2024年06月03日号

(2024年05月27日~2024年05月31日)

先週の為替相場

比較的しっかり

 先週(5月27-31日)はドル円が1ドル=157円00銭を挟んで、上下に振幅も一方向の動きにはならなかった。一時157円71銭を付け、5月1日NY市場夕方に日銀が二度目のドル売り介入を行ったとみられる水準付近を付けたが、その後156円38銭まで下落。週末にかけてはドル買い円売りが優勢となり157円台に戻して週の取引を終えている。

 週明け27日は157円00銭前後で取引をスタート。英国がスプリングバンクホリデー、米国がメモリアルデーで休場となる中、落ち着いた動きながら、ややドル売り円買いが優勢な展開で始まった。前週末に神田財務官が介入について「今後も必要に応じて、いつ何時でも適切な措置をとって参りたい」と発言したことや、内田日銀副総裁がデフレとゼロ金利政策との戦い、終焉が視野と発言したことなどがドル売り円買いを誘った。もっとも156円60銭台まで下げた後、156円90銭台までドル買いが入るなど、一方向の動きにはならなかった。

 28日にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が「利上げを選択肢から排除した人はいないと思う」などのタカ派発言を行い、ドル高が優勢となった。米債利回りの上昇などもあって29日に先週の高値を付けている。

 日本国債10年物利回りが2011年以来となる1.1%台まで上昇する中で、その後は円買いが優勢となった。株安の動きなども円買いを誘った。さらに30日の米第1四半期GDP改定値が個人消費の予想以上の鈍化から下方修正されたことも、リスク警戒の円買いにつながった。

 もっとも週末にかけては米債利回りの上昇などを支えにドル買いとなり、ドル円は157円台回復した。

 ユーロドルは先週初めのドル売り局面で1ユーロ=1.0890ドル台を付けた。1.0900ドル手前のユーロ売りポジションが上値を抑えると、上述のカシュカリ総裁発言もあってユーロ売りドル買いとなった。29日に発表されたドイツ主要州の5月消費者物価指数が軒並み低迷。その後発表されたドイツ全体の5月消費者物価指数も前月比+0.1%と4月の+0.5%から伸びが鈍化したことでユーロ売りが強まった。30日東京午後までユーロ安が続き、1.0788ドルを付けている。同日の米第1四半期GDP改定値を受けたドル売りに反発。31日の5月ユーロ圏消費者物価指数が予想を上回る伸びとなったこともあり1.0880ドル台を付けた後、1.0850ドル前後で週の取引を終えた。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ買いもあって28日に1ユーロ=170円80銭を付けると、その後はドル円の買いがユーロ円を支える形で高値圏でもみあった。その後の日本国債利回り上昇などを受けた円買いや、ドイツ消費者物価指数を受けたユーロ売りに押され、169円00銭台まで大きく下げたが、その後ドル円の上昇もあって反発。ユーロ圏消費者物価指数の好結果を受けたユーロ買いもあり、下げ分をほぼ解消して、高値圏で週の取引を終えた。

 

今週の見通し

 7日発表の5月米雇用統計を警戒する動きが見られる。前回4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+17.5万人と、3月の+31.5万人から伸びが大きく鈍化。市場予想の+24.0万人も大きく下回る伸びにとどまるなど、厳しい数字となった。失業率も予想外に悪化した。

 米景気の底堅さの象徴でもあった労働市場の減速が見られることで、一時利下げ開始期待が広がった。今回も同様に弱めの結果が見られると、年内複数回利下げの期待につながり、ドル売りとなる可能性がある。

 今週は米雇用統計以外にもISM製造業・非製造業景気指数、雇用動態調査(JOLTS)(用語説明1)など重要な米指標発表が並んでおり、指標動向に注意が必要。

 いずれも無難に過ぎるようだと、ドル円の流れ自体はドル高円安とみられる。日米金利差を狙った取引が継続するとの見込みが、ドル円を支えている。31日に財務省が4月26日~5月29日の期間内に9兆7885億円の介入を実施したことを公表。ほぼ想定内であるが、同規模の介入を続けることは難しいとの思惑が広がったことで、円売りがやや入りやすくなっている。

 ドル円は158円台に向けた動きが見込まれるところ。ただ、動き自体はゆっくりとしたものとなりそう。

 ユーロドルは1.08ドル台を中心とした推移か。今月のECB理事会での利下げ実施が確実視されているが、相場への織り込みがほぼ済んでおり、やや上値が重いものの、ここからさらにユーロ売りを進めるだけの勢いに欠ける展開。6日の理事会での声明やラガルド総裁会見待ちとなりそう。

