2024年06月10日号

(2024年06月03日~2024年06月07日)

先週の為替相場

比較的しっかり

 先週(6月3-7日)のドル円は上下に大きな動きを見せた。週明け月曜日の市場で1ドル=157円47銭を付ける場面が見られたが、週の半ばにかけて154円55銭前後まで下落。その後、週末にかけて157円00銭台までドル買い円売りとなった。

 157円30銭台で先週の取引をスタートすると、米FRBが金融引き締め姿勢を当面維持するとの見方が広がり、3日月曜日東京市場で157円47銭を付けた。その後、円買い主導で156円60銭台まで調整が入った後、3日の5月米ISM製造業景気指数が弱さを見せたことで、155円95銭までドル安となった。ISM製造業景気指数は4月からの小幅改善が見込まれていたが、予想外に悪化した。内訳のうち、今後を占う項目として注目度の高い新規受注が特に弱かったことで、米景気に対する警戒感が広がった。

 4日の東京市場では156円49銭前後までドル買い円売りとなったが、156円台半ばが重くなったことで、その後一転してドル安円高となった。欧州株や米株先物時間外取引などでの株安をきっかけにリスク警戒の円買いが優勢。同日の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の弱さもドル安円高につながっている。ドル円はロンドン市場で154円台に下げた後、少し戻すも、米指標の弱さに154円55銭まで下げた。同日東京市場で1ユーロ=170円70銭台を付けていたユーロ円は168円09銭まで下げ、1ポンド=200円42銭を付けていたポンド円は、197円21銭まで下げるなど、軒並みの外貨安円高が見られた。海外勢を中心に6月13日、14日の日銀金融政策決定会合で国債買入れの減額を決定するとの思惑が広がったことも、円買いにつながっている。

 円高一服後は反発を見せた。5日の東京市場で155円70銭台まで買い戻しが入ると、その後もドル買い円安が継続。同日の米ISM非製造業景気指数が製造業とは違い強めに出たことで、ドル買いの勢いが強まり、156円48銭を付けた。

 利益確定のドル売りなどもあって6日の東京市場で155円37銭まで下げたが、同日中村日銀審議委員が当面現状の政策維持が妥当との姿勢を示したこともあり、156円30銭台までドル買い円売りが入った。その後米雇用統計前のポジション調整でのドル売りに155円10銭台を付けた。

 注目された米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る伸びとなった。失業率は予想外に悪化したが、平均時給が前月比、前年比とも予想を超える伸びとなるなど、総じて強さが目立った。ドルはほぼ全面高となり157円00銭台を付けた。

 ユーロドルは3日の米ISM製造業景気指数を受けたドル全面安もあり、3日に1ユーロ=1.0820ドル台から1.0910ドル台までユーロ高となった。その後1.08ドル台後半を中心に落ち着いた動きが見られた。6日のECB理事会は市場予想通り主要3金利とも0.25%の利下げとなった。ただ、声明などでインフレ警戒が示されたこと、ECBスタッフによる経済見通しで物価見通しが上方修正されたことなどを受けて追加利上げ期待が後退。ややユーロ買いとなり、1.0900前後で米雇用統計を迎えた。米雇用統計後のドル高に一転して1.0800ドル前後を付けた。

 

今週の見通し

 7日の米雇用統計を受けて、9月のFOMCでの利下げ期待が後退。ただ、今週は米消費者物価指数(CPI)、米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されており、その結果次第で状況が変化する可能性がある。流れはドル高方向とみられるが、米CPIやFOMCまでは動きが抑えられそう。

 ドル円は158円台に向けた動きが予想されるが、米CPIが弱く出たり、今回の米FOMCで示される年末時点での政策金利水準見通し(ドットプロット)で、年複数回利下げ見通しが示されると、一気にドル安となる可能性があるだけに、慎重な動きが見込まれる。政府・日銀による円買い介入への警戒感や、13日、14日の日銀金融政策決定会合での国債買入れの減額期待を受けた円買いなどもドル円の上値を抑えてきそう。

