2024年07月29日号

(2024年07月22日~2024年07月26日)

先週の為替相場

ドル円一時151円94銭、今月高値から10円のドル安円高

 先週(7月22-26日)のドル円は、ドル安円高が優勢となり、25日に一時1ドル=151円94銭を付けた。11日の高値から2週間で9円82銭のドル安円高となった。今月3日に付けた1986年12月以来の高値からは約10円のドル安円高となる。その後154円74銭までドル買いが入った。ユーロ円、ポンド円などクロス円でも軒並みの大幅な円高となっている。30日、31日の日銀金融政策決定会合での利上げ期待などが円買いにつながった。

 18日朝に155円30銭台までドル安円高となった後、157円台まで上昇して先々週の取引を終え、先週初めは157円40銭台でスタート。21日にバイデン米大統領が、次期大統領選からの撤退を表明。大きなニュースを受けての週明けの取引スタートとなったが、相場への影響は限定的なものに留まった。157円台での推移から157円61銭を付ける場面が見られたが、午後に入ってドル売り円買いが強まり、156円20銭台まで急落した。新規の材料は特に見られず、バイデン大統領の撤退表明により、トランプ前大統領が次期大統領選で有利との見方が広がり、同氏の円安けん制姿勢もあって円買いが強まったものと見られた。

 その後157円台を回復するなど、ドル安円高一服となる場面が見られたが、23日に茂木自民党幹事長が「過度な円安は日本経済にとってマイナスなのは明らか」「段階的な利上げの検討も含め金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要」などと発言。17日の河野デジタル相発言に続いて、次期自民党総裁選出馬見込みの有力議員による利上げに向けた発言となり、海外勢の今月30日31日の日銀金融政策決定会合での利上げ決定期待が強まった。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始期待が強まっていることも、円キャリー取引の調整につながり、ドル売り円買いとなった。

 世界的な株安の動きからのリスク警戒の円買いなどもドル円、クロス円の重石となり、円高が継続。25日に151円94銭を付けた。同日の米第2四半期GDP速報値が予想を上回る成長となったことで、その後はドル買いが強まり、ドル円は154円74銭まで上昇。もっとも155円00銭近くでは売りが出る展開に、上値の重さが意識され、26日の米個人消費支出(PCE)価格指数発表後に153円10銭台までドル安円高となった。

 ユーロ円も大きなユーロ安円高。25日に1ユーロ=164円83銭と11日の175円40銭台から約10円60銭のユーロ安円高となった。22日の高値からでも約6円80銭の下げとなった。24日の7月ユーロ圏及びドイツ購買担当者景気指数(PMI)が製造業、サービス業ともに予想外に6月から悪化したこともユーロ売り円買いにつながった。

 ユーロドルは対円での下げもあって軟調。17日のドル安局面での高値が1ユーロ=1.0940ドル台までにとどまったことで、ユーロ売りが入りやすい地合いとなっており、1.0870-1.0900ドルレンジでの取引を経て、24日に1.0826ドルを付けている。

 24日のカナダ銀行(中央銀行)金融政策会合は、市場予想通り6月の会合に続いて0.25%の金利利下げを発表。声明でマックレム・カナダ中銀総裁(用語説明1)は「インフレが緩み続ければ、追加利下げの可能性と示し、カナダ売りとなった。ドルカナダは11日の1ドル=1.3589カナダから25日に1.3850カナダ近くを付けている。

 

今週の見通し

 日米の金融政策会合、米ISM製造業景気指数、米雇用統計(用語説明2)など、重要指標・インベントが並ぶ週となっている。

 日銀金融政策決定会合への期待がやや強まりすぎている感があり、注意が必要。日本の専門家は政策金利の据え置き見通しを主流としている。専門家予想の通り今回の会合での利上げを見送った場合、期待が先走って円買いとなったポジションの調整を誘う可能性があり、155円00銭のポイントを超えて上昇するとみられる。一方、利上げを実施した場合、いったんは円買いが強まる。ドル円は150円00銭トライが現実味を帯びてくる。

 米FOMCは現状維持見通しが強い。米雇用統計はやや弱め見通しとなっているが、9月の利下げ開始はすでに織り込み済みであり、さらなるドル安の効果は限定的か。強めに出た場合でも、利下げ開始見通しを覆すことは難しいとみられ、ドル高が進まなかった場合は、上値の重さへの意識からドル売りが強まる可能性がある。ドル円はやや下方向のリスクが高そう。

 ユーロ円などクロス円もドル円の動きに同調しそう。ユーロドルは1.08台を中心とした推移。1.0950-1.1000ドルの多さが意識されているが、ユーロ安ドル高を積極的に試すだけの勢いに欠けるとみられる。

