2024年07月08日号
先週の為替相場
約37年半ぶりのドル高円安を更新も、週後半にかけドル売り円買い
先週(7月1-5日)のドル円は週の半ばにかけてドル高円安が進み、1ドル=161円95銭と、直近高値を超えて1986年12月以来のドル高水準を付けた。その後米指標の弱い結果をきっかけにドル高に対する調整が進んだ。注目された米雇用統計もはっきりしない結果となり、流れが変わらず。
1日の市場で6月28日に付けた直近高値161円27銭をあっさり超えると、161円70銭台まで上昇。パウエル米FRB議長がECBフォーラムにおいてディスインフレ傾向の再開に言及したこともあり、ややドル売りが入る場面が見られたが、161円20銭台までのドル安に留まるなど、161円台でのしっかりした動きが続いた。世界的な株高傾向を受けたリスク選好の円売りもあって3日に161円95銭を付けている。
高値から少し調整が入ったところで、3日の米指標に弱い結果が続き、ドル売りとなった。21時15分発表の6月米ADP雇用者数が、5月に比べて弱い伸びにとどまったことに加え、23時発表の米ISM非製造業景気指数が予想を大きく下回る弱さとなった。好悪判断の境となる50をも下回る弱い結果に、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始期待が強まり、ドル円は160円70銭台まで一気にドル安となった。
安値からはすぐにドル買いが入り、161円80銭台を一時付けたが、その後じりじりとドル安となった。5日東京市場で160円50銭台まで下落。少し戻して160円70銭台で注目の米雇用統計を迎えた。
米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが市場予想を上回り、瞬間ドル買いが出て161円00銭前後を付けたが、非農業部門雇用者数の前回値が大きく下方修正されており、ならすとそれほど良い数字ではないことや、失業率の予想外の悪化などを受けてすぐにドル売りに転じ、160円30銭台を付けた。すぐに反発して161円30銭台までと、1円弱のドル高となったが、その後160円台へ下げて週の取引を終えるなど、やや上値の重さが見られた。
ユーロドルはじりじりとユーロ高ドル安となった。30日のフランス下院選挙第1回投票では下馬評通り極右国民連合が得票率1位となった。想定済みということもあり、週明けの市場は目立った波乱なく少しユーロ買いが入ったが、その後1ユーロ=1.0700ドル台を付けるなど、やや上値が重い展開となった。3日の米指標の弱さ受けたドル安に1.0800ドルを超えると、その後もユーロ高が続き1.0840ドル台を付けている。
対円でもユーロ高が優勢。ドル円の上昇もあり、週半ばに1ユーロ=174円50銭台を付けた。ドル円の売りもあり、高値から少し調整が入ったが、173円台ではユーロ買いが入る展開となり、174円00銭を挟んでのレンジ取引となった。
今週の見通し
11日の米消費者物価指数(CPI)を意識する展開。介入警戒感や9月の米FOMCでの利下げ開始期待などから、ドルの上値追いに少し慎重。もっともドル円に関しては日米金利差を狙った取引が継続しており、下がると買いが出る流れとなっている。上下ともにやや動きにくい中、米CPIや翌12日の米生産者物価指数(PPI)で次の方向性が示されるかが注目される。
162円をつけきれなかったこともあり、ドル高調整の意識がやや強く、160円を割り込むと少し売りが出る可能性がある。159円ちょうど近くまでのドル売りが入る可能性がありそう。
ユーロドルはフランスの政治情勢への警戒感が依然強い。7日の決選投票では第1回投票で得票率一位となった国民連合が議席数を伸ばせず、第3党となった。左派連合が第1党となったが、いずれにせよ過半数を抑えた勢力がなく、当面の政治的混迷が予想される。
ユーロドルは今月に入ってやや上昇傾向が見られるが、1.08台半ばからの買いには少し慎重姿勢が見られそう。1.0800を中心としたレンジ取引からどちらに向かうかが注目される。
ユーロ円は先月半ばからの上昇がどこまで続くか。フランスの政治情勢もあり、対ドル同様に上値でのユーロ買いには少し慎重。174円台半ばから175円にかけてが重くなりそう。
用語の解説
ECBフォーラム | ECBが年に一度、ポルトガルの景勝地シントラで開催する国際金融フォーラム(2020年、2021年はオンライン開催)。ECB総裁をはじめとする多くのメンバーや世界各国の中銀関係者や学識者などが参加する。今年のテーマは「変革の時代の金融政策」。 |
