2024年08月26日号

(2024年08月19日~2024年08月23日)

先週の為替相場

ドル安進む

 先週(8月19日-8月23日)のドル円は、ドル円を中心にドル安円高となった。

 週明け19日の東京市場で1ドル=148円台から145円台前半に大きくドル安円高となって始まった。21日公表の米労働省労働統計局(BLS)による算出基準の年次改定において、2023年4月から2024年3月までの1年間の雇用者数が最大100万人の下方修正となるとの報道がドル安円高の材料となった。2日に発表された7月の米雇用統計が失業率の悪化など弱めに出たことで、米雇用市場に対する警戒感が出ている中で、大きな下方修正によって、これまで利下げを先送りしていた前提が崩れるとの思惑が広がった。

 その後はいったんドル買いが入った。23日の植田日銀総裁による国会閉会中集中審議での答弁や同日のジャクソンホール会議でのパウエル米FRB議長の講演といった注目イベントを前に、行き過ぎた動きには警戒感が出ていた。20日東京午後までドル買いが続き147円30銭台を付けた。

 年次改定への警戒感から、その後は不安定な動き。21日の市場では日本時間午前に144円台を付けた後、146円20銭台まで上昇。その後145円50銭前後まで下げて23時の年次改定待ちとなった。本来23時ちょうどの発表予定であったが、発表が30分ほど遅れる中で思惑がらみで146円77銭まで急騰してすぐに145円台を付けるなどの不安定な動きを見せた。年次改は81.9万人の下方修正となった。一時出ていた100万人には届かなかったものの予想中央値よりも大きな下方修正にドル売りとなり、144円46銭を付けている。

 安値からはいったん反発。ジャクソンホール会議を前に行き過ぎた動きへの警戒感が強まり、146円50銭台を付けた。

 23日の植田日銀総裁による国会閉会中審査(用語説明1)での答弁では、経済物価見通しが実現する確度高まれば、金融緩和度合いを調整するとの基本姿勢は変わらないと、金融正常化に向けた姿勢を改めて示した。これにより145円30銭前後まで下げたが、その後はジャクソンホール会議を前にしたドル買いが強まり、146円50銭近くを付けてほぼ高値圏でジャクソンホール会議での議長講演を迎えた。

 議長は講演テキストの中で金融政策を調整する「時は来た」と力強い発言を行った。警戒感の広がる雇用についてはかつての過熱状態からかなり落ち着いている。これ以上の冷え込みや減速、求めも望みもしないとした。この発言を受けてドル売りが広がり、ドル円は144円00銭台を付け、144円30銭台で先週の取引を終えた。

 ユーロドルはじりじりとした上昇が続く中、21日の米雇用者数下方修正を受けたドル売りに1ユーロ=1.1170ドル台を付けた。その後1.1100前後を付けたが、パウエル米FRB発言を受けたドル売りに1.1201を付けている。

 ドル主導の展開の中、やや不安定な動きを見せたユーロ円は、先々週からの1ユーロ=160円から164円のレンジ取引。ドル円が重くなっている分、ユーロ円も戻りでは売りが出ていた。

今週の見通し

 パウエル議長発言がドルを抑えてきそう。ただ、9月の利下げについては実施自体がほぼ織り込み済み。その値幅も0.25%が大勢という状況は変わっていない。行き過ぎた反応は禁物。ただFRB内の利下げに向けた姿勢が意識されており、ドル買いからは入りにくい。

 金曜日の下げ局面では145円00銭をしっかり割り込むと、その後は145円00銭円前後が重くなり、144円50銭前後を割り込むと同水準が重くなるという展開。下方向の流れがかなり強く意識されているとみられる。

 145円を回復するまではドル安円高方向の流れ。

 ユーロ円などクロス円も基本的には円高リスクを意識、ドル主導の展開も、ドル円の動きが大きくなっている。163円00銭-20銭の上値抵抗水準を意識。

 ユーロドルはゆっくりとした動きが見込まれる。流れは上方向となっているが、断続的に売り注文が入っており、一気の上昇が難しい。さがるとユーロ買いが出る流れとなっている。

用語の解説

閉会中審査 国会は、会期が終了すると閉会になるが、衆参両議院の常任委員会と特別委員会は、その議院の議決があれば閉会中でも審査を行うことが出来る。23日に衆議院財務金融委員会及び参議院財政金融委員会は閉会中審査を行い、植田日銀総裁が7月の利上げ後に生じた市場の不安定な動きなどについて答弁を行った。
米4-6月期GDP改定値 米商務省は、四半期GDPについて対象期間の翌月末に速報値、その次の月末に改定値、その次の月末に確報値を発表する。速報値時点では集計に時間のかかる在庫や貿易の四半期データがそろっておらず、その他の数字にしても速報時からは修正が入っていることがあるため、改定、確報で大きな修正が入ることがある。