用語の解説

マックレム総裁 ティフ・マックレム(Tiff Macklem)カナダ銀行(中央銀行)総裁。西オンタリオ大学で博士号取得後、カナダ銀行に入行。2004年12月に副総裁就任。カナダ財務省財務次官補を経て、2010年にカナダ中銀上級副総裁に就任。2020年6月より現職。任期は7年。
米雇用統計 米労働省労働統計局(BLS)が米国の雇用状況を調査・発表している指標。基準日となる12日を含む週のデータをその月の雇用統計として発表する。米国のGDPの約7割を占める個人消費動向に直結する指標であることや、米FRBの2大命題が「雇用の最大化」と「物価の安定」であることから、金融政策運営に大きく影響するため、市場で最も注目する米指標の一つとなっている。雇用に関する複数の指標が発表されるが、非農業部門雇用者数の前月比及びその内訳、失業率、平均時給などの注目度が高い。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
7月30日、31日
☆☆☆
 今回の日銀金融政策決定会合では、前回の会合で示された国債買入れ減額の具体的な計画が示される予定となっている。予想は現状の月6兆円から、1-2年をかけて3兆円に減額となっている。ただ、元々はもう少し穏やかな減額を見込む動きが見られていたことから、予想ほどの減額が示されない可能性がある。
 また、海外勢を中心に追加利上げを同時に行うとの期待が広がっている。17日に河野デジタル相が通信社とのインタビューで日銀に利上げを求めたとの報道が出たこと(河野氏はその後一般論を語っただけで要求したわけではないと否定)や、茂木自民党幹事長が22日に都内で行った講演において、「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と過度な円安是正に向けた姿勢を求めたことなどが、利上げ期待につながっている。
 短期金利市場では70%以上が利上げを織り込む展開となっている。もっともエコノミスト予想は据え置きが多数派となっています。国債買入れ減額と同時の利上げは、金利が想定以上に上昇するリスクがあることや、やや弱含んでいる消費動向を確認したい意向があるとの見方が広がっていることが、今回の会合での据え置きと、9月か10月会合での利上げ実施という見通しにつながっている。
 海外勢を中心に利上げ期待がかなり強まっている分、据え置きとなった場合はいったん円売りとなる可能性がある。ドル円は156円に向けた動きが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC) 8月1日03:00
☆☆☆
 日本銀行金融政策決定会合と同じ30日、31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されている。今回のFOMCでは政策金利が据え置かれる見込みとなっている。ごく一部で今回の会合での利下げ開始期待が見られるが、金利先物市場からの政策金利見通しを示すCMEFedWatchツールでは4%程度、短期金利市場では6%程度の織り込みと、据え置き見通しがほとんどとなっている。
 注目は声明とパウエル議長による会見の内容。9月の会合での利下げ開始見通しは、CMEFedWatch、短期金利市場ともに100%となっている。利下げ開始に向けた示唆が声明や会見でどこまで示されるかが注目される。緩和姿勢を強調してくると、9月だけでなく、その後の利下げ継続見通しが強まり、年内3回利下げの期待が広がる形でドル売りとなる可能性がある。ドル円は152円00銭に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(6月)
08月02日21:30 ☆☆☆
 前回6月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+20.6万人と、市場予想の+19.1万人を上回る伸びとなったが、5月分が+27.2万人から+21.8万人、4月分が+16.5万人から+10.8万人に大きく下方修正されており、直近3カ月平均で+17.7万人と2021年1月以来となる低水準の伸びとなった。また、全体で予想を上回った6月の結果にしても、景気との関連が薄い政府部門が+7.0万人となっており、民間部門は+13.6万人と市場予想の+16.0万人を下回った。失業率は4.1%と市場予想及び5月の4.0%から悪化、平均時給は市場予想と一致も前月比+0.3%、前年比+3.9%と5月の+0.4%、+4.1%から伸びが鈍化した。
 非農業部門雇用者数の内訳をみると、小売業が-0.9万人となった。運輸・倉庫は+0.7万人となっており、景気に敏感で雇用の流動性の大きい両部門の冴えない結果が、米雇用市場への警戒感につながった。
 関連指標のうち、週間ベースの新規失業保険申請件数は、雇用統計と調査対象期間の重なる12日を含む週の結果が、6月は+23.9万件、7月は+24.5万件と、小幅な悪化。
 その他主要な関連指標は今週の発表。30日の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は、前回5月分が814万件と予想の791万件を大きく上回った。3月、4月と減少が目立っていたため、一息ついたという印象。今回は805.5万件と若干の減少も800万件台の維持が見込まれている。31日のADP雇用者数は前回の+15.0万人を超える+16.8万人程度が見込まれている。1日のISM製造業は48.8と前回6月の48.5からの改善が期待されている。
 こうした状況を受けて、7月の雇用統計の市場予想は、非農業部門雇用者数が+17.8万人に伸びが鈍化するとみられている。失業率は前回と同じ4.1%予想、平均時給は前月比が+0.3%で前回と同水準、前年比が+3.7%で前回の+3.9%から伸びが鈍化見込みとなっている。
 予想前後の鈍化であれば相場への影響は限定的と見られる。予想を下回り15万人以下の伸びにとどまると、年内3回利下げ期待が強まる形でドルが一気に売られる可能性がある。ドル円は152円00銭トライが期待される。

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