2024年08月13日号
先週の為替相場
一気の円買いから反転
先週(8月5日-8月9日)のドル円は、一時1ドル=141円70銭を付けるなど、ドル安円高が強まった後、反転する展開となった。
ドル円は7月30日に155円22銭を付けた後、30日、31日の日銀金融政策決定会合及び会合後の植田総裁会見を受けて円買いとなり、心理的な節目でもある150円を割り込むと、2日の米雇用統計が予想を下回る雇用者数の伸びとなり、失業率も予想外に悪化したことを受けてドル売り円買いが強まり、146円台前半を付けた後、146円60銭台に戻して先々週の取引を終え、先週初めも同水準でスタート。
週初めの146円60銭台を高値に、5日の市場でドル安円高が一気に進んだ。日経平均が急落してスタートして、リスク警戒の円買いが強まる形で5日東京午前に144円70銭台を付けると、株安一服でいったん145円50銭前後までドル買い円売りとなった。東京午後に株安が加速し、日経平均先物が2回のサーキットブレーカー(8%、12%安)(用語説明1)を発動させる展開となり一時4700円を超える下げ幅を記録。終値でもブラックマンデーでの値幅を超えて過去最大の下げ幅となる4451円安となった。この株安を受けてドル円は141円70銭前後までドル安円高となった。30日の高値からわずか1週間で13円半のドル安円高という大きな動きとなっている。
株安を受けての円高に加え、2日の米雇用統計の弱さを受けた米国の利下げ期待によるドル安も目立った。9月の利下げ開始はすでに織り込まれていたが、利下げ幅が0.5%になるとの見方が広がり、ドル売りとなった。5日の市場では一部報道で緊急利下げの可能性が報じられ、ドル売りに拍車をかけていた。
安値を付けた後は不安定な動きが続いたが、同日の米ISM非製造業景気指数の好結果もあり、ややドル買いが優勢となって同日海外市場で144円90銭近くを付けた。6日もドル買い円売りが優勢で146円30銭台まで上昇したが、その後は少し売りが入って海外市場で144円00銭台を付けるなど、不安定な動きが続いた。
7日の市場で内田日銀副総裁発言を受けて円売りが一気に進んだ。内田副総裁は函館市の金融懇親会であいさつを行い、金融資本市場が不安定な状態で利上げすることはないと早急な利上げ期待をけん制。当面、 現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると、ハト派姿勢を示した。31日の日銀会合後の植田総裁発言では追加利上げが示唆されていたこともあり、市場はサプライズとして発言をとらえ、147円50銭前後まで急騰。その後もドル高円安が続き、147円90銭前後を付けた。
8日の市場では日経平均が朝に800円超の下げとなったこともあって、リスク警戒の円買いが優勢となり、145円40銭台を付けた。その後、米新規失業保険申請件数の強い結果もあって147円台を付けるなど、ドル円はやや不安定な動きのまま、先週の取引を終えた。
クロス円もドル円同様に5日の市場で円高が強まった。ユーロ円は5日に154円42銭と、朝から5円80銭のユーロ安円高、ポンド円は180円11銭と朝から7円70銭のポンド安円高となった。円キャリー取引の縮小による円買いが一気に進んだと見られた。30日の168円00銭近くから13円半強の下げとなったユーロ円はその後161円40銭台までユーロ買い円売りが出ていた。
ユーロドルは米FRBの大幅利下げ期待などにユーロ高ドル安となり、5日に1ユーロ=1.10ドル台を付けたが、その後はユーロ売りが入り1.0900-1.0950を中心としたレンジ取引が続いた。
今週の見通し
9月の米FOMCでの大幅利下げ期待が残る中、14日の米消費者物価指数(CPI)の注目度が高まっている。短期金利市場の織り込みで先週一時76.8%となった0.5%利下げ見通しは、直近43.6%となり、0.25%利下げ見通しが過半数となっている。ただ、大幅利下げ見通しが40%を超える中で、カギを握る重要指標の一つである米CPIの結果次第で上下とも大きな動きとなる可能性がある。
前回6月の米CPIは前年比+3.0%、変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数前年比+3.3%と共に5月及び市場予想値を下回る伸びにとどまった。前月比では-0.1%と約4年ぶりのマイナス圏となった。今回は前月比+0.2%とプラス圏を回復期待、前回+0.1%となったコア指数前月比も+0.2%と伸びが強まる見込みとなっている。6月から7月にかけて米国のガソリン価格が小幅回復しており、前回押し下げの要因となったエネルギー価格の低迷という要因が後退することが支えとなりそう。ただ、全般の鈍化傾向は継続で前年比は+3.0%と6月と同水準、コア前年比は+3.2%と前回の+3.3%から伸びが鈍化する見込みとなっている。昨年の6月から7月にかけて、今年同様にガソリン価格が上昇しており、前年比では全体を支える要因とはなりにくいことや、住居費の鈍化が見込まれることなどが背景にある。
予想前後でとどまれば、夏休みシーズンであることや、9月以降のFRBの姿勢については、今月のジャクソンホール会議(用語説明2)を待ちたいという意識があることなどから、市場の反応は限定的なものに留まりそう。ただ、予想と乖離を見せると、上下どちらも大きな動きとなるリスクがある。前哨戦となる前日13日発表の米生産者物価指数(PPI)と合わせて確認したいところ。
