2024年07月01日号

(2024年06月24日~2024年06月28日)

先週の為替相場

ドル円4月29日の水準を超えて約37年半ぶりのドル高円安

 先週(6月24-28日)のドル円は週の後半にかけてドル高円安が進み、今年第1回目のドル売り介入が入ったと見られる4月29日の高値1ドル=160円17銭を大きく超えて161円27銭を付けている。1986年12月以来、約37年半ぶりのドル高円安水準。

 物価統計の弱さを受けたドル売りなどを交えながら、6月4日の1ドル=154円台半ばを底に上昇を続けるドル円。先々週末21日海外市場で159円84銭を付け、ほぼ高値圏で週の取引を終えた流れのまま、159円台後半で24日の週の取引をスタートすると、同日東京午前に159円92銭と高値を更新する動きとなった。

 神田財務官や鈴木財務大臣の円安けん制発言などもあって、心理的節目である160円手前の売りに上値が抑えられると、大口のドル売りに158円80銭前後まで急落する場面が見られたが、すぐに反発。市場介入への警戒感が強い中で、神経質な動きを見せた。

 本邦輸出企業とみられるドル売りなどにも上値を抑えられ、159円台での推移が続いた後、26日海外市場で160円の大台に乗せた。4月29日に付けた直近高値160円17銭もあっさり超え、ストップロス注文によるドル買いなどもあってドル高円安が強まり、160円80銭前後を付けた。

 前回の介入ポイントを超えたことで、介入警戒感が強まる中、神田財務官から「過度な変動があれば適切な対応をとる」などの発言が出たことで、ドル売り円買いが入る場面が見られたが、160円台前半までの動きにとどまるなど、ドル高円安の流れが継続。

 160円台での推移が続いた後、28日の東京午前に仲値に絡んだドル買い円売りが入り、161円を付けた。月末ということで本邦輸入企業と見られる仲値でのドル買い注文が多く入っていたとの観測があった。また、同時刻帯にジョージア州アトランタで行われた大統領TV討論会(現地時間では27日夜)(用語説明1)において、バイデン大統領が精彩を欠いているとの見方が広がったことで、ドル高が強まり161円27銭まで上値を伸ばした。

 市場が注目していた財務省官僚人事も発表され、神田財務官の7月末での退任、後任に三村国際局長(用語説明2)の就任が示された。退任発表の場合、円安になる可能性があるとのうわさが出ていたが、実際の反応は限定的なものに留まった。

 高値を付けた後は調整が広がり、介入警戒感もあって160円20銭台を付ける場面が見られた。もっとも、米国市場午後にはドル買いが広がり、160円80銭台で週の取引を終えた。

 ユーロドルはドル全般の上昇と30日のフランス下院選挙第1回投票を前にした警戒感からユーロ売りが出る場面が見られた。もっとも1ユーロ=1.06ドル台でのユーロ売りには慎重。反発の場面も1.0750手前ではユーロ売りが出て、1.0700ドルを挟んでの推移が目立っている。

 ユーロ円はドル円の上昇を支えにしっかりとした展開。対ドルでのユーロ売り局面で下げる場面が見られたものの、ユーロドルは1.06ドル台でのユーロ売りに慎重となっており、円安の勢いが勝った。

 

今週の見通し

 介入警戒感が広がっているものの、流れはドル高円安。実際に介入が入った場合は別として、警戒感や財務相や財務官からのけん制発言では流れが変わらない展開となっている。

 もっとも5日の米雇用統計を前に、ドル買いに少し慎重姿勢。米ISM製造業、非製造業景気指数、米雇用動態調査(JOLTS)など、重要指標の発表が並ぶ週ということもあり、やや様子見ムードが見られる。

 注目された30日のフランス下院選挙第1回投票は、出口調査において、事前予想通り極右勢力の台頭が見られる。ただ、想定内の勢いにとどまっており、一部で警戒された単独での過半数確保などの状況には至らないとの見通しが広がったことで、ユーロはやや買いが入っている。1.06台でのユーロ買い意欲に対する警戒もあり、1.07台を中心としたレンジ取引が続く可能性が高そう。

 フランス選挙に絡んだリスク警戒感の後退は、ドル円、ユーロ円などの買い材料になるということもあり、ドル円は先週の高値を超えての上昇が見込まれる。162円台にしっかり乗せる可能性が十分にありそう。