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左派連合 | 急進左派「不屈のフランス」、社会党、共産党、複数の環境政党などによる連合。マクロン大統領が下院の解散総選挙を決定したことを受けて結成され、新人民戦線(NFP)と名乗っている。NFPとしてのリーダーはいない。党内の最大勢力は不屈のフランスで、党首は2012年、2017年、2022年の大統領選にも出馬したメランション氏。 |
今週の注目指標
パウエルFRB議長、議会証言 7月9日23:00 ☆☆☆ | パウエル議長が9日に上院の銀行・住宅・都市問題委員会で半期に一度の金融政策報告に関する議会証言を行う。10日には下院金融サービス委員会で同じく議会証言を行う。通称ハンフリー・ホーキンス法(完全雇用・均衡成長法)に基づいて行われる同証言では、FRBの経済見通しや今後の政策方針が示される。物価鈍化についての説明や、今後の利下げ開始についての発言があるとみられ、かなり注目を集めている。利下げ開始に前向きな姿勢が見られると、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は159円台に向けた動きが見込まれる。 |
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NZ中銀政策金利 7月10日11:00 ☆☆ | 10日にNZ準備銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が発表される。8会合連続の据え置きが見込まれている。前回5月22日の会合では、インフレ圧力がまだ続いているとして、金利のピーク見通しを引き上げ、利下げ開始について、従来見通しよりも後ずれさせ2025年第3四半期とした。ただ、短期金利市場などでは年内の利下げ開始を100%織り込んでいる状況。市場見通しと中銀の姿勢の乖離が見られるだけに、声明の内容などに要注意。年内利下げ期待が後退するようだと、NZドル買いが強まり、NZドル円は99円台を試す可能性がある。 |
米消費者物価指数(6月) 7月11日21:30 ☆☆☆ | 前回5月の米CPIは前年比+3.3%と4月の+3.4%を下回り、伸びが鈍化した。市場予想は+3.4%で横ばいとなっていた。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.4%と4月の+3.6%から伸びが鈍化し、市場予想の+3.5%を下回る伸びとなった。前月比は横ばいで4月の+0.3%、市場予想の+0.1%を下回り、コア前月比は+0.2%で4月の+0.3%、市場予想の+0.3%を下回った。前月比が横ばいとなるのは22カ月ぶりとなる。 前年比の内訳を確認すると、食品は前年比+2.1%と4月から伸びが鈍化。同部門は一時の二けたの伸びから鈍化が続いていたが、今年に入って2月、3月、4月と+2.2%で横ばいとなり、鈍化傾向が一時停滞していたが、前回再び鈍化してきた。エネルギーは+3.7%と伸びが強まった。そのうちガソリンは+2.2%と4月の+1.2%から伸びが強まっている。一方、弱かったのが自動車で、中古車が-9.3%と前回の-6.9%から下落率が広がった。2022年11月からのマイナス圏継続となっている。新車も-0.8%と3カ月連続でマイナス圏となった。エネルギーを除くサービスは+5.3%と4月と同水準。CPI全体を100としたとき、その36.2%を占める住居費は+5.4%と小幅ながら伸びが鈍化。ただ依然として高水準となっている。その他、自動車保険が+20.3%と4月の22.6%から伸びが鈍化も相当に高い水準。6カ月連続で20%を超えてきた。同項目を含む輸送サービスは+10.5%と3カ月連続の10%超えとなった。レクリエーションサービスが+3.9%まで伸びが鈍化。労働集約的なサービスの価格上昇鈍化が目立っており、雇用市場の低迷を意識させる結果となっていた。 今回の市場予想は前年比+3.1%と5月からさらに鈍化見込み。コアCPIは+3.4%と5月と同水準が見込まれている。5月から6月にかけてガソリン小売価格が大きく低下。米エネルギー情報局(EIA)調査による全米全種平均で1ガロン当たり5月の3.725ドルから6月は3.576ドルと、約4%の大幅な価格低下となった。この影響が全体の伸び鈍化見込みとなっている。 5日に発表された6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数自体は予想を上回ったが、前回値が大幅に下方修正され、失業率が予想外に悪化する微妙な結果となった。こうした状況で物価の鈍化が進むようだと、早期の利下げ開始期待につながり、ドル売りとなる可能性がある。予想との乖離次第であるが、ドル円は158円台への大きな下げとなる可能性が十分にあるとみている。 |
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