2024年06月17日号

(2024年06月10日~2024年06月14日)

先週の為替相場

比較的しっかり

 先週(6月10-14日)のドル円は週の半ば以降上下に大きな動きを見せたが、週前半の水準の戻して週の取引を終えた。ユーロが対主要通貨で売りが出るなどの動きが見られた。

 ユーロは政治情勢を警戒した売りが対ドル、対円、対ポンドなどで目立った。6日の欧州議会選挙で極右国民連合がフランスのマクロン大統領率いる保守連合の倍以上の得票を獲得したことを受けて、マクロン大統領が仏下院の解散総選挙を決定。先週はその世論調査結果などが報じられたが、極右国民連合の大きな躍進予想が報じられた。各社調査でのばらつきがあるものの、国民連合は235-265議席程度の議席を獲得し、第1党となる見込み。過半数289には届かない見込みとなっているが、中道右派の共和党シオティ党首が選挙協力を表明するなど、新たな連立の動きもみられている(シオティ党首は党内からの反発を受け、その後党から除名された)。極右首相の誕生、新たな連立の模索など、いくつかのシナリオが予想される中、フランスの政治情勢が相当に不安定な状況になることは確実と見られ、市場の警戒感を誘っている。

 ユーロドルは7日の1ユーロ=1.0900ドル前後での推移からの下げが続き、11日に1.0720ドル前後を付けた。その後米物価統計を受けたドル売りに1.0850ドル前後まで戻したが、フランス世論調査結果などを受けたユーロ売りに14日に1.0668ドルまでユーロ安が進んだ。ユーロ円はユーロ安と円安が交錯し、1ユーロ=169円を中心としたレンジ取引。ドル円が12日の米消費者物価指数(CPI)後の下げから買い戻しが入り、ユーロドルでもポジション調整のユーロ買いが見られた13日の市場で170円10銭台を付ける場面が見られたが、その後仏世論調査を受けたユーロ売りの勢いが強まり、14日に167円50銭台まで下げている。

 ドル円は米CPIまでは様子見ムードが広がり、落ち着いた動き。7日の米雇用統計後のドル買い円売りの影響もあり、ややしっかりした動きとなったが、157円50銭超えのドル買いに慎重姿勢が見られた。

 12日の米CPIを受けてドル売りが一気に強まると、155円70銭台を付けた。しかし、同日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、四半期に一度示されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)の中のドットプロット(用語説明1)で年1回の利下げが見通しの中央値となったことで、ドル買いとなり、同日のうちに156円90銭前後まで上昇。13日には米CPI前の水準まで買い戻された。

 その後日銀金融政策決定会合の結果を受けて一時円安となった。日銀会合では事前報道のあった国債買い入れ減額について、減額の方針を決定。具体策については次回会合で決定と発表した。市場では今回具体策が示され、早ければ次回の会合で利上げの決定を期待する動きが見られたことから、発表後に円売りとなり、一時158円26銭を付けた。もっともその後の植田日銀総裁による会見において「最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上、十分注視」「7月に経済、物価のデータ次第で短期金利を引き上げること当然ありうる」などの発言があったことで円売りが一服。156円80銭台を付けた後157円40銭前後と、日銀会合前の水準で週の取引を終えている。

 

今週の見通し

 米指標のまちまちな状況が不安定な動きにつながっている。ただ、ドル円に関しては基本的にしっかりの展開。下がると買いが出る流れが続いている。

 米国の年内複数回利下げ期待が重石となっているが、米FOMCでの物価高への警戒が支えとなっている。日銀の早期利上げ期待も少し抑えられており、ドル円は再びの158円台トライが意識される展開となりそう。

