2024年06月24日号

(2024年06月17日~2024年06月21日)

先週の為替相場

ドル円1ドル=160円台が視野

 先週(6月17-21日)のドル円はドル高円安となった。週末にかけて動きが強まり4月29日以来のドル高円安となる1ドル=159円80銭台を付けている。

 12日から14日にかけて上下に激しい動きを見せたドル円は、157円台で17日からの週の取引をスタートすると、ゆっくりとドル高円安が進んだ。11日、12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドットプロットにおいて、年1回利下げがメンバー予想の中央値となったことなどがドル買いにつながった。

 フランスの政治情勢に対する警戒感も継続。30日に第1回投票を迎えるフランス下院選挙(用語説明1)で、極右政党国民連合(RN)が第1党となることがほぼ確実視されており、警戒感からのユーロ売りドル買いとなっている。

 18日の市場で158円23銭までドル高円安となり、14日に付けた158円26銭の高値に迫ったものの、同日の米小売売上高が予想を下回ったことでいったん157円60銭台までドル売りとなった。

 その後158円台での買いに慎重な動きが見られたが、20日のスイス国立銀行(中央銀行)の予想外の利下げや、政策金利を据え置いたイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合議事要旨で、複数のメンバーが微妙なバランスであったと発言したことで、欧州通貨安ドル高からドル全般の買いが強まり、ドル円でも158円台にしっかり乗せた。

 その後もドル高の勢いが止まらず21日東京市場で159円00銭を超えると、6月の米製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)の強い伸びを受けてドル高が強まり、159円84銭と、節目の160円が視野に入るところまで買われて週の取引を終えた。

 ユーロドルは14日に1ユーロ=1.0660ドル台を付けた後、1.0700ドル台に戻して先々週の取引を終え、同水準で17日の取引スタートとなった後、1.0700割れを試す場面が見られたが、すぐにユーロ買いが入るなど、下値トライに慎重な姿勢が見られた。

 18日の米小売売上高の弱さを受けたドル売りなどに1.0760ドル台を付け、その後は1.0750ドル前後での推移が続いたが、週末にかけてフランスの政治情勢を警戒したユーロ売りと、ドル全般の上昇に1.0670ドル台まで下げている。

 ユーロ円は、ユーロドルでのユーロ売りがやや慎重な動きとなっている一方、ドル円が堅調な上昇を見せたことで、しっかりの動きとなった。

 14日に付けた1ユーロ=167円50銭台からの上昇が続き、21日に170円40銭台まで上昇した後、ユーロ圏及び独・仏購買担当者景気指数(PMI)の弱さに169円30銭台までいったんユーロ安となった。その後ドル円の上昇を受けて170円91銭まで上昇した。

 

今週の見通し

 ドル高円安が継続か。節目である160円を目前にして、介入警戒感が広がっているが、20日に米財務省が公表した為替報告書で「監視リスト」の対象に日本が加わったことが判明したところであり、現状での介入は難しいのではなどの思惑が下値を支えている。

 先週金曜日の上昇のきっかけが米PMIの好結果を受けたドル買いであるように、ドル全般の上昇が支えとなってドル円が上昇している面があり、円相場の急激な変動に対応するという形での介入とは言い切れない点も、介入警戒感がくすぶりながらもドル高円安が続く展開につながっている。

 もっとも6月5日の154円50銭台から2週間ちょっとで4円強のドル高円安は行き過ぎ感もあり、上昇するにしても動きはゆっくりとなりそう。

 ユーロドルはフランスの政治情勢への警戒もあり戻りでの売りが出やすい地合いとなっているが、1.06ドル台での売りに慎重。ある程度調整を交えながらの展開か。

 ユーロ円などクロス円はドル円同様にしっかり。ただドル円で介入が入ると、クロス円も大幅安となる可能性が高いだけに、慎重な動きが必要。

用語の解説

フランス下院選挙 フランス国民議会(下院)は定員577名、小選挙区制。第1回投票で有効投票数の50%超かつ登録有権者数の25%以上を獲得した候補者が出なかった場合、登録有権者数の12.5%以上の得票を得た候補者を対象とした第2回投票で決定する。今回は6月30日に第1回、7月7日に第2回の投票が行われる。
為替報告書 米財務省が年2回、米国の主要貿易相手国について為替介入などによって故意に為替水準を操作し、通商条件を有利に誘導していないかを調査し、議会に提出する報告書。巨額の対米貿易黒字、大幅な経常黒字、一方的かつ継続的な為替市場介入の3つの基準について評価する。日本は国・地域の指定が始まった2016年以降監視リストに入っていたが、2023年6月の報告書でリストから外れ、昨年11月もリストに入っていなかったが、今回リスト入りした。

