2024年09月02日号

(2024年08月26日~2024年08月30日)

先週の為替相場

週後半にドル高円安

 先週(8月26日-8月30日)のドル円は、週後半にかけてドル高円安が優勢となった。

 23日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長によるジャクソンホール会議での講演を受けてドル安が進んだ流れが継続し、週明け26日の市場で1ドル=143円45銭と8月5日以来の安値を付けた。25日にレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ(用語説明1)がイスラエルに大規模報復攻撃を行ったことによる中東情勢の緊迫化懸念もドル売り円買いを誘った。

 26日東京午前に安値を付けた後は、ポジション調整の動きなどに反発。パウエル議長講演前から9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ実施自体は織り込み済み、0.5%の大規模利下げ期待について、講演後少し強まったものの、依然として0.25%利下げ見通しが大勢という状況は変わらず、全般の情勢に大きな変化がないとの見方が、ドル安一服感につながった。

 27日に145円18銭までドル高となったが、その後再びドル売りとなり28日朝に143円69銭を付けた。27日の米2年債入札結果を受けて米債利回りが低下したことなどがドル売りにつながった。143円台でのドル売りにはやや慎重姿勢が見られ144円台に戻しての推移となった。

 29日21時半に発表された米第2四半期GDP改定値が、速報値から大きく上方修正されたことを好感してドル買いとなり、145円55銭を付けた。その後利益確定売りなどに144円60銭台を付けたが、30日の海外市場で米債利回り上昇などを材料にドル高となり、146円25銭までドルの上値を伸ばした。

 ユーロドルはドル安の流れから週明け26日朝に1ユーロ=1.1202ドルと、23日の高値1.1201をわずかに更新した。ただ1.1200ドル台でのユーロ買いに慎重姿勢が見られ、1.1150ドル前後までユーロ売りが入った。27日米国市場での米債利回り低下を受けたドル売りに1.1191ドルを付けたが、1.1200前後の重さを確認して、その後はユーロ安ドル高となった。

 28日にドイツ経済研究所(DIW)(用語説明2)が8月のドイツ経済バロメータを大きく低下させたことなどもユーロ売りを誘った。1.1100ドル前後のユーロ買い注文が下値を一時支える場面が見られたが、米GDP改定値を受けて1.1100ドルのポイントを割り込むと、同水準が重くなる形で30日に1.1044ドルを付けている。

 ドル主導の展開が目立ち、クロス円は方向性のはっきりしない展開。ユーロ円は1ユーロ=161円を挟んでの推移。160円00銭~160円50銭の水準はユーロ買いが出るものの、162円00銭前後ではユーロ売りが出ていた。

今週の見通し

 9月17日、18日の米FOMCでの利下げ開始はほぼ織り込み済み。利下げ幅について金利先物市場動向からの政策金利変更確率を示すCMEFedWatchツールをみると、約7割が0.25%利下げ、約3割が0.5%利下げという見通しが続いている。そうした中、6日に8月の米雇用統計発表が予定されている。米FRBの2大命題である物価の安定と雇用の最大化のうち、物価高を抑える必要がある利上げ局面では消費者物価指数など物価関連指標に注目が集まりやすいが、インフレが落ち着いていることが前提の利下げ局面では景気支援という観点から雇用関連指標に注目が集まりやすい。

 前回はかなり弱く出た米雇用統計。今回は非農業部門雇用者数の伸びが前回よりも強く、失業率も改善が見込まれている。予想に反して前回同様に弱い数字となった場合、大幅利下げ期待が強まる形でドル売りとなる可能性がある。

 9月の0.25%利下げが継続した場合でも、雇用統計が弱めに出ることで11月や12月のFOMCでの大幅利下げ実施期待が強まる可能性がある。この場合もドル売りが優勢となりそう。

 注目度がかなり高いだけに、3日の米ISM製造業景気指数、4日の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、5日の米ADP前米雇用レポート、米ISM非製造業景気指数など、雇用統計に関連する指標結果にも相場が反応する可能性が高いことにも注意したい。

 リスクはドル安方向とみているが、ジャクソンホール会議でのパウエル議長発言を受けても9月の大幅利下げ期待が強まらない状況をみると、ドル安一服感がいったん強まる可能性がある。中期的には142円台への動きを見込んでいるが、今週に関してはいったん148円台トライもありそう。

