2024年05月20日号

(2024年05月13日~2024年05月17日)

先週の為替相場

米指標結果受けたドル売りも、ドル円は反発

 先週(5月13-20日)は注目された米消費者物価指数(CPI)の結果を受けて一時ドル売りとなった。

 ドル円は1ドル=155円70銭前後で13日の取引をスタート。先月末から今月時初めにかけて、日本当局によるドル売り円買い介入とみられる動きや、3日発表された4月の米雇用統計の弱さを受けたドル売りに151円86銭を付けた後、一転してドル買い円売りが優勢となった流れが継続した。

 13日東京午前に155円96銭と、先々週上値を抑えた156円00銭手前までドル高となった。同日行われた日本銀行の国債買入れ(用語説明1)で、市場が期待した買い入れの減額が行われず、各期間とも前回までと同額の買い入れとなったこと受けて、155円52銭前後までドル安円高となる場面が見られた。

 すぐにドル買いが入ると、同日公表されたNY地区連銀による4月の米消費者調査で消費者による1年先のインフレ見通しが前回調査の+3.0%から+3.3%に上昇していたことなどをきっかけにドル高が強まり、節目の156円00銭を超えた。

 14日には4月の米生産者物価指数(PPI)の前月比が+0.5%と市場予想の+0.3%を上回る伸びとなったことを材料に156円74銭を付けた。もっとも3月分が速報時の+0.2%から-0.1%に下方修正されており、見た目ほど強い数字ではないとの見方が広がり、高値から調整のドル売りが入った。

 15日の4月米消費者物価指数(CPI)を前に、ポジション調整のドル売りが入り、一時155円50銭台を付けた後、155円70銭前後で発表を迎えた。13日からの週で市場が最も注目していた材料である米CPIは、前月比+0.3%と市場予想の+0.4%を下回る伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も前月比+0.3%と市場予想の+0.4%を下回った。前年比は市場予想通りも3月分から伸びが鈍化した。また、同時刻に発表された4月の米小売売上高が前月比横ばいと市場予想の+0.4%を大きく下回ったこともあり、発表後からドル売りが強まった。

 米CPIの弱い伸びを受けて、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始期待が強まり、さらに12月にも利下げを実施いて年内2回の利下げとの見通しが本線となる展開となった。この見通しの変化を受けて16日東京市場午前に153円60銭を付けるドル安円高となった。

 その後は一転してドル高円安となった。16日の4月米輸入物価指数が前月比+0.9%、前年比+1.1%と市場予想を大きく上回る伸びとなったことで、ドル買いに勢いが出て、155円台にしっかり乗せ、17日には155円98銭を付けている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.0760ドル台で13日からの週の取引をスタート。1.0800ドル前後がいったん重くなったが、米生産者物価指数直後のドル高局面で1.0760ドル台がしっかりとなり、その後のドル売りで1.0800台に乗せた。その後米消費者物価指数と小売売上高の弱い結果を受けたドル安に1.0890ドル台まで上昇。

 1.0900ドル手前のユーロ売りが上値を抑え、利益確定のユーロ売りなどに、いったん1.0830ドル台を付けたものの、1.0870ドル前後まで戻して週の取引を終えた。

 ユーロ円は1ユーロ=167円70銭台で13日の週をスタート。ドル円の上昇もあって15日に1ユーロ=169円40銭前後を付けたが、その後米消費者物価指数と小売売上高の弱さを受けたドル円の急落に押されて167円33銭を付けた。

 その後ドル円の反発と、対ドルでのユーロ買いを支えに上昇となり、169円33銭と安値から約2円の反発となった。

今週の見通し

 5月に入って3日の米雇用統計、15日の米消費者物価指数と小売売上高と、弱い結果が続き、米FRBの利下げ開始への期待が強まってきた。短期金利市場動向などを見ると、9月に利下げを開始し、12月に追加利下げを行うという見通しが主力となっている。

 一時は年内据え置きの可能性まで意識されていた状況から、利下げ開始の期待が再燃してきたことで、ドル売りの材料となっているが、ドル円に関しては円売りの勢いが強い。ユーロドルなどが対ドルで買われている分、ユーロ円などは4月29日に日本当局によるドル売り円買い介入と見られる大きな円買いが入る前の水準を超えての上昇となっている。

 基本的にこうした流れが続くとみられ、ドル円は157円に向けた動きを見込んでいる。ただ、ここからは介入警戒感が強まってくることもあり、動きはやや慎重となりそう。

 今週はそれほど目立った米指標発表予定がないが、米FRB及びNY連銀共同主催のカンファレンスや、アトランタ連銀主催のカンファレンスなどが予定されており、FRB関係者発言が相次ぐことから、発言内容次第では相場に影響が出る可能性がある。

 ユーロドルは1.0900ドル前後が重くなっている。同水準を超えても1.1000ドルまではユーロ売り注文が並んでいるとみられる。ただ、押し目があまりなく流れは上方向。ゆっくりとしたユーロ高ドル安が続きそう。

