2024年05月07日号
先週の為替相場
ドル円は上下に大荒れ
先週(4月29日-5月3日)は、大荒れの展開となった。
25日、26日の日銀金融政策決定会合で利上げに向けた姿勢が見られず、円安対応についても強い言及がなかったことや、29日が昭和の日で日本市場が休場となることで、介入の可能性がやや低いのではとの思惑もあって、26日海外市場から一気に強まったドル高円安が、29日からの週に入っても継続。26日の市場で上値を抑えた1ドル=158円50銭前後を超えると、ストップロス注文などを巻き込んで動きが加速。1990年以来の160円台に乗せ、160円17銭を付けた。160円台の買いにはさすがに少し慎重になり、159円台での推移となった後、同日日本時間午後に入ってドル安円高が一気に進んだ。財務省によるドル売り介入ではないかと思われる動きとなったが、神田財務官(用語説明1及び2)など当局者は介入であるかどうかの明言を避けた。
ドル円は159円台半ば前後から155円00銭台まで急落した後、いったん157円台を付けたが、再びドル売りとなり154円54銭を付けた。その後ドル買い円売りが入ったが157円手前が重くなり、海外市場で155円00銭台を付ける場面が見られた。
連休明け30日の東京市場は介入警戒感で上値を買いにくいものの、ドル高円安の流れは変わらずとの思惑もあり157円00銭前後を付けた。同日海外市場で157円台にしっかり乗せると157円台後半まで上昇。翌1日もドル高円安が優勢となったが、158円00銭手前に売り注文があり、158円00銭を付けきれず。
30日、1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では声明でここ数カ月物価目標への進展が見られずとの表現があるなど、物価の高止まり懸念などが示された。ただ、市場が期待したほどの利上げに向けた姿勢が示されなかった。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見では、「次の政策変更が利上げとなる可能性は低い」、「利下げする道もあれば、しない道もある、経済指標次第」などの発言が見られた。こちらも市場が期待したほどの利上げへの姿勢が見られずとの思惑が広がり、FOMC後はドル安となった。
ドル円は157円00銭前後までドル安となった。もっとも29日に安値を付けた後の戻りのポイントとなった157円00銭前後がサポートとなって157円50銭超えまで上昇。しかし、FOMC後の反応が一服した日本時間5時過ぎ、ドル円が急落。NY株式市場も引け、取引参加者が少なくなった時間帯ということで動きが大きくなり、29日の安値を割り込み153円04銭までの大きなドル安円高となった。こちらも当局者は介入かどうかの明言を避けた。
その後ドル買い円売りが優勢となり、2日東京市場午前に156円台を付けた。ただ、当局者が明言しなかったものの30日日本時間夕方に日銀が公表した1日の当座預金残高見通しで、29日の市場で約5兆円規模のドル売り介入が実施されたとの見通しが強まったことで、1日NY市場夕方の動きも介入との見通しが広がったこともあり、その後はドル安が優勢となった。
同日海外市場で153円06銭までと1日の安値に迫ると日本市場が休場となった3日のアジア市場午前に153円を割り込んだ。同日発表された米雇用統計が予想を大きく下回る雇用の伸びに留まるなど、相当に弱い結果となり、ドル売りが強まって151円86銭まで売りが出た。その後は週末にかけてドル高円安が優勢となり153円00銭前後で週の取引を終えた。週明けもドル高円安が優勢となった。
クロス円はドル円の動きに準じる展開となった。ユーロ円はドル円が160円台を付ける中で1ユーロ=171円56銭を付けた。その後の介入と見られる円買いに166円台に急落。168円50銭台まで上昇した後、165円66銭までユーロ安円高となった。
ドル円が158円近くまで上昇する中で168円60銭台まで上昇。その後の介入と見られる円買いに164円09銭を付けた。ドル円の戻りに合わせて167円台まで上昇も、2日から3日にかけての円買いに164円02銭と安値を更新したが、164円00銭台を維持したこともあり、週明けユーロ買い円売りとなった。
ユーロドルは先週半ばまで1ユーロ=1.0700を挟んでの推移。米FOMCの結果発表を前に1.0650台まで一時ユーロ安ドル高となったが、その後1.0700ドルを挟んでの推移に戻した。3日の米雇用統計後のドル売りに1.0811まで上昇したが、1.08台でのユーロ買いには慎重で、その後調整が入った。
今週の見通し
介入警戒感が上値を抑えるものの、日米金利差を意識した動きから、ドル高円安の大きな流れは変わらないとの見方もあり、下がるとドル買いが出る流れとなっている。
160円に再び向かうような動きがみられると、介入が入る可能性が強まることもあり、上昇傾向が継続も、動きはゆっくりしたものとなりそう。
