2024年07月16日号

(2024年07月08日~2024年07月12日)

先週の為替相場

円安圏から急落、その後も不安定な動き

 先週(7月8-12日)のドル円は、10日に1ドル=161円81銭を付けるなど、週の半ばにかけて、3日に付けた1986年以来の高値161円95銭には届かないもののドル高円安圏推移となった。注目された11日の米消費者物価指数(CPI)は、予想を下回る伸びとなりドル売りが強まると、少し戻したところで為替介入と思われるドル売り円買いが一気に入り、ドル円は急落した。157円40銭台までドル安円高となった後、159円台までドル買いが入ったが、その後も介入ではと見られるドル売りが入り、12日海外市場で11日の安値を下回る157円38銭を付けている。

 先週前半はドル高円安となった。9日に上院銀行・住宅・都市問題委員会で行われたパウエル議長の金融報告書に関する議会証言では、「もっと良いデータがあればインフレへの信頼高まる」と、今後のデータ次第であるという従来姿勢を強調。市場の期待する9月利下げ開始に向けて、これまでよりもハト派姿勢が示されるのではとの市場の期待があっただけに、ドル高円安となった。ただ、先々週も上値を抑えた162円00銭手前の売りが重く、161円台後半での推移となった。

 注目された11日発表の6月米消費者物価指数(CPI)は、前年比+3.0%と5月の+3.3%から伸びが鈍化した。市場予想の+3.1%も下回る伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.3%とこちらも5月の+3.4%から伸びが鈍化した。市場予想は5月と同じ+3.4%となっていた。前月比は-0.1%(5月は前月比横ばい)、コア前月比は+0.1%(5月は+0.2%)となった。ともに市場予想を下回っており、前月比のマイナスは2020年5月以来約4年ぶりとなった。

 米CPIを受けて161円50銭前後から160円60銭台へ急落。いったん161円台に戻したが、そこから一気にドル安が進み157円40銭台を付けた。ユーロドルなどその他通貨に比べてドル円だけでドル安が大きく進んだこともあり日本の当局によるドル売り介入ではとの観測が広がった。また、一部報道で政府関係者が介入と明かしたと報じられた。当局者の一人である神田財務官は、介入実施の有無についてコメントする立場にないと発言している。

 159円00銭前後まですぐに買い戻しが入った後、同日NY市場午後から東京市場午前にかけてドル買い円売りとなり159円50銭近くを付けたところで、12日東京8時台に157円70銭台まで急落。すぐに戻すも再び158円割れを付けるなど、不自然な売りが出た。その後159円台を回復するも、やや警戒感が出て158円台後半で12日の米生産者物価指数(PPI)発表を迎えた。

 米PPIは予想を上回る伸びとなり、159円10銭台を付けたが、上昇はそこまで。直ぐにドル売りが出て157円30銭台を付ける動きとなった。この動きも介入ではとの観測が流れていた。その後は158円台を付ける動きも、上値が重くなって週の取引を終えた。

 クロス円も円安進行から一気に円買いが入った。ユーロ円は対ドルでのユーロ買いもあり、直近の高値を超えて上昇。11日米CPI発表前に、史上最高値である1ユーロ=175円43銭を付けた。介入と思われる円買いを受けて171円50銭台まで急落。12日東京朝に173円20銭台まで上昇したところで、ドル円の急落に安値を更新する171円50銭台まで急落。直ぐに戻すという不安定な動き。その後173円40銭台までユーロ買い円売りが入ったが、介入警戒感もあり、少し落として米PPIを迎え、ドル円の下げに171円40銭台を付けている。

 ユーロドルは米CPI後のドル安に1ユーロ=1.0850ドル前後から1.0900ドル前後まで上昇も、ドル安はそこまで。ドル円に比べるとかなり限定的な反応に留まった。その後のユーロ安が限定的で、週末にかけて再びユーロ高となり1.0910台を付けているが、円に比べて限定的な反応に留まっている。

 

今週の見通し

 介入と見られるドル売り円買いが入ったことで、ドル高円安の流れが一服している。米消費者物価指数(CPI)の発表直後という市場が介入ではと考えているタイミングでの実施だとすると、日本当局のどのようなタイミングでも必要とあれば実施するという姿勢を再認識させられる状況となっており、上値追いには少し慎重になりそう。今回の米CPIを受けて、9月の利下げ開始見通しがほぼ織り込まれる形となったことに加え、9月と12月だけでなく、11月のFOMCでも利下げを行い、年3回利下げとなるのではとの思惑が広がっており、ドル売りが出やすい地合いとなっている。