 ユーロ円は高値警戒感があるものの、かなりしっかりした動きが続いている。172円前後がしっかりすると、175円に向けた動きが強まる可能性がある。

用語の解説

大統領候補TV討論会 民主党と共和党の大統領候補者によるTVでの討論会。1960年に初めて行われて以降、大統領選の行方に大きな影響を与えるビッグイベントとなっている。今回の選挙では6月と9月の2回実施される予定となっている。通常秋に行われることが多い討論会が、選挙に対する関心が秋に比べるとやや低い6月に前倒しして行われたことなどから、視聴者は2020年に比べて約30%少ない5127万人となっている。
三村国際局長 1989年東大法卒。旧大蔵省入省後、金融庁、国際決済銀行(BIS)、外務省在フランス日本国大使館書記官などを経て、2021年に国際局長に就いた。国際局(旧国際金融局)関連では国際資本課課長補佐や開発政策課長などを務めた。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(6月)
7月1日23:00
☆☆☆
 前回5月のISM製造業景気指数は48.7と4月の49.2から悪化。市場予想は49.5への改善となっていた。好悪判断の境となる50も下回っている。内訳をみると、先行きを示すとして注目度の高い新規受注が4月から3.7ポイント悪化して45.4となり、全体を押し下げた。下落幅は2022年6月以来の大きさとなる。雇用統計の関連指標として注目される雇用部門は51.1と4月の48.6から2.5ポイント上昇。好悪判断の境となる50を上回った。
 今回の予想は49.2と前回から改善見込みとなっているが、50には届かない見込み。新規受注の改善予想などが支えとなっている。ただし、雇用に関しては前回から悪化の見込みとなっている。
 なお、3日には同非製造業景気指数が発表される。前回の非製造業景気指数は製造業と違い、4月の49.4から大きく改善する53.8となった。節目の50及び市場予想の50.8を超えてきている。市場予想の50.8も超えて、2023年8月以来の高水準となりました。製造業における生産にあたる事業活動が61.2と4月から10.3ポイントの大幅な上昇。上昇幅は2021年3月以来の大きさ、水準は2022年11月以来の高水準となります。4月かなり弱かった雇用は47.1と4月の45.9から改善も、小幅にとどまり、50も下回っています。
今回の予想は52.5と前回から若干の鈍化も50超えを維持する見込みです。
米FOMC議事要旨(6月11日、12日開催分)
7月4日03:00
☆☆☆
 6月11日、12日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が3日(現地時間4日午前3時)に公表される。6月のFOMCでは注目されたFOMCメンバーによる年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)において、年内1回利下げが中央値となり、ややサプライズとなった。12日に発表された米消費者物価指数(CPI)がやや弱めに出たこともあり、2回の利下げが中央値になるとの見方が広がっていた。
 議事要旨において、物価への警戒感がどこまで示されるかなどが注目される。6月のFOMC後に発表された米生産者物価指数(PPI)の弱さもあり、短期金利市場では年2回の利下げ見通しが大勢となっている。議事要旨において、物価への警戒感が強く示され、年内複数利下げ見通しが後退するようだと、ドル高につながる。ドル円は162円に向けた動きが見込まれる。
 
米雇用統計(6月)
7月5日21:30 ☆☆☆
 前回5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が4月の+16.5万人、市場予想の+18.2万人を大きく上回る+27.2万人となった。平均時給は前月比+0.4%と4月の+0.2%、市場予想の+0.3%を超え、前年比も+4.1%と4月の+4.0%、市場予想の+3.9%を超える伸びとなった。一方失業率は4.0%と市場予想及び4月の3.9%を上回った。失業率が4%に乗せるのは2022年1月以来となる。
 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、4月は前月比変わらずとさえなかった建設業が+2.1万人となり、財部門の+2.5万人を支えた。非住宅部門の建設が主体となっていた。民間サービス部門は+20.4万人の高い伸びとなった。同部門が20万人の大台を超えたのは昨年5月以来1年ぶりとなる。教育・医療サービスがヘルスケア部門の増加を支えに+8.6万人と4月の+10.6万人には届かないものの高い伸びを維持した。4月は冴えなかった娯楽・接客業が+4.2万人とまずまずの伸びとなった。中でも単体で1200万人超の雇用者を抱えるレストラン・バーなどの飲食部門が+2.46万人となっていた。また、比較的景気に敏感な小売業が+2.3万人、運輸倉庫が+2万人となっており、好印象を与えた。
 一方失業率の計算で利用される家計調査ベース(非農業部門雇用者数と平均時給は事業所調査ベース)では、就業者数が前月から40.8万人減少し、失業者数が15.7万人増加する形で失業率の悪化が見られた。特に若年層(16歳から24歳)の失業率が9.2%と前月の8.2%から大きく悪化している。
 今回の予想は非農業部門雇用者数が+18.8万人と一気に伸びが鈍化する見込みとなっている。新型コロナウイルスの流行前10年の平均が+18.8万人となっており、水準的にはごく普通であるが、前回が強かっただけに雇用市場が鈍化しているという印象が強い。失業率は前回と同じ4%、平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.9%と5月の+0.4%、+4.1%から伸びが鈍化見込み。
 予想前後もしくはそれ以下の雇用の伸びにとどまった場合、9月の米利下げ開始期待を押し上げる形でドル売りが見込まれる。ドル円は159円台トライの可能性がある。

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