 ユーロは政治情勢への警戒感が当面上値を抑える展開か。欧州議会選挙で極右国民連合が躍進したことを受けて、マクロン大統領は1997年以来の下院解散総選挙を決定した。国政選挙では極右などの票が伸びないという見方が背景にあったと見られるが、各社世論調査で国民連合は第1党をほぼ確実にする勢い。緑の党、社会党、共産党、急進左派である不屈のフランスの左派4党は選挙協力を発表しており、マクロン大統領率いる中道連合と第2勢力を争う勢いを見せている。

 コアビタシオン(用語説明2)が濃厚となっており、今後のフランスの政治情勢はかなりの混乱が見込まれる。また、域内を代表する国の一つであるフランスの混乱はEU全体にも厳しい状況を招く可能性があるだけに、混乱を嫌う投資資金のユーロからの逃避が見込まれている。

 ここから一気に売りが強まるだけの勢いは見られないものの、当面は上値の重い展開が見込まれる。ユーロドルは1.0600割れを意識する展開か。ユーロ円はドル円の堅調地合いがある程度の支えも、リスク警戒が強い中でこちらも上値が重くなりそうで、166円台に向けた動きが見込まれる。

 ポンドは英中銀金融政策会合の結果発表を13日に控えていることや、対ユーロでのポンド買いから、ユーロドルに比べると下げ圧力が小さいが、対ドルなどでは上値が重くなりそう。1ポンド=1.2600ドルを意識する展開か。

用語の解説

ドットプロット 米連邦公開市場委員会(FOMC)において、四半期に一度公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)の中で示される各メンバーによる年末時点での政策金利水準見通しをドットで表したもの。3年後までの各年末時点と長期の政策金利水準見通しが示される。投票権の有無にかかわらずメンバー全員の見通しが示され、総裁不在の地区連銀は代理出席している第1副総裁の見通しが示される。それぞれのドットがどのメンバーの予想であるかは公表されない。
コアビタシオン コアビタシオン(Cohabitation)はフランス語で同居などを意味する単語。フランス政界では大統領と首相の所属勢力が異なることを指す。1958年に始まった現在のフランス第5共和政の下では3回この状態となっており、最も最近では1997年3月から2002年5月に保守系である共和国連合のシラク大統領と中道左派である社会党のジョスパン首相という体制になった。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
6月18日13:30
☆☆☆
 18日13時半にオーストラリア準備銀行(RBA:中央銀行)金融政策会合の結果が発表される。5会合連続の据え置きが見込まれている。
 4月24日に発表された豪州の第1四半期消費者物価指数(CPI)が市場予想ほどの鈍化を見せなかったことを受けて、前回5月7日の会合では声明などで物価への警戒が強く示されるのではとの見方が事前に広がっていた。しかし、RBAは従来の姿勢を維持し、声明も中立姿勢を保つものとなったことで、市場の今後の追加利上げ期待が後退。市場では当面の金利据え置きを見込む動きが広がっている。ただ、5月29日に発表された4月の月次消費者物価指数が、市場予想に反して3月よりも高水準となったことで、市場は物価への警戒感をやや強めている。今回の会合の声明で、物価への警戒が強く示され、追加利上げへの期待が再び高まるようだと、豪ドル買いの動きが見込まれる。豪ドル円は1豪ドル=105円に向けた動きが期待される。
米小売売上高
6月18日21:30
☆☆☆
 18日21時半に5月の米小売売上高が発表される。7日の米雇用統計が予想を大きく上回る雇用の伸びを示すなど強さを示す一方、12日の米消費者物価指数(CPI)、13日の米生産者物価指数(PPI)がかなり弱い伸びに留まった。また3日の米ISM製造業景気指数が予想外に弱かった一方、5日の同非製造業景気指数は強く出るなど、米主要指標はまちまちな状況となっている。
 米国の利下げ開始見通しについて、今月初め時点では9月の開始期待がやや優勢となっていたが、米雇用統計の強さを受けて開始先送り見通しが広がり、短期金利市場での据え置きの織り込みが約80%まで上昇する場面が見られた。しかし、その後の物価統計での伸び鈍化の影響が大きく、直近で約70%が9月利下げを織り込むところまで期待が強まっている。
 今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドットプロットでは19名中8名が年内2回の利下げを予想。しかし、7名が1回、4名が据え置きを見込んでおり、年内1回の利下げが予想中央値となった。ただ、この見通し時点ではCPIまでしか発表されておらず、PPIの弱さを織り込んでいない。物価全般の弱さが示されたことで、市場は年内2回の利下げ見通しを崩していない。ただ、あくまで今後の指標動向次第という面が大きい。米国のGDPの約70%を占める個人消費の動向を示す小売売上高の状況も、予想に影響を与える大きな材料の一つだけに、注目を集めている。
 前回4月の米小売売上高は前月比横ばいと、市場予想の+0.4%を大きく下回る伸びに留まった。また2月分及び3月分が下方修正されており、弱さの目立つ結果となっている。
 内訳をみると、3月から4月にかけて米国のガソリン小売価格が大きく上昇したこともあり、ガソリンスタンド売上が+3.1%と大きく上昇。全体を+0.24%押し上げている。一方で無店舗小売が-1.2%となり、全体の伸びを0.21%押し下げた。また自動車及び同部品が-0.8%なり、こちらは0.14%教え下げている。
 自動車に関してはサプタイチェーン問題が落ち着き、米国内での新車供給状況が改善していることで、価格の低下が生じており、全体の売り上げ減につながったと見られる。また無店舗小売に関しては、無店舗小売最大手アマゾンのセールが3月に実施されたことで、その反動が出たという面が大きいと考えられている。
 前回の無店舗小売の弱さなどがある意味特殊事情によるものということもあり、今回は+0.3%と比較的堅調な伸びが期待されている。ただ、4月から5月にかけては米国のガソリン小売価格が小幅ながら低下した(米エネルギー情報局調査全米全種平均で1ガロン当たり3.733ドルから3.725ドル)。米国はごく一部地域を除いて車が生活必需品ということもあり、ガソリンの販売量は価格変化の影響を受けにくく、価格低下は全体の売り上げ減につながる。その為、前回全体を押し上げたガソリンスタンド売上はほぼ横ばいかマイナスになることが予想される。こうした材料が強く影響し、市場予想ほどの伸びが見られなかった場合、9月の利下げ期待がもう一段強まり、ドル安となる可能性がある。ドル円は先週の安値155円70銭台を意識する展開となりそう。
 
