2024年08月19日号

(2024年08月12日~2024年08月16日)

先週の為替相場

一時円安進むも、動き続かず

 先週(8月12日-8月16日)のドル円は、15日の米指標を受けて一時1ドル=149円39銭を付けるなど、ドル高円安が一時強まった。

 週明け12日の市場は、東京勢が山の日の振り替え休日で休場となる中、やや円安が優勢となった。9日までの週の流れを受けて146円台後半で先週の取引をスタートすると、円キャリートレードの調整が一服したとの見方などがドル円を支え、148円22銭を付ける動きとなった。高値からは利益確定のドル売りが入り13日東京市場朝方に146円92銭を付けたが、同日の日経平均が大幅高となり、リスク選好の円売りが強まる形で147円80銭台を付けた。

 13日の米生産者物価指数が予想を下回る伸びとなり、9月の米連邦公開市場(FOMC)での大幅利下げ期待が強まった。ドル円は146円60銭前後までドル安となった。14日東京市場では岸田首相が次期総裁選の不出馬を表明したことで、さらにドル安円高となり、146円08銭を付けた。不出馬表明を受けて朝は買われていた日経平均が高値から600円近くの下げとなり、リスク警戒の円買いにつながった。

 その後147円台を回復すると、12日からの週で最も注目されていた材料である米消費者物価指数の発表を147円00銭前後で迎えた。ほぼ市場予想通りの結果となり、ドル円は上下の動きを見せたものの、一方向の動きにならず、147円00銭を挟んでの推移が続いた。

 15日の米小売売上高を147円20銭前後で迎えると、予想を超える売り上げの伸びに149円10銭台まで急騰。同時に発表された米新規失業保険申請件数が予想を下回る好結果となったこともドル買い円売りにつながった。小売売上高に影響を与える雇用情勢への警戒感が2日の米雇用統計の弱い結果を受けて広がっていただけに、強い家計消費の伸びはサプライズとなった。この結果を受けて9月の大幅利下げ期待が大きく後退している。ドル円はその後149円39銭まで上値を伸ばした。

 週末にかけてはポジション調整のドル売りが広がり、147円50銭台を付け、この日の安値圏で週の取引を終えた。

 ユーロドルは1ユーロ=1.09ドル台前半での推移から米生産者物価指数の弱さを受けたドル売りに1.1000ドル前後受けた。その後も高値圏でもみ合いとなった後、米消費者物価指数後の上下を経て1.1040ドル台まで上値を伸ばした。少し調整が入ったものの、1.10台を維持して15日の米小売売上高を迎え、一気に1.0950ドル前後まで急落。週末にかけてはドル高の調整が入り、1.1030ドル前後を付けた。

 ユーロ円はドル円の上昇に加え、対ドルでのユーロ買いもあってしっかりとなり、週前半の1ユーロ=160円00銭台から163円90銭前後まで上昇。その後162円30銭前後まで調整が入った。

今週の見通し

 22日から24日まで開催されるカンザスシティ連銀(用語説明1)主催の年次フォーラム、通称ジャクソンホール会議をにらむ展開。現地時間23日午前10時(日本時間同日23時)からパウエル米FRB議長が基調講演を行う。今回のテーマは「金融政策の有効性と伝達の再評価」。議長は講演で今後の米金融政策の姿勢などに言及するとみられており、利下げに向けた姿勢をどこまで強く示すのかなどが注目されている。

 先週の米物価統計や小売売上高を経て、9月の米利下げ開始期待自体は継続も、大幅利下げの期待は一服している。もっとも雇用情勢次第では再燃する可能性があるだけに、不安定な動きが続きそう。ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言次第では大幅利下げ期待が強まり、ドル売りが広がる可能性がある。もっとも議長は比較的穏当な発言に終始する可能性が高い。この場合でもドルの上値は抑えられそうで、リスクはやや下方向と見ている。

 円キャリートレードの調整自体は一服も、150円手前の重さもあり、流れはドル安円高方向か。23日に衆議院財政金融委員会に出席する植田総裁は金融政策正常化の姿勢を継続する可能性があり、ドル円は売りが出やすい流れ。