 ユーロ円、ポンド円などはドル円以上にしっかりとした動きが見込まれる。ただ、高値警戒感もあり、やや不安定な動きとなりそう。米利下げ期待が強まってきたことで、関連した発言に対する反応などでドル主導の動きとなる可能性が高い点にも注意したい。

用語の解説

日本銀行国債買入れ 日本銀行の行う公開市場操作(オペレーション)の一つで、長期利付国債を日本銀行が買い入れることで、金融市場に資金を供給するもの。四半期の買い入れ予定は3、6、9、12月末に公表する「長期国債買入れの四半期予定」で示され、日程は買入れを行う月の前月最終営業日にその時点で予定している分を公表する。買入れ金額は四半期予定でレンジ形式で公表。当四半期中は原則として当該レンジの範囲内で実施される。
ボスティック・アトランタ連銀総裁 ラファエル・ボスティック(Raphael Bostic)アトランタ連銀総裁。ハーバード大学卒、スタンフォード大学で経済学博士号取得後、米FRBの調査統計局に2001年まで勤務。その後USC教授に就任。2017年6月より現職。金融政策については比較的中立派と見られている。今年のFOMCでの投票権を有している。

今週の注目指標

ウォラー米FRB理事講演
5月21日22:00
☆☆☆
 今月に入って3日の米雇用統計、15日の米消費者物価指数と小売売上高と、主要指標に弱い結果が続いたことで、先月まで目立っていた米利下げ期待の後退が一服。9月の米FOMCでの利下げ開始と、年内9月と12月の2回利下げとの見通しが広がる状況となっている。ただ、米FRB関係者の中には物価高を警戒し利下げに慎重な姿勢を示すメンバーも多くみられる。
 そうした中、今週は米FRB関係者の発言予定が目白押しとなっている。中でも注目は20日から開催されるFRB及びNY連銀共同主催による米ドルの国際的役割についての第3回会議でのウォラー理事による20日午後10時からの開催挨拶と21日午後10時からの講演。及び、同じく20日から開催されるアトランタ連銀主催の金融カンファレンスの中での、日本時間22日午前8時からのボスティック・アトランタ連銀総裁(用語説明2)、コリンズ・ボストン連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁によるパネルディスカッション。タカ派で知られるウォラー理事や、中立派のボスティック総裁らが、利下げに前向き姿勢を示すと、市場の早期利下げ期待が一気に強まる可能性がある。この場合ドル円は154円台に向かう可能性がある。
米FOMC議事要旨(4月30日、5月1日開催分)
5月23日03:00
☆☆☆
 市場予想通り6会合連続となる政策金利の据え置きを決定した4月30日、5月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が5月22日(日本時間23日午前3時)に公表される。
 同会合での声明ではこのところの物価動向を受けて、昨年12月より記載のある「インフレ率はここ1年で緩和したが、依然高止まりしている」との文言の後に、「ここ数か月、委員会が目指す2%の目標に向けたさらなる進展は見られなかった」との表現が加わわり、物価への警戒感を強く示した。
 パウエル議長はFOMC後の会見で「今年はこれまでのところ(目標に向けた動きについての)確信を深められるようなデータは得られていない」「確信を強めるまでには従来の想定よりも時間がかかりそう」と発言。一方で「次の動きが利上げとなる可能性は低い」と、市場の行き過ぎた期待を抑える姿勢も示している。
FOMC後のFRB関係者の発言を見ると、物価高への警戒感を示す姿勢がやや目立っていた。議事要旨において、現状と今後につきてどのような議論が見られたのかを確認することで、市場の今後の金融政策動向の見通しが変わると相場にも影響が出てくる。物価高警戒が強調されると9月の利下げ開始期待が後退しドル高となる可能性。ドル円は157円に向けた動きが見込まれる。
日銀国債買入れ
5月23日10:10 ☆☆
 日本銀行は13日午前に通告した国債買入オペで残存期間5年超10年以下を対象にしたオファー額を従来の4750億円から4250億円に500億円減額した。4月30日公表の四半期予定でのオファー金額範囲(5年超10年以下は4000億円から5500億円)の中ではあるが、市場の想定外で、サプライズとなって円債利回りの上昇、為替市場での円買いなどが見られた。
 17日午前の通告では実施された1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下、25年超のいずれも従来金額で据え置かれた。市場では3年超5年以下について、従来の4250億円から3750億円に500億円の減額があるはとの期待が広がっていたため、発表後は円売りとなった、
 23日は1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下の通告が予定されている。13日に減額した5年超10年以下は四半期予定で示された範囲下限まで250億となっており、さらなる減額が難しい。また、1年超3年以下はほかに比べて全体における日銀の買い入れが占める割合が小さい。そのため、今回減額があるとすると3年超5年以下。同期間の減額が見られると、今後の買い入れ縮小への期待が強まり、円買いにつながる可能性がある。ドル円は154円台トライが期待される。

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