2024年04月30日号

(2024年04月22日~2024年04月26日)

先週の為替相場

ドル円はドル高円安

 先週(4月22日-26日)は、ドル高円安が優勢となった。

 1ドル=154円50銭台で22日の週の取引をスタートすると、154円台半ばでは買い、155円手前は介入警戒感もあって上値が重いという展開が24日の海外市場まで続いた。

 米債利回りの上昇などを材料に24日の海外市場で155円台に乗せると、その後もドル高円安が優勢。25日、26日の日銀金融政策決定会合(用語説明1)までは介入が入りにくいという見方や、155円手前での数日の膠着を受けて、一時的な急激な動きに対する対応という介入の大義名分が成立しにくいとの思惑がドル円を支えた。

 25日の米第1四半期GDP速報値は予想を下回る伸びとなったが、同時に発表された第1四半期PCEデフレータ前年比が予想を上回ったことなどを材料に、ドル買いが継続した。鈴木財務相などからの円安けん制発言にも反応が鈍く、26日金曜日の日本時間午前の市場で156円台に上昇。日銀金融政策決定会合で市場予想通り政策金利が据え置かれ、さらに植田総裁が会見で円安でも物価の基調に大きな影響なしと発言したこともあり、海外市場に入ってドル高円安が加速。157円00銭手前でいったん上値が抑えられたが、ユーロドルでのユーロ売りドル買いをきっかけにドル全般の上昇となり157円台を付けると、週末を前に介入警戒感が後退したこともあってドル高円安がさらに強まり、1990年以来のドル高となる158円40銭台を付け、158円30銭台とほぼ高値圏で週の取引を終えている。

 26日の海外市場で156円80銭台を付けた後、155円00銭割れまで急落する場面が見られるなど、介入を警戒して、大口のドル売りに神経質に反応する場面が見られたが、ドル高円安の勢いが止まらなかった。

 週明けは東京勢不在の中、アジア市場午前にドル高が強まり、160円24銭を付けた。その後介入と見られるドル売りに155円00銭台まで急落。157円台までドル買いが入った後、再びドル売り円買いが優勢となり154円台を付けた。その後も156円台後半を付けた後、155円台前半へ急落するなど、かなり不安定で荒っぽい動きとなった。

 ユーロ円などクロス円でも円安が進んだ。ユーロ円は1ユーロ=164円60銭台で22日の週の取引をスタート。先週前半、ドル円の上値が155円手前で抑えられたこともあり、いったんは165円台での買いに慎重な姿勢が見られたが、ユーロ圏及び独仏の購買担当者景気指数(PMI)の好結果もあり、165円台にしっかり乗せると、ドル円での円安もあって上値トライの勢いが強まった。167円00銭前後でいったん上値が抑えられたが、26日の日銀金融政策決定会合結果発表前後からの円安に再びの上昇。NY市場にかけて円安の勢いが強まったこともあり、169円39銭まで上昇し、ほぼ高値圏で先週の取引を終えた。週明けさらに進む円安に171円56銭を一時付け、170円台へいったん調整もしっかりの展開となったところに、ドル円で介入と見られる動きが出て166円台に急落。いったん168円台に上昇も、165円66銭を付けた。

 ユーロドルは15日からの週に見られたユーロ安局面で1ユーロ=1.0600前後がしっかりとなり、22日の週では少し戻しての推移。1.0650前後での推移からユーロ圏PMIの好結果などに1.0700台を付けると、1.0700を挟んでの1.0670から1.0750レンジでの推移。

今週の見通し

 29日の介入と見られる動きをどうとらえるかがポイントとなる。29日が日本の祝日となり、介入の可能性が少し下がるとの思惑もあり、160円台まで一時円安が進んだ動きはさすがに行き過ぎ感があり、介入が入りやすい地合いであった。25日、26日の日銀金融政策決定会合で利上げに向けた姿勢が目立たなかったことも、円安が入りやすい地合いにつながっていた。

 ただ、公式に介入とは認められていないものの、おそらくの介入という状況を経て、今後の判断は難しい。160円台での円売りを阻止する姿勢を示したとの見方もあるが、特定水準を意識した介入に消極的となっている当局の姿勢もあり、再び上値をトライする際の勢いが重要になると見ている。

