16日に1ユーロ=1.0600ドル台を付けた。ドイツZEW景況感指数の好結果もあって下値が支えられると、その後も1.0600台がサポートとなった。ポジション調整もあって1.0690前後まで上昇後、中東上映を受けたリスク警戒でドル高円高となり、1.0610前後を付けたが、その後反発し1.0670台を付けている。

今週の見通し

 介入警戒感が上値を抑えるも、流れはドル高円安。G20期間中に米国をはじめ他国に状況の説明を進めたこともあり、介入が入りやすい地合いになっているとの思惑があるが、下がると買いが出る流れ。

 中東情勢への警戒もあるが、22日からユダヤ教にとって重要な宗教的記念日となる過ぎ越しの祭(ペサハ)(用語説明2)に入る為、30日に同期間が終了するまで、新たな動きが出にくいという思惑もあり、警戒感がやや後退している。

 155円手前にはドル売り注文が残っていると見られるが、155円を超えるとストップロス注文が並んでいると見られ、一気の上昇もありうる。

 介入警戒感が強いが、154円台で直近動きが少し抑えられており、過度な動きへの対応という前提に当てはまりにくいこともあり、154円台では入らないのではとの思惑も見られ、155円トライの流れが強まる可能性が高い。

 155円台にしっかり乗せた後、さらにドル買いが入るようだと、介入が実際に入る可能性が強まる。155円台後半からは介入を警戒しながらの対応となる。介入が入らなければ158円に向かうと見ているが、介入が入った場合は、そのタイミング、規模などによる展開となりそう。

 ユーロ円などもドル円の介入を警戒しながらの展開。対ドルでのユーロ売りが抑えられている分。166円台に向けた動きが見込まれるが、介入が入ると流れが一気に変わる。

 ユーロドルは1.06台での推移が中心となりそう。1.0600手前の買いを崩せるかどうかという展開。

用語の解説

NY連銀総裁 NY連銀は米国に12ある地区連銀の一つ(第2地区担当)であるが、金融政策の実務を担当することもあり、総裁が地区連銀で唯一常任で議決権を持ち、FOMCの副委員長を兼任することや、第1副総裁がFOMCにオブザーバーとして常に参加することなど、FOMCでは特別な位置を占めている。
過ぎ越しの祭(ペサハ) 過ぎ越しの祭(ペサハ)は、ユダヤ教の祝祭。旧約聖書出エジプト記において、エジプトで奴隷となっていたユダヤの民が、モーセの先導でエジプトを脱出したことを祝うもの。

今週の注目指標

米第1四半期GDP速報値
4月25日21:30
☆☆☆
 25日21時半に米国の第1四半期GDP速報値が発表される。前回の2023年第4四半期は前期比年率で+3.4%と高い成長を示し、同第3四半期も+4.9%と好調となった。今回の市場予想は+2.5%と、伸びが鈍化する見込み。もっとも目途とされる+2.0%を上回っていることや、3月の米FOMCで示された今年のGDP成長率見通しの+2.1%を上回っていることから、水準としては堅調。
 前回、前期比年率+3.3%と力強い伸びとなった個人消費が、小売売上高の動向などから今回も好調さを維持しており、全体を支えると期待されている。一方、設備投資は前期の+1.9%から伸びが鈍化する可能性がある。GDP算出に利用される航空機を除く非国防資本財(コア資本財)出荷は、1月分が強く伸びたものの、2月はプラス予想に反して-0.4%と厳しい結果になった。住宅投資については、住宅ロ-ン金利が高水準で推移していることから、若干の厳しい状況が予想される。また、1月と2月の米貿易収支で赤字拡大が見られ、特に2月の貿易赤字は昨年4月以来の大きさとなったことで、純輸出(輸出引く輸入)も弱い数字が見込まれている。
 アトランタ地区連銀によるGDP見通し「GDPNow」では、最新4月16日の予想として、市場予想を上回る+2.9%が示されている。その中で個人消費を+3.5%、住宅を除く民間投資を+3.7%とかなり高めに見込んでいる。アトランタ連銀の見通し通り、GDPが予想を上回る伸びを示した場合、6月の利下げ開始の可能性がほぼ払しょくされ、7月の利下げ開始見通しも後退。現時点で大勢の見通しとなっている9月の利下げ開始見通しも、状況によっては少数派となるなど、利下げ開始見通しの後ずれが生じると予想される。これは大きなドル買い材料となる。ドル円は155円を超えての上昇が見込まれる。
日銀金融政策決定会合
4月25日/26日
☆☆☆
 4月25日、26日に日本銀行金融政策決定会合が開催される。結果発表は26日昼前後が見込まれ、26日15時半から植田日銀総裁が会見を行う予定となっている。前回3月の会合でマイナス金利の解除、YCCの廃止、ETFなどの買い入れ終了など、これまでの金融政策の大きな修正を実施したこともあり、今回の会合では金融政策の維持が見込まれている。注目は今後に向けての姿勢。声明や総裁会見に加え、今回は日本銀行経済・物価情勢の展望(展望レポ-ト)が発表される回にあたっており、その内容に注目が集まっている。展望レポートでの物価見通しが引き上げられているようだと、年内追加利上げ期待が広がり、円買いにつながる可能性がある。ドル円は153円台に向けた動きが見込まれる。
米PCEデフレータ(3月)
4月26日21:30
☆☆☆
 26日21時半に、米国のインフレターゲットの対象である3月個人消費支出(PCE)デフレ-タが発表される。市場予想は前年比+2.6%と、2月から伸びが強まる。一方、食品・エネルギ-を除くコアPCEは前年比+2.7%と2月の+2.8%から伸びが鈍化する見込み。3月はガソリンを中心にエネルギ-価格の上昇が見られた。PCEと同系統の指標となる3月の米消費者物価指数(CPI)が10日に発表され、前年比+3.5%と市場予想の+3.4%及び2月の3.2%を上回る伸びとなった。食品とエネルギ-を除いたコアCPIは前年比+3.8%と市場予想の+3.7%を上回り、2月と同水準の伸びとなった。3月のCPIではエネルギ-が2月の-1.9%から+2.1%にプラスに転じて大きく上昇している。PCEでも同様にエネルギ-の上昇が全体を押し上げると見られる。
 CPIの内訳において2月の+1.1%から+2.1%に伸びが強まった医療サ-ビスが注目材料。PCEデフレ-タはCPIに比べて医療費が指標全体に占める割合が大きいため、影響が強く出る可能性がある。コアの鈍化が予想通り進まず、横ばいもしくは強めの数字が出てくると、米利下げ開始期待が後退しドル高となる可能性がある。この場合、ユーロドルは1.05台をトライする可能性がある。

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