2024年05月13日号

(2024年05月06日~2024年05月10日)

先週の為替相場

リスク選好の円売り優勢

 先週(5月6-10日)は円売りが優勢だった。

 日本当局によるドル売り円買い介入とみられる動きや、3日発表された4月の米雇用統計の予想外の弱さを受けたドル売りなどから、3日に1ドル=151円86銭を付けた。6日以降はドル買い円売りが優勢となり、9日には156円に迫った。

 ダウ工業株30種平均が先週末までで8日連騰するなど、米株高が世界的なリスク選好につながり、円が売られた。中東情勢は期待されていたほどの進展が見られないが、事態の悪化もなく、リスク警戒感がやや後退した。

 カシュカリ・米ミネアポリス連銀総裁は7日の講演で、状況によっては年内利上げの可能性があると発言したほか、次回6月のFOMCで示される政策金利見通し(ドットプロット)に関して、年内2回以上の利下げは予想していないと発言するなど、タカ派姿勢を示した。10日にボウマンFRB理事が年内の利下げが正当化されるとは思わないと発言するなど、その他FRB関係者からもタカ派発言が見られたこともドル高円安につながっている。

 ドル円は日本が振替休日となり参加者が少なかった週明け6日からドル高円安が優勢。154円00銭前後でいったん上値を抑えられたものの、7日朝に154円台にしっかり乗せると、その後は154円00銭前後が下値支持帯となった。

 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁発言に7日海外市場で154円70銭台まで上昇した後、8日午前に植田和男日銀総裁が「足元の円安、これまでのところ基調的物価上昇に大きな影響ない」などと発言い、155円台に乗せてきた。その後は155円台前半がしっかり。9日に155円95銭を付けた後、少し調整が入ったところで日銀金融政策決定会合での主な意見(4月25/26日開催分)において、「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続くようだと、正常化ペースが早まる可能性がある」と示されたことで155円17銭まで急落する場面が見られたが、すぐに反発。9日にも155円90銭を付けるなど、ドル高円安が優勢。

 ユーロドルはカシュカリ氏発言を受けたドル高や、英中銀金融政策会合(MPC)後のポンド安に対ドルで連れ安となったことなどから9日に1ユーロ=1.0724ドルを付けた。同日の米新規失業保険申請件数が弱く出て、3日の米雇用統計が弱かったことと合わせ、米雇用市場への警戒が広がったことでドル売りになると、一気に1.0780ドル台に上昇。その後は1.07ドル台後半推移が続いた。

 ユーロ円はドル円の上昇もあり、3日に付けた1ユーロ=164円02銭の安値から反発。ドル円が156円手前で上値を抑えられた後も対ドルでのユーロ高もあってしっかりとなり、10日に167円97銭を付けた。

 イングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)は9日、市場予想通り政策金利を6会合連続で据え置いた。ただ、投票結果が予想された8対1ではなく、7対2となった。2月から利下げを主張するディングラ委員に加え、ラムズデン副総裁が利下げ主張に回った。ベイリー総裁は会見で6月の会合までに公表される物価と労働市場のデータをもとに改めて判断を行う。6月の会合での金利変更を否定するものでも、既成事実化されるものでもないと発言。市場は6月利下げの可能性が強まったとみて、ポンド売りが強まった。

 ポンドドルはドル高の流れを受け6日の1ポンド=1.2590ドル台から8日に1.2470ドル前後までポンド安となり、その後1.24ドル台後半での推移でMPCを迎えた。投票結果などを受けて1.2440ドル台までポンド安が進んだが、その後はドル高一服もあって1.2520ドル台まで反発した。

 ポンド円は円安の勢いが勝り、3日の1ポンド=191円37銭からの上昇が続いた。英MPC後のポンド売りに194円80銭台から194円00銭台を付けたが、すぐに反発し、10日に195円34銭を付けた。 

 

今週の見通し

 15日の米消費者物価指数と小売売上高次第の面が大きい。

 3日の米雇用統計がかなり弱く出たことで、市場では早期の利下げ開始を意識する動きが見られた。ただ、FRB関係者の発言はかなりタカ派なものが目立っており、見通しが揺れている。

 今回の消費者物価指数、小売売上高次第では、7月の利下げ開始期待が再開する可能性がある。前回の米消費者物価指数発表前までは7月の利下げ開始が過半数を超える展開となっていたが、その後じりじりと低下し、直近では25%程度まで落ちてきている。

 今回の結果により利下げと据え置きで見通しが拮抗するところまで利下げ期待が強まると、ドル売りが強まる可能性がある。その場合ドル円は155円を割り込む動きが期待される。

 一方強く出る可能性もある。雇用が弱めに出ても、個人消費が堅調な状況を示し、物価の下げ渋りが目立つようだと、9月の利下げ見通しが過半数を割り込む可能性が出てくる。この場合、年内複数回の利下げを行う可能性が後退することもあり、ドル高が強まる可能性がある。ECBや英中銀が6月に利下げする可能性が強まっているだけに、米FRBの利下げ見通し先送りにより、ドルが全面高となる可能性が高い。