 ユーロ円などクロス円はドル円の動きに準拠か。ユーロドルは上値の重さが見られるが、対ドルでポンドが比較的しっかりしており、下値トライも限定的なものに留まりそう。

用語の解説

ヒズボラ レバノンのイスラム教シーア派組織。1980年台にシーア派が主流のイランによって創設された。1992年以降レバノンの国政選挙に参加し、政治的にも影響力を有している。イランの支援の下、レバノン国内で数万人規模の戦闘員を有しており、ロケットやミサイルなども相当数所有しているとみられている。
ドイツ経済研究所(DIW) ベルリンにある非営利の学術機関で、ドイツ5大経済研究所の一つ。1925年に設立、当初は景気循環研究所という名称で1943年に現在の名称に変更された。ベルリン市議会とドイツ連邦経済技術省の助成金を中心に運営されている。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(8月)
9月3日23:00
☆☆☆
 7月の米ISM製造業景気指数は46.8と6月の48.5から1.7ポイント低下。昨年9月から10月にかけての2.3ポイント以来となる大幅な低下となった。市場予想は48.8と6月から改善見込みとなっていた。雇用、新規受注、生産の項目が大きく低下。特に雇用は6月の49.3から43.4まで低下し、2020年6月以来約4年ぶりの低水準となった。
 今回は47.5と小幅改善見込みであるが、好悪判断の境となる50を下回る見込みとなっている。前回同様に予想に反して悪化した場合、ドル売りが強まる可能性がある。雇用部門の数字と合わせて注意したい。水準にもよるがドル円は144円台に向けた動きとなる可能性がある。
カナダ銀行政策金利
9月4日22:45
☆☆
 カナダ銀行(中央銀行)は新型コロナのパンデミックを受けて2020年に政策金利を0.25%まで引き下げた後、アフターコロナの物価高などを受けて2022年3月から利上げを開始、2023年7月に5%とした。今年6月5日に0.25%の利下げを発表。7月24日の会合で連続利下げを実施した。
 今回も3会合連続となる0.25%利下げが見込まれている。8月30日に発表されたカナダ第2四半期GDPは前期比年率+2.1%となり、カナダ銀行の予想+1.5%、市場予想+1.6%を共に上回った。また第1四半期GDPが+1.7%から+1.8%に上方修正された。ただ、一人当たりGDPが5四半期連続で縮小するなどカナダ経済は厳しい状況が続いており、今回の利下げはほぼ確実視されている(ごく一部が据え置きを予想)。
 注目は声明などでの今後の姿勢。年内複数回の追加利下げが見込まれているが、声明などで景気見通しに強気なものが見られると、利下げ期待が後退し、カナダ買いとなる可能性がある。その場合、1カナダ=110円に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(8月)
9月6日21:30
☆☆☆
 前回7月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が+11.4万人と、市場予想の+17.5万人を大きく下回った。また、6月分も+20.6万人から+17.9万人に下方修正されている。さらに失業率が予想外に悪化し、6月の4.1%から4.3%となった。これにより景気後退のサインとされるサーム・ルール(直近3カ月の失業率の平均が、過去12カ月で最も低かった水準と比べて0.5%ポイント超高くなった場合、景気後退に陥るという法則)に抵触した。
 前回のNFPの内訳を確認すると、民間部門の雇用者数が+9.7万人と、10万人を下回った。その内、財部門は+2.5万人とまずまずの伸びとなったが、これはほぼ建設業(+2.5万人)によるもので、製造業は+0.1万人とかなり冴えない結果になった。サービス業は教育・医療部門が+5.7万人と、これまで同様に雇用を支えた。飲食業の+1.95万人もあり、同部門を含む娯楽接客業は+2.3万人とまずまずの伸びとなった。一方で情報部門が-2.0万人と大きく減少。景気に敏感な小売業も+0.4万人と冴えない結果となっており、全般に弱い印象を与えた。
 今回の雇用統計に向けた関連指標を確認すると、週間ベースの新規失業保険申請件数は、雇用統計と調査期間の重なる12日を含む週の結果が、7月は24.5万件、8月は23.3万件と、8月が若干強くなっている。一方で、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は、雇用において職を見つけるのが容易であると答えた人の割合から職を探すことが困難と答えた人の割合を引いた指数が7月の17.1から8月は16.4に低下と厳しい状況が見られた。
 今週発表される関連指標の予想値を確認すると、3日発表の8月米ISM製造業景気指数は上記通り47.5と7月の46.8から小幅改善見込み。4日発表の7月の米雇用動態調査(JLTS)求人件数は810万件と6月の818.4万件とほぼ同水準見込み。5日発表の8月ADP雇用者数は前月比+14万人と7月の+12.2万人から若干増加見込み。同日の8月ISM非製造業景気指数は51.1と7月の51.4から若干の悪化見込みも、好悪判断の境となる50を上回る見込み。総じてそれほど弱くないという印象。
 こうした状況を踏まえ、今回の予想をみると、非農業部門雇用者数が+16.5万人と前回から伸びが強まる見込みとなっている。ただ、コロナ前10年(2010年-2019年)の月平均+18.3万人を下回っており、水準的にはやや低めという印象。前回悪化した失業率は今回4.2%と小幅改善見込みとなっている。
 雇用統計を管轄する米労働省労働統計局(BLS)が2023年4月から2024年3月までの雇用者数について81.8万人の下方修正を発表した後(実際の数値への反映は来年1月分から)だけに、見た目よりも弱いという印象があるだけに、予想よりも弱い数字となった場合、反応が大きくなりやすい。失業率が前回並み、もしくはより悪化しているようだと、ドル売りが一気に進む可能性がある。この場合ドル円は141円台に向けた動きが見込まれる。

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