 ユーロ円も対ドル同様にECB理事会待ち。ドル円の堅調地合いもあり、流れ的には上方向か。

 その他、先週半ばから週末にかけて行われた南ア、メキシコの選挙は、ほぼ下馬評通りの結果となった。南ア総選挙は与党ANC(アフリカ民族会議)(用語説明2)が第1党を守ったものの、1994年の民主化選挙実施以降初めて単独過半数を割り込んだ。今後の連立協議の結果次第では、波乱要素となるなるだけに、今後のランド相場に注意。メキシコ大統領選はシェインバウム前メキシコ市長が勝利。現職のロペスオブラドール大統領の路線継続を公約としており、波乱要素は少ないとみられる。

 新興市場は政治情勢が相場に与える影響が大きいが、比較的穏当な結果となったことで、為替市場全体に与える影響は限定的なものにとどまりそう。

用語の解説

米雇用動態調査(JOLTS) 米労働省労働統計局雇用失業統計室が米国の求人件数、求人率、採用数、採用率、離職者数、離職率などを調査発表している指標。月末時点でのデータとなり、今回の発表は4月分であるが、4月30日時点での数字であり、5月12日を基準とする週のデータである米雇用統計との調査期間のずれはそれほど大きなものではない。一般的に求人件数が最も注目される。
アフリカ民族会議(ANC) 南アフリカの政党。1994年に同国にとって初となる全人種参加による民主選挙で単独過半数を獲得し、与党となって以来、同国の政権を担っている。現在の議長はラマポーザ大統領。5月29日に行われた総選挙での得票は40.18%にとどまり、第1党は確保したものの、1994年の民主選挙開始以来初めて単独過半数を割り込んだ。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(5月)
6月3日23:00
☆☆☆
 前回4月の米ISM製造業景気指数は49.2と3月の50.3から低下し、好悪判断の境となる50.0も下回った。今回は49.6と前回から小幅改善も、50.0には届かない見込みとなっている。前回は今後の先行指標としても注目される新規受注が3月から2.3ポイント低下して49.1となっており、厳しい状況が意識されている。予想を超えて50.0も上回ると、ドル買いの可能性が高まる。雇用統計の先行指標として注目される雇用部門も含めて強めに出た場合、ドル円は158円台に向けた動きが期待される。
ECB理事会
6月6日21:15
☆☆☆
 ECB理事会では主要3金利(限界貸出ファシリティ金利、主要リファイナンス・オペ金利、預金ファシリティ金利)をいずれも0.25%引き下げると見込まれている。利下げが実施されると2019年9月以来となる。利下げ自体はほぼ確実視されており、波乱要素は少ないとみられる。注目は声明やラガルド総裁の会見。5月31日に発表された5月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年比+2.6%と4月の+2.4%から伸びが強まった。市場予想の+2.5%も超える伸びに、今後の利下げ継続についての見方が割れている。利下げ継続に向けた姿勢が印象付けられるとユーロ売りが強まる可能性がある。ユーロドルは1.07ドル台に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(5月)
6月7日21:30 ☆☆☆
 前回4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+17.5万人と、3月の+31.5万人(+30.3万人から上方修正)から伸びが大きく鈍化した。市場予想の+24.0万人も大きく下回る弱い伸びとなった。2023年10月以来の低水準の伸びとなっている。失業率は3月の3.8%から3.9%に悪化した。市場予想は3.8%と横ばい予想となっていた。平均時給は前月比+0.2%と市場予想の+0.3%及び3月分の+0.3%を下回った。前年比は+3.9%と市場予想の+4.0%、3月分の+4.1%を下回っており、総じて弱い結果となった。
 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、ヘルスケア及び社会扶助部門は前月比+8.7万人と3月の+8.69万人、2月の+8.89万人同様の水準となっており、力強い伸びを維持した。一方、3月から顕著に伸びが鈍化したのが娯楽・接客部門で、3月分の+5.3万人から+0.5万人となった。より詳しい内訳をみると、劇場・スポーツ鑑賞などの部門が+2.29万人から-0.3万人と減少。また、米労働省規定の区分の中で最も雇用者が多く、同部門だけで1200万人以上を抱える飲食業が+2.85万人から+0.66万人に伸びが鈍化している。これらの部門は比較的経済に余裕のある時に業界が潤い、雇用も増えがちな業種だけに、警戒感を誘っている。その他、雇用統計の先行指標といわれるテンポラリーヘルプサービス(いわゆる派遣業で同部門が増えると、その後正社員雇用の増加が期待される)が、-1.64万人と3カ月連続でのマイナス圏で、減少幅も3月の-0.27万人から拡大と、厳しい数字となった。
 今回の予想は非農業部門雇用者数は+19.0万人と前回から小幅改善が見込まれている。節目とされる20万人には届いておらず、前回悪化した失業率が前回と同じ3.9%の見込みとなるなど、ややさえないものの、悪くない水準。予想前後の数字が出てくると、9月の利下げ開始期待については判断保留で、12日の米消費者物価指数(CPI)待ちとなりそう。ドル円はドル買い円売り基調継続で158円台を目指す動きが見込まれる。
 
 

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