 米CPIでの物価の伸びが強く、FOMCでも物価警戒が強く見られた場合、160円トライも十分にある一方、下方向のリスクも高く、週前半は様子見ムードが広がる可能性がある。

 ユーロは6月6日から9日にかけて行われた欧州議会選挙でフランスとドイツの極右政党が躍進したことへの警戒感が重石となっている。特にフランスは極右政党の国民連合(RN)がマクロン大統領が率いる与党連合の倍以上の議席を獲得。マクロン大統領はこの結果を受けて1997年以来となる下院解散を発表した。ドイツでは与党の社会民主党(SPD)の得票率は15%となり、野党保守政党連合の31%の半分以下となった。また同国の極右政党ドイツのための選択肢(AfD)は15%とSPDと得票率で並んだ。こうした政治的混乱がユーロの重石となっている。ユーロドルは米雇用統計を受けてのドル高と、政治的混乱を受けたユーロ安両面から下げている。当面は上値が重い展開が見込まれる。

用語の解説

国民連合(RN) 国民連合(RN:Rassemblement National)はフランスの政党。ジャン・マリー・ル・ペンが1972年に反ユダヤ主義、排外主義などを掲げて結党。当時の党名は国民戦線(FN)。創設者の娘である現当主マリーヌ・ル・ペンが2011年に党首に就任後、やや穏健路線に転じ、2018年に党名を国民連合に変更した。マリーヌ・ル・ペンは2017年のフランス大統領選挙の第一回投票で得票率1位となったが、決選投票でマクロン候補に敗れた。
ドイツのための選択肢(AfD) ドイツのための選択肢(AfD:Alternative für Deutschland)はドイツの政党。ギリシャ危機でのドイツの多額の負担への不満などを背景に2013年に設立。2014年の欧州議会選挙で議席を初めて獲得。同年に州議会選挙での議席を獲得、2017年のドイツ連邦議会選挙で初めて連邦議会の議席を獲得した。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(5月)
6月12日21:30
☆☆☆
 12日21時半に5月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。7日発表の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を大きく超える伸びとなったことで、米国の早期利下げ期待が後退。発表前まで優勢となっていた9月の利下げ開始見通しは、50%以下まで落ち込んでいる。CPIも強く出た場合、9月の利下げ開始期待がさらに後退。年内複数回の利下げ開始期待も後退し、ドル高につながる可能性が高い。
 前回4月の米CPIは前年比+3.4%、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比+3.6%と、3月CPIの+3.5%、+3.8%から伸びが鈍化した。市場予想とは一致していた。前月比では+0.3%、コア前月比+0.3%と3月の+0.4%、+0.4%からこちらも鈍化した。市場予想は+0.4%、+0.3%となっており、前月比のみ予想を下回る伸びとなった。総じて予想と一致も伸びが鈍化という印象を与えた。
 前回の前年比での内訳をみると、ガソリン小売価格が上昇していることもあり、エネルギーが前年比+2.6%と、3月の+2.1%に続いて高い伸びとなった。食料品は変わらずも、外食は+4.1%と13カ月連続で伸びが鈍化している。
 食品とエネルギーを除いた財は-1.3%と、4カ月連続で前年比マイナス。マイナス幅も3月の-0.7%から-1.3%に広がった。自動車の価格低下が目立っており、中古車は-6.9%の大幅安、新車も-0.4%と2カ月連続でマイナス圏となっている。
 食品とエネルギーを除いたサービスは+5.3%と3月の+5.4%からは鈍化したものの、高水準となっている。CPI全体を100としたとき、36.2%を占める大きな項目である住居費が+5.5%となっており、3月の+5.7%からは小幅鈍化したものの、高水準の伸びとなって全体を支えている。住居費を除いたサービスは+5.0%と、4カ月連続で上昇。自動車保険が+22.6%と5カ月連続で20%を超える高い伸び。その影響で輸送サービスが+11.2%となった。医療費が+2.7%と3月の+2.1%から上昇した。そうした中、伸びの鈍化がやや目立ったのがレクリエーションサービスなどで、ここにきて賃金上昇率が低下している影響が出ているとみられている。