先週は祝日で東京市場が休場の29日に介入と見られる動きとなった後、1日は米国株式市場が引けた後の取引参加者がかなり少ない時間帯での介入と思われる動きなどが見られた。介入の公式なアナウンスはないが、介入と思われる動きが、相場への影響が大きそうなタイミングを計って行われており、市場は財務省の円安警戒の本気度を意識している。
ドル円は152円前後がかなりしっかりしたサポート。その前に153円台前半あたりから買いが強まってくるとみられ、堅調な地合いが見込まれる。上値のめどは157円前後か。
ユーロ円はドル円次第となるが、もう一段の上昇を期待。168円00銭がターゲット。
用語の解説
神田眞人 | 日本の財務官僚。東京大学法学部卒業後、1987年に当時の大蔵省に入省。1989年から1991年にかけてオックスフォード大学に留学、経済学修士を取得。2021年7月より現職の財務官。2003年5月に始まったこれまでで最大規模の介入であるテイラー・溝口介入の実施時には、為替市場課長補佐として、介入を実施する部署での現場最前線に立っていた。 |
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財務官 | 財務省における財務事務次官や金融庁長官などと並ぶ次官級の役職。財務省国際局の所管事務を専担する。英語表記はVice Minister of Finance for International Affairs。為替介入の最終決定権者は財務大臣であるが、事実上は財務官の判断によるところが大きいとみられている。 |
今週の注目指標
日銀 主な意見 5月9日08:50 ☆☆☆ | 4月25日、26日に開催された日銀金融政策決定会合の主な意見が9日に公表される。日銀金融政策決定会合は議事要旨の公表がその次の会合よりも後になる(4月会合の議事要旨は6月19日公表)とかなり遅いため、会合でどのような議論が出たのかのを市場が認識する機会として2016年より公表が始まった。市場は前回会合において、追加利上げに向けた姿勢や、円安対応への姿勢などを期待していた。しかし植田総裁が足元で急速に進む円安について「基調的物価に大きな影響を与えていない」と発言するなど、市場が期待したほどの強い円安けん制を示さなかった。こうした発言がどのような議論の下で出てきたのかなどが注目される。市場の追加利上げへの期待がさらに後退するようだと、ドル円は156円に向けた動きが見込まれる。 |
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英中銀金融政策会合(MPC) 5月9日20:00 ☆☆☆ | 政策金利は据え置きの見込み。前回の会合では昨年から利上げを主張し続けていたハスケル委員とマン委員が現状維持投票に回り、現状維持8名対利下げ1名での現状維持となった(ディングラ委員は2月の会合から利下げを主張)。この投票結果を受けて市場の一部では利下げに向けた動きが強まるという期待を示す動きが見られた。しかし4月17日に発表された3月の英消費者物価指数が前年比+3.2%と市場予想を上回る伸びとなり、インフレターゲットの+2%が遠いという状況もあり、一時織り込まれていた6月の会合での利下げ開始期待は後退した。短期金利市場動向から見た利下げ確率は6月で約38%、4月初め時点では約70%となっており、かなりの低下を見せている。年内の利下げについては88%が2回を見込んでいる。 今回の会合は結果、声明、議事要旨の発表に加え、四半期報告が公表され、総裁会見が実施される、いわゆるスーパーサーズデーとなっている。四半期報告や会見などで今後の物価見通しなどがどのように示されるかが注目される。当面の据え置き期待が広がるようだと、ポンド買いにつながる可能性がある。ポンドドルは1ポンド=1.2700ドルに向けた動きが期待される。 |
メキシコ中銀政策金利 5月10日04:00 ☆☆☆ | メキシコ銀行(中央銀行)は前回3月の会合で政策金利を0.25%引き下げた。ブラジルなど中南米の多くの国が昨年夏ごろに利下げを開始したことに比べると遅い利下げ開始となった。 今回は据え置き見通しが大勢となっている。ただ、ごく一部で利下げの期待が出ている。前日8日に政策金利を発表するブラジルは0.25%の利下げ見込み。実施されると昨年8月の利下げ開始以降7会合連続となる。 メキシコも利下げ圧力が高まっているが、9日朝に発表される4月のメキシコ消費者物価指数が前年比4.63%と3月の4.42%から伸びが強まる見込みとなっており、物価を引き下げにくい。4月に発表された2月の同国鉱工業生産や小売売上などの主要指標の強さからも、当面の据え置き見通しが示される可能性がある。声明などで経済動向への警戒を強め、今後の利下げ期待が強まるようだとペソ売りとなりそう。メキシコペソ円は8円80銭に向けた動きが期待される。 |
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