2024年05月27日号
先週の為替相場
ドル高円安優勢
先週(5月20-24日)は15日の米消費者物価指数(CPI)などを受けて一時進んだドル売りに対する反発が進んだ。
米CPIなどの結果を受けて16日に1ドル=153円60銭を付けたドル円は、先々週のうちに156円00銭近くまでドル買いが進み、少し売りが出て155円60銭前後で先々週の取引を終えると、週明け20日も同水準で週の取引をスタートした。
20日の東京市場では156円00銭前後が少し重くなる場面が見られたが、20日の海外市場でドル全般の買いなどを受けてあっさりと156円台に乗せると、日米金利差を狙った取引が当面続くとの期待などから円売りが強まり、21日に156円50銭台まで上値を伸ばした。
21日の海外市場では、目立った材料がない中、米債利回りの低下などを材料に、いったんポジション調整のドル売りが強まり、155円85銭を付けたが、ドル売りは続かず、156円台を回復。ウォラーFRB理事が利下げには良好なインフレ指標があと数カ月必要との認識を示し、早期の利下げに消極的な姿勢を見せたほか、ボスティック・アトランタ連銀総裁が第4四半期での利下げ開始の可能性に言及するなどの場面が見られたが、市場の反応は限定的なものにとどまった。
22日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(4月30日、5月1日開催分)では、政策金利をより長期にわたって高水準で維持することが望ましいとの認識で一致していることが示されたほか、多くの参加者が金融政策が十分に景気抑制的であるか疑問を抱いていたことが示された。また、インフレ懸念が高まった場合の追加利上げの可能性について、様々な参加者が言及していたと示された。FOMC声明や会合後の議長会見で市場が抱いた印象よりもタカ派ではとの認識が広がり、一時ドル買いとなった。23日発表の米購買担当者景気指数(PMI)の強い結果もあり、ドル円は157円20銭前後まで上昇。その後も157円00銭前後を中心としたドル高円安圏推移となった。
ユーロドルは対円でのユーロ買いなどを支えに1ユーロ=1.0885ドルを付けるなど、先週前半はややユーロ高となった。22日に米債利回り上昇などをきっかけにドル買いが強まり、さらに同日の米FOMC議事要旨後のドル買いもあって、1.0810ドル台を付けた。
23日のユーロ圏及びフランス・ドイツの製造業PMIの好結果もあって、一時1.0861ドルまでユーロ高となったが、同日の米PMIの好結果を受けてドル買いが入り、1.0800ドル台を付けた。24日の市場は週明け27日の米国および英国市場が休場となることもあり、ポジション調整の動きが強まって1.0850ドル台を付けている。
ユーロ円は週明け20日に日経平均の上昇などをきっかけに上昇。米CPI後に急落する前に付けた高値を超えた。その後も円売りの流れが継続し、21日に1ユーロ=170円00銭手前まで上昇した。大台超えには少し慎重姿勢が見られたが、23日の米PMI後にドル円が157円台を付けた局面で170円を超えて上昇。その後米株安を受けた円買いに169円40銭台を付けたが、24日にはユーロドルでのユーロ買いドル売りが強まり、ユーロ円も170円50銭前後を付けている。
その他目立った動きとしては22日のNZドル高。同日のニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合は市場予想通り政策金利が据え置かれた。ただ、議事要旨で会合において利上げを議論したことが示されたほか、声明でもインフレの警戒を強く示すタカ派なものとなった。また四半期に一度公表される経済見通しにおいて、政策金利であるOCRの水準見通しについて、年内60%の確率での利上げ見通しが示され、利下げの開始時期見通しの先送りなども見られた。
この結果を受けてNZドルは急騰。前日の市場で1NZドル=95円00銭台を付けていたNZドル円は、会合前にポジション調整もあって95円30銭台まで上昇。会合後に96円10銭台まで急騰した。その後ドル円の下げなどもあっていったん調整が入ったが、週の後半にかけて再び上昇を見せ、24日には会合後の高値を超えている。
対ドルでは1NZドル=0.6100ドル前後から0.6150ドル超えへ急騰。その後のドル高に発表前水準を割り込む場面が見られたが、その後対円でのNZドル買いもあって0.61ドル台前半推移。
今週の見通し
27日は英国がスプリングバンクホリデー、米国がメモリアルデー(用語説明1)で休場。静かな週明けスタートが見込まれる。ドル円は介入警戒感があるものの、日米金利差を狙った取引が続くとの思惑もあって、下がると買いが出る流れ。今週はそれほど目立った材料がないこともあり、動き自体は落ち着いたものになる可能性が高いが、ゆっくりと上を試す展開となりそう。