 トランプ前大統領が演説中に撃たれるという大きな事件があったが、同氏は共和党全国大会(用語説明1)に出席しており、相場への影響は限定的なものとなった。

 ドル円は介入警戒感を強めており、次の方向性を探る展開。20日土曜日から7月30日、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けたブラックアウト期間に入ることもあり、今週はFRB関係者の発言予定が並んでいる。この辺りも相場の流れに影響しそう。

 ユーロドルなどでも少しドル売りが出ており、ドル円も少し頭が重いか。159円00銭手前が重くなると、156円台トライの流れが意識される。

 ユーロドルは1.0850ドルにかけての買いがしっかりしてくると、1.10に向けた動きが期待される。

 ユーロ円は対ドルでのユーロの堅調さもあり、ドル円ほどの重さが見られないが、上値ではすぐに売りが出る流れ。171円00銭をあっさり割り込むようだと170円00銭トライがありそう。

用語の解説

共和党全国大会 共和党の大統領選候補者を正式に決定する大会。15日から18日までウィスコンシン州ミルウォーキーで開催される。民主党の全国大会は8月19日から22日にかけてイリノイ州シカゴで開催される。
ブラックアウト期間 中央銀行の金融政策会合前後に、会合参加者が発言を制限される期間。米国の場合、米連邦公開市場委員会(FOMC)前々週土曜日からFOMC終了までとなる。今月30日、31日にFOMCが行われるため、20日からがブラックアウト期間となる。日銀の場合は、会合開始日の2営業日前から会合後の総裁会見が終了するまで(ただし国会における発言を除く)となっている。

今週の注目指標

米小売売上高
7月16日21:30
☆☆☆
 16日に6月の米小売売上高が発表される。米国の個人消費動向を示す指標として注目を集めている。前回5月の小売売上高は前月比+0.1%となり、市場予想の+0.3%を下回った。また3月が+0.7%から+0.5%へ、4月が横ばいから-0.2%にともに下方修正されるなど、総じて弱い結果となった。
 前回の内訳のうち、強さが目立ったのが自動車及び同部品で、前月比+0.8%、寄与度にして+0.16ポイントとなった。また無店舗小売りが+0.8%(寄与度+0.14ポイント)、衣料品が+0.9%(寄与度+0.03ポイント)となった。米小売り大手アマゾンやターゲットなどのセールが影響したものではと見られている。弱かったのがガソリンスタンド、飲食、建材園芸、家具などの項目。ガソリンスタンドはガソリン価格の低下が影響したとみられる。
 今回は前月比-0.2%と5カ月ぶりの売り上げ減少が見込まれている。ガソリン小売価格の下落がガソリンスタンド売上の減少につながる可能性が高いほか、前回強く出た自動車販売が6月は販売店の多くが利用するシステムに重大なトラブルが生じた影響で減少が見込まれていることが全体を押し下げる材料と見られている。米消費者物価指数が弱い伸びとなったことで9月の利下げ開始見通しが広がる中、弱い米指標はドル売りにつながる可能性がある。ドル円は156円台に向けた動きが見込まれる。 
ウォラーFRB理事講演 07月17日22:35
☆☆
 20日土曜日から今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)前のブラックアウト期間に入ることから、今週は中銀関係者が参加する複数のイベントが予定されている。中でも注目はカンザスシティ連銀主催経済シンポジウムで17日に講演を行うウォラー理事の発言。同氏はFOMCメンバーの中でもタカ派として知られている。9月の利下げ開始期待が広がる中、タカ派の同氏が利下げに向けた姿勢を示すようだと、FRB内が利下げ見通しでほぼ一致しているとの見方につながり、ドル売りが強まると予想される。ドル円は155円台に向けた大きな動きとなる可能性がある。
ECB理事会
7月18日21:15 ☆☆☆
 前回の理事会でECBは米国や英国に先駆けて利下げを実施した。今回は据え置きで見通しが一致している。ECBのチーフエコノミストであるレーン理事は、前回の会合後に7月の理事会は現状を把握する機会になると発言している。
 今後については、今年は9月と12月の後2回利下げ、その後も四半期ごとの金利引き下げが見込まれている。ただ、フランスの政治的混乱、11月米大統領選でのトランプ前大統領の返り咲き見通しなど、政治リスクを警戒する動きが広がっていることから、今後についてはやや不透明感が出ている。9月利下げに向けて声明やラガルド総裁会見での姿勢が注目ポイントとなっている。9月の利下げ見通しが強まるようだと、ユーロ売りにつながる。ユーロドルは1.0800ドルを割り込む動きが見込まれる。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。