 21日に予定されている米労働省の年次改定(用語説明2)への警戒感も強い。昨年は30万人超の下方修正となった。今回は100万人近い下方修正を見込む動き見られ、ドル売りの材料となっている。

 ドル円は一方向の動きに警戒感も、リスクは下方向。143円台トライの可能性を意識。ユーロ円は160円割れを意識、ユーロドルは落ち着いた動きの中1.1100トライの動きを警戒。

用語の解説

カンザスシティ連銀 米国に12ある地区連銀のうち、第10地区を担当する地区連銀。本店はミズーリ州カンザスシティ(なお、ミズーリ州は同州セントルイスにセントルイス連銀の本店があり、同じ州の中に2つの連銀本店がある唯一の州)、担当地区はコロラド州・カンザス州・ネブラスカ州・オクラホマ州・ワイオミング州・ニューメキシコ州・ミズーリ州の一部。1978年から年次フォーラムを開始。1982年より現在のワイオミング州ジャクソンホールでの開催となり、ジャクソンホール会議と呼ばれるようになる。
米労働省年次改定 米労働省は例年8月に前年度の雇用統計の年次改定速報値を発表、2月に確報値を発表する。米雇用統計における事業所調査では、新規設立企業による雇用者増は計算に入らず、事業所閉鎖に伴う雇用減も一部計算に含まれないことから、労働省は独自のシミュレーションに基づいて推計値を出している。年次改定速報値では州毎の失業保険支払いデータを基に改訂を行う。さらに確報値ではより詳しい納税データを基に改訂を行う。

今週の注目指標

米労働省年次改定(速報値)
8月21日23:00
☆☆☆
 米労働省は2024年3月分までの雇用統計の年次改定速報値を発表する。昨年8月23日に発表された2023年3月までの改定では、約30.6万人の下方修正が見られた、月毎の雇用統計では創業に伴う新規雇用が計算に入らず、廃業に伴う雇用減も一部計算に入らない。そのため創廃業に伴う雇用者の増減は推計値によって調整が加えられている。8月の速報値では州毎の失業保険の支払いデータを基にした四半期雇用・賃金調査(Quarterly Census of Employment and Wages)により改定値が発表される。
 2024年第1四半期の同調査結果と同時に年次改定値が発表される。昨年第4四半期時点までの推計で今回の改定での大幅な下方修正が見込まれており警戒感が見られる。一部で噂される100万人規模の下方修正があった場合、市場の雇用市場への警戒感が一気に広がり、ドル売り円買いとなる可能性が高い。ドル円は143円台に向けた動きが見込まれる。
衆議院財務金融委員会閉会中集中審議
8月23日
☆☆☆
 衆議院財務金融委員会は23日午前中に鈴木財務相、植田日銀総裁を呼び、閉会中集中審議を開催すると発表した。7月の利上げ実施後、為替、株式市場に動揺が見られたこともあり、今後の姿勢について植田総裁がどのような姿勢を示すのかが注目される。金融政策正常化に向けた強い意欲が見られると、円高となる可能性が高い。ドル円は141円台に向けた動きとなる可能性がある。
ジャクソンホール会議
8月23日23:00
☆☆☆
 カンザスシティ連銀主催の年次経済フォーラム、ジャクソンホール会議が22日から24日まで開催される。詳しいプログラムは例年通り22日の発表予定。現地時間23日午前10時(日本時間同23時)からパウエル議長による基調講演が予定されている。歴代FRB議長は同フォーラムを今後の金融政策姿勢を市場に説明する場として利用しており、今回の講演でも9月以降の利下げに向けた発言が期待されている。雇用市場への警戒感が強く示されるなど、今後の積極的な利下げ姿勢が示されるとドル売り、データ次第との従来姿勢が維持されるとドル買いが見込まれる。データ次第との姿勢が示される可能性が高く、ドル円は148円台に向けた動きが見込まれる。

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