それほど大きな材料がない今週の市場において、注目されているのが31日の米PCEデフレータと、日本の財務省による外国為替平衡操作実施状況(4月26日-5月29日)(用語説明2)の公表。週前半は材料が特になく、株式市場動向や債券利回りなどをにらみながらの展開が続きそう。なお、31日には日銀の国債買入オペの通告も予定されている。
ユーロドルは先週後半のユーロ安ドル高局面で1.0800ドル割れトライを果たせず、その後ユーロ買いが入っており、上下ともに動きにくい展開。6月のECB理事会での利下げ開始が見込まれる中で、戻りでは売りが出る流れとみているが、下値トライにも慎重か。
ユーロ円などクロス円は高値警戒感があるものの、円売りの勢いが強い。日本国債10年物利回りが1%を超えてくるなど、日本国債利回りの上昇にも円売りの勢いが止まらない。介入警戒などもあって、ここからの買いには慎重も、下がると買いが出る流れか。
用語の解説
メモリアルデー | 兵役中に死亡した兵士を追悼する米国の祝日。戦没将兵追悼記念日。もともとは南北戦争で戦死した兵士を顕彰する日として始まった。1968年の月曜休日統一法により、それまでの5月30日から5月最終月曜日に変更された。 |
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外国為替平衡操作実施状況 | 財務省が為替介入の実績額について公表するもの。総額については1カ月ごとに公表され、5月31日に4月26日から5月29日に分についての公表がある。あくまで期間中の総額であるため、介入の実施日、回数などはこの時点ではわからない。詳細については四半期ごとに公表される。 |
今週の注目指標
ドイツ消費者物価指数(5月) 5月29日21:00 ☆☆☆ | 6月のECB理事会での利下げ開始が見込まれる中、ユーロ圏最大の経済大国であるドイツの5月消費者物価指数(CPI)が29日、フランスおよびユーロ圏全体の5月CPIが31日に発表される。ドイツCPIは前年比+2.4%、EU基準の調和消費者物価指数(HICP)は前年比+2.7%と共に4月から伸びが強まる見込みとなっている。ある程度の反発は織り込み済みとなっているが、予想を超えて伸びているようだと、ECBの利下げ期待後退につながり、ユーロ高になる可能性がある。ユーロドルは1ユーロ=1.0900ドル超えが意識される。なお、17時にノルトライン・ヴェストファーレン州、バイエルン州、ヘッセン州、ブランデンブルク州などドイツの主要州のCPIがドイツ全体に先立って発表される。こちらの結果次第である程度の推測ができるため、合わせて注目される。 |
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財務省外国為替平衡操作実施状況 5月31日19:00 ☆☆☆ | 4月26日から5月29日分の介入実績が財務省より公表される。4月29日及び5月1日に入った大量のドル売り円買いは介入によるものと推測されているが、財務省などの通貨当局は公式に介入出ると公表していない。今回の発表により介入であったことが公的に判明する。期間中の総額が公表されるだけで、介入日時などは分からず、両日とも介入であったのかどうかなども不明であるが、日銀当座預金残高の予想値の状況により、29日は5兆円規模、1日は3兆円規模であったとみられており、今回の公表額が8兆円前後であれば、推定通りであったとみなされる。予想に比べて介入規模が小さかった場合などは円売りが強まる可能性がある。ドル円は158円に向けた動きが見込まれる。 |
米PCEデフレータ(4月) 5月31日21:30 ☆☆☆ | 同系統の指標である4月の米消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%と市場予想及び2月分、3月分の+0.4%を下回った。前年比は+3.4%と市場予想に一致したものの3月の+3.5%を下回った。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%と総合指数と同様に市場予想及び3月の伸びを下回った。前年比は+3.6%とこちらも総合指数同様に市場予想には一致も3月分から伸びが鈍化した。 PCEデフレータの市場予想は前月比+0.3%、前年比+2.7%と3月分と同水準。コアPCEは前月比+0.2%、前年比+2.8%と、前月比は3月分から若干の鈍化、前年比は3月並みの伸びが見込まれている。 クリーブランド連銀がスタッフによる予想値として公表している「Inflation Nowcasting」は24日付の予想値として前月比+0.27%、前年比+2.68%、コア前月比+0.23%、前年比+2.74%となっており、市場予想値から大きな乖離はない。予想前後の数字であれば波乱要素は少ないとみられるが、やや弱めに出た場合はドル売りが見込まれる。ドル円は155円台トライが見込まれる。 |
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