 今回の予想は前年比+3.4%と4月と同水準、コア前年比は+3.5%と4月の+3.6%から小幅鈍化見込みとなった。前月比は+0.1%と前回から伸びが鈍化。コア前月比は+0.3%と4月と同水準の伸びが見込まれている。
 この2カ月ほど上昇が目立っていたガソリン小売価格は、全米全種平均で1ガロン=3.725ドル(米エネルギー情報局調査)と4月の+3.733ドルから小幅な鈍化となった。そのため前月比の伸びが4月に比べ弱いものとなるという予想は妥当という印象。なお、2023年のガソリン小売価格は4月から5月にかけて今年以上の低下を見せており、前年比ではプラス圏を維持する見込み。
 住居費の鈍化などが予想ほど進まず、全体及びコアの前年比が予想を上回る伸びとなった場合、7日の米雇用統計後のドル高がさらに強まる可能性がある。ドル円は158円台に向けた動きが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月13日03:00
☆☆☆
 11日、12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。3月ごろまでは今回のFOMCでの利下げ開始見通しが広がっていたが、その後の米指標の強さもあり、利下げ見通しは先送りされており、今回は据え置きで見通しが一致している。予想通り据え置きとなった場合、7会合連続となる。
 今後の利下げ開始に向けた動きがどこまで強まるかが注目ポイントとなる。声明での今後についての表現などに大きな変化が見られると相場への影響が大きくなるが、今回に関してはそれほど大きな変化はないという見方が強い。ただ、前回の声明で第1パラグラフに加えられた特徴的な一文「ここ数カ月インフレ目標に向けたさらなる進展は見られない」という表現に関しては、削除や表現変更の可能性がある。こちらは利下げに向けた動きの一つとしてドル売り材料となる。
 パウエル議長による会見は従来からの政策判断はデータ次第という姿勢を継続する見込みとなっている。前回の会見で見られた(目標である)2%への低下の道筋確認にはまだ時間がかかりそうという表現の変更が見られた場合は、こちらもドル売り材料となる。
 そして今回のFOMCで最大の注目ポイントとなっているのが、四半期に一度公表されるFRBメンバーによる経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)。中でも年末時点での参加者の政策金利水準見通しを示すドットプロットの変更がどこまで進むかが注目されている。 
 前回3月のFOMCで公表されたSEPの中でのドットプロットは、2024年末時点での政策金利見通しの中央値が4.50%-4.75%となっており、年3回の利下げを織り込んでいた。現在の状況でここから年内3回の利下げはまずないとみられ、見通しも修正が見込まれている。市場は年内の利下げ回数について、1回になるのか、2回になるのかで見通しが拮抗している。1回以下の見通しを示すメンバーが多いようだと、ドル高の材料となる。また、2025年以降の利下げ回数見通しについても注目されている。前回は2025年、2026年ともに年3回の利下げを見込んでいた。より少ない回数の利下げ見通しが強まるようだと、長期債利回りの上昇につながり、ドル高の材料となる。
 結果次第でドル高ドル安どちらにも動く可能性があるが、現状としてはドル高の可能性が高そう。SEPの強気な結果など次第では中期的に160円を目指すきっかけになる可能性がある。
日本銀行金融政策決定会合
6月13日・14日 ☆☆☆
 13日、14日に日本銀行金融政策会合が開催される。結果発表は会合終了後となり、14日昼前後とみられる。14日15時半から植田日銀総裁が会見を行う。3月に利上げを実施し、マイナス金利の解除、YCCの廃止などを決定した日銀。今後の追加利上げ期待が海外勢を中心に広がっている。ただ今回の会合に関しては据え置きで見方がほぼ一致している。注目は国債買入れの減額があるかどうか。現行で月額6兆円規模となっている国債買い入れについて、減額と据え置きで見方が分かれている。
 今月に入って関係者筋報道として減額を具体的に検討との報道がある一方、中村審議委員から当面は現状政策の維持が望ましいとの発言があった。実際に減額があった場合は円買い、現状維持で円売りが見込まれる。減額があった場合ドル円は155円台に向けた動きが見込まれる。

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