英中銀政策金利
6月20日20:00 ☆☆☆
 20日にイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)の結果発表が予定されている。今回は四半期金融報告の発表はなく、ベイリー総裁による会見も予定されていない。
 今年の3月ごろまで、市場は今回のMPCでの利下げ開始を見込む動きが広がっていた。その後開始先送り期待が広がってきたものの、5月初めぐらいまではそれなりに利下げ期待が残っていた。しかし5月22日に発表された4月の英消費者物価指数(CPI)が予想ほどの鈍化を見せなかったことで、今回の据え置き見通しが強まり、直近では見通しが据え置きでほぼ一致する状況となった。
 ただ、年内据え置き期待もある米国などに比べると、今後の利下げ開始期待が強く、8月1日の会合で利下げがあるかどうかは見方が分かれるところとなっている。19日に発表される5月の英物価統計次第では8月の利下げ期待が広がる可能性がある。
 そうした中、会合での注目は声明と議事要旨の内容及び投票結果の内訳となる。議事要旨などでどこまで利下げに向けた姿勢が見られるかが注目される。また、前回のMPCでは、2月位以降利下げを主張してきたディングラ委員に加え、ラムズデン副総裁が利下げに投票し、据え置き7名対利下げ2名での据え置き決定となった。今回の会合でさらに利下げ派が増えると、8月1日の利下げ実施の可能性が高まり、ポンド売りの材料となる。ポンド円は1ポンド=198円00銭を割り込む動きとなる可能性がある。

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