2024年07月22日号

(2024年07月15日~2024年07月19日)

先週の為替相場

一時円買い強まる、その後ドル買い円売り

 先週(7月15-19日)のドル円は、一時ドル売り円買いが強まり、1ドル=155円38銭を付けた。その後157円88銭までドル買いが入った。

 11日の米消費者物価指数(CPI)発表後に日本の当局による為替介入と見られるドル売りに161円台から157円40銭台までドル安円高となった。12日にも介入と見られるドル売りが入り、157円30銭台を付けた後、157円80銭台まで上昇して先々週の取引を終えると、少し上昇して先週の取引をスタート。先週前半は158円00銭前後での推移となった。15日にパウエル米FRB議長が「第2四半期にインフレに関して若干の進展。過去3回のインフレは良い感じであった」と発言したことで、157円20銭前後まで急落する場面が見られたが、すぐに158円00銭前後に戻した。

 その後158円80銭台まで上昇したが、上値も重く、少し落として158円50銭前後でのもみ合いとなったところで、17日にトランプ米共和党大統領候補が、「ドル高円安、元安が強烈で、為替に大きな問題を抱えている」と円安を牽制する発言を行ったこと、河野デジタル相が円安是正のため日銀は利上げをするべきと発言したことなどを材料に円高となり、156円00銭台を付けた。18日朝には155円38銭までドル安円高となったが、その後はドル買いが入り、19日に157円80銭台を付けている。

 大統領選関連では、先日のTV討論会後強まっているバイデン大統領の選挙戦からの撤退見通しについて、米大手メディアが週末にも大統領は撤退について家族と協議などと報じたが、その後選挙戦再開方針が示され、金曜日時点では撤退が否定された(現地時間21日に撤退を表明)。先週時点での相場への影響は限定的なものに留まっている。

 

 ユーロドルは1ユーロ=1.0900ドル前後での推移となった後、トランプ発言などを受けたドル安に1.0940ドル台を付けたが、その後上昇分を解消し、1.0870ドル台を付けた。

 ユーロ円は1ユーロ=173円00銭前後が重くなった後、ドル円の下げに合わせ170円00銭を付けた。その後171円80銭台を付けている。

 

今週の見通し

 11日、12日の介入と見られる円買いに加え、大統領選を優位に進めるトランプ前大統領が、円安けん制を示したことで、ドル円はやや上値が重くなっている。もっとも安値から約2円半の上昇が見られるなど、地合いは依然ドル高円安方向となっており、方向感のつかみにくい展開。

 バイデン大統領が次期大統領選からの撤退を表明したことも不安定要素。バイデン大統領は、ハリス副大統領(用語説明1)を候補者として指名、撤退した場合の有力候補の一人と言われていたヒラリー・クリントン氏もビル・クリントン元大統領とともにハリス氏支持を表明した。ただ、民主党の有力者であるオバマ元大統領夫妻は支持を明確にしておらず、波乱要素が警戒されている。8月に行われる民主党全国大会(用語説明2)で正式な候補が決定される。

 撤退前に大手メディアの行った世論調査ではトランプ氏とバイデン氏よりもトランプ氏とハリス氏の方が支持率の差が小さいものが多いが、実際の候補者として認識されての世論調査ではないだけに、バイデン氏撤退表明後の調査動向が注目されるところ。トランプ氏の優勢がはっきりすると、トランプラリーからの株高円高の動きが強まる可能性がある。

 週後半には米重要指標の発表も控えている。木曜日の米第2四半期GDP速報値は前回からやや伸びが強まる見込み。予想に反して鈍化を見せると9月と12月だけでなく11月も利下げという期待に繋がりドル売りもありそう。

 米インフレターゲットの対象物価指標であるPCE価格指数は金曜日発表。CPI同様に弱めの数字が見込まれているが、ある程度ブレがあるだけに要注意。0.1%程度のブレでも相場が神経質に反応することがある。