今週の注目指標

豪月次消費者物価指数(CPI)(7月)
8月28日10:30
☆☆
 一時は年内利上げの観測が出ていた豪州。20日に公表された8月の豪準備銀行(中央銀行)金融政策会合議事要旨では、制約的な政策を長期間維持することが必要になる可能性に言及。市場の利下げ期待に対して、中銀の2026年までにインフレ率が2-3%目標の中央値に戻るとの予想と一致しないと指摘している。しかし、市場は豪経済状況などから年内利下げの期待を強くみており、短期金利市場では年内1回の利下げを100%織り込んでいる。
 そうした中、金融政策に影響を与える物価統計に注目が集まる。インフレターゲットはあくまで四半期ベースの数字であるが、先行指標として月次ベースの消費者物価指数も注目される。市場予想は前年比+3.4%と6月の+3.7%からの大きな鈍化が見込まれている。予想を超える鈍化を見せ、前回+4.1%となったトリム平均も大きな鈍化を見せているようだと、利下げ期待が強まり、豪ドル売りとなる可能性が高い。豪ドル円は1豪ドル=96円台を試す展開が見込まれる。
米4-6月期GDP改定値
8月29日21:30
☆☆
 米国の4-6月期GDP改定値(用語説明2)が発表される。7月に発表された速報値に比べると市場の注目度が低いが、9月からの米利下げ開始に向けて、米国の景気動向に注目が集まっているだけに、大きな下方修正が見られると、ドル売りに反応する可能性が高い。速報値では前期比年率+2.3%となった個人消費は+2.2%への鈍化が見込まれている。雇用情勢の厳しさへの警戒が見られる中、雇用と密接に関係する個人消費の鈍化が見られ、GDP全体を押し下げてくるようだと、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は142円台に向けた動きが見込まれる。
PCE価格指数(7月)
8月30日21:30
☆☆☆
 9月のFOMCでの利下げが確実視される中、米国の物価統計の中で、インフレターゲットの対象となっている米個人消費支出(PCE)価格指数が30日に発表される。同系統の指標で変化傾向が似ているため、市場では速報性の高いCPIのほうが注目を集めるが、インフレターゲットの対象はあくまでPCEであるため、注意が必要。
 14日に発表された7月の米CPIはほぼ予想通りながら前年比が+2.9%と6月の+3.0%から鈍化した。コア前年比も+3.2%と6月の+3.3%から鈍化している。総合指数は4カ月連続での鈍化で、3%割れは約3年ぶりとなった。ガソリンが前年比-2.2%と2カ月連続でマイナス圏。自動車も新車が-1.0%と6カ月連続でマイナス圏、中古車は-10.9%と2カ月連続で10%を超える大きなマイナスとなっている。CPI全体を100としたとき、その36.2%を占める大きな項目である住居費は前年比+5.1%と6月の+5.2%から鈍化したものの、水準的にはまだかなり高くなっている。また、医療サービスが+3.3%と高い水準で横ばい、自動車保険が+18.6%と6月の+19.5%ほどではなくても高く、同項目を含んだ輸送サービスも高めとなった。CPIの前日13日に発表された米生産者物価指数(PPI)は6月だけでなく、市場予想と比べても鈍化が見られた。また、PPIの中で今回のPCE価格指数の計測に利用される項目である診療費や航空運賃の鈍化も見られている。
 ただ、こうした状況があるものの、今回のPCE価格指数は前年比+2.6%と6月の+2.5%から反発見込みとなっている。コアPCE前年比も+2.7%と6月の+2.6%から上昇見込み。CPIに比べて指標全体に占める割合がかなり高い医療費が高い水準となっていることなどが全体を支えるとみられる。
 もっとも、想定範囲内の反発であり、予想通りであれば9月の利下げ期待に大きな変化はなさそう。先週金曜日のジャクソンホール会議でのパウエル米FRB議長による金融調整の「時は来た」発言など、一連の弱めの材料を受けても、大多数の9月FOMCの見通しは0.25%利下げで変化しておらず、今回のPCEの結果で市場の見方がで大きく変化するとは考えにくい。ただ、予想に反して前回よりも低い伸びになるなど弱めに出た場合、年内の大幅利下げ実施の期待につながりそう。11月の0.5%利下げ見通しが強まることで、ドル売りにつながるとみられる。この場合、ドル円は中期的に140円に向けた動きとなる可能性がる。

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