CPIを乗り切ると146円台から148円台にかけてのレンジ取引が見込まれる。本格的な動きはジャクソンホール以降となりそう。
ユーロ円などクロス円もドル円の動きに準じそう。大きな円高進行が一服し、いったん反発も、上値追いには少し慎重。米CPI待ちの展開。
ユーロドルは1.09台を中心としたレンジ取引が続きそう。
用語の解説
サーキットブレーカー | 先物市場やオプション市場などで、相場が急変した際に、過熱感を抑えるために取引所が取引を一時中断する措置のこと。ブラックマンデーをきっかけにNY証券取引所が最初に採用した。日本では1994年に導入された。5日の日経平均先物は午後1時26分から36分までと午後2時27分から37分までの計二回サーキットブレーカーが発動された。その他TOPIX先物や東証グロース250指数先物、金標準先物なども同日サーキットブレーカーが発動している。 |
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ジャクソンホール会議 | カンザスシティ連銀が主催し、ワイオミング州の景勝地ジャクソンホールで開催される経済シンポジウム。世界各国の中銀関係者や学者など識者が招かれる。パネルディスカッションなど公開されたプログラム以外では報道陣の入れない完全クローズドな場となっており、そうした場で中銀関係者がディスカッションを行う機会としても利用される。 FRB議長が講演を行うことが多く、今後の金融政策姿勢を市場に示す場として利用されている。 |
今週の注目指標
米生産者物価指数(PPI)(7月) 8月13日21:30 ☆☆☆ | 7月12日に発表された6月の生産者物価指数(PPI)は前日11日に発表された同消費者物価指数(CPI)が予想を下回る弱い伸びとなったことで、弱めの数字が警戒されていたが、結果は予想を若干上回る伸びとなった。卸売業と小売業でのマージンの拡大が全体を支えた。今回はCPIの前日の発表となっており、CPIの前哨戦としても注目されている。予想は前月比+0.2%と6月と同水準、食品とエネルギーを除いたコア前月比も+0.2%とこちらは6月から伸びが鈍化見込み。前年比は+2.3%、コア前年比+2.6%と共に6月から伸びが鈍化見込み。予想以上の鈍化が目立つようだと、CPIの弱めの数字期待につながり、ドル売りが進む可能性がある。ドル円は146円台に向けた動きが見込まれる。 |
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NZ中銀政策金利 8月14日11:00 ☆☆☆ | ニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が14日午前11時に発表される。政策金利であるオフィシャルキャッシュレートは、専門家による見通しで据え置きがやや優勢となっているが、利下げ見通しも根強く残っている。専門家予想では約40%が利下げ、約60%が据え置きとなった。短期金利市場の織り込みは逆に利下げが優勢で66.7%が利下げを織り込んでいる。7日に発表されたNZ第2四半期雇用統計で、雇用者数が予想外に前期比プラス圏を回復。失業率も予想ほどの悪化を見せなかったことが据え置き見通しにつながっている。ただ、NZ第2四半期消費者物価指数は前期比、前年比共に予想を下回る伸びとなっており、利下げ期待も根強い。見通しが分かれている分、据え置き、利下げどちらとなっても相場への影響が大きくなりそう。利下げとなった場合、今年4月、7月と二度対ドルでの下値を支えた1NZドル=0.5870ドル台トライが意識される。 |
米消費者物価指数(CPI)(7月) 8月14日21:30 ☆☆☆ | 先月発表された6月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+3.0%と5月の+3.3%から鈍化。市場予想の+3.1%も下回った。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+3.3%とこちらも5月の+3.4%から鈍化。市場予想は+3.4%と横ばい見通しとなっていた。前月比は-0.1%と5月の横ばいから鈍化。市場予想は+0.1%となっており、予想に反して4年ぶりに前月比マイナスとなった。コア前月比は+0.1%でこちらも5月の+0.2%から鈍化、市場予想は+0.2%の横ばいとなっていた。 前回の弱いCPIの伸びを受けて、それまで見られた9月の米連邦公開市場委員会での金利据え置き見通しが払しょくされ、利下げ開始を100%見込み、市場の注目は利下げ幅が0.25%か0.50%かに移った。 今回の予想は前月比+0.2%、コア前月比も+0.2%、前年比+3.0%、コア前年比+3.2%。前月比はともに6月より強い伸びが期待されているが、前年比は6月と同水準、コア前年比は6月より伸びが鈍化との見込みになっている。6月から7月にかけてのガソリン価格の小幅な上昇が全体を支えると期待される(5月から6月は大きく下落していた)が、昨年の6月から7月も小幅な上昇を見せていたこともあり、EIA調査によるガソリン小売価格前年比の伸びが鈍化していることから、前年比ではやや弱めの数字が見込まれている。エネルギーを除くと前回の広範囲な物価の鈍化傾向が全体を抑えるとみられる。 住居費の伸び鈍化などが予想を超え、全体を押し下げてくるようだと、ドル売りが一気に進む可能性がある。ドル円は145円割れを警戒したいところ。 |
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