今週の注目指標

メキシコ中銀政策金利
6月28日04:00
 メキシコ中央銀行金融政策会合の結果が27日(日本時間28日午前4時)に発表される。政策金利は現行の11%で据え置き見込み。
 多くの中南米諸国が昨年夏ごろから利下げに転じているが、経済が好調ということもあり、メキシコ中銀は今年3月に利上げサイクル終了後初めての利下げを実施。その後は据え置きとなっている。前回の会合で物価が目標に収まる時期の見通しを後ずれさせており、当面は据え置きを続けるとの見方が広がっている。
 今後に向けての声明での姿勢などが注目ポイントとなっており、当面の金利据え置き見通しが強まると、ペソ高になる可能性がある。メキシコペソ円は9円に向けた動きが期待される。
米PCEデフレータ(5月)
6月28日21:30
☆☆☆
 28日21時半に5月の米個人消費支出(PCE)デフレータが発表される。米国のインフレターゲットの対象指標として注目を集めている。
 前回4月のPCEデフレータは前年比+2.7%、変更の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比が+2.8%と、ともに3月と同水準の伸びとなった。前月比は+0.2%と3月の+0.7%から鈍化。コア前月比も+0.2%と3月の+0.3%から鈍化した。また、FRBが重視しているとされる住宅とエネルギーを除いたサービスPCE、いわゆるスーパーコアは前月比+0.3%となり、こちらも3月の+0.4%から鈍化した。
 同系統の指標である今月発表された5月の米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)はともに弱い結果となった。
 CPIは前年比+3.3%と4月の+3.4%から鈍化。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+3.4%と5月の+3.6%からこちらも鈍化した。中古車・トラックが前年比-9.3%、新車が-0.8%と、供給体制の改善、販売ディーラーの販売促進などから自動車の価格低下が目立った。住居費は2カ月連続での伸び鈍化も、水準は5.4%と高水準を維持した。このところ上昇が目立っている自動車保険は前年比+20.3%と6カ月連続で前年比20%超えとなり、同部門を含む輸送サービスも+10.5%と高水準の伸びとなった。
 PPIは前年比+2.2%と4月の+2.3%(2.2%から上方修正)から鈍化。市場予想は+2.5%へ伸びが強まる見込みとなっていた。食品とエネルギーを除いたコアは前月比横ばい、前年比+2.3%とこちらも予想の+0.3%、+2.5%を下回る伸びとなった。また、PPIのうちPCEデフレータの算出に利用される項目に弱さが目立っていた。航空運賃が前月比-4.3%、ポートフォリオ運用サービスが
-1.8%、診察料は横ばいとなっている。
 こうした状況からPCEデフレータは弱めの伸びが見込まれている。市場予想は前月比横ばい、前年比+2.6%、コアPCEが前月比+0.1%、前年比+2.6%と、いずれも伸びが鈍化見込みとなっている。予想通りもしくはそれ以上の鈍化がみられると、9月の利下げ開始期待が強まり、年内複数回利下げの実施期待も強まる形でドル売りが期待される。ドル円は158円台に向けた動きが見込まれる。
 
フランス下院選挙第1回投票
6月30日 ☆☆☆
 6月9日の欧州議会選挙での与党の敗北を受けて、マクロン仏大統領は1997年以来となる下院の解散総選挙を決定した。その第1回投票が30日に実施される。
 最新世論調査では極右政党国民連合が36%で支持率トップ、左派連合が27%となっており、マクロン大統領率いる与党再生は20%の支持にとどまっている。第1回投票の結果、国民連合の躍進が改めて確認されると、フランスの政治不安からのユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.0500をターゲットとした下げが見込まれる。

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