 ドル円に関しては156円を超えていくと介入警戒感が強まるが、ドル全面高の流れでは介入の効果が限定的となりがちなだけに、当局も様子を見てくる可能性があり、もう一段のドル高円安がありそう。157円台に向けた動きを見込む。

 15日の米指標発表までは、慎重な動きとなりそう。基調は上方向で下がると買いが出る流れも、積極的にドル買いを仕掛けるほどの勢いに欠ける展開か。

 ユーロドルは方向性を探る展開か。1.07ドル台での推移が中心となりそう。

 ユーロ円はドル円の堅調地合いもあって上値トライの意識が強い。目先は168円超えでのユーロ買いに慎重な姿勢が見られるが、ドル円が156円台に乗せてくるようだと、ユーロ円も168円台での推移が見込まれる。

用語の解説

カシュカリ総裁 ニール・カシュカリ(Neel Kashkari)ミネアポリス連銀総裁。イリノイ大学工学部修士号取得後、ペンシルベニア大学でMBAを取得。米金融機関大手ゴールドマンサックスでの勤務を経て、2006年から2009年まで米財務省に勤務。財務次官補を務めた。2009年から米債券運用大手PIMCOでマネージングディレクターなどを務めた。2014年のカリフォルニア州知事選で共和党候補として出馬、民主党候補のジェリー・ブラウン氏に敗北。2016年1月より現職。金融政策について、比較的タカ派な姿勢で知られている。
ラムズデン副総裁 ディビッド・ラムズデン(David Ramsden)イングランド銀行副総裁。銀行及び市場担当。オックスフォード大学で政治学などの修士号、LSEで経済学の修士号を取得。英財務省チーフ経済アドバイザーなどを経て、2017年7月より現職、2022年7月から2期目(2027年まで)となっている。2005年にナイトバチェラーに叙任されている。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI/4月)
5月15日21:50
☆☆☆
 
 前回3月分のCPIは前年比は+3.5%と2月分に続いて前月の水準を超える伸びとなった。水準的には昨年9月以来の高水準となる。市場予想の+3.4%も上回る強い伸びとなっている。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は、前年比+3.8%と2月と同水準の伸びとなった。こちらも市場予想+3.7%を上回る伸びとなっている。
 前回の内訳を確認すると、昨年2月から前年同月比マイナスが続いていたエネルギー価格が、ガソリン価格の上昇もあって小幅ながらプラス圏を回復した。コア指数の項目では、財部門が3か月連続でマイナス圏となった。マイナス圏が続く中古自動車が前年比-2.2%と3月分も弱い結果となっている。サービス指数は前年比+5.4%と高めの推移。昨年3月をピークに伸び鈍化が続いていた住居費が2月と同じ+5.7%となり、伸びを支えた。
 今回4月分の市場予想は前年比+3.4%、コア前年比+3.6%とともに3月から伸びが鈍化する見込みとなっている。米国ではガソリン価格が3月から4月にかけて約5.4%(米エネルギー情報局調査、全米全種平均)上昇しており、全体を支えると見込まれる。ただ、新車供給回復傾向を受けた中古車価格の鈍化などが警戒されており、全体に伸びが鈍化する見込みとなっている。
 市場予想に反して強めの数字が出てくると、ドル円は157円に向けた動きが見込まれる。
米小売売上高(4月)
5月15日21:30
☆☆☆
 前回3月の米小売売上高は前月比+0.7%と市場予想の+0.4%を上回る伸びとなった。ガソリン価格上昇を受けたガソリンスタンド売上の拡大に加え、無店舗小売りなどの好調な伸びが全体を支えた。このデータを受けて、全米小売業協会のチーフエコノミストは、インフレ圧力の中でも個人の消費は堅調さを見せているとの見解を示した。
 今回の予想は+0.4%と、前回から伸びが鈍化もまずまずの水準が期待されている。3月に続いて上昇したガソリン価格がガソリンスタンド売り上げを押し上げるほか、3月は前月比-0.7%と弱く出た自動車及び同部品の販売回復が全体を支えるとみられる。自動車を除いた数字は+0.2%、自動車及びガソリンを除いた数字は+0.1%の予想となっており、雇用市場の弱さもあって、やや厳しい結果が見込まれている。予想をさらに下回って弱めの数字が出てくると、米景気を支える個人消費の減退懸念につながり、ドル売りが見込まれる。同時刻に発表される米CPI次第ではあるが、両指標がともに弱かった場合、153円台トライもありそう。
豪雇用統計(4月)
5月16日10:30
☆☆☆
 前回3月の豪雇用統計は、雇用者数が前月比+1.0万人予想に対して、0.66万人の減少となった。失業率も2月の3.7%から3.8% に悪化した。この結果を受けて豪準備銀行(中央銀行)の年内利下げ期待が一時上昇した。その後豪1-3月期消費者物価指数が強めに出たことで早期利下げ期待が後退。年内据え置きもしくは利上げの見込みが広がっている。今回の雇用が強めに出た場合は、見通しの変化による豪ドル買いとなりそう。
 市場予想は+2.4万人前後となっているが、失業率が0.1%悪化する見込み。予想に反して2か月続けて豪雇用が弱く出た場合、豪ドル売りが強まると見込まれる。1豪ドル=0.6500ドルを割り込む動きが見込まれる。

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