2024年08月05日号

(2024年07月29日~2024年08月02日)

先週の為替相場

円買い加速

 先週(7月29日-8月2日)のドル円は、ドル安円高が優勢となった。

 7月25日に1ドル=151円94銭を付けた後、30日、31日の日銀金融政策決定会合をにらみ、少しドル買い円売りが入って迎えた29日からの週の市場。30日に155円22銭を付ける場面が見られた。日銀会合1日目終了後に、一部報道で国債減額と共に利上げが検討されると報じられたことで円買いが強まった。また31日付で就任する三村財務官が円安のデメリットについて発言したことも円買いとなり、152円60銭台を付けた。

 前日の円買いを受けて日銀会合の結果発表前の東京午前の市場では152円11銭を付けた後、153円40銭台を付けるなど、不安定な動き。152円60銭台で会合結果の発表を迎えると、151円64銭まで急落した後、一転して153円87銭を付けた。

 その後会合結果発表前の水準に戻して会合後の植田総裁発言を迎えた。総裁は追加利上げの可能性を示すやや強気な発言が目立ち、円買いが進行。同日海外市場で150円00銭を割り込むと、1日東京市場で148円51銭を付けるなど、円高が優勢となった。

 その後150円80銭台まで上昇するなど、円高一服が見られたが、151円手前が重くなりドル安円高が続く中、148円60銭台をいったん付けた後、149円00銭台で米雇用統計を迎えた。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る伸びとなり、失業率が予想外に悪化と、厳しい結果を見せた。今回の失業率悪化で米国の景気後退入りのシグナルとなるサーム・ルール(用語説明1)が発動。ドル安が一気に進む展開となり、147円00銭台へ急落。その後の戻りも鈍く、146円42銭を付ける展開となった。

 米雇用統計後の動きはドル安主導で、先週1ユーロ=1.0800を挟んで比較的落ち着いた動きを見せていたユーロドルが1.0920ドル台までユーロ高ドル安になるなど、ドルは全面安となっている。

 ユーロ円などクロス円はドル円の下げが重石。ユーロ円は30日に1ユーロ=167円95銭を付けると、ドル円の下げもあり、日銀会合前に164円50銭台までユーロ安円高となった。会合後の上下動で166円53銭を付ける場面が見られたが、その後は円高が優勢となり米雇用統計後に159円71銭まで下落。対ドルでのユーロ買いにいったん161円台を付けるも、159円台に下げて先週の取引を終えた。

 

今週の見通し

 米国の利下げ期待がかなり強まっている。もともと9月の利下げ開始が本線であったが、ここにきて9月の利下げ幅として0.5%を見込む動きが広がってきた。さらに11月にも0.5%下げ、12月に0.25%下げて、年内1.25%利下げが短期金利市場の本命となっている。

 一部では今週中の緊急利下げを見込む動きまであり、ドル円はかなり不安定な展開が見込まれている。日銀の追加利上げ期待と合わせ、急激な日米の金利者縮小は、キャリートレード(用語説明2)などで長く外貨買い円売りを続けてきた機関投資家の長期ポジションの調整を誘っており、大きな動きとなっている。

 米国の急速な景気鈍化懸念、ハイテク株を中心とした株安への警戒などから、リスク警戒の動きも広がっており、ドル円は上値の重い展開。

 ユーロ円などのクロス円も相当に重い。リスク警戒の動きが広がる中で、新興国通貨などリスクが高いとみられる通貨に売り圧力が広がっており、資源国通貨売り円買いなどの動きが、ドル円以上に厳しくなっている。ドル円はこれまでの円安トレンドの転換期を迎えている可能性がある、年初に付けた今年の安値140円82銭を割り込み、140円割れを視野に入れる展開。

 ユーロ円などクロス円も基本的には円高を警戒。特に豪ドル円などの資源国通貨の売りが厳しい。南アランド、メキシコペソといった取引量が比較的小さい通貨の売り圧力も強まっている。ユーロ円は昨年12月に付けた153円23銭がターゲットとなりそう。

用語の解説

サーム・ルール 元FRBエコノミストであるクローディア・サーム氏が提唱した景気後退に関する法則。直近3カ月の失業率の平均が、過去12カ月で最も低かった失業率よりも0.5%ポイント超高かった場合、景気後退(リセッション)となる確率が高いというもので、過去50年のデータでは有効性を示している。
キャリートレード 金利の低い通貨で資金を調達し、金利の高い通貨で運用することで、運用益に加えて金利の利ザヤを獲得しようとするもの。金利の低い円で資金を調達する円キャリートレードは、機関投資家、ヘッジファンドなどの有力な運用手法の一つとして実施されてきた。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(7月)
8月5日23:00
☆☆☆
 1日に発表されたISM製造業景気指数は、小幅改善予想に反して悪化し、昨年11月以来の低水準となる46.8となった。特に雇用部門は6月の49.3から43.4へ5.9ポイントの悪化となった。
 一方、5日のISM非製造業景気指数は、6月の48.8から51.0に改善する見込みとなっている。前回のISM非製造業は5月の53.8から48.8に悪化。市場予想の52.5を大きく超える悪化となっており、今回はその反動での好結果が期待されている。ただ、雇用統計がかなり弱く出たように、ここにきて米景気が急速に鈍化しているようだと、予想ほどの強い結果とならない可能性がある。この場合、ドル安円高がもう一段進み、140円台を付ける可能性がある。
豪中銀政策金利 8月6日13:30
☆☆☆
 オーストラリア準備銀行(中央銀行)の金融政策会合結果が6日に発表される。政策金利は現行の4.35%で維持される見込みとなっている。豪州は物価の反発が見られたこともあり、一時は年内追加利上げ期待が広がっていた。今回の会合でもごく一部であるが利上げを見込む専門家も見られる。ただ、7月31日に発表された豪第2四半期消費者物価指数(CPI)は、総合こそ住居費や食品価格の上昇もあって前年比+3.8%と第1四半期の+3.6%を上回ったが、政府・中銀が重要視しているとされる刈込(トリム)平均が前年比+3.9%と第1四半期の+4.0%を下回り、利上げ期待が後退。年内利下げの期待まで出てくる状況となった。
 今回は据え置きが濃厚となっており、注目は声明などでの姿勢。前回までの追加利上げ示唆が修正されると、豪ドル売りが強まる可能性がある。豪ドル円は1豪ドル=90円割れが視野に入ってくる。
メキシコ中銀政策金利
08月09日04:00 ☆☆☆
 メキシコ銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が8日(日本時間9日午前4時)に発表される。政策金利は今年3月以来となる0.25%の引き下げにより10.85%となる見込みとなっている。
 昨年夏ごろから多くの中南米諸国が利下げを開始する中、ニアショアリングの流れから好調な国内製造業の状況などもあって、メキシコは高金利を維持し、今年3月になってようやく利下げに踏みきった。その後は据え置きとなっていたが、7月30日に発表されたメキシコ第2四半期GDPが予想を下回る結果となったことで、現行の11%という高金利への警戒感が広がり、利下げ見通しが強まっている。もっとも少なくない割合で据え置き見通しが残っている。同日朝には7月のメキシコ消費者物価指数が発表される。前年比+5.5%と前回の+4.98%から大きな上昇が見込まれている。予想を超える上昇を見せると、直前で据え置き見通しが広がり、ペソ高となる可能性がある。また実際に据え置きとなった場合は、いったんのペソ高が期待される。ペソ円は1ペソ=7円70銭を目指す動きが期待される。

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