用語の解説

ハリス副大統領 カマラ・ハリス氏は米国の政治家。カリフォルニア大学ヘイスティング・ロースクール卒業後、カリフォルニア州の地方検事局に努め、サンフランシスコ市地方検事、カリフォルニア州州政府司法長官などを務めた後、カリフォルニア州選出の上院議員となった。2020年の大統領選で、バイデン大統領の下で副大統領候補として選挙戦を戦い勝利。父親がジャマイカからの移民、母親がタミル系インド人であり、黒人系、アジア人系、女性初の副大統領となった。
民主党全国大会 8月の19日から22日までイリノイ州シカゴで行われる民主党の大会。正副大統領候補が正式に決定する。通常は各州から選ばれた代理人が、予備選挙の投票に沿って投票を行うが、圧倒的多数を獲得していたバイデン大統領が撤退を表明したことで、自由投票となる見込み。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利
7月24日22:45
☆☆
 カナダ銀行(中央銀行)は、6月の会合で4年ぶりの利下げを決定した。G7では初となる利下げで、2022年3月までの利上げ以降続いた5%から4.75%に政策金利を引き下げた。カナダ経済の鈍化懸念もあり、前回の利下げ後は連続利下げの可能性が意識されていたが、先月25日に発表された5月のカナダ消費者物価指数が予想外に上昇、今月に入っても6月の雇用統計で賃金の伸びが大きく加速し、いったんは据え置き見通しが広がった。しかし先週発表された6月のカナダ消費者物価指数が予想を超える鈍化となったこと、6月の小売売上高がかなり厳しい結果となったことなどから、一転して利下げ見通しが広がる展開となっている。短期金利市場では利下げをかなり織り込んでいるが、エコノミスト予想は依然割れており、利下げ、据え置きどちらでもある程度の動きが出るとみられる。利下げ実施の場合はカナダ売りが見込まれ、ドルカナダは直近上値抵抗水準となっている1ドル=1.3750カナダ超えのドル高カナダ安が見込まれる。
米第2四半期GDP速報値
07月25日21:30
☆☆☆
 25日に米第2四半期GDPの速報値が発表される。第1四半期は前期比年率+1.4%と、昨年第4四半期の+3.4%を大きく下回った。第1四半期速報値時点で前期比年率+2.5%と好調であった個人消費が、確報値では+1.5%まで下方修正されたことが全体を押し下げた。設備投資が+4.4%と好調。住宅投資も+16.0%と大きな伸び。個人消費のほかには、輸入の拡大による貿易赤字なども重石となった。
 今回は+1.9%と伸びが強まると見込まれている。個人消費が+1.8%と回復を見せることなどが全体を押し上げると期待されている。個人消費動向を示す6月の米小売売上高が予想を大きく上回る伸びを示しており、米GDPの約7割を占める個人消費は底堅いとの見方が広がっている。
 予想通りもしくはそれ以上の伸びとなっても9月の利下げ開始見通しは継続と見られるが、選挙前の利下げを牽制しているトランプ前大統領からの圧力が強まる見込みで、少し波乱要素となりそう。
 予想を下回った場合はドル売りが見込まれる。年3回利下げの見通しが強まるようだと、ドル円は155円に向けた動きとなる可能性がある。
米個人消費支出(PCE)価格指数(6月)
7月25日21:30 ☆☆☆
 米国のインフレターゲットの対象物価指数である米PCE(個人消費支出)価格指数(6月)が25日に発表される。
 11日に発表された同系統の指標である6月の米消費者物価指数(CPI)は、前年比、前月比ともに予想を下回った。特に前月比は-0.1%と、2020年5月以来となる前月比マイナスを記録した。変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数も前月比、前年比ともに予想を下回った。
 一方、12日に発表された6月の生産者物価指数(PPI)は、総合、コア共に予想を上回る高い伸びとなり、CPIとは対照的な結果となった。
 今回のPCE価格指数の予想は、前月比横ばいと5月と同水準、前年比+2.4%と5月の+2.6%から伸びが鈍化、コア前月比が+0.1%と5月と同水準、コア前年比が+2.5%と5月の+2.6%から伸びが鈍化となっている。CPI同様にやや弱めの数字が見込まれている。
 予想通り前年比+2.4%になると、1月と同水準で、アフターコロナでの物価上昇のピーク2022年6月の+6.8%以降で最も低い伸びとなる。インフレターゲットの+2.0%が現実味を帯びてくる水準となり、9月の利下げ開始に向けた動きが強まる可能性がある。
 予想をさらに下回る鈍化となった場合は、9月に続いて11月の連続利下げ期待が広がり、12月も含め今年中に3回の利下げという見通しにつながってドル安となる可能性がある。
 ただ、予想外に強く出る可能性には注意が必要。CPIと同系統の指標であり、CPIの流れに沿った動きを見せることが多いが、両指標は対象となる項目が全体占める割合にかなり差がある。6月のCPIは、PCEと比べて指数全体に占める割合がかなり大きい住居費の伸びが鈍化する一方、PCEのほうがCPIに比べて全体に占める割合がかなり大きい医療費が伸びており、CPIほどの鈍化を見せない可能性がある。
 予想からの乖離は0.1%程度であっても相場が大きく反応することがあるだけに、注意が必要。強めに出た場合は159円に向けた動きが見込まれる。

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