 ドル円は介入を警戒しながら、じりじりした上昇を意識。160円に向けた動きを期待している。一日に数円動くような展開にならなければ、高値を再び試す展開も十分にあり得そう。

 ただ、介入が再び入ると、流れが一気に変わる。次に入ると、前回の安値を割り込んでのドル安円高進行が見込まれる。

 ユーロ円も介入次第。介入が入りにくいゆっくりした円安が進むと、170円超えを付ける可能性が十分にあると見ている。

用語の解説

日銀金融政策決定会合 日本銀行による日本の金融政策を決定する会合。年に8回、2日間にかけて審議を行い、金融政策の方針を決定する。議決は9名の政策委員(総裁、2名の副総裁、6名の審議委員)による多数決によって行われる。
ウィリアムズ総裁 ジョン・C・ウィリアムズNY地区連銀総裁。スタンフォード大学で経済学博士号を取得後、1994年からFRBのエコノミストとしてのキャリアをスタート。2011年から2018年までサンフランシスコ地区連銀総裁。2018年より現職。サンフランシスコ地区連銀総裁時代はハト派姿勢で知られていたが、FOMCの常任理事であり、同副委員長を兼ねるNY連銀総裁に就任後は中立姿勢を示すことが多い。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(4月)
5月1日23:00
☆☆☆
 前回3月の米ISM製造業景気指数は50.3と2月の47.8から大きく改善。市場予想の48.3を超え、好悪判断の境となる50も上回った。50超えは2022年9月以来となる。前回は生産が2月の48.4から54.6に一気に上昇。今後の先行指標としても注目される新規受注も2月の49.2から51.4と、50を上回る改善を見せた。弱く出ていた雇用についても45.9から47.4となっており、50は下回っているものの2月から改善を見せた。
 今回の市場予想は50.0となっている。前回から若干の鈍化も、節目の50.0を維持する見込み。予想を下回り50割れとなった場合、米景気の鈍化懸念につながる可能性がある。なお、雇用に関しては今回若干の改善が見込まれている。予想を下回った場合、5日の米雇用統計への警戒感につながる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月2日03:00
☆☆☆
 政策金利は据え置きの見込み。今後の利下げ開始に向けて、注目は声明とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見。ここにきてFOMCメンバーからの利下げに向けた発言の勢いが後退している印象。NY連銀のウィリアムズ総裁(用語説明2)が基本シナリオではないとしながらも利上げの可能性に言及するなどの場面も見られた。声明や議長会見で物価の高止まりに対する警戒姿勢が強調されると、利下げ開始見通しの先送りにつながり、ドル高となる可能性がある。ドル円は160円に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(4月)
5月3日21:30
☆☆☆
 前回3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが予想を大きく上回るなど、かなり強い結果となり、雇用統計発表前まで多数派となっていた6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始見通しが後退。年内の利下げについても、3月のFOMCで示された3回よりも少なくなるという見通しが強まった。
 前回の非農業部門雇用者数は前月比30.3万人増と市場予想の21.2万人増を大きく上回った。2月の数字は速報時の27.5万人増から27.0万人増に小幅下方修正されたが、1月の数字が改定時の22.9万人増から25.6万人増に大きく上方修正されている。3月の内訳をみると、財部門が4.2万人増と2月の1.7万人増から伸びが強まった。製造業はゼロとなっており、増加のほとんどは建設業となっている。サービス部門は19万人増と2月と同水準の伸びとなった。教育・医療サービス部門が8.8万人増と、前回の8.2万人増に続いて全体を支えている。娯楽接客業も4.9万人増と2月の4.3万人増に続いて好結果となった。その他、目立って弱いという部門が見られず、米雇用市場全体の力強さを意識させる結果となった。
 今回の予想は非農業部門雇用者数が前月比24.0万人増。前回から伸びが鈍化も、前回が強すぎた印象で、節目の20.0万人をはっきり越えており、水準的にはまずまず。失業率は3月と同じ3.8%が見込まれている。
 前回強かった建設業は3月の米国の天候が比較的が良かった影響が出た可能性があるなど、今回に向けてやや懸念材料が見られる。今回の結果が予想をはっきりと下回った場合、いったんドル高の調整が入る可能性がある。ドル円は154円台トライの可能性がある。

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